電子マネーを使った個人間送金は、キャッシュレス時代の新たな潮流として日本でも広まりつつあります。個人間送金はどんな場面で使われ、何が便利なのか、どんな種類があるのか、そして中小ビジネスにおける個人間送金のメリットについても解説します。
目次
個人間送金とは
「送金」というと一般的に、銀行口座間のお金のやりとりを指すイメージがありますが、個人間送金とは銀行を介さずに専用のスマートフォン・アプリなどを使い、電子マネーとして送金する方法です。多くの場合、インターネットを介したキャッシュレス決済サービスの一部として、個人間送金の機能がついたアプリを利用して行います。対面での現金のやりとりの代わりに利用でき、かつ銀行振込や現金書留とも違う新たな送金方法として、個人間送金は注目を集めています。
銀行を介さないことでスピーディーな送金が可能で、例として以下のような利用シーンが考えられます。
- 飲食会計の「割り勘」
- グループ旅行費のメンバー内での精算
- カンパなどの一括集金
- 家族への仕送り
- 謝礼などの支払い
個人間送金の方法
実際に個人間送金をする際の手順は、以下のようになります。アプリにより若干の違いはありますが、基本的な流れは同じです。
- アプリをダウンロードし、アカウントを作成
- チャージ(入金)する
- 送金先のアカウントを教えてもらう
- 電子マネー形式で送金する
送金を受け取った側は、受け取った電子マネーをそのまま決済に使う、または換金して現金として使うことになります。アプリにより、現金化ができるものと、電子マネーとしてのみ使用可のものがあります。
個人間送金が広まってきている理由として、以下のようなメリットが挙げられます。
- 現金を用意する必要がない
- プライバシーが守られる
- 週末や夜間も送金できる
- 個人間送金アプリ内の残高を支払いに使える(アプリによる)
現金での割り勘では、前もってATMでお金を下ろしておく、紙幣をくずして小銭を用意するなどの手間が必要になるだけでなく、食事やパーティーの後に現金を徴収して回ることで場の雰囲気を損ねてしまうこともあります。
個人間送金であればアプリの操作だけでその場で送金が完了し、履歴が残るので払い忘れや受け取り忘れも起こりにくいというメリットもあります。時間や曜日を気にせずいつでもスピーディーに利用できることも、個人間送金の特長です。また、感染症予防の観点では、現金のやりとりが減り、他人との接触を最小限に抑えられるという利点があります。
さらに、仕事や趣味の集まりで相手に謝礼を支払う場合なども、現金以外の選択肢としては、今までは銀行口座という重要な個人情報をやりとりする必要がありました。しかし個人間送金アプリを活用すれば、アカウント情報やQRコードを通じた必要最低限の情報交換だけで送金できます。
個人間送金ができるアプリの種類によっては、店頭でのキャッシュレス決済に対応しているものもあります。つまり、個人間送金で受け取ったお金を、そのまま日々の買い物や飲食代として使えるということです。まさに従来の現金でのやりとりをそのままアプリの機能に落とし込んだような、便利な使い方が可能となっています。
個人間送金を利用するデメリット
便利な個人間送金ですが、以下のようなデメリットもあります。
- 自分と相手が同じアプリを利用している必要がある
- アプリによっては現金を引き出せない
個人間送金を行うには自分と相手が同じアプリを持っている必要があります。また、アプリ間での個人間送金には電子マネーが使われ、アプリによっては現金として引き出しができないものがあります。換金を前提とした個人間送金の場合は、換金できるタイプのアプリを選ぶようにしましょう。電子マネーをそのまま決済に使う場合は、特に問題はありません。
日本における個人間送金の事例
キャッシュレス化の進んだ海外では、多様な個人間送金サービスが存在します。たとえば、アメリカとイギリスで使えるCash App(キャッシュアップ)は、アメリカのApp Storeのファイナンス・カテゴリーでランキング1位の人気アプリです。
日本でもさまざまな個人間送金サービスが誕生しています。以下では、代表的な個人間送金サービスを紹介しています。
LINE Pay(ラインペイ)
スマートフォンを使ったキャッシュレス決済サービスのうち、日本での利用率が高いLINE Payにも、個人間送金の機能があります。利用するためには事前に本人確認が必要ですが、普及率の高いアプリなので個人間送金にも便利です。LINE Payの電子マネーは、自分の銀行口座に送って現金として引き出すことができますが、その際に手数料がかかります。
PayPay(ペイペイ)
PayPayは、LINE Payと同様に利用者の多いスマートフォンのキャッシュレス決済サービス。相手のQRコードを読み込む、携帯電話番号・PayPay ID宛に送る、リンクを作成して送る、という3種類の手段で残高を送金できる機能があります。店頭での決済にPayPayを導入している店舗も増えているので利便性は高いといえるでしょう。
pring(プリン)
お金コミュニケーションアプリ「pring」の特長は、現金として引き出す際の手数料が無料な点です。ただし普及率は上述のアプリと比較すると普段から利用している人がそれほど多くないことが考えられるため、個人間送金の際に相手にもアプリを導入してもらうよう依頼する必要があるかもしれません。
楽天ペイ
楽天市場や楽天銀行など、楽天が提供しているサービスの利用者にとって便利な楽天ペイでも、個人間送金機能が利用できます。受け取る側には、楽天ペイのアプリは必要ありませんが、楽天会員への登録が必須です。
Kyash(キャッシュ)
個人間送金の後で、現金化せずに電子マネーとしてそのまま買い物などに使うのであれば、Kyashも便利です。アプリにチャージする際に、クレジットカードやデビットカードが使える点も、利便性が高いといえるでしょう。
Money Tap(マネータップ)
Money Tapは、24時間365日いつでも銀行口座から銀行口座への送金が行えるアプリです。2020年末の時点でMoney Tapに対応している金融機関は、住信SBIネット銀行、愛媛銀行、スルガ銀行の3行です。これらの金融機関の口座を持っている人同士なら、無料で送金ができます。
J-Coin Pay(Jコインペイ)
みずほ銀行と全国各地の金融機関が連携し、2019年からサービスを提供しているキャッシュレス決済アプリです。みずほ銀行もしくは参画している金融機関の口座を持っていれば利用できます。アプリと口座を紐付けておけば、ATMに行かずに、店舗での支払いや個人間の送金が可能です。
メルペイ
フリマアプリ「メルカリ」の売り上げをそのまま利用できるメルペイでは、2020年7月より個人間送金にも対応しています。ただし、利用者同士の送金しかできないので、送る方も送られる方もメルカリへの登録が必要です。
d払い
d払いは、NTTドコモによるキャッシュレス決済サービスです。d払いアプリの機能として、ユーザー同士の送金ができます。メルペイと同様、d払いのユーザー同士でしか送金ができないので、d払いを利用している家族や友人同士の送金に便利です。
au PAY
au PayはKDDIが提供するQRコード決済サービスです。au PAYでは、残高を他のユーザーに送金することができます。ただし、送金機能の利用にはauじぶん銀行口座が必要です。
「個人間送金」の中小ビジネスへのメリットとは?
個人間送金は、その名の通り「個人」と「個人」の間において使いやすいサービスですが、個人事業主やスモールビジネスを経営する人にとっても便利なビジネスツールとなり得ます。
従業員やフリーランスワーカーへの給与や報酬の支払いにも、双方が同じ個人間送金アプリを入れるだけで簡単に使えます。銀行間のオンライン送金のようにたくさんのステップを踏まずとも、簡単に送金でき、かつ履歴も双方にとって見やすいのでミスが起きにくいといえるでしょう。
さらに、ハンドメイドの製品を販売するようなスモールビジネスの決済シーンでも、個人間送金アプリの活躍が期待できます。また、移動が多い多忙な事業主にとっては、出先でもスマートフォン一つで給与や報酬の支払いを完結できるので、個人間送金は仕事の時短ツールとしても優れています。
前述で紹介した個人間送金サービスは、送金する側・される側が同じサービスのユーザーであることが前提になっていますが、お客様が必ずしもこれらのサービスを利用しているとは限りません。その場合、現金に代わる決済手段として簡単かつ便利なのがオンライン請求書やリンク型決済です。
オンライン請求書はメールやSNSのダイレクトメールを使って送れる請求書です。リンク型決済では、メールやLINEのメッセージに決済用リンクを貼り付けるだけで支払い画面にお客様を案内できます。どちらもネットショップを持っていない、メールやSNSでよくお客様とやり取りするという事業主におすすめです。
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「個人間送金」によって変わるビジネス
個人間送金サービスの存在が広がるにつれ、個人間送金に使うのと同じアプリでキャッシュレス決済ができる店舗は、ユーザーにとって利用しやすさが高まります。たとえば、飲食店におけるグループでの飲み会やパーティーで、幹事が個人間送金アプリで参加者から会費を徴収し、そのまま同じアプリで店に支払いをする、といった現金が介在しない支払いのケースは今後、デジタル時代の発展と共に増えていくことが予想されます。そうした背景から、店舗側が時代に即したキャッシュレス決済の方法を導入することは、今後ますます不可欠になっていくと考えられます。個人間決済に対応したアプリは、ビジネスとユーザーの双方に便利さをもたらすツールとして、さらに発展していくのではないでしょうか。
個人間送金サービスの存在が広がるにつれ、個人間送金に使うのと同じアプリでキャッシュレス決済ができる店舗は、ユーザーにとって利用しやすさが高まります。たとえば、飲食店におけるグループでの飲み会やパーティーで、幹事が個人間送金アプリで参加者から会費を徴収し、そのまま同じアプリで店に支払いをする、といった現金が介在しない支払いのケースは今後、デジタル時代の発展と共に増えていくことが予想されます。そうした背景から、店舗側が時代に即したキャッシュレス決済の方法を導入することは、今後ますます不可欠になっていくと考えられます。個人間決済に対応したアプリは、ビジネスとユーザーの双方に便利さをもたらすツールとして、さらに発展していくのではないでしょうか。
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この記事の公開日は2020年3月27日です。最終更新日は2023年6月27日です。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash