店舗ビジネスにおけるオペレーションは、チームの作業能率だけでなく売り上げや事業展開にも関わるという意味で、継続的な見直しが不可欠です。特に飲食、小売、サービスなどの業種では、店舗オペレーションにおける課題を解決することがビジネスの成長を加速させることにつながります。チームで働くうえでオペレーションがどんな意味を持つか再確認し、課題を明らかにすると同時に、見直すべきポイントと具体的な改善方法を探ってみましょう。
目次
- 店舗ビジネスにおけるオペレーション
- オペレーション化できる業務の種類
- 店舗オペレーションのよくある課題
- 店舗オペレーションがなぜ重要なのか
- 店舗オペレーションの見直し・改善のポイント
- オペレーション改善の成功事例
- 先端技術を活用したオペレーション改善
- オペレーション改善に役立つSquareの機能
店舗ビジネスにおけるオペレーションとは
オペレーションとは、業務のフローや作業方法、人員配置、そしてそれらに従って実際に業務を進めることをいいます。たとえば飲食業では、注文の取り方や会計の手順、調理の手順や分担などのオペレーションがあります。小売業の場合は、品出しの手順や接客時の対応方法などをオペレーション化することが可能です。
店舗オペレーションは店舗運営の具体的な手法であり、店ごとに独自のオペレーションが存在しますが、チェーン店や系列店ではオペレーションを統一することもあります。それぞれの業務をオペレーション化せず、従業員ごとに違った方法で遂行していると、ビジネスにさまざまな弊害や非効率が発生しやすくなります。
オペレーション化できる業務の種類
店舗ビジネスにおいてオペレーション化できる業務は、主に次の五つです。
接客対応
お客さまと対面するビジネスなら、接客対応をオペレーション化しておくことで均質なサービスを提供することができます。接客対応は店舗の印象を左右し、オペレーション化しておくことで店舗のブランド力を体現することにつながります。
来店時のあいさつや案内、注文、会計といったルーティーン業務の他にも、クレームや非常事態の対応、特殊なニーズを持つお客さまへの対応などもオペレーションを決めておきましょう。新たな従業員のトレーニングについてもオペレーションが確立されていると安心です。
在庫管理
店舗の表側だけでなくバックヤードにもさまざまな業務オペレーションがあり、在庫管理はその一つです。在庫管理の対象となる品目、担当者、入出庫のスケジュール、欠品時の対応などをオペレーション化すると、販売の機会損失やコスト効率の低下を防止できます。
商品そのものの在庫に加え、資材や備品の在庫管理のオペレーションも整備し、紛失や破損、在庫切れなどを正確に把握する必要があります。
従業員のシフト管理
複数人のチームで業務にあたっているなら、従業員のシフト管理は毎月発生する業務です。シフト管理は煩雑な作業だからこそ、オペレーション化することで効率的に進めましょう。個人からのシフト希望の提出とリマインド、シフト作成、確認や調整といった作業のオペレーションを確立しておくと、シフト作成者の交代時の引き継ぎもスムーズです。
キッチン業務
飲食店のキッチン業務は、オペレーションの質が業務効率や店舗の評判を大きく左右する仕事です。メニューごとの調理手順はもちろん、複数の従業員での作業分担、繁忙時の優先事項、清掃、仕入れやコスト管理、新人教育など、現場にわかりやすいオペレーションがあればこそ、商品の提供スピードや味などを一定に保つことができます。
キッチン業務は危険物や生ものを扱う特性上、安全と衛生に十分に配慮したオペレーションが大前提です。
本部との連絡
チェーン店やフランチャイズ店などでは、本部とのコミュニケーションも重要な仕事です。日常業務に差し支えないよう、連絡の手段や担当者、連絡の緊急度に応じた対応方法、定期レポートの作成手順などをオペレーション化します。担当者の異動や急な休みなどの対応方法もオペレーションを整備し、店舗の従業員全員が安心して働けるようにしておきましょう。
店舗オペレーションのよくある課題
店舗において、オペレーション上の課題がビジネスの円滑な運営や成長を阻害しているケースは決して珍しくありません。自社に当てはまるケースがあるかチェックしてみてください。
本部指示がうまく伝わらない
本部から店舗に伝えたはずの内容が従業員全員に届いていないなら、指示系統やコミュニケーション方法といったオペレーションの問題を疑ってみましょう。指示が従業員一人ひとりの耳に入ってはいるものの、実践に至っていない場合も同様です。
たとえば、飲食店の新メニューの提供開始を本部から店舗に連絡したものの、接客担当者まで詳しく伝わっておらず、口頭でのおすすめをしないため売り上げにつながらないということがあります。その場合、従業員全員が情報を理解し、業務に反映させる方法を習得したことを確認するオペレーションが必要です。
事務作業が多い
非効率な作業が恒常的に発生し、ビジネスの成長を阻害しているとしたらオペレーションの失敗です。特に、時間のかかる事務作業は飲食や小売などの対面型ビジネスのテンポ感を損ない、従業員のモチベーションを下げることにつながりがちです。
手書きの報告書、アナログの勤怠管理やタスク管理、更新しにくい紙ベースの作業マニュアルなど、事務作業を増やしている原因を考えてみましょう。
人員不足により一人の業務量が増えてしまう
少子高齢化と人口減少の進む日本では、人材確保と同時に従業員一人あたりの作業負担の軽減も重要です。採用難を理由に既存の従業員の業務量が増大しているとしたら、職場としての魅力が低下するばかりか、離職率の上昇やお客さまに提供するサービス品質の低下にも直結します。
限られた人数で仕事を回せるようにするには、既存業務の内容や量を可視化し、効率化を図るオペレーションにすることがポイントです。
その他の課題
地震や火災などの緊急時のオペレーションも、店舗ビジネスにおいて必ず考えておくべきです。避難経路や誘導方法など緊急対応のオペレーションが明確化されていないと、従業員もお客さまも混乱に陥ってしまい、事故などにもつながります。たとえば、飲食店ならガスの元栓を閉めてから避難するといったオペレーションによって、店舗への被害を最小化できることもあります。
店舗オペレーションがなぜ重要なのか?
店舗のオペレーションを確立することで、具体的にどのようなメリットがあるか考えてみましょう。
業務効率の向上
整備されたオペレーションがなく個々の従業員が独自の方法で業務を進めていると、行き違いやミスが生じやすく、業務効率は上がりません。たとえば在庫管理なら、誰がいつどのように在庫をチェックするかというオペレーションを決めておくことで、作業の重複や漏れを防止できます。
人員不足の場合も、スケジュール管理表のクラウド化や目視に頼るチェック業務のデジタル化といったオペレーションの変革で業務効率を上げ、限られた人数で業務を回す体制を作れます。
サービス品質・顧客満足度の向上
オペレーションの確立によって既存業務の効率化を図り、作業負担・時間を軽減すれば、接客やマーケティングなどにもっと時間を割くことができます。逆に、飲食店で店舗オペレーションの悪さが料理や接客の質に影響してはせっかくのビジネスが台無しです。オペレーションを整備することは、お客さまにより良いサービスを提供し、顧客満足度を上げ、また来店してもらうというビジネスの好循環に寄与します。
売り上げの増加
優れたオペレーションによって業務効率化を図ることで、サービス品質の向上、さらには売り上げのプラスにもつながります。
また、店舗オペレーションが整っておらず従業員が働きにくい環境だと、離職率が上がり店舗の雰囲気も悪くなりがちです。オペレーションを改善して働きやすい環境を整えれば、従業員の頻繁な入れ替わりによるサービス低下を避けられ、リピーター率の向上や口コミなどによる評価アップも期待できるでしょう。
チェーン店舗での展開
磨き上げられた店舗オペレーションがあれば、チェーン展開の際にも有利です。新店舗開業時に再びゼロからオペレーションを作る必要がなく、既存のオペレーションを新店にも適用できるからです。
ただし、新店の立地や客層などによっては既存店のオペレーションそのままではなく、内容にアレンジが必要な場合もあります。
スタッフ教育の簡便化
フロアやキッチン、バックヤードなどの各セクションに人材教育のオペレーションが完備されていれば、新人教育を効率的に進めることができます。教育のオペレーションがないと、トレーニング担当者が毎回教え方を考えることになり、余計な時間がかかるのと同時にトレーニング品質の標準化が難しくなります。
新人教育に限らず、リーダーやマネージャーの教育もオペレーションを整備しておけば、より強固なチーム作りが可能です。
店舗オペレーションの見直し・改善のポイント
実際に店舗オペレーションを見直す場合、次の四つのポイントに注目して現状を把握し、改善を進めていきます。
1. 不要な作業の抽出・削減
各オペレーションにおいて、「必要ではないのにやっている作業」が含まれていないかどうかをチェックしてみましょう。オペレーションの決定時点では意味があった作業でも、時間とともに不要になることもあります。
たとえばEメールなどデジタル形式で配布している情報を、さらに紙に印刷して人数分配布するといった作業があれば、紙が不要な可能性を踏まえ1枚だけ掲示するといった簡略化で作業量の削減を検討します。
2. 工数・作業時間の削減
オペレーションの一つひとつのプロセスにも、削っても問題のない工程が隠れている可能性を考えましょう。
飲食店の新人教育を例にすると、飲食店経験者と未経験者では指導内容は完全に同じではありません。教育のオペレーションに従って経験者にも一から手取り足取り教えていては、経験者を採用した意味がなくなってしまいます。オペレーションの中に、経験者向けには省いても問題ないプロセスを明記しておけば、教育の工数・時間の削減になります。
3. 運用の変更
これまでのオペレーションの運用方法を変更する場合、変更プロセスそのものが負担になっていることがあります。
一例として、すべての作業の運用変更について本部や店長の承認を取るオペレーションになっていると、新しい試みの動き出しが遅れるなどデメリットにつながります。承認が不要な内容をあらかじめ選別し、現場の判断で動ける部分を増やしておくとオペレーションがスムーズになります。
4. 時代や現場の意見を反映
一度決定したオペレーションを従業員が遵守するあまり、時代の変化に柔軟に対応できなくなってしまっては意味がありません。また、現場からの意見を吸い上げてオペレーションに反映させることも重要です。既存のオペレーションそのものがビジネスやサービスの妨げになっていないか定期的に見直し、常に改善を続けましょう。
オペレーション改善の成功事例
オペレーション改善の要の一つは、「情報系統の整理」です。
国内の飲食チェーンでは、本部から店長への連絡や、店長から従業員への一斉連絡のために、社用のチャットツールの導入が進んでいます。Eメールやプライベートのチャット、電話などに分散していたコミュニケーションを一括管理すると、連絡のオペレーションが簡略化され、コミュニケーションの手間や見逃しが減ります。チャットツールの導入によってコミュニケーションが活性化され、相談がしやすくなるというメリットもあります。
オペレーションの課題が「工数の多さ」や「時間効率の悪さ」であれば、こうしたツールを導入することでオペレーションを変革し、業務を効率化することが可能です。
先端技術を活用したオペレーション改善
店舗オペレーションは、デジタルツールの導入で飛躍的に改善することがあります。店舗の課題に合わせて適切なツールを選ぶことが肝心です。
クラウドカメラの活用
防犯やトラブル防止などの目的で使われる「クラウドカメラ」は、常時インターネットに接続され、録画した映像をオンラインで保存できることが特徴です。クラウド上に保存されたデジタルデータは自社サーバーの負担になることなく、見たい部分を後から簡単に探せます。保安のためだけでなく従業員の動線のチェックなどにも活用でき、オペレーション改善に役立ちます。
タスク・プロジェクト管理サービスの活用
マーケティング施策の進捗状況、キャンペーンの目標達成率など、店舗ごとのタスクやプロジェクト管理のオペレーションにもデジタルツールが有効です。従業員間でリアルタイムで情報を共有でき、「サポートが必要なのはどの部分か」「どの部分にもっと人員を割くべきか」といった課題が可視化されることで対策しやすくなります。
チャットツール・オンライン会議ツールの活用
個人・チームの両方と連絡が取りやすいチャットツールは、店舗オペレーションに不可欠な存在です。確認や返信に時間がかからず、コミュニケーション内容の記録が残るという点で、業務効率化に大いに貢献するツールです。
店舗の従業員やリーダー間のミーティングには、オンライン会議ツールを活用しましょう。対面での話し合いの時間が取れないときも、リモートで会議ができるオペレーションならばビジネスがスローダウンすることはありません。
勤怠管理ツールの活用
小売店や飲食店では、従業員の勤務シフトを紙やExcelで管理しているケースも少なくありません。しかし、紙やExcelでのシフト管理は変更点の共有がしにくく、伝達ミスや見間違いも発生します。
そこで、クラウド型のシフト管理ツールを活用し、アクセス権を持つ従業員が各自のスマートフォンなどからシフトの閲覧や変更のリクエストができるようにするという方法があります。タイムカードのように出退勤を記録する機能も活用すれば、店舗の1台のパソコンや打刻機の前に全員が並ぶ無駄を省けます。
クラウド型マニュアルサービスの活用
従来型の紙のマニュアルではなく、オンラインのクラウド型のマニュアルサービスは従業員教育のオペレーション改善に効果的です。クラウド型といっても使い方は簡単で、動画を用いた技術指導なども可能です。繰り返し見ることで接客や調理のポイントを理解でき、従業員間のスキルの標準化にも役立ちます。
クラウド型のマニュアルは更新も容易であるため、スピード感のある事業展開に対応しやすいことが特徴です。
その他のデジタルツールの活用
他にもデジタルツールとして、お客さまからの予約の受け付けと管理を行う予約管理システム、お客さまの属性や購買情報を管理してマーケティングなどに役立てるCRM(顧客関係管理)システムなどがあります。ホスピタリティや美容、医療業界などにおける属人的な情報管理をデジタル化することで、店舗オペレーションの改善を促進します。
オペレーション改善に役立つSquareの機能
ビジネスの規模の大小を問わず、オペレーションの改善は身近で日常的な業務から着手すると効果を感じやすいのでおすすめです。店舗で必ず発生する会計業務やスタッフ管理業務もその一つです。キャッシュレス決済サービス「Square」には低コストで使える店舗向けサービスが揃っています。
Squareのキャッシュレス決済
クレジットカード、QRコード、電子マネー、デビットカードなどの多様な支払い方法は、店舗の会計業務のオペレーションを複雑にしています。
数あるキャッシュレス決済に対応するには、それぞれの決済端末を導入する方法の他に、Squareのようなキャッシュレス決済サービスを利用する方法があります。Squareを利用するメリットは、複数のキャッシュレス決済をまとめて導入・管理できるという点です。決済端末も1台だけで済むため、コスト面でも操作性の面でも負担が少なく安心です。
Squareのキャッシュレス決済は使い方が簡単で覚えやすいため、トレーニングに時間がかからず、会計業務と教育業務のオペレーション改善にプラスになります。
カードも電子マネーも、マルチ決済端末はこれ1台
全画面タッチディスプレイ、レシート印刷機能、ワイヤレスで持ち運び可能、スタイリッシュなオールインワン決済端末「Square ターミナル」でキャッシュレス決済を始めよう。
Square POSレジ
レジ締め業務のオペレーションを改善するなら、Square POSレジが有効です。Square POSレジを使うと販売情報が自動集計されるため、閉店後に手作業で計算をして数字を合わせる業務はなくなります。使い方は簡単なので、新たな従業員の利用トレーニングにかかる時間が少なくて済み、操作ミスが起きにくい点もポイントです。
また、1日の売り上げ、客数、販売品目などの販売データもSquare POSレジで記録できます。蓄積したデータを仕入れやマーケティングの判断材料にすれば、各オペレーションを大幅に効率化することも可能です。
Square スタッフ
前述のSquare POSレジには、出勤・退勤を記録する機能「Square スタッフ」もあります。もちろん、各店舗の出退勤情報はSquareのアカウントに蓄積されます。他にもSquare スタッフを利用することで、店長、副店長、フロア担当など従業員ごとにレジのアクセス権限を設定することが可能です。
Square POSレジとSquare スタッフを使うことで、勤怠や人材管理のオペレーションをシンプルに可視化でき、管理者の業務負担を減らすことにもつながります。
以上のように、デジタルツールを効果的に使うことで店舗オペレーションは簡単に改善することができます。まずはオペレーション上の課題を洗い出し、何を見直すべきか検討してみてください。
Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。
執筆は2023年11月7日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash