子育て世代を支える新しいビジネス!?民間の学童保育を経営するには

地域の子どもたちが保護者の帰宅までの時間を安心、安全に過ごせるよう、学童施設の経営に興味のある経営者を対象に、今回は民間から学童保育に参入する方法を説明します。

目次



学童保育とは

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一般に学童保育と呼ばれる小学生を対象としたサービスは、正式には「放課後児童健全育成事業」という名前で、厚生労働省は次のように定義しています。

児童福祉法第6条の3第2項の規定に基づき、保護者が労働等により昼間家庭にいない小学校に就学している児童に対し、授業の終了後等に小学校の余裕教室や児童館等を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図るものです。

参考:放課後児童健全育成事業について(厚生労働省)

厚生省の説明にある「小学校の余裕教室」「児童館」といった表現からは事業として民間企業が参加するというよりも、自治体などによる運営という印象を受けるかもしれませんが、民間企業の学童保育への参入も始まっています。

学童保育が注目を集める背景には、共働き家庭の増加があります。小学校入学前の子どもに対しては比較的遅くまで預かってくれる保育サービスがありますが、小学校は午後には授業が終わるため、学童保育は共働き家庭を支える重要なサービスとして期待されています。

厚生労働省は「放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況」調査において、クラブ数、登録児童数、待機児童の数を公表しています。クラブ数と登録児童数は統計として示されていて1998年から増加の一途をたどっていて、待機児童の数には増減はあるものの2011年に底をうってから増加しています。2017年5月時点では全国に24,573クラブが存在し、117万人あまりが登録し、17,170人の待機児童がいました。この統計からも小学生の放課後をサポートするサービスの需要がうかがえます。

参考:
平成29年(2017年)放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況(厚生労働省)
2017年11月6日 放課後児童クラブ関連資料 放課後児童クラブについて(厚生労働省)

学童保育を始めるにあたって必要なこと

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学童保育の経営には届け出や資格保持者の確保、施設の整備が必要です。それぞれの詳細を説明しますが、省令やガイドラインは改訂されることもあるので、定期的に最新の情報をチェックするようにしてください。

届出

民間で学童保育(放課後児童健全育成事業)を始める場合、あらかじめ開所予定の市町村に届出を提出します。届出は、事業開始だけでなく、変更事項がある場合や、学童保育を廃止や休止する場合にも提出する必要があります。開所を検討している市町村のウェブサイトや窓口で届出に必要な書類などを確認するようにしましょう。

放課後児童支援員の確保

厚生労働省では、「放課後児童支援員を、支援の単位ごとに2人以上配置(うち2人を除き、補助員の代替可)」としています。支援の単位の目安は40人です。この支援単位に対して、少なくとも1人の放課後児童支援員を配置する必要があります。その他の要員については補助員でも構わないとされています。いずれにせよ学童保育を開設するには、放課後児童支援員が少なくとも1人は必要で、対象とする児童数が多い場合は複数の放課後児童支援員が必要です。

放課後児童支援員とは、保育士や社会福祉士といった子どもの遊びを指導する資格を持つ人で、都道府県知事が指定する研修を修了した人です。2020年3月31日までは研修修了予定の人も含まれます。

サービスの基準

厚生労働省令では、開所日数を原則年間250日以上、開所時間を平日3時間以上、休日や長期休暇中は8時間以上と定められています。省令ではありませんが、放課後児童クラブガイドラインでは、児童数は40人程度が望ましく、最大でも70人までとしています。また、人権尊重、体罰の禁止、プライバシーの保護、衛生管理についても同ガイドラインに記載されています。

参考:放課後児童クラブガイドライン(厚生労働省)

施設の基準

厚生労働省令に従い、専用の部屋または間仕切りで区切られた専用のスペースを用意し、1人あたり1.65平方メートル以上が割り当てられるようにします。放課後児童クラブガイドラインに従い、体調が悪いときに休むためのスペースも整備するとよいでしょう。事故や怪我防止のための安全対策も計画してください。

学童保育で提供するサービス内容

前出の厚生労働省令やガイドラインでは、開所日数や時間、基本的な安全、衛生など基本的な内容については規定していますが、学童保育は生活の場とみなされ、学校が終わってから保護者が帰宅するまでの放課後を安心、安全に過ごすことが重要とされているようです。このため具体的なサービス内容については各学童保育の裁量が大きくなっています。

学童保育では出欠の確認から始まり、それぞれ宿題をしたり遊んだりして時間を過ごします。個別の活動と合わせて、集団でスポーツをしたり、屋内で工作をしたりすることもあります。学童保育について食事の規定はありませんが、おやつの時間をはさむ場合、おやつが提供されることもあるようです。そのほか、日常の生活習慣を身につける機会として、掃除や後片付けにも子どもが参加します。

来所してから帰宅するまでの活動については、学童保育ごとに特色を活かせるところと捉えることができます。学習、スポーツ、芸術など分野を特化して、他の学童保育と差別してみてもよいでしょう。

気になる利用料金

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学童保育の利用料金は、公営の場合、家庭の所得や子どもの数によって減額を実施している自治体もあるようですが、2017年の放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況調査によると月額4,000円から6,000円の範囲が最も多い利用料金帯でした。

民間の場合は入会金も含め月額利用料はさまざまです。受験対策やネイティブによる英語レッスン、プログラミング教育を行うなど、特色のあるプログラムで月数万円の利用料金を設定しているところもあります。地域の公営学童保育と、他の民間学童保育の利用料金を調べ、運営にかかるであろう費用、カリキュラムのユニークさなどと合わせて料金を設定するとよいでしょう。

参考:ネオ学童で放課後留学も 「小1の壁」崩せ(2019年4月14日、日経MJ)

助成制度

専用スペースを用意して安全対策を施し学童保育を開設するには少なくない初期費用がかかります。開設後には放課後児童支援員や補助員の給与、家賃といった運営費も発生し、年間数百万円の支出は念頭においておかなければなりません。

予算が心もとない場合は諦めてしまわずに、金融機関からの借り入れと合わせて、学童保育を運営したいと考えている自治体の助成制度を探してみるとよいでしょう。たとえば、各自治体では「放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善費補助金」や、要件を満たした事業者に対して「放課後児童健全育成事業費補助金」が交付されています。

本記事では、学童保育とは何なのかからはじめ、統計もおりまぜながら民間から学童保育に参入する方法について説明しました。さまざまなポイントがありますが、学童保育で一番重要なのは保護者と利用者である子どもが安全に安心して過ごせる場所を提供することです。その上で、ユニークな学童保育サービスを計画してみてください。

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執筆は2019年5月19日時点の情報を参照しています。
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