※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。
フリーランスを含む個人事業主のなかには、確定申告に備えてクライアントから送られてきた「支払調書」を大切に保管している人も多いのではないでしょうか。その一方で、「支払調書は何のための書類なのか」「支払調書を送ってくれる企業と、送ってくれない企業があるのはなぜなのか」などの疑問を抱いたこともあるかもしれません。
実は支払調書は、フリーランスの確定申告に必要な書類ではなく、企業が税務署に提出するために作成するものです。確定申告の際には、自身の1年間の売り上げや、天引きされた税金額を確認するための参考資料として活用できます。
この記事では、支払調書の基本的な見方や確定申告での活用法、支払調書を発行する側になった場合の対処法など、個人事業主が知っておくべき知識を網羅的に解説します。
📝この記事のポイント
- 支払調書は、報酬の支払額や支払い先などを税務署に報告するための書類
- 確定申告への添付は不要。申告は自分の帳簿が主で、支払調書は照合用の参考資料
- 紛失や未交付でも、請求書・入金明細があれば問題なく申告可能
- Square 請求書なら、請求・入金状況と売上データを自動で集計でき、申告準備がラクに
目次
- 支払調書とは支払われた報酬額が記載された書類
・源泉徴収票との違い
・支払調書はなぜ必要なのか
・支払調書の見方
・支払調書の発行時期 - 支払調書は確定申告には必要ない
・支払調書は確定申告に添付する必要はない
・確定申告時の支払調書の活用法
・支払調書がなくても確定申告はできる - 支払調書を見ながら確定申告する場合の書き方【e-Tax入力方法】
・支払金額は「事業所得」または「雑所得」に入力する
・支払者の情報と源泉徴収税額を入力する - 個人事業主が支払調書の作成側になるケースと書き方
・支払調書の作成が必要なケースと提出義務について
・支払調書の書き方 - 無料のSquare 請求書で日々の取引記録と請求発行をラクに!
- よくある質問 (FAQ)
・支払調書を紛失した場合、再発行はしてもらえる?
・支払調書が届かない場合はどうすればいい?
・確定申告は、支払調書がいくら超えたら必要?
・まとめ
支払調書とは支払われた報酬額が記載された書類
支払調書とは、企業がフリーランスや個人事業主といった個人に報酬を支払った場合に、「誰に」「どのような名目で」「年間でいくら支払い」「いくら税金を源泉徴収(天引き)したか」といった内容を、税務署に報告するために提出する書類です。
生命保険の一時金や不動産の使用料などさまざまな形式の支払調書がありますが、フリーランスや個人事業主などが受け取る支払調書は「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」と呼ばれます1。
支払調書は支払い側の企業が税務署に報告するためのもので、受け取る側の個人事業主にとっては、1年間の取引内容を確認するための控えのような役割を果たします。
源泉徴収票との違い
支払調書と源泉徴収票には以下のような違いがあります。
| 項目 | 支払調書 | 源泉徴収票 |
|---|---|---|
| 対象者 | 個人事業主 フリーランスなど |
会社員(公務員) アルバイトなどの給与所得者 |
| 対象となる支払い | 業務委託の報酬、料金など | 給与、賞与など |
| 主な記載内容 | ・支払われた報酬額 ・支払いの内訳 ・源泉徴収額 |
・支払われた給与や賞与の金額 ・支払った所得税や社会保険料などの金額 ・源泉徴収額 |
| 税務署への提出義務 | あり | あり |
| 支払先への交付義務 | なし | あり |
| 確定申告での扱い | 添付不要 | 給与所得者が確定申告する際に添付が必要な場合がある |
源泉徴収票は、企業が従業員に対して交付する義務のある書類で、支払った給与や源泉徴収額のほか、社会保険料をはじめさまざまな控除額が記載されています2。企業に勤めた経験がある人は、受け取った記憶があるかもしれません。
一方、支払調書は、業務委託先に支払った報酬について税務署に報告する書類であり、源泉徴収票とは対象や提出先が異なります。たとえば期の途中で企業を退職してフリーランスになった人のもとには、元の勤務先から源泉徴収票、今のクライアントから支払調書が届く場合があります。
就業形態によって、発行される書類が異なることを理解しておきましょう。
支払調書はなぜ必要なのか
支払調書は、税務署がお金の流れや納税の申告状況を正しく把握するために必要な書類です。
たとえば、報酬を支払った企業は、法律にもとづいて「Aさんに原稿料として年間XX円支払いました」という内容の支払調書を税務署に提出します。一方で、報酬を受け取ったAさん(個人事業主)は、自身の帳簿にもとづいて確定申告をします。
すると税務署は、企業から提出された支払調書とAさんから提出された確定申告書の内容を照合し、申告された売上額が正しいか、報酬から天引きされた源泉徴収税額が適切に納められているかを確認します。
支払調書は、申告内容の正しさを裏付けるための、税務署にとっての確認資料なのです。
そもそも支払調書は「法定調書」の一種として、所得税法などの法律によって税務署への提出が義務付けられています。2025年9月時点で法定調書は63種類あり、そのうちの35種類が支払調書です1。
支払調書の見方
支払調書にはいくつかの項目がありますが、特に確認すべきなのは以下の4点です3。
1.支払を受ける者
報酬の支払いを受けた人の住所・氏名・マイナンバーが記載されます。
2.区分
報酬の具体的な内容が記載されます。たとえば「原稿料」「デザイン料」「講演料」などです。
3.支払金額
1年間(1月1日〜12月31日)に、クライアントから支払われた報酬の合計額です。基本的には消費税込みの金額が記載されていますが、税抜きの金額が記載されている場合もあります。
4.源泉徴収税額
支払金額から天引きされた所得税および復興特別所得税の合計額です。
支払調書の発行時期
支払調書は、報酬が支払われた年の翌年1月31日までに、支払い側の企業が税務署へ提出します。そのため、報酬を受け取った個人事業主の手元には、翌年の1月中旬から下旬ごろに届くのが一般的です。
ただし、企業には支払調書を報酬の受取人に発行する法的な義務はありません。あくまで企業の厚意で発行されているケースが多いのが実情です。

支払調書は確定申告には必要ない
支払調書を確定申告書に添付する必要はありません。確定申告は、あくまで自身で作成した帳簿に基づいて行うのが原則です。支払調書は、その帳簿の内容が正しいかを確認するための補助的な書類と理解しておきましょう。
支払調書は確定申告に添付する必要はない
支払調書の添付が不要な理由は、報酬を支払う企業がすでに同じ内容の書類を税務署に提出しているからです。税務署は、企業から提出された支払調書によって、誰にいくら支払いがあったかを把握しています。
支払調書を添付してしまってもペナルティはありませんが、手間を省くためにも添付は不要であると覚えておきましょう。
確定申告時の支払調書の活用法
添付は不要ですが、支払調書は確定申告の準備において役立ちます。主な活用法は「売り上げ」と「源泉徴収税額」の確認です。
1年間の取引について自身が帳簿に記録した売上額と、各クライアントから届いた支払調書の「支払金額」の合計額を照らし合わせます。もし金額にズレがあれば、記帳漏れや間違いがある可能性があります。
また、複数のクライアントから源泉徴収されている場合、確定申告書にはその合計額を記入します。税金の支払いに関して過不足が生じないよう、源泉徴収税額にズレがないかを確認しましょう。
ただし、支払調書の金額と帳簿の金額が必ずしも一致しないケースもあります。これは、売り上げを数えるタイミングの違いによるものです。
一般的に支払調書は、企業が実際に報酬を支払った日を基準に作成します。一方、個人事業主が確定申告する売り上げは、仕事が完了して請求する権利が生まれた日を基準(発生ベース)として計上するのが原則です。
たとえば、2025年12月に仕事を終えて請求した報酬が、2026年の1月に振り込まれたとします。この場合、帳簿上は「2025年の売り上げ」として計上しますが、クライアントの支払調書には含まれないため、ズレが生じます。
このようなズレが生じること自体は、会計上のルールによるものなので問題ありません。基本的には自身の帳簿に基づいて申告を行い、支払調書は補助的な資料として活用しましょう。もし判断に迷う点や不安な点があれば、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
支払調書がなくても確定申告はできる
支払調書がなくても確定申告はできます。支払調書はあくまで参考資料として活用すべきものであり、手元になかったとしても確定申告の義務がなくなるわけではありません。
もし支払調書が届かない場合は、以下の方法で売り上げと源泉徴収税額を確認しましょう。
- 自身が発行した請求書の控え
- クライアントとの契約書
- 事業用銀行口座の入出金明細
これらの記録をもとに、1年間の売り上げと、報酬から天引きされた源泉徴収税額を計算し、確定申告書に記入します。日々の記帳を正確に行っておけば、支払調書の有無にかかわらず、スムーズに申告を進められるでしょう。
支払調書を見ながら確定申告する場合の書き方【e-Tax入力方法】
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用したe-Taxでの入力方法を例に、支払調書の内容をどこに入力するのかを解説します。
支払金額は「事業所得」または「雑所得」に入力する
まず、確定申告書作成コーナーのトップ画面から「作成開始」に進み、自身の所得の種類を選択します。個人事業主の報酬は、多くの場合「事業所得」または「雑所得」です。
事業所得の場合は、入力画面の「売上金額(収入金額)」欄に支払調書の「支払金額」の合計額を入力します。雑所得の場合は「収入金額」欄に、支払調書に記載されている内容を1件ずつ入力していきます。
ただし、先述した通り、支払調書の金額が実態とズレているケースもあるため、基本的には手元の帳簿を確認しながら入力しましょう。
支払者の情報と源泉徴収税額を入力する
次に、源泉徴収税額を入力します。この入力を行わないと、税金を二重に支払うことになるため、忘れないよう気をつけましょう。
事業所得の場合は「源泉徴収された収入の内訳」入力画面に進み、種目・収入金額・源泉徴収税額・支払者の名称などを入力します。
雑所得の場合は、収入金額を記載したのと同じ画面に源泉徴収税額の記入欄があるので、支払調書に記載されている内容を入力しましょう。
複数のクライアントから源泉徴収されている場合は、すべての支払調書についてこの入力作業を繰り返します。すべて入力し終えると、源泉徴収税額の合計額が自動で計算され、申告書に反映されます。
個人事業主が支払調書の作成側になるケースと書き方
普段は支払調書を受け取る側の個人事業主も、特定の業務を外部に依頼し報酬を支払う立場になった場合、支払調書を作成して税務署に提出する義務が生じることがあります。
支払調書の作成が必要なケースと提出義務について
個人事業主が支払調書の作成・提出義務を負うのは、主に以下二つの要件を満たすケースです。
- 源泉徴収義務者であること
- 特定の報酬を一定額以上支払っていること
従業員を雇用し給与を支払っている個人事業主は、基本的に「源泉徴収義務者」となります4。源泉徴収義務者が所得税法や租税特別措置法で定められた特定の報酬を支払った場合に、支払調書(報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書)の作成が必要です5。
| 主な取引の種類 | 支払調書の提出が必要な金額 |
|---|---|
| 弁護士、税理士、司法書士などへの報酬 フリーのデザイナーへのデザイン料 フリーのライターへの原稿料 プロスポーツ選手への報酬 |
5万円超 |
| 保険外交員への報酬 広告宣伝のための賞金 |
50万円超 |
上記の報酬を支払った場合は、支払った年の翌年1月31日までに、所轄の税務署へ支払調書を提出しなくてはなりません。
なお、源泉徴収の対象にならない報酬でも、一定額を超える支払いがあると支払調書の発行が必要なケースがあります。不安な場合は税務署や税理士に確認しておきましょう。
支払調書の書き方
支払調書の様式は、国税庁のウェブサイトからダウンロードできます。記載する主な項目は、以下の通りです。
| 記載項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 支払を受ける者 | 報酬を支払った相手(個人)の住所、氏名、マイナンバーを記載します。 マイナンバーの提供を受ける際は、利用目的を伝え、本人確認を徹底しましょう。 |
| 区分 | 「デザイン料」「原稿料」など、支払った報酬の内容を具体的に記載します。 |
| 細目 | 必要に応じて、報酬の計算基礎(例:〇〇の原稿 20ページ分)などを記載します。 |
| 支払金額 | 年間(1月1日〜12月31日)に支払いが確定した金額を記載します。 |
| 源泉徴収税額 | 支払金額から源泉徴収した税額(所得税および復興特別所得税の合計額)を記載します。 |
| 摘要 | 支払いを受ける人が源泉徴収税の猶予を受けた場合、源泉徴収の免除証明書を交付されている場合、あるいは法律上源泉徴収の必要がない場合などにその旨を記載します。 また、広告宣伝のために支払った賞金が金銭以外の場合もその詳細を記載します。 |
| 支払者 | 支払った側の住所または所在地、氏名または名称、マイナンバーまたは法人番号を記載します。 |
上記の項目のなかで特に注意したいのがマイナンバーです。
「支払いを受ける人」が個人の場合、法定調書にマイナンバーを記載することが法律で定められています。支払先(フリーランスや個人事業主)からマイナンバーの提供を受けられない場合は空欄のままでかまいませんが、記載がない理由を税務署から確認される可能性があります。そのため、支払先に対してマイナンバーの提出を求めた記録を残しておき、税務署から問い合わせがあったときにその旨を明らかにできるよう備えておきましょう。
なお、本人に送付する支払調書には、マイナンバーの記載は不要です。
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支払調書の有無にかかわらず、正確な確定申告を行うためには日々の売り上げや取引をこまめに記録しておかなければなりません。しかし、手作業での記録や管理は手間がかかり、ミスも起こりがちです。
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よくある質問(FAQ)
支払調書と確定申告に関して多く寄せられる質問にお答えします。
支払調書を紛失した場合、再発行はしてもらえる?
支払調書を紛失してしまった場合、発行元の企業に依頼すれば再発行してもらえる可能性があります。ただし、企業には支払調書を発行する法的な義務はないため、実際に対応してもらえるかは企業次第です。
もし再発行が難しい場合でも、確定申告は可能です。自身の帳簿や銀行の入出金明細、請求書の控えなどをもとに、売り上げと源泉徴収税額を計算して申告しましょう。
支払調書が届かない場合はどうすればいい?
まず、支払調書の発行時期である翌年1月末頃まで待ってみましょう。それでも届かない場合は、一度、クライアントに発行の予定があるかどうかを確認してみることをお勧めします。
先述の通り、企業には受取人への支払調書の発行義務はありません。そのため、確認しても発行してもらえない、またはそもそも発行する予定がないというケースもあります。その場合は、自身の帳簿記録に基づいて確定申告を進めてください。 申告が遅れると、無申告加算税や延滞税の対象となる可能性があります。
確定申告は、支払調書がいくら超えたら必要?
確定申告が必要かどうかは、支払調書の金額で決まるわけではなく、1年間の「所得」によって決まります。所得とは、売り上げから必要経費を差し引いた金額のことです。
個人事業主の場合、所得が基礎控除の48万円(2025年分以降は最大95万円)6を超えると、原則として確定申告が必要です。帳簿を見ながらすべての売り上げを合計し、そこから事業にかかった経費を差し引いた金額で判断しましょう。
まとめ
支払調書は、企業が税務署への提出を義務付けられている「法定調書」という公的な書類です。一方で、報酬の支払先である個人事業主への交付は義務付けられていません。そのため、支払調書を受け取っていたとしても、確定申告での書類添付は不要です。
また、自身の1年間の売り上げや源泉徴収税額を確認する際に支払調書は活用できますが、売り上げの計上基準の違いなどから、実際の帳簿の金額とズレが生じている可能性もあります。支払調書はあくまで参考資料として扱い、日々の取引を記録した自身の帳簿を基に正しく申告しましょう。
もし日々の帳簿付けに負担を感じているなら、Square 請求書のようなツールで経理業務の自動化を進めるのも一つの手です。また、個別の判断に迷う場合は、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。
Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。
執筆は2020年1月21日時点の情報を参照しています。2025年9月22日に記事の一部を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash

