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実は最も使われているのは現金?米国のキャッシュレス事情に迫る

Square (スクエア), ブログ編集者

近年現金やクレジットカードだけでなく、スマートフォンやウェアラブルデバイスを読み取り端末にかざす、などあらゆる方法で支払いができるようになりました。このように支払い方法が多様化していることもあり、世界各国で加速しているのがキャッシュレス化です。今回は日本の二倍ほどのキャッシュレス決済比率(※)を誇る米国でキャッシュレスが浸透した背景や、近年米国でキャッシュレスを広めているサービスに迫ります。

※硬貨や紙幣ではなく、デジタルで行われる決済の比率

米国でキャッシュレス化が進んだ経緯

経済産業省が2018年に発表した「キャッシュレスの現状と推進」によると、2015年時点での米国のキャッシュレス比率は41%、同報告で18%と発表されている日本のキャッシュレス比率の二倍に及びます。一体米国ではどのようにして、キャッシュレス化が浸透したのでしょうか。

参考:キャッシュレスの現状と推進(経済産業省)

実はキャッシュレス決済の多くを占めるクレジットカードを世界に初めて送り出したのは、米国です。時は第2次世界大戦後、1950年。きっかけはあるレストランで起きた出来事でした。起業家であるマクナマラは、食事を終えると財布がないことに気づきます。その日は夫人に電話をし現金を届けてもらったものの、その出来事を境に「後払いできる方法はないだろうか」と考えるようになり、結果として食事を共にした友人の弁護士、シュナイダーと設立したのが「ダイナースクラブ」です。

当時のダイナースクラブは手帳のような小冊子からチケットを切り離す形で使われており、富裕層に向けた後払い方法とされていたそうです。その後、1978年にシアトルのFirst National Bankから誕生したのがデビットカードです。発行当初は、企業の管理職者を対象に提供されていました。

この時点ではクレジットカードもデビットカードも使用できる対象が限られていましたが、1994年には個人向けのオンラインバンキングサービスが開始されたり、1998年にはオンライン決済サービスのPayPalが創立されたりと、90年代からはより幅広い層に手が届く決済方法として少しずつ形を変えていきました。その後、モバイルなどのテクノロジーの発展で決済手段の幅はさらに広まり、2009年にはスマートフォンなどを用いて個人間で送金がしあえるPayPal傘下Venmo(ヴェンモ)がミレニアル世代を中心に流行、2011年から2015年にかけてはApple PayやGoogle Payなどをはじめとするモバイルウォレットサービスが盛んとなりました。

参考:
ダイナースクラブの歴史(三井トラストクラブ)
米国におけるキャッシュレス化の現状(JETRO)

キャッシュレス決済が国内で浸透していく一方で、店舗の完全キャッシュレス化には反対の声も上がっています。

Pew Research Centerの統計によると、「一週間を通して現金をほとんど使わない」と答えた人の中には、年間所得が7.5万ドル以上の所得者が、年間所得が3万ドル以下の低所得者層の二倍以上にもおよぶことが判明しており、クレジットカードや銀行口座を持てない低所得者がキャッシュレス店舗で支払えないことが問題視されています。ペンシルベニア州フィラデルフィアではこれを理由に、2019年2月末にキャッシュレス型店舗を規制する法律が可決されています。フィラデルフィアに続いてニュージャージー州も同じ法案を可決しており、ワシントンD.C.やサンフランシスコ、ニューヨークなどの大都市でも同法案が議論されています。

参考:
世界的にキャッシュレス化が進んでいるのに、なぜ米国は反発するのか(2019年03月28日、ITメディア)
More Americans are making no weekly purchases with cash(2018年12月12日、Pew Research Center)

このようにキャッシュレス化をより国内で浸透させていくなかで、現金での支払いを希望する層が除外されてしまわないよう、公平な対処が求められています。

米国で最も利用されているキャッシュレス方法とは

米国でのスマートフォン保有率は、2019年時点で約81%であると発表されています。しかしながらスマートフォンなどの端末で行なうモバイル決済はそれに比例する伸びを見せておらず、CNBCに掲載された調査によると、米国で最も使用されているキャッシュレス決済方法はクレジットカード(80%)、続いてデビットカード(59%)だと発表されています。次にオンラインでの支払いを主とするPayPal(44%)、モバイル決済ではApple Pay(9%)が最も多い結果になりました。

参考:Mobile payments have barely caught on in the US, despite the rise of smartphones(2019年8月29日、CNBC)

なお、米国のキャッシュレス決済比率は2016年時点で46%であると発表されています。2007年時点の33.7%のキャッシュレス決済比率と比較すると増加が伺えるものの、アトランタ、ボストン、リッチモンド、サンフランシスコの連邦準備銀行(Federal Reserve Bank)が共同で行なった米消費者の決済行動の調査によると、実は全体の支払いの多くを占めるのは日本と同様、現金(30%) だと発表されています。

参考:
The 2017 Diary of Consumer Payment Choice(Federal Reserve Bank of Atlanta)
米国におけるキャッシュレス化の現状(JETRO)
キャッシュレス化推進に向けた国内外の現状認識(野村総合研究所

米国でのタッチ決済(NFC)の利用状況

前述の調査結果のように、タッチ決済(NFC)の一種であるモバイル決済は未だ少数派であるといえますが、Appleは全米でトップ100に入る小売店のうち、74社はApple Payに対応済みだと発表しており、モバイル決済の普及にも力を入れている様子が伺えます。Auriemma Consulting Groupの調査によると、最も使用されているモバイル決済方法はApple Pay(77%)、続いてSamsung Pay(17%)、Google Pay(6%)とされています。Apple Payが誕生した2014年前後には、大手チェーン店の全系列店で使用できるよう決済端末が刷新されたこともあり、今では全国9,800店舗以上あるドラッグストアチェーンのCVSやWalmartに続き、世界で二番目に大きい小売業者であるCostco、7-Elevenなどで使用ができるようになっています。

一方で世界最大の売上高を誇る大手小売業者のWalmartは、QRコードの読み取りで決済するWalmart Payを自社アプリ内に2015年にローンチ、米国で売上高第5位とされている大手小売業者のTargetでも、同じくスマートフォンから決済できる独自のシステムが採用されています。

米国ではこのようにスーパーやドラッグストアなど身近な場所での使用を可能とすることで、国民のタッチ決済への親しみが少しずつ増しているようです。

参考:
Apple Pay Makes Up 77% of Mobile Payments Among Debit Card Users(2018年10月4日、Auriemma Insights)
Apple Pay登場の裏にあった本当の戦い(2016年10月19日、ASCII.jp)
Apple Pay coming to Target, Taco Bell and more top US retail locations(2019年1月22日、Apple)

近年、米国で話題を呼ぶキャッシュレスサービスとは

米国でも伸びを見せているキャッシュレス決済は、具体的にどのようなサービスで使用されているのでしょうか。ここでは近年米国でキャッシュレスを広めているサービスを四つ紹介します。

1, 列に並ばずにピックアップ。アプリから注文、事前決済ができるサービス

シアトル発のコーヒーチェーン大手Starbucksでは、店舗に到着する前に注文から決済まで完了できる「Mobile Order and Pay(モバイル・オーダー・アンド・ペイ)」を2010年にStarbucksのアプリ内でローンチしています。列に並ばずにピックアップできることを売りとするこの決済方法は、eMarketerの調査によるとモバイル決済の中でApple PayやGoogle Payよりも多くのユーザーに利用されているそうです。

また、Starbucksの他にもハンバーガーチェーンのShake Shackやタコスとブリトーが人気のメキシコ料理のファストフードチェーンChipotleでも同じ機能が採用されています。

参考:
Starbucks App Leads Mobile Payment Competitors(2018年5月22日、eMarketer)
Let’s Get App-y! (Shake Shack)
You can now get burritos delivered directly through Chipotle’s app(2018年8月28日、CNBC)

2, 割り勘時の「小銭が足りない……」にはもう困らない。個人間送金アプリ

2017年時点で200万店舗以上での使用が可能となっているのが、PayPal傘下の個人間送金アプリ「Venmo」です。外食時の割り勘はもちろんのこと、家賃の折半などにも活用されており、主に若者の間で人気を博しています。

使用するにはアプリをダウンロードし、支払いに使用する銀行口座、クレジットカード情報、電話番号を登録するだけ。銀行口座からの支払いであれば手数料なしで支払えるのも、好評を得ている理由の一つです。

Venmoの他にも米大手金融機関が運営する決済サービス「Zelle(ゼル)」や決済サービスSquareの「Cash App(キャッシュ・アップ)」などの個人間送金アプリが登場しており、割り勘にはキャッシュレスが当たり前となりつつあるようです。

3, 車での移動もキャッシュレスで。配車サービスアプリ

条件を満たせば一般人がタクシー運転手として乗客を乗せられるサービスが日常に浸透しています。代表的なのは2009年に誕生した「Uber(ウーバー)」、2012年以降は「Lyft(リフト)」も同様のサービスを提供しはじめました。乗客はダウンロードしたアプリから近くにいる運転手を選択し、目的地を指定することで配車ができるようになっています。

現金での支払いも可能ですが、アプリに紐づけているクレジットカード、またはあらかじめチャージできる「Uber Cash」で支払えるのが特徴的です。クレジットカードやUber Cashを選択すると、あらかじめ登録した出発点と到着地をもとに料金が自動精算され、現金のやりとりをせずに目的地まで移動ができます。タクシーよりも低価格で乗れることから、今では主要の移動方法として親しまれているようです。

4, スモールビジネスでもクレジットカード決済の導入を実現。革新的な決済システム

以前まではPOSレジの導入費用が高額であったことから、スモールビジネスや個人事業主がクレジットカードでの決済を受け付けるのはあまり現実的ではありませんでした。そこでスモールビジネスのキャッシュレス化を実現したのが、「Square」です。

POSレジの月額費用は無料なうえ、クレジットカード手数料が米国では2%台と安価、かつ最短で翌日に入金されるなど、スモールビジネスオーナーにやさしい料金体系を提供し、ビジネスの大小問わず、クレジットカードが広く受け付けられるようになりました。このような決済システムの登場を受け、より多くの店舗でクレジットカードが使用できるようになっていることも、米国のキャッシュレス化に拍車をかけていると考えられます。

今回は着実に広まりを見せるアメリカでのキャッシュレス事情を見てきました。次回はイギリスのキャッシュレス事情に迫ります。

▶︎▶︎▶︎ イギリスのキャッシュレス事情

(2) イギリス
(3) 中国
(4) 韓国
(5) オーストラリア

執筆は2019年9月27日時点の情報を参照しています。
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