ネットショップで扱う商品をもっと多様にして独自性を出したいと考える事業主にとって、海外からの仕入れは魅力的な方法といえるでしょう。
この記事では、海外輸入で商品を仕入れるメリットや輸入する際に注意すべき点、輸入方法の概要を解説し、海外からの仕入れで活用したいサイトを紹介します。
目次
輸入の概要を知ろう
はじめに、海外から商品を仕入れる「輸入販売ビジネス」について、商取引としての輸入の概要を知っておきましょう。
「輸入販売ビジネス」とは
輸入は、他国から商品を購入して日本国内に持ち込む行為をいいます。輸入販売ビジネスは、他国から持ち込んだものを国内で販売して利益を得る商取引を指します。
輸入の形態には、個人輸入と商業輸入があります。「個人輸入」は海外の商品を個人で使用するために輸入する行為です。個人輸入に対して、商業輸入は海外の商品を販売するために輸入する行為で、主に個人が商売目的で輸入する「小口輸入」と、それより規模が大きい商売目的の一般輸入(商業輸入)とがあります。
個人輸入 | 個人が使用する目的で輸入する |
小口輸入(商業輸入) | 主に個人が販売を目的に輸入する |
一般輸入(商業輸入) | 販売を目的で輸入する |
「個人輸入」と「小口輸入」の違い
よく「個人輸入は違法」といわれますが、これは「個人の使用目的で輸入したものを販売するのが法律に反する」という意味です。
ネットショップで輸入した商品を扱う場合は、たとえ個人の輸入であっても商業目的の輸入であるため「小口輸入(商業輸入)」になります。消費者の安全を確保する責任があり、輸入時の法規制に基づく手続き、輸入販売を行うための許可や届出・承認、販売時の表示が義務付けられる場合もあります。また、製造物責任法(PL法)では輸入者が賠償責任を問われる可能性があり、PL保険への加入などの対策も必要です。
参考:輸入品の品質欠陥に起因する人的・財的損害が発生した際の製造物責任者(日本貿易振興機構)
個人輸入と小口輸入の大きな違いは関税です。小口輸入は個人輸入より関税が高くなるため、「同じ個人が小口で輸入する行為だし、個人輸入でいいのではないか」と考えてしまうかもしれません。ネットショップで販売することを目的に輸入をしているので、個人事業主であっても、点数が少なくても、はじめから小口輸入として手続きを行いましょう。
「輸入原価」について
海外輸入による販売は、ビジネスの面では利益を考慮しなければなりません。輸入による仕入れでは、商品本体の仕入れコストのほか、輸出国内での輸送費、日本国内での輸送費、海上運賃、保険料、関税や消費税、諸手続きのコストがかかります。これらのコストを輸入原価とし、忘れずに計上するようにしましょう。
海外から商品を仕入れるメリット
輸入ビジネスはハードルが高いと感じるかもしれません。しかし、難易度が高いからこそ、海外からの仕入れによって新しいビジネスチャンスが広がる可能性も大いにあるといえます。
ここからは、輸入販売ビジネスのメリットをみていきましょう。
日本に出回っていない商品を販売できる
国外のマーケットには、日本でまだ紹介されていない商品がたくさん眠っています。いちはやく商品を送り出すことで、競合するショップに先駆けて目新しい商品を販売することができるでしょう。情報の速さは店舗としての付加価値も高めます。
未発売の商品だけではありません。日本市場から撤退して入手困難になったメーカーの商品も、海外だと取り扱いが続いていることもあります。
商品展開で他社と差別化できる
自社では開発が難しい分野の商品を輸入したり、商品ラインアップを増やすことで自社の強みをさらに伸ばしたりと、他のショップとの差別化を図ることができます。
商品も情報もあふれかえる現在、消費者のニーズは多様化し、誰もが持っているブランドより、個人の感性とフィットするオリジナリティーが求められるようになっています。スモールビジネスの特長は、多様な価値観をもつ消費者のニーズに対し、細やかな対応ができるところにあります。海外輸入には、それまでにない新しい感性を持ち込むチャンスだといえます。
高い利益が見込める
海外と国内とでは、価値観だけでなく、物価も大きく異なります。同じ仕様の商品でも海外だと数段低価格で販売されている場合があり、輸入コストを反映させても利益が出るものも少なくありません。
低コストで輸入することにより、効率よく利益を出していくことも可能です。ただし海外で安く仕入れたものをむやみに高く販売すると信頼を失う可能性があるため、適切な付加価値をのせた価格での販売が求められます。
海外から商品を仕入れる場合の注意点
ここからは、商品を輸入して販売する場合に気をつけておきたいポイントを見ていきましょう。
送料・関税などの料金を念頭に利益を考える
輸入の場合、送料は思っている以上にかかるものだと心得ましょう。商品の価格より送料が上回ることもあるほどです。また、国を超えた商取引のため、関税にも注意が必要です。関税は輸入品に課される税全般を指し、法律によって品目ごとに税率が定められています。
海外から仕入れる場合には、商品本体だけでなく、送料や関税などの原価にかかるコストを常に念頭に入れておくことが重要です。
納期は国内より長めを設定する
一般的に、輸入の場合は発注してから手元に届くため時間がかかります。国内だと2、3日程度で届くものでも、海外だと早くて1週間、長いと1カ月かかることもあります。
注文から長い間待たされると不安が大きくなりますが、物理的な距離もあることはもちろん、国が異なれば文化も異なることを考慮しておく必要もあるかもしれません。納期には余裕を持たせ、確実にお客様に商品を届けられるシステムづくりがポイントになります。
不良品の発生を見込んでおく
不良品の発生は頭の痛いところではありますが、品質に対する認識の違いから不良品が発生する可能性があることをあらかじめ見積もっておきましょう。
日本国内であれば不良品が見つかった場合、返品や交換などの対応を求めることができますが、海外では対応してもらえなかったり、返品や交換に時間がかかったりすることもあります。
海外からの仕入れでは、ある程度の仕入れロスが発生することを念頭において、販売戦略を立てることをおすすめします。
修理・保証・アフターサービスの有無や内容を確認する
海外からの仕入れの場合、良品であっても、販売後に修理や使い方のフォローなど、アフターサービスを求めることが難しいことも少なくありません。国内では修理ができず保証の対象外となるものも多くあります。
電化製品や精密機器などは特に、故障や初期不良の場合の取り扱いをよく確かめましょう。修理については、国内で可能かどうか、海外で修理をする場合の送料や修理費、手数料など、アフターサービスの内容をあらかじめ調査しておくことをおすすめします。
在庫数が不確定な場合や注文と異なる商品が届いた場合を想定する
国が異なると商習慣も違うため、日本では当たり前だと思っていたことが当たり前ではない場合があります。仕入れの確認時に在庫があると返答していても実はなかったり、注文と異なる品番の商品が届いたりなどのトラブルが発生することもあるでしょう。
何度も取り引きやコミュニケーションを重ねて信頼関係を築くまでは、見切り発車しない慎重さも必要です。
輸入が禁止・制限される商品や検疫、許可を必要とする商品に注意する
輸入手続きの中には、植物防疫法、家畜伝染病予防法、食品衛生法など、関連する法令に基づき許可や承認が必要なものもあります。また、医薬品や化粧品などは輸入者個人が使用するものであっても数量制限があり、超える場合は厚生労働省の手続きが必要です。
また、ワシントン条約(絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)により輸入が規制されている動植物があります。規制は生きている動植物だけでなく、小物や漢方薬などに加工されていても対象となりますので注意しましょう。
語学や異文化理解が必要になる
外国の事業者を相手に商取引を行うにあたって、言語の面で課題が出てくることもあるでしょう。ICT技術の進展もあり、自動翻訳機能などを活用すればある程度の言葉の壁は低くなってきています。ただ、コミュニケーションで重要になるのは言語だけではありません。生活習慣や価値観の違いに目を向けた異文化理解が不可欠です。
発注・受注・納品・支払いなどの商習慣や品質の基準、数量の把握の仕方など、日本の常識が海外では通じないこともしばしばあります。違うところを認め合い、お互いにストレスのない商取引が行えるよう、異文化理解にも目を向けて輸入に臨むことをおすすめします。
海外仕入れの方法と主な流れ
それでは、具体的に海外輸入はどのように行うとよいのでしょうか。ここからは、海外仕入れの主な方法と一般的な仕入れの流れを説明します。
海外仕入れの主な方法
最も手軽に利用できるのは通販サイトでしょう。海外のサイトでも翻訳機能を使えばおおよその理解はできますし、日本語や日本円が使えるサイトもあります。
輸入ビジネスを安心して進めたい場合は、輸入代行業者を経由して取引するのも一つの手です。自力で進めた場合の時間やコストなどを考えれば、利用料を上回るだけのコスト削減になる可能性もあります。
通販以外では、海外の展示会や見本市に出かけて商談したり、直接外国にまで買い付けに行ったりする方法もあります。また、日本に拠点がある外国メーカーや販売代理店と契約して仕入れる方法もあります。
海外仕入れの主な流れ
海外から商品を輸入するステップは、「商品を調査する」「仕入先を選定する」「商品を注文する」という基本の流れは国内も同じです。鍵になるのはリサーチの部分です。ここからは通販サイトからの仕入れをベースに流れを見ていきましょう。
はじめに、どのような商品を仕入れたいかをよく検討し、仕入れサイトで検索をかけて商品を探します。日本語では検索できないので、翻訳機能と画像検索をうまく活用して探していきます。
商品が絞れてきたら、価格も調査していきます。単価は仕入れサイトによっても異なりますし、ロットによっても変わります。
商品の選定と並行し、仕入先のチェックも行います。ショップに対する評価がランク付けされていれば参考にします。そのほか、過去の出荷数やリピート率、ショップの運営年数なども公開されていれば確認します。
いよいよ商品を注文する場合、慣れない間は輸入代行業者を介して仕入れることも検討しましょう。価格や数量などの交渉、関税手続き、発送、トラブルへの対処などを任せることができます。
輸入代行業者に依頼する場合は、仕入れたい商品、色やサイズ、数量などの情報を伝えるだけで済むことが多く、かなりの労力を軽減できます。輸入代行業者を選定時には、次の点に注意しておくとよいでしょう。
- 意思疎通のしやすさ
- メールやチャットなどの反応の良さ
- 代行にかかる費用(月額料金、代行手数料、オプション、決済手数料など)
商売として今後も計画的に輸入をしていきたい場合、初めての取引ではテスト仕入れを行いましょう。少なめの数量で発注し、不良品の割合や納期を確かめるだけでなく、実際に仕入れた輸入品の売れ行きをみるためにも、テスト的な仕入れをおすすめします。
海外仕入れで活用したいサイト
ここからは、輸入販売の仕入れや、価格調査に活用したいサイトを紹介します。
サイト名 | 言語 | 特徴 |
NETSEA(ネッシー) | 日本語 | ・株式会社SynaBizが運営するBtoBサイト ・出店する問屋・メーカーは4,000社以上 ・仕入れ会員の登録は、日本国内に営業所または居所を有する法人・個人事業主、開業準備中の人(会員制限あり)と、ビジネス利用を目的とした場合に限定 ・入会金や月会費は無料 |
SUPERDELIVERY(スーパーデリバリー) | 日本語 | ・株式会社ラクーンコマースが運営するBtoBサイト ・出展企業数は約2,900社 ・登録には審査があり、月々会費がかかる ・掲載商品の多くは1点から注文でき、後払い機能もある |
ザッカネット | 日本語 | ・株式会社ザッカネットが運営するBtoBサイト ・雑貨を中心に幅広いジャンルの商品を扱う ・仕入れ会員は、登録も年会費も無料。登録には審査があり |
米国Amazon(アマゾン) | 英語 | ・米国内最大手の通販サイト ・アマゾンジャパンとは別のアカウントを作る必要がある ・問い合わせなども英語で行うことになるが、日本で利用するのと画面構成もほとんど変わらないため、翻訳機能を利用すればハードルは比較的低い |
eBay(イーベイ) | 英語 | ・世界最大規模のオークションサイト ・さまざまな国の商品が出品されており、通販サイトでは取り扱わないようなレアな商品、掘り出し物が見つかる可能性も ・日本への発送には対応していない出品者がいたり、値段も卸値ではなかったりと、ハードルが高い |
Qoo10(キューテン) | 日本語 | ・eBay Japan合同会社が運営する通販サイト ・韓国系の雑貨やファッションに強く、出展者の多くは韓国や中国の現地におり、国内発送ですぐに届くものもあれば、現地から直送されるものも |
AliExpress(アリエクスプレス) | 日本語、英語、その他 | ・中国の大手IT企業アリババグループが運営する、中国国外向けの通販サイト ・日本語を含め、複数の言語に対応 ・送料無料の店も多い |
阿里巴巴1688.com | 中国語 | ・アリババグループが運営する、中国国内向けBtoBサイト ・工場直営で出店している業者もあり、安く仕入れられるのが特徴 ・中国国内向けのサイトのため、輸入には代行業者を介することが多い |
淘宝網(タオバオ) | 中国語 | ・アリババグループが運営する、中国国内向けのCtoC(個人間取引)通販サイト ・品揃えが豊富であり、価格も低め、価格のリサーチにも活用できる |
天猫(Tmall) | 中国語 | ・アリババグループが運営する、中国国内向け通販サイト ・出展の審査が厳格で、海外メーカーや中国の大手メーカーなどが多い |
CHINAMART(チャイナマート) | 日本語 | ・淘宝網(タオバオ)で扱っている商品を日本語で横断的に検索し、日本への発送まで一括して扱うサイト ・中国の商品をリサーチするときに活用できる |
おすすめ記事
- アパレルのネットショップ運営は仕入先がポイント!おすすめサイトも紹介
- ネットショップ開店の要は「商材」の選び方!9つの方法でネットショップを軌道に乗せよう
- 個人でネットショップを始めるには何が必要?開業方法、費用、注意点など
Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。
執筆は2021年11月15日時点の情報を参照しています。2023年6月27日に記事の一部を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash