※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。
個人事業主として生命保険に加入していても「この保険料は経費にできるのか?」と疑問に思う方は少なくありません。結論からいうと、個人事業主本人が自分や家族のために支払う生命保険料は、原則として事業の必要経費にはできません。国税庁は、必要経費を「収入を得るために直接要した費用」や「業務上の費用」としており、家事上の費用は必要経費にならないとしています1。
一方、一定の生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合には、必要経費ではなく「生命保険料控除」という所得控除を受けられる場合があります2。また、従業員向けの保険や店舗・事務所・業務用車両などにかける保険は、契約内容や事業との関係によって必要経費になることがあります。
この記事では、生命保険を経費に計上できるかどうかの判断基準や勘定科目の選び方、会計処理における注意点などを詳しく解説します。
📝この記事のポイント
- 個人事業主本人の生命保険料は原則として必要経費にできないが、要件を満たせば生命保険料控除の対象になる
- 事業用口座から本人の生命保険料を支払った場合は「事業主貸」で処理する
- 従業員向け保険は契約内容・対象者・受取人などにより税務上の扱いが異なる
- 店舗・事務所・業務用車両など事業用資産の損害保険料は、事業使用分を必要経費にできる
- Squareはfreeeやマネーフォワードと連携でき、売上データの会計ソフトへの自動反映で経理作業を効率化できる
目次
- 生命保険は経費にできる?ポイントは「事業関連性」
・本人の生命保険料は原則として経費にできない
・経費にできるケース
・経費にできないケース - 保険料の勘定科目の選び方。個人事業主が帳簿に記載する際の注意点
・よく使われる勘定科目
・青色申告・白色申告での扱い
・仕訳の具体例 - 保険にまつわる会計処理の注意ポイント
・節税目的だけで保険に加入するのはNG
・個人用と事業用を分けて管理する
・家族を従業員にしている場合は慎重に
・会計ソフトとの連携で会計業務の効率化を検討 - Squareなら会計ソフトとの連携も可能
- まとめ
- よくある質問
・個人事業主本人の生命保険料は経費にできますか?
・生命保険料の勘定科目は何ですか?
・生命保険料控除と経費は何が違いますか?
・従業員の生命保険料は福利厚生費にできますか?
・生命保険料控除はいくらまでですか?
生命保険は経費にできる?ポイントは「事業関連性」

個人事業主が支払う保険料は、全額が無条件で経費に計上できるわけではありません。用途や被保険者、受取人などの条件から、その保険契約が事業と直接関係しているか、事業を継続するために必要かどうかが重視されます1。
生命保険、損害保険、社会保険では税務上の扱いが異なります。まずは大まかな違いを整理しておきましょう。
| 保険料の例 | 原則的な扱い | 主な処理 |
|---|---|---|
| 個人事業主本人の生命保険料 | 必要経費にしない | 要件を満たせば生命保険料控除。事業用口座から払った場合は事業主貸 |
| 個人事業主本人の国民健康保険料・国民年金保険料 | 必要経費にしない | 社会保険料控除 |
| 店舗・事務所の火災保険料 | 事業使用分は必要経費 | 損害保険料など |
| 業務用車両の自動車保険料 | 事業使用分は必要経費 | 損害保険料、車両費など |
| 従業員向け保険 | 契約内容により異なる | 福利厚生費、給与など。契約条件を確認 |
本人の生命保険料は原則として経費にできない
事業主本人を対象とする生命保険は、個人への保障を目的とするため原則として経費に計上できません。ただし、要件を満たす生命保険契約等の保険料であれば「生命保険料控除」の対象となる場合があります2。
事業用口座から本人の生命保険料を支払った場合は「事業主貸」で処理します。個人口座から支払った場合は事業の必要経費ではないため、事業の帳簿には記帳しません。
経費にできるケース
個人事業主が支払う保険料でも、事業との関連性が明確で、業務の継続や従業員の保護といった目的がある場合には、経費として計上できます。ただし、個人と事業用とで兼用している場合は、家事按分により事業分のみを経費に計上します1。
火災保険料
事務所や店舗にかかる火災保険料は、「損害保険料」または「保険料」の勘定科目で計上します。自宅兼事務所の場合は、使用面積や保険金額などの合理的な基準で事業使用分を按分します。
地震保険料
自宅兼事務所の場合、住居部分がある併用住宅は一般的な地震保険の対象にできます5。地震保険料控除の対象となるのは居住用部分に対応する保険料で、事業用部分に対応する保険料は対象外です。店舗併用住宅などで居住用部分と事業用部分が1つの契約に含まれる場合は、原則として居住用部分に対応する保険料を区分して控除額を計算します6。
自宅とは別に事務所や店舗を構えている場合、一般的な「地震保険」は居住用の建物および収容される生活用動産(家財)のみが対象のため利用できませんが、代わりに民間の損害保険会社が提供する「地震危険補償特約」や「BCP地震補償保険」などを活用できます78。これら事業向け保険の保険料は、地震保険料控除の対象にはなりません。一方、事業のために支払う損害保険料として、必要経費にできる場合があります16。
自動車保険料
事業用の自動車・バイクにかかる保険料は、「損害保険料」または「車両費」の勘定科目で計上します。私用と兼用している場合は、事業使用割合に応じて按分します。
従業員の社会保険料
健康保険・介護保険・厚生年金・雇用保険・労災保険など、事業主が法的に負担する従業員の社会保険料は「法定福利費」として経費に計上できます。
従業員の傷害保険料
従業員の業務災害や通勤中の事故などに備えて事業主が加入する傷害保険は、福利厚生を目的として従業員を広く対象とし、事業主が保険料を負担する場合、保険料を「福利厚生費」として経費計上できる場合があります。たとえば、事業主が契約者となり、全従業員または合理的な基準で対象となる従業員を被保険者とする傷害保険などが該当します10。
一方、役員や特定の従業員だけを対象とする場合や、従業員本人が契約した保険の保険料を事業主が代わりに負担する場合は、保険料がその従業員の給与所得として扱われることがあります9。そのため、契約者、被保険者、保険金・給付金の受取人、対象となる従業員の範囲を確認することが重要です。
また、保険金を事業主が受け取り、その後従業員に見舞金を支給する場合は、受け取った保険金と支給した見舞金をそれぞれ別の取引として処理します。従業員やその親族に対し、一定の基準に従って支給する病気見舞金などは、福利厚生費として扱える場合があります。
なお、人間ドックや健康診断、予防接種など、従業員の医療・衛生・保健のために事業主が負担する費用も、福利厚生費として計上できる場合があります。
経費にできないケース
個人事業主が支払う保険料でも、事業との関連性がないと判断されるものは経費として認められません。所得控除の対象となる場合もありますが、事業主本人や家族の生活保障を目的とする保険は、私的な支出として扱います。
国民健康保険料・国民年金保険料
個人事業主本人が加入する国民健康保険および国民年金の保険料は経費に計上できません。ただし、「社会保険料控除」として所得控除が可能です。
事業主本人の生命保険料
事業主本人の生命保険料は原則として必要経費になりません。ただし、一定の要件を満たす場合は「生命保険料控除」の対象となります。
個人契約の火災保険料・地震保険料
個人的に加入した火災保険料や地震保険料についても、私的資産にかかる部分は経費にはなりません。自宅兼事務所にかかる保険料は、事業使用分を合理的に区分できる場合、その部分を経費にします。事務所としての利用がない自宅など個人契約の私的資産に対する地震保険は、経費にはできませんが、一定の要件を満たせば「地震保険料控除」の対象になります。
傷害保険料(事業主・専従者向け)
事業主本人を被保険者とする傷害保険の保険料は、個人的な保障を目的とする場合、原則として必要経費にはできません。一方、青色事業専従者を対象とする傷害保険でも、他の従業員についても同様の条件で加入しているなど、従業員としての福利厚生を目的としたものと認められる場合は、必要経費にできることがあります。単に家族の一員として加入したと認められる場合は、必要経費にはできません。
ひとり親方の労災保険料
ひとり親方などが労災保険に特別加入して本人分として負担する保険料は、事業の必要経費には計上せず、「社会保険料控除」の対象として処理します3。労災保険の特別加入は、本来は労災保険の対象とならない一人親方などが、一定の要件のもとで加入できる制度です。
なお、特別加入団体に支払う組合費や事務手数料などは、事業に必要な支出であれば、内容に応じて「諸会費」や「支払手数料」などとして必要経費にできる場合があります。

保険料の勘定科目の選び方。個人事業主が帳簿に記載する際の注意点
保険料を正しく処理するためには、事業内容に合った勘定科目を選び、帳簿に適切に記載する必要があります。不安がある場合には、税理士などの専門家に確認しながら対応することで、確定申告時のトラブルが回避できます。
よく使われる勘定科目
ここでは、個人事業主が保険料を処理する際によく使用される勘定科目を目的別に紹介します。
- 事業主貸:事業に関係のない私的支出(個人事業主本人の生命保険料など)を事業用口座から支払った場合に使用
- 福利厚生費:従業員向けの福利厚生に関する支出。ただし、民間保険は契約条件によって給与等となる場合があるため個別確認が必要
- 損害保険料:火災保険、地震に備える事業向け保険、自動車保険、動産保険など、事業用資産にかける保険料の支出
- 法定福利費:健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険など、法律に基づき事業主が負担する従業員の社会保険料の支出
- 車両費:業務用の自動車やバイクなどに関する支出や、任意の自動車保険料などの支出
- 前払費用:契約期間が1年以内の保険料を前払いした場合などに使用
- 長期前払費用:1年を超える期間に対応する保険料を、複数の会計年度にわたって期間配分する場合に使用
なお、生命保険料控除は「勘定科目」ではありません。事業の帳簿上の経費ではなく、所得税を計算する際の所得控除です。
青色申告・白色申告での扱い
白色申告でも青色申告でも、経費として認められる条件自体は同じです。本人の生命保険料が、青色申告にしたことで必要経費になるわけではありません。
青色申告特別控除は、一定の要件を満たした場合に55万円、さらにe-Taxによる申告または一定の電子帳簿保存の要件を満たした場合などに65万円の控除を受けられる制度です。これらの要件に該当しない青色申告者は、10万円控除となります4。
仕訳の具体例
以下に個人事業主が用いる頻度の高い保険料の仕訳について、事業用の普通預金口座から支払ったものとして紹介します。なお、保険契約の種類や保険期間、保障内容などによって分類が異なることもあるため、詳しくは税理士など会計の専門家に確認することをおすすめします。
従業員の傷害保険
従業員全員、または合理的な基準で対象となる従業員を同様の条件で加入させるなど、福利厚生を目的とした傷害保険の保険料は、「福利厚生費」として経費に計上できる場合があります。
- 借方:福利厚生費
- 貸方:普通預金
自分自身の生命保険
事業と無関係な個人生命保険は、経費に計上できないため「事業主貸」で処理します。
- 借方:事業主貸
- 貸方:普通預金
個人口座から支払った場合は、事業の帳簿には記帳しません。生命保険料控除の要件を満たす場合は、帳簿上の経費とは別に確定申告で控除を申告します。
業務用自動車の自動車保険
1年以内の契約期間で業務用の車両にかけた保険料は、事業関連費用として経費に計上できます。1年を超える契約などでは、契約内容に応じて前払費用や長期前払費用として期間配分が必要になる場合があります。
- 借方:車両費、または損害保険料
- 貸方:普通預金
事業所用の火災保険
店舗・事務所など、事業用の建物にかかる火災保険は、経費に計上できます。
- 借方:損害保険料
- 貸方:普通預金
自宅兼事務所の火災保険
自宅と兼用している建物にかかる保険料は、事業使用割合に応じて按分処理を行って経費に計上できます。
- 借方:損害保険料(事業用部分)、事業主貸(私用部分)
- 貸方:普通預金
労災保険(従業員分)
従業員を対象に支払った労災保険料は、法定福利費として経費に計上できます。
- 借方:法定福利費
- 貸方:普通預金
事業用機器にかけた動産保険
パソコンや什器など、事業資産にかけた保険は、損害保険料として経費に計上できます。
- 借方:損害保険料
- 貸方:普通預金
保険にまつわる会計処理の注意ポイント

保険料の取り扱いにおいては、単に勘定科目を適切に選ぶだけでなく、契約の目的や構成員との関係性にも注意を払う必要があります。以下のようなケースでは、特に慎重な判断が求められます。
節税目的だけで保険に加入するのはNG
節税だけを目的に保険へ加入しても、その保険料が事業に必要な支出と認められなければ、経費には計上できません。特に、保険金の受取人が本人や家族で、事業との関係が明確でない契約は、私的な支出と判断される可能性があります。経費として処理する場合は、契約目的や保障内容を確認し、事業に必要な支出であることを説明できるようにしておくことが重要です。
個人用と事業用を分けて管理する
個人と事業の支出は明確に分けて処理します。もし一つの保険契約で両方を兼ねる場合は、使用割合などに基づいて保険料を合理的に按分する必要がありますが、最初から個人用と事業用を分けて契約しておけば、帳簿処理がわかりやすく税務対応もスムーズになります。
家族を従業員にしている場合は慎重に
配偶者や子どもなどの家族を従業員として雇用し、その人を対象とする保険料を経費にする場合は、家族として加入しているのか、従業員の福利厚生として加入しているのかが重要です。たとえば、他の従業員にも同様の条件で傷害保険を付保しているなど、従業員としての福利厚生を目的としたものと認められる場合は、必要経費にできることがあります10。
一方、家族だけを対象としているなど、私的な保障を目的とした契約と認められる場合は、必要経費にはできません。契約者、被保険者、保険金受取人や対象者の範囲などを確認し、契約書や雇用・勤務の実態が分かる資料を保管しておくことが大切です。
会計ソフトとの連携で会計業務の効率化を検討
保険料の仕訳は契約内容や支払い条件によって煩雑になることがあります。会計ソフトを使えば、売上データの連携などで入力する工数の削減や転記ミスの防止につながり、多忙な個人事業主の経理業務を効率化できます。
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まとめ
個人事業主本人の生命保険料は原則として必要経費にはできませんが、要件を満たす場合は生命保険料控除を利用できます。店舗や事務所、業務用車両など事業に必要な保険料は、事業使用分を必要経費にできる場合があります。契約内容によって処理が変わる保険もあるため、帳簿では個人用と事業用を分け、判断に迷う場合は税理士などの専門家に確認しましょう。
よくある質問

個人事業主の生命保険料と経費についてよくある質問を紹介します。
個人事業主本人の生命保険料は経費にできますか?
原則として経費にはできません。本人や家族の生活保障を目的とする生命保険料は家事上の支出として扱い、要件を満たす場合は生命保険料控除を利用します12。
生命保険料の勘定科目は何ですか?
本人の生命保険料を事業用口座から支払った場合は「事業主貸」で処理します。個人口座から支払った場合は事業の帳簿には記帳しません。
生命保険料控除と経費は何が違いますか?
経費は事業所得を計算する際に事業収入から差し引く支出です。生命保険料控除は、所得を計算した後に一定額を差し引く所得控除です。
従業員の生命保険料は福利厚生費にできますか?
契約内容によって異なります。たとえば、従業員本人が契約した生命保険の保険料を事業主が負担する場合は、原則としてその従業員の給与所得とされます9。契約者、被保険者、保険金受取人などを確認し、国税庁の取扱いで判断できない場合は税理士などの専門家に相談しましょう。
生命保険料控除はいくらまでですか?
所得税の生命保険料控除は、一般の生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の控除額を合計して最高12万円です。2026年分・2027年分は23歳未満の扶養親族がいる場合、新契約に基づく一般の生命保険料控除の上限が4万円から6万円に引き上げられますが、生命保険料控除全体の上限12万円は変わりません2。
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執筆は2025年6月9日時点の情報を参照しています。2026年10月14日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。

