ゴーストレストランとは?メリットや開業費用、国内外での事例を解説

料理の腕やセンスのよさを生かして自分のレストランを持ちたいと考えている人の中には、レストランを始めるにあたって最初のハードルになる開店資金をどう集めようか悩んでいる、仕入れコストや人件費も考えると月々の支払いが不安だという人もいるかもしれません。

初期投資を抑えて飲食業を始める方法として、「ゴーストレストラン」という形態が一つの選択肢になりつつあります。ゴーストレストランのメリットとデメリット、国内外の事例を交えて紹介します。

目次



ゴーストレストランとは

レストランのオープンというと、初期投資として物件の敷金や礼金、設備投資などの多額の開店資金がかかります。小規模の飲食店でも物件によっては数百万円、ときには一千万円を超える出費を覚悟しなければなりません。また、いざオープンしたとしても月々の家賃に光熱費、仕入れ費用、人件費をはじめとする固定費も無視できない出費です。

もし、レストランの実店舗を持たないと考えたらどうでしょう。物件の契約に関する費用や月々の家賃といった出費を大きく減らすことができます。これらの出費を減らすことでレストランをオープンする資金面でのハードルはぐっと下がります。

店舗を持たず、電話やインターネットで注文を受け、料理をお客様に配達するレストランは「ゴーストレストラン」もしくは「ゴーストキッチン」と呼ばれ、効率的な新しいビジネスの形として注目を集めています。ゴーストレストランの利用が広まる背景にはフードデリバリーサービスや厨房を共有するシェアキッチンの普及があります。

特に、新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けた2020年以降は、生き残りをかけてデリバリーに参入した飲食店も多くみられ、フードデリバリー市場が急成長しました。世界的な配車アプリサービスによるフードデリバリーサービスや大手インターネットショッピングモールによるフードデリバリーサービスを見かけたことがある、利用したことがある、という人もいるのではないでしょうか。フードデリバリーサービスは店舗を持つ飲食店のみを対象としているのではなく、店舗をもたないゴーストレストランにもサービスを提供しています。

ゴーストレストランは効率のよいレストランの経営方法としてだけでなく、飲食業のアイデアを試したいときの選択肢としても有効です。これまで大金を集めて一か八かでレストランを開業していたところ、リスクを最小限に抑えてアイデアを試すことができるようになりました。この10年ほどでクラウドサービスやアウトソーシングサービスなどの普及によって起業のハードルが下がりましたが、従来開業には多額の資金が必要だった飲食業にも同様の流れが押し寄せています。

レストランで外食するか、自宅で作るものだった食事でしたが、コンビニエンスストアの登場やデパ地下で中食という選択肢が増えました。これに続く形でインターネットが普及し、私たちの生活がより多忙になる中で、日常やビジネスシーンでデリバリーサービスがより利用される時代になりつつあります。ゴーストレストランはこのような時代のニーズに合った新しいビジネスとみることもできそうです。

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「クラウドキッチン」「シェアキッチン」との違い

ゴーストレストラン(ゴーストキッチン)と混同されやすい用語の中に「クラウドキッチン」「シェアキッチン」があります。ゴーストレストランがデリバリーに特化した飲食店の総称で飲食店の「経営形態」を指すのに対し、クラウドキッチンやシェアキッチンは、「キッチンの使われ方」を指します。それぞれの特徴は、次項で説明します。

クラウドキッチンとは

デリバリー用の料理を作るために設計された施設に複数の飲食店が入居し、各飲食店がブースに分かれて使うのが一般的です。クラウドキッチンの運営会社が施設を用意し、管理・運用します。飲食店側は運営会社に家賃、水道光熱費、そして場合によっては売上金額に応じた手数料を支払う必要があります。

シェアキッチンとは

一つのキッチンを複数店舗でシェアします。昼と夜など時間帯を分けてシェアすることも多いようです。家賃は利用する店舗数で分割できますが、材料の在庫や水道光熱費の負担割合をどうするかしっかりシェア相手と話し合う必要があります。

フードデリバリーの市場規模

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、収益性の高いデリバリービジネスへの関心が高まりました。実際にフードデリバリーの市場規模は拡大の一途をたどっており、コロナ前の2018年には3,631億円だった日本国内のフードデリバリーの市場規模は、2020年には36%増の4,960億円へ成長、2023年には86%増の6,821億円に拡大するとの予測も出ています。世界へ目を向けると、アメリカでは2019年、Googleから直接注文できる「Order food on Google」のサービスが提供され始め、インドでも2020年7月からテスト運用を開始しています。また、米企業のEmergen Researchの分析では2028年に世界のフードデリバリーサービスの市場規模は3,114億3,000万米ドルになると予想しています。

参考:
Order food on Google
ICT総研、「2021年 フードデリバリーサービス利用動向調査」結果を発表(2021年4月5日、日本経済新聞)
2028年に3,114億3,000万米ドルに達する世界のフードデリバリーサービスの市場規模(2022年3月15日、Emergen Research)

ゴーストレストランのメリット

1.初期投資や固定費を最小限に抑えられる

ゴーストレストランの最大のメリットは、お客様が来店する店舗を持たないことで初期投資や固定費を最小限に抑えられることです。従来の店舗型のレストランをオープンする場合、レストランのコンセプトや経営者の手腕なども影響しますが、店舗の立地は無視できない要件です。人気の街の人目につく路面店の初期費用や家賃は高額になりがちです。ゴーストレストランではフードデリバリーサービスを利用して料理を届ける方法を利用するので、ターゲットとするお客様にデリバリーサービスで配達可能なエリアに厨房がある必要はありますが、厨房の立地の制約は多くはありません。専用のキッチンを持つ必要もなく、手の届く価格で利用できるシェアキッチンの利用や既存のレストランの間借りも視野に入れることができます。

2.人件費が抑えられる

抑えられる固定費は店舗に関するものだけではありません。ゴーストレストランでは、店舗でお客様にサービスする必要がないため、サービススタッフの人件費を削ることができます。

3.席数による制限がない

費用面以外のメリットもあります。お客様から好評を得て注文が増えた場合、ゴーストレストランには店舗型のレストランのような席数による制限がありません。調理できる数には限りはあるものの、ある程度までは小規模の設備と人員で注文に応えることができます。

4.メニューやジャンルを臨機応変に変更できる

これまでにない新しいコンセプトの料理を提供してみたい、店舗型のレストランを開業する前に反応を見てみたい場合に、ゴーストレストランとして開業すると、万が一廃業してしまった場合の経済的なダメージを最小限にできます。

5.天候の影響を受けにくい

店舗型のレストランは、雨や雪など天気の悪い日には客足が遠のきがちです。しかしながら、のゴーストレストランであればお客様はフーデリバリーのアプリや専用のウェブサイトから料理を注文するだけなので、天気の影響を受けにくいといえるでしょう。一方で、デリバリーの需要が多いにも関わらず配達員が不足しているなど、需要と供給がマッチしないことも考えられます。

6.時間に縛られず開業できる

ゴーストレストランは、営業時間を柔軟に決めることができます。たとえば、店舗型のレストランで24時間営業を行おうとするとホールとキッチンの人件費が大きく膨らみますが、ゴーストレストランであれば調理を行う人が1人いれば営業が可能です。

ゴーストレストランのデメリット

1.デリバリーを使わない人には知ってもらえない

少ない資金でリスクを抑えて開業できるゴーストレストランですが、ゴーストレストラン特有の難しさもあります。店舗がないため、店舗の前を通ってふらっとお客様が入ってくるようなことがありません。このため、店舗型のレストラン以上にお客様にレストランを知ってもらう工夫が必要です。ただし、一昔前と違いSNSなど、店舗がなくてもレストランや料理をアピールできる方法がたくさんあります。効果的かつ計画的にメディアを活用して、レストランの認知度を高めましょう。

2.キッチンを使いたいときに使えない場合がある

専用の厨房を持たずにシェアキッチンを利用する、または他のレストランの厨房に間借りする場合、思うように厨房を利用できないこともあります。厨房自体の使用時間はもちろん、オーブンといった調理器具の使用時間にも制限が出てくるかもしれません。また、食材の保管については冷蔵庫や倉庫のスペースが十分でないかもしれません。いつどのような調理をするのか、どのくらいの食材を保管しておきたいかといった要件を明確にして、レストランのスタイルに合う厨房をみつける必要があります。

3.顧客情報が確保しづらい

店舗を持たないゴーストレストランは、お客様との直接対面することがありません。顧客情報の入手経路は主にデリバリー代行サービスなどのプラットフォームとなるため、お客様からのフィードバックや好みなど、売り上げに関するデータが入手しづらい可能性があるといえるでしょう。

ゴーストレストラン開業にかかる費用

ゴーストレストランを開業するに当たって必要となる費用を、ケーススタディごとにみていきましょう。

ゼロから始める場合

ゴーストレストランをゼロから始める場合、物件の取得からキッチン設備などの準備も含め、店舗型レストランの開業と同じくらい数百万円単位での費用がかかることがあります。ただし、客席が不要な分、狭い物件でも開業が可能で、内装工事や外装工事などの予算を省くことができるので、実店舗よりは予算を抑えられるでしょう。

運営会社と契約をして開業する場合

クラウドキッチンの運営会社と契約する場合は、場所や広さにより違いはあるものの、家賃と保証金を合わせて数十万円程度で開業できることも多いようです。厨房設備がそろっている場合が多く、資金を抑えて開業ができるのが魅力です。

すでに飲食店を経営している場合

すでに飲食店を経営していて、ゴーストレストラン機能を追加したいという場合は、デリバリープラットフォームとの契約や注文を受けるタブレットの準備に数万円程度かかります。デリバリープラットフォームとの契約は、早ければ数日で登録が完了します。プラットフォームによっては登録料として導入キットや、専用のタブレット、ソフトウェア、プロによる写真撮影の代金が必要となる場合があります。

そのほかに必要となる費用

新たに開業する場合は、さまざまな許認可が必要となります。「⾷品衛⽣責任者」「防⽕管理者」「飲食店営業許可書」などがあります。クラウドキッチンの運営会社と契約する場合、運営会社が取得していることもありますが、自社でも取得しておくとデリバリープラットフォームとの契約がスムーズに運びます。

  • ⾷品衛⽣責任者受講費用 教材費込み10,000万円前後(都道府県によって異なる)
  • 防火管理者受講費用 5,000円から8,000円程度(地域によって異なる)
  • 飲食店営業許可申請費用 15,000円から20,000円程度(地域によって異なる)

国内外での事例

ゴーストレストランはアメリカのニューヨークで始まったといわれています。海外ではゴーストレストランブームをきっかけに、複数の都市で複数のゴーストレストランを運営する企業もあります。また、ゴーストレストランの利用を想定したシェアキッチンや、食に関する起業家のためのコワーキングスペースを運営する関連業種も多数あります。専業のゴーストレストランのほか、既存の店舗型のレストランの経営者が別のブランドとしてゴーストレストランを経営するといった事例もみられます。フードデリバリーサービスを利用することで配送の仕組みを確立する必要もなく、このような新しい形のレストラン経営が可能になりました。ゴーストレストランとしてレストランを経営したいと考えている人は、コンセプトの合う既存の店舗型のレストランと協力して事業を始めてみるのも一つの手といえそうです。

日本でも新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに広まっていったゴーストレストランですが、最も有名な国内のゴーストレストランはカップに入ったカレーを提供するレストランでしょう。ゴーストレストランとして始まった事業は時代の変化に合わせて形を変え、2021年からは実店舗のみの営業スタイルを取っています。

ゴーストレストラン開業前にそろえたいツール

ネットショップ

ゴーストレストランでは、デリバリープラットフォーム経由でお客様に料理を届けることがメインとなりますが、テイクアウトを併用したり、自社でデリバリースタッフを用意したりすることで、販売のチャンスはより広がります。また、出来立ての料理だけでなく、人気メニューを家庭でも調理できるように食材をまとめて調理キットにして販売することもできます。このような場合は、ネットショップで販売できるようにしておくと便利です。

キッチンディスプレイ

お客様からの注文を手書きの伝票ではなく、画面上で一元管理できるキッチンディスプレイを準備しておくと効率的な調理に役立ちます。

ゴーストレストランに役立つSquareのサービス

決済代行会社のSquareでは、無料アカウントを作るだけでゴーストレストランに役立つさまざまなサービスを利用することができます。

Square オンラインビジネス

自社サイトで調理キットを販売したり、お客様からの注文を直接受けたりする場合、ネットショップ作成サービスのSquare オンラインビジネスが便利です。簡単な操作でネットショップを開設でき、デリバリーやテイクアウトを設定することができます。自社サイトで注文を受け付けることができるれば、顧客情報を自社で管理することができるようになります。売上情報を分析することで、新しいメニュー開発などの役に立つかもしれません。

Square オンラインビジネスによるネットショップの作成は、簡単に行うことができます。Squareの無料アカウントを作ったら、管理画面から「オンラインビジネス」をクリックしてテンプレートを選択します。あとは、写真や文章を入れて、オリジナルのネットショップを開設しましょう。また、「受け取りとデリバリー」からは、テイクアウトや自社スタッフによるデリバリーに必要な設定を行うことができます。デリバリー対応地域、最低注文額、サービス料金、非対面配達の設定のほか、商品の準備時間を設定したり、オーダー数を制限したりすることもできます。詳しい設定方法については、こちらをご覧ください。

Square レストランPOSレジ

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▲キッチンディスプレイの利用イメージ

Square レストランPOSレジは、飲食店に特化したPOSレジアプリで、ゴーストキッチンに便利なキッチンディスプレイシステムが利用できます。Square オンラインビジネス経由で受け付けた注文はもちろんんこと、デリバリープラットフォームを介して入った注文については手動で注文内容を入力すれば、その内容が厨房に設置したキッチンディスプレイに送信されます。複数箇所からの注文を一つのスクリーンで管理できるので、スムーズな調理が可能です。Square レストランPOSレジには無料プランと有料プランがあり、無料プランでは月額3,500円、有料プランでは追加費用無しでキッチンディスプレイシステムが利用できます。Square レストランPOSレジの機能や料金の詳細はこちらをご確認ください。

本記事では海外から日本にも広がりをみせているゴーストレストランについて、メリットとデメリット、事例を合わせて説明しました。資金面での不安からレストランのオープンを戸惑っていた人でもゴーストレストランの形態であれば小さく、リスクを抑えて事業を始めることができます。ぜひ本記事をきっかけに、Squareのサービスを利用したゴーストレストランを選択肢の一つとして検討してみてください。

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執筆は2019年10月29日時点の情報を参照しています。2023年1月31日に一部情報を更新しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash