個人事業主は扶養に入れる?扶養内の年収・所得基準と開業届の影響を解説

※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。

夫婦のどちらか一方が個人事業主として働いている場合、条件によっては個人事業主ではない配偶者の扶養に入ってしまったほうがメリットを得られるケースがあります。

本記事では、そのような例を想定し、個人事業主が配偶者や家族の扶養に入るメリットや注意点などを紹介します。また、個人事業主が扶養内で働けるのはいくらまでか、扶養から外れる際の年収の基準や手続き、開業届を出すと扶養に影響するのかについても、わかりやすく解説します。

📝この記事のポイント

  • 個人事業主でも条件を満たせば扶養に入れる
  • 個人事業主が扶養内で働ける収入・所得の目安は、税金と社会保険で基準が異なる
  • 専従者給与を受け取っていると、税法上の扶養控除が受けられない場合がある
  • 扶養から外れる場合は、健康保険と国民年金の手続きが必要
  • 扶養から外れてビジネス拡大を目指すなら、Squareのツールで事業を効率化しよう
目次


個人事業主でも条件を満たせば扶養に入れる!

まず、個人事業主が配偶者や親、子など、親族の扶養に入れるかどうかについてですが、ある要件を満たしていれば可能です。

「扶養に入る」とは、一般的に社会保険や所得税などの税制面において、一定の条件を満たした同一生計の親族が負担軽減の優遇を受ける制度の対象になることをいいます。基本的に、収入が一定額以下であれば扶養の対象になります。

制度の適用を受ける被扶養者の雇用形態に制限は設けられていないため、個人事業主であっても扶養に入ることは可能です。

また、これまで親族の扶養に入っていた人が新たに個人事業主として開業する場合、開業しただけで一律に扶養を抜ける必要はありません。扶養の要件が満たされていれば、開業後もそのまま配偶者控除か配偶者特別控除、または扶養控除の対象となります。社会保険についても、一定の条件を満たせば親族の健康保険の被扶養者となり、配偶者が厚生年金に加入する会社員などの場合は、国民年金の支払い義務のない第3号被保険者に認定されます。

青色申告者であっても扶養の対象になる

扶養に入る個人事業主が白色申告者でも、青色申告者でも扱いは同様であり、親族の扶養に入っていても確定申告時の「青色申告特別控除」を受けることができます。

個人事業主が扶養に入るメリット

個人事業主が扶養に入るメリットは、大きく分けて社会保険と所得税の2つの側面があります。

まず社会保険のメリットとしては、本人に国民年金保険料の納付義務がなくなることと、扶養者の健康保険に被扶養者として加入できることが挙げられます。被扶養者となった個人事業主は、配偶者が厚生年金に加入している会社員や公務員である場合、国民年金の支払い義務のある第1号被保険者ではなく、支払い義務がない第3号被保険者1になります。

また、配偶者や家族が被保険者として加入している健康保険に被扶養者2として加入でき、被保険者の保険料が増額されることなく、健康保険が利用できるようになります。

ただし、配偶者が自営業などで国民健康保険に加入している場合、会社員の健康保険のような「被扶養者」の仕組みはありません。また、配偶者が国民年金の第1号被保険者の場合も、その配偶者の扶養に入ることで国民年金の第3号被保険者になることはできません。

扶養に入ることで受けられる所得税法上のメリットとしては、配偶者や家族が控除を受けられるということが挙げられます。配偶者控除3や配偶者特別控除4、扶養控除5などによって所得金額から一定額を控除できるため、税額計算のもととなる課税対象額を減らすことができます。また、これらの控除を申告すると自動的に住民税にも控除が反映される仕組みとなっており、配偶者や家族の税負担軽減につながります。

扶養に入る手続きの流れ

個人事業主が扶養に入るための手続きは、社会保険上の扶養と税法上の扶養で異なります。

まず、社会保険上の扶養に入る場合、被保険者が勤務先を通して「健康保険被扶養者(異動)届」を提出する必要があります。その際、被扶養者として条件を満たしているかどうかを確認するため、被扶養者の住民票や戸籍謄本などの写しのほか、確定申告書や収支内訳書などの写しなども求められることがあります6。

開業したばかりの個人事業主の場合、収入を証明する確定申告書がまだないため、被扶養者として認められない可能性があります。

また、税法上の控除を受けるための手続きは、扶養される人との関係によって異なります。配偶者控除または配偶者特別控除を受ける場合は、扶養する側が勤務先に「配偶者控除等申告書」を提出します13。一方、配偶者以外の親族について扶養控除を受ける場合は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に必要事項を記入します7。

開業届を出すと扶養から外れる?

開業届の正式名称は「個人事業の開廃業等届出書」で、税務署に事業開始を知らせる手続きです。提出したからといって、配偶者控除や健康保険の扶養がなくなる届出ではありません。税法上の控除や、健康保険の被扶養者認定とは別の制度です10。扶養に入れるかどうかは、税法上は合計所得金額など、健康保険では年間収入見込みや生計維持の状況などで判定されます。

個人事業主が扶養内で働けるのはいくらまで?

個人事業主が扶養内で働ける金額は、社会保険上の扶養と税法上の扶養とで基準が異なります。健康保険では原則として年間収入130万円未満、2026年分の所得税では配偶者控除や扶養控除の主な所得要件は合計所得金額62万円以下です。

それぞれ条件が異なることから「税法上の扶養には入れないが、社会保険の扶養には入れる」というケースもありえるので注意してください。

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社会保険の扶養を外れる「130万円の壁」

社会保険の扶養に入るための具体的な要件は、扶養者が加入する健康保険組合によって異なるので、詳細は加入している健康保険組合で確認する必要があります。また、個人事業主の年収をどう捉えるかについても考え方に違いがみられるので注意してください。

ここでは「協会けんぽ」(全国健康保険協会)8を例に紹介しましょう。扶養に入れる個人事業主の年収は被保険者と同居しているか否かによって違いがあり、同居の場合は基本的に「年間収入が130万円未満」と「年間収入が被保険者の2分の1未満」の条件をどちらも満たさなくてはなりません。

別居の場合は基本的に「年間収入が130万円未満」とともに「年間収入が被保険者からの仕送りなどによる援助額よりも下回る」という条件を満たす必要があります。このように健康保険の被扶養者には原則として年間収入130万円未満という要件があることから、この基準は「130万円の壁」と呼ばれています。

個人事業主の年間収入をどう捉えるかについてですが、「協会けんぽ」では「年間の総収入から直接的経費額を差し引く」という考え方をとっています8。「年間の総収入」とは、被扶養者に該当する時点および認定された日以降の年間の見込み収入額を指し、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金、出産手当金なども含まれます。また、「直接的経費額」とは、仕入れや原材料費など、直接、売り上げにかかわる費用のことを指します。そのため、確定申告書にある「課税される所得金額」の項目が130万円未満でも被扶養者として認められないケースがあるので注意しましょう。

具体的にどの経費を「事業を行うための直接的な必要経費」と認めるか、どの書類を提出させるかなどの詳細は加入している健康保険によって異なります。協会けんぽのように「直接的必要経費」の一覧を独自に設け、一覧にない経費は原則として控除対象にしないと明示しているケースもあります。詳細は加入先の健康保険によって異なるため、開業前後に確認しておくと安心です。

個人事業とパートを兼業する場合は?

個人事業と並行してパートやアルバイトとして働く場合は、勤務先で社会保険の加入対象になるかも確認が必要です。

2026年10月には、短時間労働者の社会保険加入に関する「月額賃金8.8万円以上(年収換算で約106万円)」という賃金要件が撤廃されました。現在は、51人以上の企業などで週の所定労働時間が20時間以上、学生ではないなどの要件を満たすと、年間収入が130万円未満でも勤務先の健康保険・厚生年金保険の加入対象になる場合があります11。

税法上の配偶者控除・扶養控除の基準は62万円以下

2026年分の所得税から、個人事業主が配偶者控除3や扶養控除5の対象となるための主な所得要件が、年間の合計所得金額62万円以下に変更されます。この62万円は事業の売上額ではなく、必要経費などを差し引いて計算した所得を含む合計所得金額の基準です。

たとえば、年間の売り上げが140万円、必要経費が80万円であれば、事業所得は60万円です。ほかに所得がなく、その他の要件も満たしていれば、2026年分の配偶者控除の所得要件である62万円以下に収まります。

年間の売り上げ 事業に必要な経費(仕入れ代など) 計算式 事業所得
140万円 80万円 140万円-80万円 60万円

合計所得金額が62万円を超えると、配偶者控除3や扶養控除5の所得要件から外れます。ただし一定の条件を満たせば、次に説明する配偶者特別控除の対象になることがあります。

配偶者特別控除の適用範囲と限度額(62万円超~133万円以下)

配偶者控除の適用範囲外になった場合でも、配偶者特別控除4の対象になる可能性があります。

配偶者特別控除を受けるためには、控除を受ける人(扶養する側)の合計所得金額が1,000万円以下であることと、扶養される側の合計所得金額が62万円超〜133万円以下である必要があります4。控除額は配偶者と控除を受ける人の所得に応じて段階的に変わります。

個人事業主に「103万円・150万円の壁」はない

「103万円の壁」や「150万円の壁」といった言葉を耳にしたことがある人もいるでしょう。この基準は所得税や住民税の扶養範囲に関連して、配偶者控除や配偶者特別控除の対象内にとどまるための給与収入の上限目安として、従来よく使われていた表現です。ただしこれらの基準は引き上げられたため、「壁」にあたる金額も変わっています。

まず前提として、パートやアルバイトなどで得た給与には、給与所得控除9が適用されます。これを踏まえると、136万円以内(136万円から給与所得控除の74万円を引くと62万円)に収入をおさえなければ、配偶者控除の対象から外れてしまいます。

また、配偶者特別控除についても、給与収入が169万円を超えると、控除額が段階的に減っていき、207万円以上になると配偶者特別控除の対象から外れてしまいます。そのため、給与所得者は配偶者控除や配偶者特別控除の対象内にとどまるためには、136万円と169万円という収入額を意識しなければなりません。

ただし、どちらも対象となるのはパートやアルバイトなどの給与所得者であり、個人事業主が扶養に入ったとしても適用されません。個人事業主が扶養に入るのであれば前述の通り、社会保険の扶養を外れる「130万円の壁」と税法上の扶養控除が受けられなくなる「62万円の壁」の2点を気にしておいてください。

個人事業主が扶養に入る際の注意点

年収(所得)の金額以外にも、個人事業主が扶養に入る際に知っておくべきポイントがあります。なかでも大切なのが、専従者給与についてです。

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家族から専従者給与を受け取ると、税法上扶養控除の対象外に

配偶者や親族が行っている個人事業の事業専従者として働き、事業専従者控除の対象となっている人は配偶者控除や扶養控除を重ねて受けることはできません。

場合によっては配偶者控除や扶養控除の対象となる方が得をするケースもあるので、よく確認し、どちらを選ぶべきか判断してください。

扶養を気にして収入を抑えるのは損?自立した方が得なケースも

特に事業規模が小さい個人事業主の場合、年収(所得)が親族の扶養内に収められると多くの恩恵を受けられるため、収入が一定のラインを超えないように意識することも珍しくないでしょう。

ただし、世帯全体でみた場合、個人事業主として働きながら扶養に入ることが必ずしも得になるケースばかりではありません。事業を拡大して大幅な収入増を目指すほうが有益な場合もあります。

社会保険上のメリットや税法上のメリットをしっかりと勘案し、どちらの方向を目指して個人事業を進めていくべきかを慎重に検討するようにしてください。

扶養から外れる場合の影響と手続き

個人事業主が社会保険上の扶養から外れると、国民健康保険料や国民年金保険料を支払う義務が発生します。

では、個人事業主が扶養を外れる場合にどのような手続きが必要になるのでしょうか。手順やポイントとなる部分を紹介しましょう。

扶養から外れる手続きの流れ

個人事業主が扶養から外れる場合の手続きですが、基本的に次の3ステップを踏みます。

  1. 扶養者の勤務先に申し出る
  2. これまでの健康保険を脱退し、国民年金の第3号被保険者を失効する手続きをする
  3. 国民健康保険へ加入し、国民年金の第1号被保険者になる手続きをする

まず、扶養者の勤務先へ被扶養者が扶養から外れたい旨を申し出ます。そうすると「健康保険被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)」が渡されるので記入し、扶養者の勤務先に提出します。

このように、健康保険の脱退と年金関係の変更は一括りで行われるのが一般的です。なお、従来の健康保険証は2025年12月1日で有効期限が終了しており、現在はマイナ保険証または資格確認書を利用する仕組みになっています。扶養から外れる際に資格確認書などの返却が必要かどうかは、加入先の案内を確認してください12。

ここまでが上記1〜2のステップで、手続きの主要な部分は扶養者の勤務先側が行います。不明な点は、扶養者の勤務先の担当者に尋ねるとよいでしょう。

国民健康保険と国民年金への切り替え

続いて3のステップに移りますが、ここからは扶養を抜ける個人事業主自身で手続きを行います。

扶養者の勤務先側から「健康保険・厚生年金保険資格等取得(喪失)連絡票」が渡されるので、居住地の役所に提出します。

役所では、国民健康保険担当課でこれまでの健康保険を脱退して国民健康保険に加入する手続きを、国民年金担当課でこれまでの厚生年金から国民年金の第1号被保険者に切り替える手続きを行います。

手続きを行う際には基礎年金番号、本人確認書類なども必要になるので、忘れずに準備してください。不明な点があれば、役所の担当者に尋ねてください。

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まとめ

事業規模が小さい個人事業主の場合、条件によっては個人事業主ではない家族の扶養に入ってしまった方がメリットを得られるケースがあります。

扶養に入って見込めるメリットは、大きく分けて社会保険と所得税の2つの側面があり、社会保険上のメリットとしては本人に国民年金保険料の納付義務がなくなることと、扶養者の健康保険に被扶養者として加入できること、所得税法上のメリットとしては配偶者や家族が控除を受けられることが挙げられます。

ただし原則として、扶養に入った個人事業主の年間収入が130万円以上になると社会保険の要件から、また合計所得金額が62万円を超えると配偶者控除の対象から外れてしまいます。62万円を超えても133万円以下であれば、ほかの要件を満たすことで配偶者特別控除の対象となる可能性があります。

また、配偶者や親族が行っている個人事業の事業専従者として働き、事業専従者控除の対象となっている人は、配偶者控除や扶養控除を重ねて受けることはできないので注意が必要です。

個人事業主が扶養に入る場合、必ずしも得になるケースばかりではなく、事業を拡大する方が有益になることもあります。社会保険上、税法上、それぞれのメリットをしっかりと理解し、扶養に入るべきかどうかを判断してください。


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執筆は2025年8月18日時点の情報を参照しています。2026年10月7日に​記事の​一部​情報を​更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。