※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。
源泉徴収票は大切な書類ですが、使う機会が限られているため「もらったはずなのに見つからない」「うっかりなくしてしまった」というトラブルが起こりがちです。いざ必要なときに見当たらないと焦ってしまうかもしれませんが、実は源泉徴収票は会社に依頼すれば再発行してもらえる書類です。
この記事では、まず源泉徴収票の役割や発行されるタイミング、再発行に必要な手続き、さらには源泉徴収票が必要になる場面を解説します。また後半では発行する会社が押さえておきたい知識や、発行手続きを楽にする方法もまとめました。
目次
源泉徴収票とは?再発行は可能?
源泉徴収票には、支払われた給与や退職金の額、源泉徴収額のほか、社会保険料をはじめさまざまな控除額が記載されています。簡単にいえば「1月1日~12月31日の間に、会社からもらったお金と自分が支払った税金の額がわかる書類」です。
源泉徴収とは、従業員が納める所得税を会社が徴収して納税する仕組みのことです。会社は従業員に給与や賞与、退職金を支払う際、あらかじめ税金を差し引いた額を支給します。その内容を記載した書類が源泉徴収票で、会社は所定の期限までに発行して本人に渡すとともに、税務署に提出しなければなりません1。
それ以外にも、会社には依頼に応じて源泉徴収票を発行する義務があります2。発行回数に制限はないため、再発行も可能です。なお、発行の際に手数料はかかりません。
源泉徴収票が必要になる場面についてはのちほど解説します。
源泉徴収票はいつ発行される?
会社が発行する源泉徴収票には、「給与の源泉徴収票」と「退職所得の源泉徴収票」の2種類があります。
給与の源泉徴収票は、年末調整後1月31日までに発行されます。年末調整とは、毎月源泉徴収された税額と、控除などを反映した実際の納税額を一致させるための精算の手続きです。源泉徴収票には、年末調整を経て確定した納税額が記載されます。
退職所得の源泉徴収票は、退職金などが支給された場合、退職後1カ月以内に発行されます。ただし、死亡による退職や、退職する従業員が海外に居住している場合は対象外です3。
源泉徴収票は会社側に発行義務がある
所得税法第226条では、会社は源泉徴収票を発行しなければならないと定められています。つまり、会社側には源泉徴収票の発行義務があり、再発行の場合も同様です。
紛失していなくても、ローンを組む場面などで収入証明が必要になったときは、都度発行してもらえるものだと理解しておきましょう。
源泉徴収票をなくしたときの再発行手続きと必要な期間
源泉徴収票の再発行は、発行した会社の担当部署に依頼します。役所や税務署では対応していないため注意してください。
(1) 自分で会社に連絡する
給与所得の源泉徴収票の場合は、自社の経理担当部署に連絡して「源泉徴収票を再発行してほしい」旨を伝えます。その際、必要な源泉徴収票の「年度」を間違えないようにしましょう。
退職所得の源泉徴収票については、以前の勤務先に連絡して指示された手続きに則って依頼します。再発行に手数料はかかりませんが、すでに退職している場合は郵送料などを求められる場合もあります。念のため確認するとよいでしょう。
(2) 会社に電話したくない場合は代理人に依頼する
源泉徴収票の再発行は、本人でなくても依頼できます。円満退職ではなかったなど、どうしても自分で依頼するのが難しい場合は、新しい会社の経理担当者や税理士にお願いするという方法があります。
(源泉徴収票の)再発行手続きに必要な期間
再発行手続きに必要な期間は、一般的に数日から1週間程度みておけばよいでしょう。会社には源泉徴収票作成時に使用した書類を7年間保存する義務4があるため、通常は依頼を受けたらすぐに対応できる場合がほとんどです。ただし、企業の繁忙期には数週間かかる場合もありえます。転職先の年末調整が迫っているなど、急ぎの事情がある場合は依頼時にその旨もあわせて伝えておくと安心です。
(源泉徴収票の)再発行を断られた場合は税務署に相談を
会社が再発行になかなか応じてくれない場合は、一度税務署に相談してみるとよいでしょう。
そもそも源泉徴収票が一度も発行されていない場合は、税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」5を提出すれば、税務署による勧告や指導があります。給与の源泉徴収票は翌年1月31日以降、退職所得の源泉徴収票は退職後1カ月経過後に、いつでも手続きが可能です。なお、届出書は国税庁のサイトからダウンロードできます。
会社が倒産している場合は破産管財人に依頼を
会社が倒産して経理部署がなくなってしまった場合でも、源泉徴収票の再発行を求めることは可能です。この場合、依頼先は会社の財産を管理する破産管財人になります。再発行の際は給与明細などを求められるケースもあるため、依頼時に準備しておくとスムーズです。
通常、破産管財人の連絡先は、会社からの通知や官報など公的情報で確認できます。ただし、どうしても破産管財人に連絡がつかない場合や破産手続きが進んでいない場合は、税務署に相談しましょう。
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源泉徴収票はいつ必要?
源泉徴収票が必要になるケースとして、以下の例が挙げられます。
- 確定申告をするとき
- 住宅ローンを組むとき
- 賃貸契約をするとき
- 扶養に入るとき
- 転職や再就職をするとき
- 配偶者(特別)控除を受けるとき
- 子どもを保育園に預けるとき
確定申告をするとき
会社を退職して個人事業主になった場合、確定申告をしなければなりません。確定申告では1年間の所得と所得税を計算し、翌年の2月16日から3月15日に税務署に報告します。その際、申告内容に源泉徴収税額を記載するため、源泉徴収票が必要です。
また、会社員だったとしても、確定申告すべきケースがあります。たとえば、以下の例に当てはまった場合は申告が必要となります。
- 1年間の給与の収入金額が2,000万円を超えたとき
- 副収入が20万円を超えたとき
- 年の途中で会社を退職して、年末調整を受けていない場合
- 2カ所から給与をもらっているとき
- 住宅ローン控除を受けたいとき
- 医療費控除を受けたいとき
なお、2019年4月1日以後、納税者の負担軽減策として、確定申告書提出には源泉徴収票の添付が不要となりました6。
住宅ローンを組むとき
住宅ローンの審査において、収入は大事な確認項目の一つです。源泉徴収票は、その人の年収を証明できる書類であることから、銀行から提出を求められることがあります。なお、正式な書類であることを証明するために「社印」が必要となる場合があります。融資先から社印を求められた場合は、発行元に連絡をした上で、社印を押してもらえるよう依頼しましょう。
賃貸契約をするとき
賃貸契約をする場合も、入居審査で年収を確認するために、源泉徴収票が必要となる場合があります。
扶養に入るとき
家族の扶養に入るには、「年間の合計所得金額が48万円(2019年分までは38万円)以下であること。給与のみの場合は給与収入が103万円以下であること」という条件があります。この条件にあてはまることを証明するために、源泉徴収票が使われます。
転職や再就職をするとき
前の会社から1年以内に新しい会社に入社するとき、前職の源泉徴収票の提出が求められます。理由としては、新しい会社で年末調整する際に、前の会社の源泉徴収額と合わせる必要があるからです。
配偶者(特別)控除を受けるとき
一定の条件を満たし、配偶者の1年間における合計所得金額が48万円(2019年分までは38万円)以下である場合、「配偶者控除」を受けることができます。また、配偶者控除が受けられなくても、所得金額によって一定の控除を受けられる「配偶者特別控除」という制度もあります。配偶者の所得を確認するために、源泉徴収票が求められます。
子どもを保育園に預けるとき
子どもを保育園に入れようとするとき、年収を確認するために、源泉徴収票の提出を求められる場合があります。また、認可保育園の場合は親の収入によって保育料が決まります。年収を証明するために、源泉徴収票が使われます。
源泉徴収票の代わりになる書類はある?
収入を証明する書類として源泉徴収票の提出が求められている場合は、自治体が発行する所得証明書や納税証明書、確定申告書などで代用できる場合もあります。手元に源泉徴収票が見当たらず、急を要する場合は提出先に確認してみましょう。
一方、確定申告には源泉徴収票が必要です。ただし、会社が倒産し破産管財人にも連絡がつかない、あるいは破産手続きが進んでいないケースなどは、税務署に相談すれば給与明細などが源泉徴収票の代わりとして認められる可能性があります。まずは税務署に相談し、指示を求めるとよいでしょう。
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【会社側】源泉徴収票の再発行を求められたときの対応
従業員のいる会社は源泉徴収義務者として、源泉徴収票の発行が法律により義務づけられています1。なお、従業員の年収が103万円以下の場合、所得税の納付義務がないため源泉徴収は発生しませんが、源泉徴収票の発行は必要です。
源泉徴収票は、年末調整後や退職後などの決まったタイミング以外にも、依頼に応じて発行する義務があります。再発行を求められた場合も同様です。なお、再発行の回数に制限はないため、すでに複数回発行したからといって対応を拒むことはできません。また、本人以外からの依頼でも対応する必要があります。依頼に応じない場合は所得税法第226条違反となり、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があるため注意しましょう。
小規模な事業者で人手が足りなかったり、給与を手作業で管理していたりする場合、再発行の依頼に都度応じる負担は決して小さくありません。場合によっては依頼者に支払った給与額などの情報が保存されておらず、過去の勤務表を探して支払額の合計を出し直す……という作業が発生することもあるでしょう。
こうした場合に備えて検討したいのが、労務管理システムの導入です。たとえば、決済サービスのSquareが提供するSquare シフトを使って勤怠管理すれば、必要なときに期間を指定して従業員の勤務時間をすぐに参照できるようになります。Square シフトではほかにもシフト管理を効率化できるほか、スタッフアプリを使って従業員自身が休暇の申請やシフトの交換などをすることも可能です。
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まとめ
源泉徴収票は再発行が可能な書類ですが、一番はやはり紛失しないようしっかり管理することです。毎年発行される書類だからこそ、保存場所を決めておき、受け取り次第すぐにその場所に格納する習慣をつけておけば、いざというときにすぐ取り出すことができます。
受け取ったはずの源泉徴収票がたとえ見当たらなくても、慌てる必要はありません。この記事で紹介した手続きを取り、速やかに再発行を依頼しましょう。
Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。
執筆は2020年3月13日時点の情報を参照しています。2025年4月14日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash