個人事業主になるには?なれないケースはある?必要な手続きと対策

※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。

個人事業主として自由に働きたいと考えても、誰もがすぐに個人事業主になれるとは限りません。法律上の制約や、会社の就業規則、ビザ・在留資格など、さまざまな条件により開業が難しいケースもあります。この記事では、個人事業主になれない人について詳しく解説し、なれない場合の対策も紹介します。あわせて、個人事業主になるために必要な手続きや、成功に向けたポイントについても整理しました。

目次


個人事業主とは?

個人事業主とは、法人を設立せずに個人として継続的に事業を営む人のことです。飲食店経営、デザイン業、コンサルティング、プログラミングなど、さまざまな分野で活躍する人がいます。業種や規模にかかわらず、個人で独立して事業活動を営んでいる場合は、個人事業主に当てはまります。

個人事業主は、法人に比べると以下のようなメリットがあります。

  • 開業手続きが簡単で費用がかからない
  • 税務申告が簡単
  • 経費が計上できる
  • 働き方の自由度が高い
  • 事業拡大や法人化が目指せる

なお、個人事業主に似た言葉に「フリーランス」があります。雇用関係がない点で個人事業主とフリーランスは同じですが、フリーランスはあくまでも働き方であり、法律上の定義ではありません。

また、個人事業主と「自営業」も似た意味に感じられるかもしれません。どちらも自分で事業を営んでいる点は共通していますが、自営業は個人事業主だけではなく法人を設立している場合もあてはまります。自営業は個人事業主よりも広い概念だといえるでしょう。

個人事業主になるには? 必要な手続きと準備

個人事業主になるためには、一定の手続きと準備が必要です。ここでは、個人事業主としてスムーズに活動を始めるために必要な手続きと準備について解説します。

開業届の提出

個人事業主として事業を始める場合は、事業の名称や所在地、業務内容、開業日などを記入した「個人事業の開業・廃業等届出書」(開業届)を税務署に提出します。通常事業開始から1か月以内に提出しますが、提出しなくても法的な罰則はなく、遅れて提出しても問題ありません。

もし開業届を出していない場合は、個人事業主として事業を営んでいることをが公的に証明することが難しくなるため、補助金や助成金が申請できなかったり、事業の屋号を名義とした銀行口座が開設できなかったりするデメリットがあります。

開業届の提出は、税務署の窓口に直接持参する方法のほか、郵送やe-Tax(電子申請)を使った提出も可能です。

青色申告承認申請書の提出

事業の節税効果を高めたい場合は、業務を開始した日から2か月以内に「所得税の青色申告承認申請書」を税務署へ提出しましょう。事業から得た利益には所得税がかかるため、個人事業主は青色申告と白色申告どちらかの方法で確定申告をします。

青色申告では、複式簿記による帳簿管理や一定の要件を満たした帳簿保存などが求められますが、最大65万円の特別控除が受けられるほか、赤字を翌年以降に繰り越すことも可能で税制上のメリットが大きくなるため、事業規模にかかわらず提出しておくのがおすすめです。

青色申告承認申請書は提出期限を過ぎると、その年は青色申告を利用できず、確定申告では白色申告しか選択できません。

確定申告

個人事業主として収入を得た場合、毎年1月1日から12月31日までの所得をまとめて、翌年2月16日から3月15日までに確定申告をする必要があります。

確定申告では、1年間の売り上げや経費、所得金額、納付すべき税額を正確に申告します。青色申告の場合は、複式簿記の形式で帳簿を作成して、貸借対照表や損益計算書を添付します。また、各帳簿は、5年間から7年間保存する義務があります。

青色申告の申告方法には、税務署への持参、郵送、e-Taxによる電子申告があり、近年は電子申告を利用する事業主が増えています。

一方、確定申告を怠ると、無申告加算税や延滞税が課される可能性があるため、期限内に正確に申告をしましょう。

個人事業主になれないケースと対策

個人事業主は簡単に開業できて自由な働き方が選べるなどいくつかのメリットがありますが、一定の条件に当てはまる場合には開業できないこともありえます。ここでは、個人事業主になれないケースとその対策方法について解説します。

法律上の制約

法律上の制約で個人事業主になれないのは、公務員、未成年、破産者です。

公務員は国家公務員法(第103条、第104条)や地方公務員法(第38条)により、副業や営利活動が厳しく制限されています。また、未成年者が事業を営む場合は、原則として親権者の同意が必要です(民法第5条)。

さらに、破産後、復権していない人は一定の職業・資格制限があるため、事業の内容によっては個人事業主になれないことがあります。

法律上の制約を回避して個人事業主を目指すためには、公務員を退職する、未成年の場合は親権者の同意書を準備する、破産者は復権手続きを完了するなど、それぞれの状況に応じた対策を講じる必要があります。あらかじめ自分の立場や資格状況を確認し、必要な手続きを進めることが重要です。

会社の就業規則による制限

国では、副業を禁止する法律はありません。加えて働き方改革の一環として「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を設けるなど、柔軟な働き方として副業・兼業を推進しています。しかし、勤務先の就業規則に「副業禁止」の項目がある場合には、個人事業主になるのは難しいかもしれません。

就業規則に違反した場合、懲戒処分や解雇の対象となる可能性があります。そのため、個人事業主として事業を始めたい場合には、事前に就業規則をしっかり確認することが重要です。

副業禁止の規定がある場合には、副業を許可している企業や職種に転職して個人事業主との両立を目指すのも一案です。また、法人を設立して自ら代表者となれば、副業に該当しない扱いとなるケースも存在します。自分にとって最適な方法を選び、トラブルを回避しながら開業準備を進めましょう。

ビザ・在留資格の問題

外国籍の人が日本で個人事業主として活動するためには、適切なビザまたは在留資格を取得している必要があります。日本には「個人事業主」という在留資格はありません。そのため、自身が取得している在留資格、あるいは取得しようとしている在留資格で、個人事業主として活動できるかどうかを検討することになります。

たとえば、在留資格が「技能実習」の場合、技能実習制度自体が海外から人材を一定期間、日本に受け入れて技術を習得してもらうという趣旨のため、個人事業主として事業を営むことは想定されておらず、資格変更が必要だと考えられます。

留学生の場合、週28時間以内という制限はあるものの、アルバイトなどの雇用契約に基づく労働のほか、個人事業主として収入を得る活動も可能なようです。ただし、アルバイトにしても、個人事業主として活動するにしても、「資格外活動許可書」の提出が求められます。

また、「技術」「人文知識」「国際業務」など一般的な就労ビザで日本企業でしばらく働いたのちに、個人事業主として独立するパターンもあるでしょう。この場合は、収入を継続的に確保できることを証明しないとビザの保持あるいは更新は難しいようです。

これらの手続きは複雑で専門的な知識も必要になるため、行政書士などビザ申請に精通した専門家へ相談するのがおすすめです。

個人事業主として成功するためのポイント

個人事業主として事業を営むには、事前準備だけでなく、日々の経営努力が不可欠です。特に、明確な事業計画や効果的な集客・マーケティング、税務・経理管理を徹底することが欠かせません。ここでは、個人事業主として押さえるべき具体的なポイントを解説します。

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事業計画をしっかり立てる

個人事業主にとって、事業計画はビジネスの道しるべとなります。計画を立てずに感覚だけで事業を進めると、想定外のトラブルに困る恐れがあるからです。

事業計画の作成にあたって明確な決まりはありませんが、経営理念や事業の目的、商品・サービスの内容、売り上げや利益、資金繰りの見込みなどを具体的に含めると効果的です。必要に応じて専門家の意見も取り入れ、短期的な目標だけでなく、中長期的な成長ビジョンも描くことが重要です。具体的な事業計画や数値データがあれば、融資や助成金を申請する際にも説得力が高まります。

なお、計画は定期的に見直し、事業環境や顧客ニーズの変化に応じて柔軟に修正を加えることも大切です。

集客やマーケティングを工夫する

優れた商品やサービスを用意しても、ターゲット層に認知されなければ売り上げにはつながりません。そこで、安定した収益を得るためには、効果的な集客とマーケティングが欠かせません。まず、自身の強みを明確にして、ターゲット顧客に響くメッセージを作成しましょう。

集客手段には、SNS運用、オウンドメディア(ブログやホームページ)構築、オンライン広告、口コミ促進などがあります。特にコストを抑えたい場合は、無料から始められるInstagramやX(旧Twitter)、YouTubeの活用がおすすめです。

さらに、リピーターを増やすためには、顧客との継続的なコミュニケーションやキャンペーン施策も有効です。施策の効果は都度検証し、地道に改善を重ねる姿勢が成果につながります。

開業後の税務・経理管理は適切に

個人事業主は、売り上げや経費を日々管理しなければなりません。帳簿や領収書の整理を怠ると、余計な税金を支払うリスクや、後からの修正対応で大きな手間がかかる可能性があります。正確に記録して適切に帳簿をつけることで、確定申告や税務調査にもスムーズに対応できるようになります。

市販の会計ソフトを導入すれば、記帳業務を効率化でき、ミスの防止にもつながります。また、会計ソフトを利用する場合でも基本的な会計知識があると便利です。

なお、税理士に依頼することで、確定申告の対応はもちろん、節税対策や資金繰りの改善に関するアドバイスも受けられます。経理業務を単なる義務と捉えるのではなく、事業の健全経営を支える柱として、積極的に取り組むことが大切です。

個人事業主の業務効率化はSquareで

個人事業主として事業を軌道に乗せるためには、日々の業務効率化が欠かせません。特に、請求・決済・経理などのバックオフィス業務は手間がかかりやすいため、ツールを活用して負担を減らすのがおすすめです。

ここでは、請求書作成やオンライン決済、会計ソフトとの連携まで一括管理ができるSquareのサービスを利用した業務効率化方法について紹介します。

スマートフォンから送れるSquare 請求書

Square 請求書は、メールで送れるクラウド請求書です。紙の請求書を作成して郵送する手間や時間を削減でき、支払い遅延のリスクの低減が図れます。

請求書の作成や送信、定期的な請求書の送信に対応しているほか、支払いリマインダーや送信日の予約機能もあるため、本業の手が空いたタイミングで請求処理ができます。また、見積書の作成や契約書の添付機能も備えており、請求業務がパソコンやタブレット、スマートフォンのアプリだけで完結できます。

また、Square 請求書にはクレジットカード決済機能がついています。お客さまはメール内にあるリンクから都合の良いタイミングで支払いができるため、請求書を受け取った側からみても使いやすくなっています。

Square 請求書なら、作成からオンライン送信まで簡単スピード対応

請求書の作成、送信、支払いまでの流れが簡単に。自動送信、定期送信など便利機能も無料。

手軽にオンライン販売ができるSquare リンク決済

Square リンク決済を用いると、特別なECサイトやシステムを作らなくてもすぐにオンライン販売が始められるため、手間をかけずに新しい販売チャネルを増やしたい場合に便利です。

商品やサービスの名前と値段を登録すると、「お会計リンク」または「お会計ボタン」が作成できます。お会計リンクを顧客へのメールやSNS、メッセージアプリなどに送信するだけで、販売できるようになるのです。顧客はリンクをクリックして、スマートフォンやパソコンから簡単に購入できるため、購入ハードルが大きく下げられます。

クラウド会計ソフトと連携で経理業務も楽に

Squareは、クラウド会計ソフトのfreeeやマネーフォワードと連携ができます。Squareのサービスを利用した際の売上データや取引情報が自動取得できるため、手作業によるデータ入力の手間とミスが大幅に削減できます。

また、日々の経理作業だけでなく、確定申告の際にもデータ整理が容易になり、作業負担を大きく軽減できるのが特長です。特に、事業拡大に伴って取引件数が増えた場合でも、デジタルツールを活用すれば、人手をかけずに対応できるようになります。

まとめ

個人事業主として働くには、法律や在留資格、勤務先の就業規則など、さまざまな条件をクリアする必要があります。公務員や未成年、破産者など法律上の制約がある人は開業に制限があり、またビザの種類によっては外国籍の人も個人事業ができないケースがあります。個人事業主になる前に必要な準備を整え、自分に合った働き方やスタイルを見極めながら、一歩ずつ着実に前進していきましょう。


Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。

執筆は2025年5月8日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash