集客を増やしたいとき、在庫を処分したいとき、多くの小売店が打ち出すマーケティング戦略の一つに割引セールがあります。割引は、特別な準備やコストをかけず比較的すぐに実施でき、お客さまの購買意欲を掻き立てやすい価格戦略と認識されています。同じ商品でも、なるべく安価で買いたいと思うのは消費者にとって自然の心理でしょう。
しかし、割引するということは、一つの売り上げから得られる利益が小さくなり、儲けが少なくなってしまうということです。当初設定した価格による売上目標や、それに伴う利益目標が達成できないことがあるかもしれません。割引は、シンプルで手っ取り早い戦略の一つではありますが、経営者にとっては必ずしも最善の選択とはいえないかもしれません。
しかし、今や割引は、小売店に関わらずあらゆるサービス提供者にとって避けられない施策になりつつあります。情報化が進み、お客さま自ら情報を収集・比較・検討して商品やサービスを選ぶ時代になりました。商品を購入する前により安く買える他店を探したり、インターネットなどを利用してよりお得な買い物をしたりと、お客さまに与えられる選択肢は広がる一方です。
もちろん、割引されていることで商品価値の低下を感じて「安いものは買わない」というお客さまもいるでしょう。一方、どこでも手に入る同一商品であれば「安くならない商品は買わない」というお客さまが多いのも事実です。
今回は、利益率が減っても確実な集客や売り上げにつながる計画的な割引セールの実施方法をいくつか紹介します。無駄な出費を最小限に抑えるためにますます慎重になっていくお客さまの購買心理を理解しながら、ただ在庫を減らすのではなく利益額が増える割引の参考にしてみてください。
目次
新商品・新メニューにはお試し価格を
新しく仕入れた商品や新メニューを通常価格より安く売り出してみましょう。
初めて店頭に並べる商品は、ロングセラー商品や人気商品に比べて売上実績や口コミなどの情報が少ないので、購入を決断するのに慎重になるお客さまも多いのではないでしょうか。そこで、たとえば、「新商品お試し価格」などと謳って通常価格より安価で提供してみます。購入を躊躇しているお客さまも、「この値段なら試してみてもいいかも」という気持ちになるかもしれません。万が一商品に満足しなくても、通常価格で買った場合と割引価格で買った場合とでは、損をしたと感じる程度も異なってくるのではないでしょうか。
しかし、いつまでも割引を適用していると、お客さまはその値段が通常だと思うようになってしまい、通常価格に戻した途端に売り上げが減ってしまうこともあるかもしれません。あくまでも、新商品に対して慎重なお客さまが購入に踏み切れるきっかけとして、新商品の値下げを期間を定めて実施しましょう。そのために、期間限定の割引であることを呼び込みやポップ広告を使って強調して宣伝する必要があります。
中には、値下げしている間だけ購入すると決めているお客さまもいるかもしれません。しかし、商品を気に入ってくれれば期間中は多めの購入が期待できます。お試し価格での購入をきっかけに商品に魅力を感じたお客さまは、その後も通常価格で購入を続けてくれるかもしれません。一方、新商品であることに魅力を感じるお客さまもいらっしゃいます。新しいもの好きのお客さまにとっては新商品の割引は嬉しいサービスです。さまざまなお客さまの心理を想像して割引を活用して利益を増やせるようにしましょう。
まとめ買いに割引をつける
前述の通り、割引を適用させると一つの売り上げから得られる利益率が低くなります。個数を多く売って総利益額を増やさなければ儲けにつながりません。数多く売るための戦略の一つが、まとめ買いに割引を適用することです。
まとめ買いに適している商品の代表的な例が、食料品や日用品などの消耗品です。缶詰など保存がきく食料品や、台所用洗剤やトイレットペーパーなど毎日使う消耗品は、いつかは買い足す必要があるので、安く買えるときになるべく多く購入して出費の合計額を抑えたいというお客さまの心理を狙った戦略です。
したがって、ある商品をまとめて購入した場合の金額は、個別で購入した時の合計金額より安価に設定する必要があります。同一商品を複数買った場合は5%割引にしたり、異なる商品でも、たとえば、シャンプーとコンディショナーのように、併せて購入・使用されることが多い商品の組み合わせを割引対象にしてみましょう。処分したい在庫と、まとめて買ったり組み合わせて買ったりすることで得と感じるお客さまの感覚を意識しながら、まとめ買い割引を打ち出してみましょう。
まとめ買いの場合は、安売りをアピールするよりは、小さな割引でも「たくさん買うほどお得になる」ことを前面に出して個数を売り上げて利益を増やすことが重要です。
決まった曜日や時間に割引をする
「木曜限定」、「毎日18時から30分限定」など、定期的に割引セールを実施してみましょう。決まった日時だけ通常価格より値下げした価格で購入できる商品を決めておきます。
知っているお客さまは、これを楽しみに定期的に来店してくれるかもしれないのでセールになる度に宣伝をする必要はあまりなく、お店の恒例行事の一つとしてお客さまに認知してもらう程度でも十分な効果が見込めるのではないでしょうか。定期的に実施される割引を知らないお客さまは、来店のタイミングを意識せず、通常価格で購入するかもしれませんし、知っていながらもタイミングを逃してしまうお客さまもいるでしょう。
知っている人や覚えていた人、または、たまたま居合わせた人だけが受けられる割引は、お客さまにとっても特別感のある購入体験を作り出すのではないでしょうか。
閑散期は割引でお得感を伝える
時期によって売れる商品・売れない商品、または、季節に応じて客入りが変化するサービスがあります。たとえば、海水浴場付近の宿泊施設です。海開き期間中は海水浴目的で訪れるお客さまの利用を多く見込めますが、海に入れない時期は客入りが落ちることも少なくないでしょう。
ただでさえ観光レジャーが限られるオフシーズンに集客を狙うのであれば、お客さまがわざわざ泊まりに来るための魅力が必要です。そこで、通常と同じサービスを受けることができながら繁忙期と比べて安く泊まれる料金設定をしてみます。食事や温泉など施設そのものに魅力があればあるほど、シーズンを外してわざわざ宿泊したいと希望するお客さまもいるのではないでしょうか。
一方、お客さまの需要が大幅に増える繁忙期には、限られた日程や条件に合致した空室を探すことに必死で、料金は必ずしも最優先の判断材料にならないこともあります。オフシーズンに削った利益を挽回する意味でも、繁忙期は通常価格より値上げした料金を設定するという手もあります。
条件を満たしたら割引を付与する
ある条件を満たしたお客さまだけが受けられる割引を考えてみましょう。
たとえば、団体割引です。考え方は、まとめ買いと似ています。4人以上で予約すると、コースメニューが一人当たり500円安くなったり、個展などの催し物の入場券を団体で予約をすると割引が適用されたりと、一人当たりが支払う単価を下げる代わりに一定数以上の購入を条件として定めるものです。
他にも、お店のウェブサイトやSNSなどにある情報を見た人だけが受けられる割引もアイデアの一つです。サイトを訪れないと発券できないクーポンなどを準備して、ウェブサイトへのアクセスを増やしましょう。クーポン目当てで訪れたお客さまにも、その他の宣伝や情報が目に触れるチャンスです。次回の割引を楽しみに頻繁にウェブサイトをチェックするお客さまもいるかもしれません。
友達や家族にお店の紹介をした場合、両者とも割引が受けられる紹介割引も効果的です。たとえば、お客さまが友人を2人連れてきた場合、それぞれが支払う料金が少なくなっても、通常価格で売り上げた場合に比べて失った利益分で新規客を2名獲得できたと考えることができます。もちろん、その後はリピーター客になってもらうことが重要です。
定期購入に割引をつける
最後に、定期購入につける割引を紹介します。最近では大手のショッピングサイトでも見かけるようになった定期便。たとえばAmazonでは特定の商品を「定期おトク便」として購入すると、通常価格から数パーセント値引いた価格で商品を手に入れられるようなシステムが設けられています。
特にネットショップで日用品などを販売している場合は、定期購入という選択肢を設け、5%から10%ほど安く手に入れられるよう価格を設定してみてはいかがでしょうか。日用品に限らずコーヒー豆や野菜など定期的に送ってもらえると便利なものを提供しているのであれば、定期購入を導入することで検討してみるといいでしょう。定期購入には、定期的に収入を得られるというメリットもあります。
定期購入をはじめてみたいけど、支払方法はどうすればいいのだろうと思うかもしれません。
Squareなら無料で簡単に定期購入をはじめられる機能(Square リンク決済)があります。 はじめるには定期購入を提供したい商品名と価格、支払頻度を設定するだけ。設定後、購入ページが自動で作成され、あとはSNSや既存のウェブサイトに購入ページへのリンクを貼り付けるだけで注文と支払いを受け付けられます(※)。購入ページにアクセスできるQRコードも自動で生成されるので、印刷して店舗に掲示し、定期購入だとお得なことを店頭で宣伝してみてもいいかもしれません。詳しくはこちらでも説明しています。
※購入ページの支払方法はクレジットカード決済のみです。決済ごとに決済手数料がかかります。決済手数料について、詳しくはこちらをご確認ください。
ECサイト不要でオンライン販売が可能に
Square リンク決済なら会計リンクを作成しSNSやメールで共有するだけ。ECサイトがなくても誰でも簡単ににオンライン販売が可能です。
この記事ではすぐに取り入れることのできる割引を複数紹介してきました。割引は上手に使うことができれば購入までのひと押しにもなってくれる強力なツールです。どの時期やタイミング、条件で値引きをするとターゲットに刺さるかをじっくり考えたうえで割引を賢く使い、売り上げアップを目指していきましょう。
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執筆は2017年6月15日時点の情報を参照しています。2024年7月4日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。
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