2021年4月15日より電子申請受付が開始された「事業再構築補助金」。ポストコロナ・ウィズコロナ時代の社会に対応するための事業再構築を支援するための補助金です。事業拡大、事業転換を支援する補助金なので、現在の苦境をバネにさらに成長したいという企業・個人事業主は活用を検討したい制度です。
ここでは、事業再構築補助金の制度概要や申請の流れ、想定されている具体例などを紹介します。
なお、申請は電子申請で行われ、事前に「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。申請を考えている事業者は早めの準備をおすすめします。
目次
- 事業再構築補助金とは
・事業再構築補助金の申請要件
・事業再構築の定義 - 申請要件
・対象事業者
・対象となる事例
・各申請類型と補助上限額
・補助対象経費となるもの、ならないもの - 申請方法
・GビズIDプライムアカウントを取得しよう
・必要書類を用意しよう
・認定経営革新等支援機関を探そう
・金融機関に相談しよう
・申請はオンラインで
・交付決定
・実績報告 - 必要書類の作成に役立つこと
事業再構築補助金とは
新型コロナウイルス感染症の影響が長引く中、中小企業の業績悪化が課題となっています。2020年9月の売上高が前年同月を割り込んだ企業の数は80.2%にも及び、2020年の4月以降、6カ月連続で80%を超えています。
こうした状況を踏まえて政府は、令和2年度第3次補正予算で1兆1,485億円もの「事業再構築補助金」を採択し、新しい分野への挑戦や事業転換、業種転換や業態転換、事業再編などの思い切った事業再構築を目指す中小企業等に対し「事業再構築補助金」を交付することになりました。
世界情勢に鑑みながら新たな申請類型が設立されるなど、補助金の内容は公募の度に変更が加えられています。
第6回の公募では、売上高などの減少要件が緩和されました。また、ポストコロナの社会を見据えて、グリーン分野での事業再生を目指す事業者を対象に、補助上限額を引き上げた新たな申請類型が設立されました。第7回の公募では、ウクライナ情勢による原油価格や物価高騰などの影響を受ける事業者を対象とした申請類型も設立されています。
2022年12月には令和4年度第2次補正予算が成立し、2023年も事業再構築補助金の継続が予定されています。2023年1月時点では、第9回の公募が行われていて、2023年3月24日が締切となります。
参考:第9回新型コロナウイルスに関するアンケート調査(東京商工リサーチ)
事業再構築補助金の申請要件
申請要件として注目をしたいのが、付加価値額の増加です。事業再構築補助金には六つの申請類型がありますが、どの申請類型でも付加価値の増加が要件に含まれています。具体的には、補助事業終了後3年から5年で付加価値額の年率平均3.0%もしくは5.0%以上増加、もしくは従業員一人当たり付加価値額の年率平均が3.0%もしくは5.0%以上増加する事業計画の策定が必要です。
付加価値額とは、営業利益に人件費と減価償却費を足したもので、「利益」とほぼ同義語として扱われます。
事業再構築の定義
補助金申請を行うにあたって必要な「事業再構築」とは、以下のことを指します。
・新しい分野への挑戦
中小企業などが、現在行っている事業を変更することなく、新しい商品やサービスを開発して提供することによって、新しい市場に進出することを指します。「商品の新規性」「市場の新規性」「事業期間終了後、総売上高の10分の1以上の売上高が見込めること」などが条件となります。
・事業転換
中小企業などが新たな商品もしくはサー ビスを提供し、業種を変えることなく事業を転換することを指します。「商品の新規性」「市場の新規性」「事業計画期間終了後に売上高構成比が最も高い事業になることが見込まれるもの」が条件となります。
・業種転換
中小企業などが主とする業種を変更し、新たな商品もしくはサー ビスを提供することを指します。「商品の新規性」「市場の新規性」「事業計画期間終了後に売上高構成比が最も高い業種になることが見込まれるもの」が条件となります。
・業態変換
商品の製造方法やサービスの提供方法を大きく変更することを指します。「商品の製造方法、サービスの提供方法の新規性」「製造される商品の新規性」「提供方法を変更する場合には、既存の設備の撤去もしくは店舗の縮小が伴うこと」「事業期間終了後、総売上高の10分の1以上の売上高が見込めること」などが条件となります。
・事業再編
合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡などの会社法上の組織再編を行い、新分野展開、事業転換、業種転換もしくは業態転換を行うことを指します。「組織の再編成を行うこと」「新分野展開、事業転換、業種転換もしくは業態転換を行うこと」が条件となります。
申請要件
事業再構築補助金を申請できるのは、中小企業、中堅企業、個人事業主、企業組合のうち、新型コロナウイルスの影響で売り上げが減少している事業主が対象となります。
事業類型ごとに申請要件は少しづつ異なりますが、どの事業類型に申請する場合にも満たさなければいけない申請要件は以下となります。
-
2020年4月以降の連続する6カ月間のうち、任意の3カ月の合計売上高が、2019年または2020年1月から3月までの「コロナ以前」の同3カ月と比較して10%以上減少していること。2020年10月以降の連続する6カ月間のうち、任意の3カ月の合計売上高がコロナ以前の同3カ月と比較して5%以上減少していること。
-
1を満たさない場合には、2020年4月以降の連続する6カ月間のうち、任意の3か月の合計付加価値額が、コロナ以前の同3カ月の合計付加価値額と比較して15%以上減少していること。2020年10月以降の連続する6カ月間のうち、任意の3カ月の合計付加価値額がコロナ以前の同3カ月と比較して7.5%以上減少していること。(グローバルV字回復枠ではこの代替要件を利用できません)
-
事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定すること。
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補助事業終了後3年から5年で付加価値額の年率平均3.0%もしくは5.0%以上増加、 従業員一人当たりの付加価値額の年率平均3.0%もしくは5.0%以上の増加を達成すること。
対象となる事例
ここでは、対象となる事例を具体的に紹介します。
飲食業
・喫茶店を経営していたが、飲食スペースを縮小して、コーヒー豆や焼き菓子のテイクアウト販売を開始した。
・飲食店経営から、今後の市場拡大が見込まれる高齢者への配食事業へ業態を転換した。
小売業
・衣料品販売店が、デパートなどの実店舗での販売から、ネット販売やサブスクリプション形式のサービスに業態を移行した。
・衣料品販売店が既に実施しているフィットネス関連事業との相乗効果を念頭に、新しく健康・美容関連商品の販売を始めた。
製造業
・航空機部品製造業から、ロボット関連部品、医療機器部品製造の事業を新規に立ち上げた。
・食料品製造会社が、催事中止の煽りを受けたことから事業を他社へ譲渡し、化粧品販売事業へと事業を再編させた。
サービス業
・アーティストのライブなどを運営するイベント運営会社が、ライブをバーチャル上で再現するサービスに業態転換した。
・美容院を経営していたが、店舗を縮小し、高齢者向けの訪問美容サービスを開始した。
・宿泊施設を営んでいたが、キャンプ需要を受け、オートキャンプ場の運営を開始した。
ほかにも具体的な事業再構築補助金活用例が、事業再構築補助金のウェブサイトで紹介されています。
各申請類型と補助上限額
事業再構築補助金の各申請類型と補助上限額は以下の通りです。
申請類型 | 補助上限額 | 補助率 |
---|---|---|
通常枠 | 【従業員数20人以下】 100万円〜2,000万円 【従業員数21〜50人】100万円〜4,000万円 【従業員数51人〜100人】 100万円〜6,000万円 |
中小2/3 中堅1/2 |
大規模賃金引上枠 | 【従業員数101人以上】8,000万円超〜1億円 | 中小2/3 中堅1/2 |
回復・再生応援枠 | 【従業員数5人以下】 100万円〜500万円 【従業員数6〜20人】100万円〜1,000万円 【従業員数21人以上】 100万円〜1,500万円 |
中小3/4 中堅2/3 |
最低賃金枠 | 【従業員数5人以下】 100万円〜500万円 【従業員数6〜20人】100万円〜1,000万円 【従業員数21人以上】 100万円〜1,500万円 |
中小3/4 中堅2/3 |
グリーン成長枠 | 中小:100万円超〜1億円 中堅:100万円超〜1.5億円 |
中小1/2 中堅1/3 |
緊急対策枠 | 【従業員数5人以下】 100万円〜1,000万円 【従業員数6〜20人】100万円〜2,000万円 【従業員数21〜50人】 100万円〜3,000万円 【従業員数51人以上】 100万円〜4,000万円 |
中小3/4(※1) 中堅2/3(※2) |
※1:従業員数5人以下の場合500万円を超える部分、従業員数6~20人の場合1,000万円を超える部分、従業員数21人以上の場合1,500万円を超える部分は2/3
※2:従業員5人以下の場合500万円を超える部分、従業員数6~20人の場合1,000万円を超える部分、従業員数21人以上の場合1,500万円を超える部分は1/2
補助対象経費となるもの、ならないもの
補助対象経費となるものは、以下の通りです。
・建物の建築・改修、建物の撤去、賃貸物件の原状回復や一時移転などの建物費
・機械装置の購入、製作、借用費
・専用ソフトの購入やリースなどにかかるシステム構築費
・クラウドサービス利用費
・運搬費
・技術導入費
・知的財産権導入に要する経費
・知的財産権などに関連する経費
・製品開発に要する加工、設計などの外注費、専門家経費
・広告作成、媒体掲載、展示会出展などの広告宣伝費・販売促進費
・教育訓練費、講座受講などの研修費
・海外旅費(一部の申請類型のみ)
補助対象経費とならないものは以下の通りです。
・事業計画の作成・提出に要する経費
・補助対象企業の従業員の人件費、従業員の旅費
・不動産、株式、公道を走る車両、パソコン、スマートフォン、家具など汎用品の購入費
・フランチャイズ加盟料
・販売する商品の原材料費
・消耗品費
・光熱水費
・通信費
など
詳しくは公募要項をよくご確認ください。
申請方法
ここからは、事業再構築補助金の申請方法について紹介します。
GビズIDプライムアカウントを取得しよう
事業再構築補助金の申請には、GビズIDプライムアカウントを申請する必要があります。申請サイトで必要事項を記載し、申請書と印鑑証明書などの必要書類を郵送してGビズIDプライムアカウントを作成しますが、発行に数週間ほどの時間を要する場合もあるので、早めにIDを取得しましょう。
また、GビズIDプライムアカウントでは、事業再構築補助金のほか、ものづくり補助金やIT導入補助金などの補助金申請書類の申請、更には、社会保険や雇用保険などの申請も行えますので、この機会に取得しておくと便利です。
必要書類を用意しよう
申請の際には書類を複数提出する必要があります。事業類型に共通して用意しなければいけない書類は以下です。
- 事業計画書
- 認定経営革新等支援機関・金融機関による確認書
- コロナ以前に比べて売上高が減少したことを示す書類
- コロナ以前に比べて付加価値額が減少したことを示す書類
- 決算書
- ミラサポplus「電子申請サポート」の事業財務情報
- 従業員数を示す書類
- 建物の新築が必要であることを説明する書類(新築の費用を補助対象経費に計上している場合)
- リース料軽減計算書(リース会社と共同申請する場合)
- リース会社が適切にリース取引を行うことについての宣誓書(リース会社と共同申請する場合)
事業類型別で必要になる書類については、最新の公募要項をご確認ください。また、必要書類の準備にかかる負担を減らせるツールは必要書類作成に役立つツールの章で紹介します。
認定経営革新等支援機関を探そう
事業計画書がある程度固まったら、認定経営革新等支援機関を探しましょう。認定経営革新等支援機関とは、中小企業庁が認定した、税務、金融、企業財務に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上ある個人や法人、中小企業支援機関などを指しています。
商工会議所や公的産業支援機関のほか、税理士や行政書士、金融機関などが認定経営革新等支援機関となっていることが多く、ここで専門家と一緒に事業計画を考える必要があります。専門家によっては事業計画書の書き方の指導を行ってくれるところもあります。
ご自身の近くにある認定経営革新等支援機関については、中小企業庁の認定経営革新等支援機関検索システムで探すことができます。
金融機関に相談しよう
補助金額が3,000万円を超えるような場合は、銀行、信金、ファンドなどの金融機関も参加して事業計画書を策定しなくてはなりません。ただし、認定経営革新等支援機関が金融機関である場合は、必要ありません。
申請はオンラインで
書類に不備がないかを確認したら、オンラインで申請を行います。電子申請システムのログインページにアクセスし、あらかじめ取得しておいたGビズIDでログインします。電子申請システムで申請を開始し、必要書類をアップロードし、内容を送信します。一度申請した内容は変更できませんので、注意が必要です。
事業再構築補助金申請にあたっての注意事項は、こちらで確認してください。
交付決定
交付決定が行われたら、補助事業期間が始まります。補助金は、基本的に事業者による支出を確認したあとに支払われるので、補助事業の着手(購入契約の締結など)は交付決定後に行うよう注意しましょう。
実績報告
事業が終了したあと30日以内に実績報告書を提出し、そのあとも5年間の経営状況などについて年次報告を行わなければなりません。
必要書類の作成に役立つこと
必要書類を用意しようの章にもあるように、事業再構築補助金を申請するには提出しなければいけない書類が多く、漏れはないか、理解が不足している点はないかなどと心配になる場面も出てくるでしょう。
申請方法の章でも挙げたように、事業計画に関しては一人で取り組むのではなく、認定経営革新等支援機関や金融機関と策定することが補助金を受ける要件として定められています。
認定経営革新等支援機関はたくさんあるため、自社に適した機関を見つけるのは難しく感じるかもしれませんが、大事なのは事業の分野に特化していること、採択実績がある程度あることです。疑問点をちゃんと解消してくれるような相談のしやすさも、負担を減らすうえでは大切なポイントです。
ただ、認定経営革新等支援機関には事業計画の書き方のアドバイスなどを受けることはできますが、売り上げなどにまつわる書類などは当然ながら自ら用意しなければいけません。
たとえばコロナ前・後の売上高などはもちろん自分で算出することになります。このような情報がすぐに把握できるだけでも、少しは負担が軽くなるかもしれません。
このような情報をすぐに取得するには、Squareで支払いを受け付けることがおすすめです。
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事業再構築補助金は、原則として補助事業終了後に、補助事業実績報告書の提出を終えてから、補助金額の確定後に精算払いとなりますが、一定の条件のもとでの概算払いも可能です。事業再構築補助金を上手に利用して、ウィズコロナ・ポストコロナ時代でも事業の継続と拡大を目指しましょう。
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執筆は2021年4月1日時点の情報を参照しています。2023年6月27日に記事の一部を更新しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash