取引をデジタルで管理する電子領収書は、作成・保管の手間、コスト、業務効率化などの面で多くのメリットが期待できます。この記事では、電子領収書とは何か、2024年から電子帳簿保存法により完全義務化された電子取引データのルールに加え、電子領収書を導入するメリットとデメリット、そして電子領収書を管理するクラウド型サービスの有効性について解説します。
目次
- 電子領収書とは
- 電子帳簿保存法における電子領収書の保存要件
・2024年からの義務化内容 - 電子領収書を導入するメリット
・コストが削減できる
・経理業務の効率が上がる
・長期保存や検索がしやすくなる
・データの活用が可能となる - 電子領収書を導入する際の注意点
・データの取り扱いに配慮する
・初期費用や運用コストを検討する - Squareなら電子レシートを無料で発行できる
- まとめ
電子領収書とは
電子領収書とは、電子(デジタル)データ化された領収書を指します。
始めから電子データとして作成された領収書だけでなく、印刷や手書きの領収書をスキャンしてPDF化したものまたは写真に撮って電子データ化したものも、電子領収書と呼ばれます。例として、紙で発行された領収書のスキャンデータや、ECサイトからダウンロードしたPDFの領収書などが電子領収書に該当します。
電子帳簿保存法における電子領収書の保存要件
電子領収書の保存に関しては電子帳簿保存法で定められています。
電子帳簿保存法は、領収書を含む国税書類や帳簿の電子保存について定めた法律です。1998年の施行以来、情報化や電子化の実情に合わせて改正を重ねています。
電子領収書などの電子データを保存する方法は、次の3通りが認められています1。
①電子帳簿・電子書類:電子的に作成した帳簿や書類を電子データのままで保存すること。
②スキャナ保存:紙で作成した、あるいは受け取った書類をスキャンして保存すること。自社・自店舗が発行した紙の領収書の控えも含まれる。
③電子取引:電子的に受け取った取引情報をデータで保存すること。データで受け取った領収書、あるいは自社・自店舗がデータで発行した領収書の控えも含まれる。
2024年からの義務化内容
①電子帳簿・電子書類と②スキャナ保存は任意ですが、電子帳簿保存法の改正により、③電子取引は2024年から完全義務化されました。以前はメールに添付されてきた電子領収書を紙に印刷して保管することも認められていましたが、2024年以降は「電子データとしての保存」が必須です。
電子データは、次の3点のルールに従って保存する必要があります2。
1) 改ざん防止措置(タイムスタンプなど)をとっている
2) データを確認できるよう、ディスプレイやプリンターがある
3) 取引年⽉⽇、取引⾦額、取引先の3項目で検索できるようになっている
電子取引をした書類の電子データ保存の義務化は、領収書だけでなく注文書、契約書、送り状、⾒積書、請求書などにも適用されています。違反には罰則も設けられているため、必ず正しく保存しましょう。
いずれも保存期間は、個人事業主では5年から7年、法人では7年から10年です。
電子領収書を導入するメリット
電子領収書を導入すると、人的ミスの抑止やペーパーレス化による環境配慮にとどまらない多くのメリットがあります。コスト、業務効率、データ保存、データ活用の4点について理解を深めましょう。
コストが削減できる
電子領収書のメリットを最も感じられるのが、コストの削減です。印刷代や用紙代に加え、物理的に郵送する費用や人員コストもかかりにくいのが特徴といえます。
紙の場合は安全に保管するためのキャビネットやファイル、そしてスペースの確保にもコストがかかります。電子領収書の場合は、無料または安価なクラウド型サービスなどを保存に利用できる点もポイントといえます。
経理業務の効率が上がる
紙の領収書の場合は、年度ごと・月次別などわかりやすく整理してファイリングする、劣化や紛失を回避するために点検するといった経理作業に時間を要します。一方、電子領収書なら正しい方法でデータを保存していれば管理は簡単で、劣化や紛失の心配もないため、業務負担が減ることがメリットです。
長期保存や検索がしやすくなる
法人の場合、領収書は税法上、原則として事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年(法人で欠損金の繰越控除の適用を受ける場合は10年)保存することが義務付けられています。
しかし、紙の領収書は日焼けや退色などの劣化が避けられません。また、7年から10年と長期の保存には、担当者の異動による保管場所の引き継ぎミスや、管理上の過失による破損や紛失のリスクも伴います。
その点、電子領収書は時間によってデータが劣化することはなく、ハードウェアやシステムが入れ替わっても取り込んで活用できる形式で保存されていればいつでも取り出すことができます。
特に、電子領収書をクラウドシステム上などで管理しておけば確認は簡単で、年度別、日付別、取引先別など、データの検索性にも優れています。
データの活用が可能となる
電子領収書は紙の領収書と違い、取引データのスピーディーな分析にも活用できます。たとえば、各部署から集まってくる経費の電子領収書の動向から、1年の中でいつごろ・どのような出費が多いかという傾向がつかめます。
また、領収書を発行する際も手作業だと集計に時間がかかりますが、電子領収書であればリアルタイムで集計できます。売り上げに応じた在庫・人員の手配などの最適化に役立つデータが得られることも、電子領収書を導入するメリットです。
電子領収書を導入する際の注意点
電子領収書の導入前に、電子化にあたって気をつけておきたいポイントも併せて理解しておきましょう。
データの取り扱いに配慮する
電子領収書の導入の過程では、リスク管理への配慮が不可欠です。入力ミスに対するチェック体制はもちろんのこと、データの安全性やセキュリティー対策に注意し、データの改ざんができない仕組みになっていることも確認しましょう。
また、電子領収書をパソコンなどで作成する際やメールで送信する際には、端末やシステムの不具合があると処理や管理がスムーズに進みません。通信環境が整っていないと、送ったはずの電子領収書が送れていない、保存が正しくできていない、といったトラブルにつながることもあります。
電子領収書の保存においても、データ消失や情報漏えいなどの問題が発生すれば、売り上げだけでなく社会的な信用にも影響します。そのため、セキュリティー面の安全性が高いクラウドシステムを使うなどの対策が必要です。
初期費用や運用コストを検討する
電子領収書の導入に伴う、システムやハード備品のコストも考慮する必要があります。電子領収書発行のために専用の会計ソフトやアプリなどを契約したり、専用の機器類を新たに購入したりする場合は、初期費用や利用手数料を事前に確認しましょう。
また、電子領収書のためのシステムや機器の操作が複雑な場合、従業員の作業時間への影響も考えられます。トレーニングをする、専門の人員を雇う、外部委託するなど、コストも含めた検討が必要です。操作性がシンプルで使いやすいシステムを選ぶというのも一つの選択肢でしょう。
Squareなら電子レシートを無料で発行できる
初めての人にも使いやすいビジネス向けのプラットフォーム「Square」は、電子レシートの発行・管理ができるクラウドシステムです。Square POSレジで支払いを受け付けた場合、電子レシートが無料で発行できます。
Squareの電子レシートは決済時にメールやSMSで送信が可能で、取引データは自動でクラウド上に保存されて検索がしやすい他、直感的に操作できる画面やセキュリティーの信頼性も魅力です。初期費用や月額利用料なしでシステムを利用できるためコスト効率が高いのもメリットでしょう。
対面決済以外でも、クラウド請求書やリンク型決済などSquareのオンライン決済では決済が完了した旨のメールが支払者に送信されます電子領収書の導入を含むデジタル化を検討中のビジネスにとって有効な選択肢といえます。
まとめ
電子領収書は、保存期間や保存方法などにいくつかの注意点が存在します。セキュリティーや検索性に優れたクラウド型サービスなどを活用することで、コストにも配慮しながら電子領収書を導入することが可能です。電子領収書のメリットとデメリットを理解した上で、Squareのように無料で使えるサービスを活用しながら、領収書の電子化に取り組んでみてはいかがでしょうか。
Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。
執筆は2021年12月13日時点の情報を参照しています。2025年5月1日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash