※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。
個人事業主が原則として加入できる公的年金は国民年金のみです。とはいえ、法人化によって厚生年金に加入する道や、国民年金の前納・免除制度、私的年金の活用など、将来の年金を底上げする選択肢は少なくありません。
本記事では、国民年金の基礎知識から負担軽減策、厚生年金の代替となる備え、そして日々の業務効率化で拠出を継続しやすくする実務ポイントまでを整理します。
📝この記事のポイント
- 個人事業主は厚生年金の対象外で原則「国民年金のみ」
- 国民年金の保険料は一律で全額自己負担、社会保険料控除で節税できる
- 法人化すれば役員報酬を通じて厚生年金に加入可能だが、コスト増のデメリットも
- 国民年金基金・iDeCo・小規模企業共済など私的年金で老後の備えを強化できる
- SquareのPOSレジや請求書機能で日常業務を効率化し、納付を計画的に継続できる
目次
- 個人事業主は厚生年金の対象外
・ 個人事業主が加入できる公的年金は国民年金のみ
・ 厚生年金に入りたい場合は法人化する必要がある - 個人事業主が加入必須の国民年金の特徴は?
・ 日本在住で20歳以上なら加入義務あり
・ 保険料は一律、全額自己負担
・ 保険料は全額、社会保険料控除の対象に
・ 国民年金の加入手続き・厚生年金からの切り替えは簡単 - 国民年金の保険料を抑える方法
・ 保険料を安くするなら、2年分前納がお得
・ 免除・猶予制度を活用する - 国民年金だけでは不安?個人事業主が厚生年金の代わりに備える手段5つ
・ (1) 国民年金基金
・ (2) 付加年金
・ (3) 個人型確定拠出年金(iDeCo)
・ (4) 小規模企業共済
・ (5) 個人年金保険 (民間の保険商品) - 無料で便利!個人事業主の業務効率化に使えるSquareのツール
・ 売上管理を自動化できる「Square POSレジ」
・ 請求管理を効率化する「Square 請求書」 - よくある質問 (FAQ)
・ 個人事業主が加入する国民年金の保険料はいくら?
・ 国民年金の年金受給額はいくら?
・ 国民年金の保険料は経費にできる? - まとめ
個人事業主は厚生年金の対象外
厚生年金は株式会社などの法人の事業所が適用対象となるため、個人事業主は原則として加入できません。
厚生年金保険の適用事業所となるのは、株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)です。また、従業員が常時5人以上いる個人の事業所についても、農林漁業、サービス業などの場合を除いて厚生年金保険の適用事業所となります。
– 適用事業所と被保険者、日本年金機構
まずは、個人事業主と年金の基本的な関係について押さえておきましょう。
個人事業主が加入できる公的年金は国民年金のみ
個人事業主が加入できる公的年金は、国民年金(基礎年金)のみです。日本の公的年金制度は、働き方によって加入する制度が異なります。
| 被保険者の種類 | 加入する年金制度 |
|---|---|
| 第1号被保険者(個人事業主など) | 国民年金 |
| 第2号被保険者(会社員や公務員など) | 国民年金 + 厚生年金 |
| 第3号被保険者(第2号被保険者に扶養されている配偶者) | 国民年金 |
会社員は国民年金と厚生年金の2階建て構造になっている一方、個人事業主は国民年金のみの1階建て構造です。この違いが、将来の年金受給額の差につながります。
厚生年金に入りたい場合は法人化する必要がある
厚生年金に入りたい場合は、事業を法人化(株式会社や合同会社などを設立)するという方法があります。
法人化して役員報酬を受け取ると、事業主自身も従業員と同様に健康保険や厚生年金への加入義務が生じます。厚生年金に加入した場合、将来の年金受給額(老齢年金の受給額)を増やせる点がメリットです。
ただし、法人化するためには設立費用がかかります。また会計処理が複雑になることや、社会保険への加入でコストが増えるといった側面もあるため、事業の状況をふまえて慎重に判断した方が良いでしょう。

個人事業主が加入必須の国民年金の特徴は?
個人事業主が必ず加入する国民年金について、特徴を詳しく見ていきましょう。
日本在住で20歳以上なら加入義務あり
日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人は、国民年金への加入が義務付けられています。
会社を退職して個人事業主になった場合、厚生年金から国民年金(第2号被保険者から第1号被保険者)への切り替え手続きが必須です。手続きを忘れて保険料が未納状態になると、将来の年金が受け取れなくなったり、減額されたりする可能性があるので注意しましょう。
保険料は一律、全額自己負担
国民年金の保険料は、年齢や所得にかかわらず一律です。会社員のように会社が半額を負担してくれる制度はなく、全額を自分で納付します。
2025年度の国民年金保険料は月額17,510円で、金額は毎年見直されます。収入が少ない時期でも、原則として毎月納付しなくてはなりません。
保険料は全額、社会保険料控除の対象に
国民年金の保険料は、支払った全額が「社会保険料控除」の対象になります。
社会保険料控除とは、1月1日から12月31日までに支払った保険料の合計額を、その年の所得から差し引ける制度です。所得が低くなることで、所得税や住民税の負担を軽減できます。
たとえば、年間の所得が400万円で、国民年金保険料を1年分支払った場合、課税対象となる所得を210,120円(17,510円×12カ月=210,120円)減らせます。
年末調整がない個人事業主は、確定申告の際に忘れずに申告しましょう。申告の際は、日本年金機構から送付される「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」の添付が必要(e-Taxを利用する場合は省略可)です。
国民年金の加入手続き・厚生年金からの切り替えは簡単
会社を辞めて個人事業主になった際の、厚生年金から国民年金への切り替え手続きは難しくありません。
原則として、退職日の翌日から14日以内に、お住まいの市区町村の役所・役場の国民年金担当窓口で手続きをします。手続きには以下のものが必要です。
- 年金手帳または基礎年金番号通知書
- 退職日がわかる書類(離職票、退職証明書、社会保険資格喪失証明書など)
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
手続きが完了すると、後日、日本年金機構から国民年金保険料の納付書が届きます。

国民年金の保険料を抑える方法
国民年金の保険料負担は軽くありませんが、支払い方法を工夫したり、制度を利用したりすることで負担を軽減できます。
保険料を安くするなら、2年分前納がお得
国民年金の保険料をまとめて前払いする「前納制度」を利用すると、割引が適用されます。前納には以下の種類があり、まとめて支払う期間が長いほど割引額が大きくなります。
| 前納の種類 | 納付額 | 割引額 |
|---|---|---|
| 2年前納 | 408,150円 | 17,010円 |
| 1年前納 | 205,720円 | 4,400円 |
| 6カ月前納 | 103,870円 | 1,190円 |
※上記は口座振替の場合の金額です。納付書払いやクレジットカード払いの場合、割引額が異なります。
※2年前納の金額は、2025年度(17,510円)と2026年度(17,920円)の保険料をもとに算出
最も割引額が大きいのは「2年前納」で、約1カ月分の保険料に相当する割引を受けられます。資金に余裕がある場合は、前納制度の活用を検討してみましょう。
免除・猶予制度を活用する
失業や事業の不振などで所得が減少し、保険料の納付が経済的に困難な場合には、「免除制度」や「納付猶予制度」を利用できる可能性があります。
保険料免除制度は、本人・世帯主・配偶者の前年所得が一定額以下の場合などが対象です。保険料納付猶予制度は、20歳から50歳未満の人で、本人・配偶者の前年所得が一定額以下の場合に対象となります。
免除や猶予が承認された期間も、老齢基礎年金や障害基礎年金、遺族基礎年金を受け取るために必要な受給資格期間に反映されます。しかし、将来受け取る老齢基礎年金の額は減額されるため、満額を受け取るためには保険料の追納が必要です。
| 制度の種類 | 年金額への反映 |
|---|---|
| 全額免除 | 全額納付した場合の2分の1 |
| 4分の3免除 | 全額納付した場合の8分の5 |
| 半額免除 | 全額納付した場合の8分の6 |
| 4分の1免除 | 全額納付した場合の8分の7 |
| 納付猶予 | 反映されない |
国民年金だけでは不安?個人事業主が厚生年金の代わりに備える手段5つ
国民年金だけでは将来が不安な個人事業主は、公的年金を補完する「私的年金制度」を活用し、老後に備えましょう。
以下は個人事業主が活用できる制度をまとめた表です。
| 制度名 | 特徴 | 掛金上限(月額) | 税制優遇 |
|---|---|---|---|
| 国民年金基金 | 国民年金に上乗せする公的な年金制度 | 68,000円 | 保険料全額が社会保険料控除の対象 |
| 付加年金 | 少額の掛金で手軽に年金を増やせる | 400円 | 保険料全額が社会保険料控除の対象 |
| iDeCo | 税制優遇が大きい私的年金制度 | 68,000円 | 掛金の全額が小規模企業共済等掛金控除の対象、運用益が非課税、受取資産は公的年金等控除や退職所得控除の対象 |
| 小規模企業共済 | 個人事業主が利用できる退職金制度 | 70,000円 | 掛金の全額が小規模企業共済等掛金控除の対象 |
| 個人年金保険 | 民間生命保険会社が取り扱う保険商品 | 商品による | 生命保険料控除 |
※国民年金基金と付加年金は同時に加入できません。国民年金基金(または付加年金)とiDeCoの掛金は合算で月額68,000円が上限です。
以下では、それぞれの制度の特徴を解説します。
(1)国民年金基金
国民年金基金は、国民年金(基礎年金)に上乗せして、老後の生活にゆとりを持たせるための公的な年金制度です。
生涯にわたって年金を受け取れる終身年金が基本で、ライフプランに合わせて10年や15年など受給期間が決まっている確定年金なども組み合わせられます。
大きな特徴は、加入時に将来受け取る年金額が確定する「確定給付型」である点です。老後の生活設計を見通しやすい反面、受給額が固定されるためインフレには対応しにくい側面もあります。
掛金は選択するプランや加入時の年齢、性別などで決まり、月額68,000円が上限です。支払った掛金は、全額が「社会保険料控除」の対象となり、所得税・住民税が軽減されます。また、受け取る年金も「公的年金等控除」の対象です。
(2)付加年金
付加年金は、毎月の国民年金保険料にプラス400円の「付加保険料」を納めることで、将来受け取る年金額を増やせる制度です。「200円 × 付加保険料を納付した月数」で計算された金額が、老齢基礎年金に上乗せして一生涯支払われます。
たとえば10年間(120カ月)付加保険料を納付した場合、納付総額は48,000円(400円×120カ月)です。一方、上乗せされる年金額は年間24,000円(200円×120カ月)なので、年金受給開始から2年で元が取れる計算になります。
支払った付加保険料は全額が「社会保険料控除」の対象です。ただし、国民年金基金との併用はできないため、どちらか一方を選択する必要があります。
(3)個人型確定拠出年金(iDeCo)
個人型確定拠出年金(iDeCo:イデコ)は、自分で掛金を拠出し、自分で運用方法を選んで資産形成する私的年金制度です。
手厚い税制優遇が特徴で、掛金全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象です。運用で得た利益(利息、分配金など)も非課税になるうえ、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金として受け取る場合は「退職所得控除」の対象となります。
ただし、投資信託や定期預金などから自分で運用先を選ぶため、運用成果によって将来の受取額は変動します。また、老後に向けた資産形成を目的とする制度のため、原則として60歳まで資産を引き出すことはできません。
個人事業主の場合、掛金の上限は国民年金基金との合算で月額68,000円です。
(4)小規模企業共済
小規模企業共済は、国が運営する、個人事業主や小規模企業の経営者のための退職金制度です。廃業時にそれまで積み立てた掛金に応じた共済金を受け取れます。
掛金は月額1,000円から70,000円の範囲で自由に設定でき、事業の状況に応じて変更が可能です。支払った掛金は全額が所得控除の対象で、共済金は退職所得控除や公的年金等控除が適用されるため、iDeCoと同様に高い節税効果が期待できます。
また、納付した掛金の範囲内で事業資金の貸付制度を利用できるという、事業主にとって心強い側面もあります。
(5)個人年金保険 (民間の保険商品)
個人年金保険は、生命保険会社などが販売している民間の保険商品です。一定年数保険料を払い込み、60歳や65歳といったタイミングから年金を受け取ります。
契約時に将来の受取額が確定している「定額年金」や、運用実績によって受取額が変動する「変額年金」、日本円ではなく外貨で運用する「外貨建て年金」などの種類があります。ライフプランに合わせて、年金額や保険料の払込期間、年金の受取開始年齢、受取期間などを柔軟に設計できるのが大きな特徴です。
また、払い込んだ保険料のうち、一定額が「生命保険料控除」の対象となります。個人年金保険料控除が適用された場合、所得税は最大40,000円、住民税は最大28,000円の控除を受けることが可能です。
無料で便利!個人事業主の業務効率化に使えるSquareのツール
個人事業主が利用できる年金の上乗せ制度を紹介してきましたが、掛金を継続的に拠出するためにも、事業運営を効率化して収益性を高める必要があります。
日々の業務を効率化し、事業基盤を安定させるためにSquareの無料ツールを活用しましょう。
売上管理を自動化できる「Square POSレジ」
Square POSレジは、お持ちのスマートフォンやタブレット端末にアプリをインストールするだけで、高機能なPOSレジとして利用できるシステムです。

小売店や飲食店、美容サロンなど、さまざまな業種の対面販売で利用できます。専用の決済端末を組み合わせることで、各種クレジットカードや電子マネー、QRコード決済といったキャッシュレス決済に手軽に対応可能です。
売上データはリアルタイムで自動的に集計・分析されるため、迅速な経営判断に役立ちます。さらに、freeeやマネーフォワードといった会計ソフトと連携させれば、売上データを自動で取り込めるため、日々の記帳の手間を大幅に削減可能です。
請求管理を効率化する「Square 請求書」
Square 請求書は、オンラインで見積書や請求書の作成から送付、入金管理までを一元化できるクラウドツールです。
テンプレートに沿って入力するだけで、請求書を簡単に作成できます。作成した請求書はメールで顧客に直接送信でき、顧客は受け取ったメールからクレジットカードでオンライン決済が可能です。
請求書発行にかかる時間や郵送コストを削減できるだけでなく、送付状況や支払い状況を管理画面で一目で確認できます。入金管理が楽になることで、請求漏れなどのヒューマンエラーを防げる上、事業のコア業務に集中できる時間を増やせるでしょう。
フリープランなら無料で利用可能。請求書の作成・送信数は無制限で、追加費用は顧客がカード決済を利用した際の決済手数料のみです。より高度な機能を使いたい場合は、月額制の有料プランも用意されています。
よくある質問 FAQ
個人事業主の年金に関して、よくある質問をまとめました。疑問点や不安な点がある場合は、ここで解消しておきましょう。
個人事業主が加入する国民年金の保険料はいくら?
2025年度の国民年金保険料は、月額17,510円です。 所得にかかわらず一律ですが、毎年見直しが行われます。最新の保険料は日本年金機構のウェブサイトで確認しましょう。
国民年金の年金受給額はいくら?
20歳から60歳までの40年間(480カ月)保険料をすべて納付した場合、老齢基礎年金の受給額は、年835,000円(2025年度)です。 実際の受給額は、保険料の納付月数や免除期間などに応じて計算されるため、未納期間があると受給額は減ります。
国民年金の保険料は経費にできる?
国民年金の保険料は、事業の経費にはできません。 しかし、支払った保険料の全額を「社会保険料控除」として、所得から差し引くことが可能です。確定申告で所得控除を申請することで、所得税や住民税の負担を軽減できます。
まとめ
個人事業主が加入する公的年金は国民年金のみですが、私的年金制度を活用することで老後の備えを充実させることが可能です。手堅く備えたいなら国民年金基金や付加年金、節税効果を重視するならiDeCo、といったように多様な選択肢があります。
まずは事業の状況やライフプランと照らし合わせ、これらの制度をどう活用できるか検討してみましょう。そして、将来のための資金を継続的に確保するには、日々の事業運営を効率化することも大切です。Square POSレジやSquare 請求書などを活用し、業務効率向上を目指しましょう。
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執筆は2025年9月10日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash

