ネットショップ開店に向けて扱う商材(商品やサービス)に迷う場合、「どんな基準で商材を選べばいいのか?」という疑問が生じるかもしれません。商材選びは、ネットショップの利益や持続性に大きく関係し、ビジネスの成否を決定する重要な要素となり得ます。商材選びがネットショップにもたらすチャンスとリスクに加え、商材の選び方を9パターンに分類して解説します。
目次
商材選びがもたらすチャンスとリスク
どんな商材を販売するかによって、消費者から見たネットショップの印象は大きく変わります。それだけでなく商材は、利益率、キャッシュフロー、在庫保管、コンセプトなど、ネットショップの経営そのものを左右する存在でもあります。取り扱う商材がもたらすリスクやチャンスを、各項目ごとに考えてみましょう。
利益率への影響
どれだけ多く高額の商材を売っても、売り上げからコストを差し引き、手元に残る利益が少なくてはネットショップの経営が立ち行かず、リスクが大きくなります。利益率アップの考え方の基本は、可能な限り低価格で仕入れ、可能な限り高価格で販売することです。とはいえ、オンラインショッピングをする消費者は購入前に同一や類似の商材を他社サイトで比較する可能性が高く、価格競争に負けては売り上げになりません。
ネットショップの利益率を高めるためには、仲卸などの仲介業者を使わずメーカーから商材を直接仕入れる、回転率の良い商材であればまとめて仕入れるなど、コストを低く抑える工夫が必要です。価格競争が起こりにくい商材や、もともと利益率が高いジャンルの商材を選ぶという方法で、成功のチャンスを増やすこともできます。
キャッシュフローへの影響
資金を使って商材を仕入れ、ネットショップで販売し、購入者からの支払いを受け取るサイクルの中で発生するお金の流れを、キャッシュフローと呼びます。キャッシュフローが良い、つまり現金が常に自分の手元にある状態であれば、商材の仕入れやマーケティングなど次の手を打つためのコストにも対応しやすく、機動力の高いビジネス状態をキープできます。
商材によっては、仕入れ元に発注して納品前に支払いが必要であったり、購入後の返品率が高くキャッシュフローが安定しなかったりするケースもあるため、キャッシュフローの観点から商材選びを考える必要もあります。
在庫保管・回転率への影響
商材の違いは、在庫の保管方法や回転率にも影響します。たとえば回転率の低い大型の商材を長期間倉庫に保管する場合、倉庫代などのコストが発生し、保管が長引くほどコストが上がり、利益率が下がることになります。冷蔵保存の必要な商材や、保管中にメンテナンスが必要な商材も、仕入れる前にその分のコストや時間を考える必要があります。
逆に、回転率の高い商材の場合、受注や発送の作業が頻繁に発生するため、作業時間や人件費を確保できるか、事業規模と併せて検討します。小口の仕入れを繰り返すより、ある程度まとまった数の商材を仕入れておく必要があれば、その分の資金を用意できるか、前もって計算しておきましょう。
コンセプトへの影響
コンセプトに合う商材を扱っているかどうかで、ネットショップの印象は大きく左右されます。消費者の立場で考えると、高品質な本革の一点もののハンドバッグをメインにしたネットショップで、ハンドバッグと全く関連性のない商品が一緒に売られていたら、お客様は後者に違和感を抱くのではないでしょうか。同時に、ネットショップ自体の不統一感にマイナスな印象を感じ、何も購入せずにサイトを離れてしまうかもしれません。
ネットショップのコンセプトに合う商材選びをすることで、コンセプトに共感する消費者を呼び込み、その心を掴んで離さないネットショップへと育てていくことができます。商材に通底するコンセプトが一貫していることで、商品ジャンルによってはクロスセルにもつながりやすくなります。
ネットショップの商材選びの9つの方法
ネットショップ運営のためには、ショップのコンセプトに合う商材を選ぶことが重要です。そこからさらに一歩踏み込んで、ビジネスがより充実させ、利益が出るネットショップにするために、以下の9パターンの「商材の選び方」を検討してみましょう。
1. 利益率の高さにフォーカス
前述の通り、利益率の高い商材はネットショップのビジネスにチャンスをもたらします。オリジナル品やリサイクル品などは比較的自由に価格設定ができ、高い利益率を確保することも可能です。ただし、新規開店するネットショップの場合、宣伝費を使ってショップを知ってもらわないことにはこれらの商材は売れにくいため、原価以外のコストも慎重に考える必要があります。
また、利益率が高い商材だけを扱っていても、販売価格そのものが安ければ実際に入る利益額も少なくなります。利益率70%の場合、1,000円で売る商材の利益は700円ですが、1万円で売る商材であれば利益は7,000円となり、後者の商材を扱うほうが効率的であることは明らかです。
利益率が高く、販売価格も高く、かつ回転率の良い商材であれば、ネットショップに良いキャッシュフローをもたらしてくれるといえるでしょう。
2. 消費者ニーズに合わせる
「消費者が今、何を必要としているか?」という目線で売れる商材を選ぶ場合、ネットショップのターゲット層の生活スタイルをよく観察する必要があります。身近な例として、新型コロナウイルスの感染拡大で需要が高まったマスクや消毒液は、今では人々の生活に不可欠な定番アイテムです。それに付随する商材として、マスクを収納するケースなど、以前の暮らしでは使わなかった新たなアイテムも消費者のニーズを受けて登場しており、関連商材の需要にも目を向けるという意味で良いヒントになります。ただ、消費者ニーズに合う商材でも競合が多いと価格競争が起き、売れにくくなったり、利益率が低下する恐れがあるので要注意です。
3. 自分の知見を生かす
全く知らない分野の商材について一から勉強して仕入れるのではなく、自分の持つ知見を元に商材を選ぶという方法もあります。まずはこれまでに学んだことや経験したことなど、自分の得意分野を考えてみましょう。たとえば子育て経験のある人なら、育児を楽にするベビーグッズ、子どもの成長に役立つ知育玩具など、経験者ならではの視点を存分に生かした商材選びが可能です。知見を生かして商材を選ぶと、商材の説明や宣伝などにおいても説得力が出やすく、他のネットショップとの差別化につながります。
4. 価格競争力を意識する
ネットショップで買い物をする消費者にとっては、他のネットショップに加えて実店舗が商材価格の比較対象となり得ます。ネットショップと実店舗で全く同一の商材を扱う場合、テナント料や人件費などのコストが圧倒的に低く済むネットショップでは、実店舗と同価格で商材を販売し利益率を上げる、または販売価格を実店舗より安くすることが可能です。実店舗では大幅な値下げができないタイプの商材ほど、ネットショップが価格競争力を持つことができます。
5. リピート購入されるものを選ぶ
日常的に、あるいは定期的に消費する食品や日用品などの商材や、自分用だけでなく家族や友人用にも同じものを買いたくなる商材は、リピート購入されやすい商材といえます。リピート購入を前提とした商材を扱うメリットは、お客様の常連化によりマーケティングコストが低く抑えられること、商材ラインアップの入れ替えの手間が少なくて済む、定期的な購入により売り上げが安定化しやすいことなどが挙げられます。
個人用の消費では一顧客あたりのリピート購入の頻度や個数には限度がありますが、ビジネス用の消費であればさらに多くの購入も見込めます。いきなり大企業向けの仕入れを考えるのではなく、中小規模のオフィスや個人商店、塾、習い事のスクール、民宿やペンションなどの宿泊施設、ギャラリー、シェアオフィスやレンタルスペースなど、多様な業態をターゲットに、リピート購入される商材とそれに合うマーケティング方法を考えてみましょう。
6. 流行にマッチしたアイテムを狙う
ファッション、インテリア、キッチン用品、玩具、キャラクターグッズなどの分野では、日々新しい流行が生まれています。流行に敏感な消費者が求める商材を、他のネットショップが売り出す前にいち早く揃えることができれば、大きなビジネスチャンスとなるでしょう。流行に合う商材を扱うためには、ネットショップのターゲットがどんな情報に触れ、何に魅力を感じているのか、こまめな市場調査が欠かせません。
考え得るリスクとしては、流行の商材を仕入れるタイミングを誤ると不良在庫を抱えてしまう可能性があることです。流行の変化の早さを知っておくことが成功の鍵といえます。
7. 対面・店頭で買いにくいものを考える
ネットショップの「非対面」という特性を生かした商材選びを考えてみましょう。対面販売の場合、個人の趣味・趣向に関連した商材なら「自分の好みを店員に知られたくない」、大きい・重い商材なら「持ち運びができないから買いにくい」「送料がかかるならネットショップで買っても同じ」といった消費者心理が起こることがあります。こうした商材のマーケットは、ネットショップの活躍の場です。
また、ギフトを選ぶ際などに、普段行かないタイプの店舗には入りにくいと感じる人もいます。たとえば、「恋人にジュエリーを贈りたいが専門店を訪れるのは抵抗がある、けれども何を選べば良いかわからないので相談はしたい」という潜在的な消費者をターゲットとする場合、ギフト用の商材を扱うネットショップに相談用の連絡フォームがあれば理想的です。
8. ニッチな市場にリーチする
世の中にある大きな需要ではなく、あえて小さな需要に目を向けてニッチな商材を扱うと、多くのメリットを享受できます。まず、ニッチ市場には競合が少ないため、価格競争が起きにくく、なおかつ商材によってはリピート購入の確率が高くなります。特殊な職業・趣味を持つ人、疾患や障害を持つ人、外国人など、身近なマイノリティの人々がどんな商材を求めているかリサーチをしてみると、ニッチ市場が見えてきます。
他にも、まだ広く普及していないブランド、特別な幼児教育メソッド、最先端の栄養科学など、消費者にとって目新しいジャンルもニッチ市場としてのポテンシャルを秘めています。ネットショップでニッチな商材の販売と情報発信の2役を担えば、新たなトレンドを作りだせる可能性もあります。
ただし、ニッチであるがゆえに、マーケティングの努力なしでは需給をマッチングさせることが難しいため、ニッチな商材の販売はターゲットをしっかり絞って宣伝を行う必要があります。
9. 特定の国・地域限定のものを導入する
日本でまだ売られていない商材は、明らかに競合が少なく、大きなチャンスを秘めています。新しいものや珍しいものを求める消費者のために、ネットショップが海外から取り寄せる手間に加え、「日本初上陸」「輸入個数限定」などの条件がプラスされることで、商材の価値と共にネットショップの評価も高まることが期待できます。気になる商材を見つけたら、日本国内のネットショップで販売されているかリサーチしてみましょう。
海外商材の仕入れは輸送費がネックですが、複数購入による送料の割引がある場合もあります。また、商材の到着まで時間がかかっても良い場合は、一般的な航空便より送料の安い船便やSAL便の利用が可能か発送元に問い合わせてみましょう。ただし、サプリメントや食品、化粧品など、許認可や特別な手続きが必要な商品は事前に確認した上で必要な手続きを行い、安全性や利用法を丁寧に説明することで商材と共に安心感を届けましょう。
海外だけでなく、日本国内でも特定の地域でしか手に入りにくい「ご当地もの」と呼ばれる食品などの商材があります。地方産の果物や伝統製法の調味料など、特別感のある商材をネットショップで販売することで、消費者は旅行ができない時も日本中のグルメを家で味わうことができ、同時に地方の活性化にも貢献できます。
以上のような商材選びの方法は、一つに限定せず、商材ごとに柔軟に複数の方法を組み合わせて考えると、より商材の価値が高まります。たとえば、ニッチで、利益率が高く、なおかつ自分の知見も生きた商材を選ぶことで、消費者や社会に高い価値を提供しつつ、ネットショップの成長にも貢献します。このように商材選びを重視することで、消費者から求められるネットショップを開店し、ビジネスを成功させましょう。
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執筆は2020年2月2日時点の情報を参照しています。
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