※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。
夫婦のどちらか一方が個人事業主として働いている場合、条件によっては個人事業主ではない配偶者の扶養に入ってしまったほうがメリットを得られるケースがあります。
本記事では、そのような例を想定し、個人事業主が配偶者や家族の扶養に入るメリットや注意点などを紹介。また、扶養から外れる際の年収の基準や手続きなどについても、わかりやすく解説します。
📝この記事のポイント
- 個人事業主でも条件を満たせば扶養に入れる
- 年収によって扶養の対象から外れる基準がある
- 専従者給与を受け取っていると、税法上の扶養控除が受けられない場合がある
- 扶養から外れる場合は、健康保険と国民年金の手続きが必要
- 扶養から外れてビジネス拡大を目指すなら、Squareのツールで事業を効率化しよう
目次
- 個人事業主でも条件を満たせば扶養に入れる!
・青色申告者であっても扶養の対象になる
・個人事業主が扶養に入るメリット
・扶養に入る手続きの流れ - 個人事業主が扶養から外れる年収(所得ベース)の基準
・社会保険の扶養を外れる「130万円の壁」
・税法上の扶養控除が受けられなくなる「48万円の壁」
・配偶者特別控除の適用範囲と限度額(48万円超~133万円以下)
・個人事業主に「103万円・150万円の壁」はない - 個人事業主が扶養に入る際の注意点
・家族から専従者給与を受け取ると、税法上扶養控除の対象外に
・扶養を気にして収入を抑えるのは損?自立した方が得なケースも - 扶養から外れる場合の影響と手続き
・扶養から外れる手続きの流れ
・国民健康保険と国民年金への切り替え - これは便利!個人事業主が無料で使えるSquareのツール
・紙いらず、見積もりから入金までおまかせ!「Square 請求書」
・売上管理から業務の効率化までできる「Square POSレジ」
・ネット販売がすぐはじめられる「Square オンラインビジネス」 - まとめ
個人事業主でも条件を満たせば扶養に入れる!
まず、個人事業主が配偶者や親、子など、親族の扶養に入れるかどうかについてですが、ある要件を満たしていれば可能です。
「扶養に入る」とは、一般的に社会保険や所得税などの税制面において、一定の条件を満たした同一生計の親族が負担軽減の優遇を受ける制度の対象になることをいいます。基本的に、収入が一定額以下であれば扶養の対象になります。
制度の適用を受ける被扶養者の雇用形態に制限は設けられていないため、個人事業主であっても扶養に入ることは可能です。
また、これまで親族の扶養に入っていた人が新たに個人事業主として開業する場合、わざわざ扶養を抜ける手続きをする必要はありません。扶養の要件が満たされていれば、開業後もそのまま配偶者控除か配偶者特別控除、または扶養控除の対象となり、親族の健康保険や厚生年金保険にも被扶養者として加入できます。
青色申告者であっても扶養の対象になる
扶養に入る個人事業主が白色申告者でも、青色申告者でも扱いは同様であり、親族の扶養に入っていても確定申告時の「青色申告特別控除」を受けることができます。
個人事業主が扶養に入るメリット
個人事業主が扶養に入るメリットは、大きく分けて社会保険と所得税の二つの側面があります。
まず社会保険のメリットとしては、本人に国民年金の保険料の納税義務がなくなることと、扶養者の健康保険に被扶養者として加入できることが挙げられます。被扶養者となった個人事業主は、配偶者が厚生年金に加入している会社員や公務員である場合、国民年金の支払い義務のある第1号被保険者ではなく、支払い義務がない第3号被保険者1になります。
また、配偶者や家族が被保険者として加入している健康保険に被扶養者2として加入でき、被保険者の保険料が増額されることなく、健康保険が利用できるようになります。
所得税法上のメリットとして挙げられるのが、配偶者や家族が控除を受けられるということです。配偶者控除3や配偶者特別控除4、扶養控除5などによって所得金額から一定額を控除できるため、税額計算のもととなる課税対象額を減らすことができます。また、これらの控除を申告すると自動的に住民税にも控除が反映される仕組みとなっており、配偶者や家族の税負担軽減につながります。
扶養に入る手続きの流れ
個人事業主が扶養に入るための手続きは、社会保険上の扶養と税法上の扶養で異なります。
まず、社会保険上の扶養に入る場合、被保険者が勤務先を通して「健康保険被扶養者(異動)届」を提出する必要があります。その際、被扶養者として条件を満たしているかどうかを確認するため、被扶養者の住民票や戸籍謄本などの写しのほか、確定申告書や収支内訳書などの写しなども求められることがあります6。
開業したばかりの個人事業主の場合、収入を証明する確定申告書がまだないため、被扶養者として認められない可能性があります。
また、個人事業主が税法上の扶養に入る場合には、扶養者が勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」7を提出する必要があります。年末調整などの際に扶養者が職場から書類を受け取るので、必要事項を記入して提出します。
個人事業主が扶養から外れる年収(所得ベース)の基準
個人事業主が扶養から外れる年収(所得)も、社会保険上の扶養と税法上の扶養とで基準額が異なります。いわゆる「130万円の壁」と「48万円の壁」です。
それぞれ条件が異なることから「税法上の扶養には入れないが、社会保険の扶養には入れる」というケースもありえるので注意してください。

社会保険の扶養を外れる「130万円の壁」
社会保険の扶養に入るための具体的な要件は、扶養者が加入する健康保険組合によって異なるので、詳細は加入している健康保険組合で確認する必要があります。また、個人事業主の年収をどう捉えるかについても考え方に違いがみられるので注意してください。
ここでは「協会けんぽ」(全国健康保険協会)8を例に紹介しましょう。扶養に入れる個人事業主の年収は被保険者と同居しているか否かによって違いがあり、同居の場合は基本的に「年間収入が130万円未満」と「年間収入が被保険者の2分の1未満」の条件をどちらも満たさなくてはなりません。
別居の場合は基本的に「年間収入が130万円未満」とともに「年間収入が被保険者からの仕送りなどによる援助額よりも下回る」という条件を満たす必要があります。
個人事業主の年間収入をどう捉えるかについてですが、「協会けんぽ」では「年間の総収入から直接的経費額を差し引く」という考え方をとっています8。「年間の総収入」とは、被扶養者に該当する時点および認定された日以降の年間の見込み収入額を指し、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金、出産手当金なども含まれます。また、「直接的経費額」とは、仕入れや原材料費など、直接、売り上げにかかわる費用のことを指します。そのため、確定申告書にある「課税される所得金額」の項目が130万円未満でも被扶養者として認められないケースがあるので注意しましょう。
このように年収が130万円を超えると扶養から外れてしまうことから、社会保険の扶養を外れる基準のことを「130万円の壁」と呼ぶ風潮があります。
税法上の扶養控除が受けられなくなる「48万円の壁」
個人事業主が税法上の扶養から外れる年収(所得)については、年間合計所得48万円が基準となります。
48万円を超えると、所得税の控除である配偶者控除3や扶養控除5の対象から外れてしまうため、一般的に「48万円の壁」と呼ばれています。
配偶者特別控除の適用範囲と限度額(48万円超~133万円以下)
個人事業主が扶養に入る際の扶養者側の控除のなかに配偶者特別控除4があります。
控除の対象となる配偶者が個人事業主の場合、配偶者特別控除の要件はいくつかありますが、主要なところでは「扶養者の合計所得金額が1,000万円以下」「被扶養者の合計所得金額が48万円超133万円以下」というものが挙げられます。
配偶者控除から除外される48万円を超える年収があったとしても、年収が133万円以下であれば、配偶者特別控除の対象となり、扶養者の税負担が軽減できます。
個人事業主に「103万円・150万円の壁」はない
所得税や住民税の扶養範囲に関連して、「103万円の壁」や「150万円の壁」といった言葉をよく耳する人もいるでしょう。
パートやアルバイトなどで得た給与所得には、給与所得控除9が適用されます。これを踏まえると、103万円以内(103万円から給与所得控除の55万円を引くと48万円)に収入をおさえなければ、配偶者控除の対象から外れてしまいます。
また、配偶者特別控除についても給与収入が150万円を超えると、控除額が段階的に減っていき、201万円を超えると配偶者特別控除の対象から外れてしまいます。そのため、給与所得者は配偶者控除や配偶者特別控除の対象内にとどまるために103万円と150万円という収入額を意識しなければならないのが、「103万円の壁」や「150万円の壁」というものです。
ただし、どちらも対象となるのはパートやアルバイトなどの給与所得者であり、個人事業主が扶養に入ったとしても適用されません。個人事業主が扶養に入るのであれば、社会保険の扶養を外れる「130万円の壁」と税法上の扶養控除が受けられなくなる「48万円の壁」の2点を気にしておいてください。
個人事業主が扶養に入る際の注意点
年収(所得)の金額以外にも、個人事業主が扶養に入る際に知っておくべきポイントがあります。なかでも大切なのが、専従者給与についてです。

家族から専従者給与を受け取ると、税法上扶養控除の対象外に
配偶者や親族が行っている個人事業の事業専従者として働き、事業専従者控除の対象となっている人は配偶者控除や扶養控除を重ねて受けることはできません。
場合によっては配偶者控除や扶養控除の対象となる方が得をするケースもあるので、よく確認し、どちらを選ぶべきか判断してください。
扶養を気にして収入を抑えるのは損?自立した方が得なケースも
特に事業規模が小さい個人事業主の場合、年収(所得)が親族の扶養内に収められると多くの恩恵を受けられるため、収入が一定のラインを超えないように意識することも珍しくないでしょう。
ただし、世帯全体でみた場合、個人事業主として働きながら扶養に入ることが必ずしも得になるケースばかりではありません。事業を拡大して大幅な収入増を目指すほうが有益な場合もあります。
社会保険上のメリットや税法上のメリットをしっかりと勘案し、どちらの方向を目指して個人事業を進めていくべきかを慎重に検討するようにしてください。
扶養から外れる場合の影響と手続き
個人事業主が社会保険上の扶養から外れると、国民健康保険料や国民年金保険料を支払う義務が発生します。
では、個人事業主が扶養を外れる場合にどのような手続きが必要になるのでしょうか。手順やポイントとなる部分を紹介しましょう。
扶養から外れる手続きの流れ
個人事業主が扶養から外れる場合の手続きですが、基本的に次の3ステップを踏みます。
- 扶養者の勤務先に申し出る
- これまでの健康保険を脱退し、国民年金の第3号被保険者を失効する手続きをする
- 国民健康保険へ加入し、国民年金の第1号被保険者になる手続きをする
まず、扶養者の勤務先へ被扶養者が扶養から外れたい旨を申し出ます。そうすると「健康保険被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)」が渡されるので記入し、扶養者の勤務先に提出します。
このように、健康保険の脱退と年金関係の変更は一括りで行われるのが一般的です。また、その際に健康保険証の返却を求められるので、忘れずに対応してください。
ここまでが上記1〜2のステップで、手続きの主要な部分は扶養者の勤務先側が行います。不明な点は、扶養者の勤務先の担当者に尋ねるとよいでしょう。
国民健康保険と国民年金への切り替え
続いて3のステップに移りますが、ここからは扶養を抜ける個人事業主自身で手続きを行います。
扶養者の勤務先側から「健康保険・厚生年金保険資格等取得(喪失)連絡票」が渡されるので、居住地の役所に提出します。
役所では、国民健康保険担当課でこれまでの健康保険を脱退して国民健康保険に加入する手続きを、国民年金担当課でこれまでの厚生年金から国民年金の第1号被保険者に切り替える手続きを行います。
手続きを行う際には基礎年金番号、本人確認書類なども必要になるので、忘れずに準備してください。不明な点があれば、役所の担当者に尋ねてください。
これは便利!個人事業主が無料で使えるSquareのツール
個人事業主は多くの場合、サービスや商品の提供というメインの仕事以外にも経営管理や営業など、さまざまな業務をこなさなくてはなりません。
そういった個人事業主にとって大いに役立つのが、Squareが無料で提供している各種のビジネスツールです。いずれもシンプルな使い勝手で連携も取りやすく、自身のビジネスに合わせてフレキシブルに活用できます。
紙いらず、見積もりから入金までおまかせ!「Square 請求書」
Square 請求書は見積書の作成、請求書のメール送信、売り上げの管理など、請求関連のさまざまな業務をシンプルかつ機能的にサポートするツールです。
請求書は用意されたテンプレートを利用して簡単に作成でき、請求先へオンラインで送付することが可能。受け取った取引先は、請求書から直接オンラインで決済できます。請求書の発行は何件でも無料で、利用にかかる費用は決済ごとにかかる決済手数料だけ。売り上げの入金は最短翌営業日と、資金繰りの面でも頼りになります。

また、請求書の支払状況はSquare データからリアルタイムで確認できるほか、定期的に自動リマインダーを送信できるので未払い防止に役立ちます。さらに「定期請求書」機能も搭載。一度設定すれば自動的に定期請求できるので、サブスクリプションの販売などに便利です。
そのほか、見積書を作成し、オンラインで送付することも可能。送付先からの承認を受けた見積書はワンクリックで請求書に変換できるので、二度手間にならない点も特色の一つです。
売上管理から業務の効率化までできる「Square POSレジ」
Square POSレジは商品やサービスを直接販売するスタイルの事業に便利な、POSシステムを搭載したレジスターです。
支払いの処理と同時に商品名、価格、販売個数、在庫状況、顧客情報など、販売時点のさまざまな情報をデータとして蓄積します。どのタイミングでどれだけ売れるかなどを正確に把握したり、予測したりすることができるようになるので、新商品の開発や、最適な仕入れ量の見極め、スタッフの配置計画など、使い方次第でビジネス運営に幅広く役立たせることが可能です。
導入はオンライン上でアカウント登録をするだけ。設定はほんの数分で完了し、最短で申込当日から使用できます。Square POSレジの利用は端末数にかかわらず無料で、導入する際のハードルが低い点も魅力です。

ネット販売がすぐはじめられる「Square オンラインビジネス」
Square オンラインビジネスは顧客、事業者両方にとっての使いやすさを追求したネットショップ作成プラットフォームです。
業種に合わせて用意された豊富なテーマが利用でき、初心者でもネットショップの開設までスムーズに進めることが可能。
実店舗を含め複数の店舗の在庫や注文情報を同期でき、モバイル端末などから常に最新の状態が把握できるのも特色です。InstagramやFacebookのショッピング機能を連携させれば、顧客がいつでも手軽に商品を購入できるようになります。
無料プランの場合、月額固定費や初期費用はかからず、必要な費用は売り上げごとにかかる決済手数料3.6%のみ。プレミアムプラン(有料)をご利用の場合、決済手数料は3.3%になります。
まとめ
事業規模が小さい個人事業主の場合、条件によっては個人事業主ではない家族の扶養に入ってしまった方がメリットを得られるケースがあります。
扶養に入って見込めるメリットは、大きく分けて社会保険と所得税の二つの側面があり、社会保険上のメリットとしては本人に国民年金の保険料の納税義務がなくなることと、扶養者の健康保険に被扶養者として加入できること、所得税法上のメリットとしては配偶者や家族が控除を受けられることが挙げられます。
ただし、扶養に入った個人事業主の年収が130万円を超えると社会保険の扶養から、また48万円を超えると税法上の扶養から外れてしまいます。配偶者の扶養に入るのであれば配偶者特別控除の対象になり、その場合は133万円がボーダーラインとなります。
また、配偶者や親族が行っている個人事業の事業専従者として働き、事業専従者控除の対象となっている人は、配偶者控除や扶養控除を重ねて受けることはできないので注意が必要です。
個人事業主が扶養に入る場合、必ずしも得になるケースばかりではなく、事業を拡大する方が有益になることもあります。社会保険上、税法上、それぞれのメリットをしっかりと理解し、扶養に入るべきかどうかを判断してください。
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執筆は2025年8月18日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash

