この記事では、花屋を開業したいと考える人に向けて、開業に必要な手続きや、物件・仕入れ先選びのポイント、経営について考えておくべきことなどを解説します。「憧れだった花屋になりたい」「独立して花屋を開業したい」という人はぜひ、開業時の参考にしてください。
目次
花屋を開業するうえでの基本知識
花屋を開業する際に押さえておきたい基本知識を見ていきましょう。
花屋の仕事内容
花や植物を普段から生活の一部に取り入れてる人のなかには、花に関わるビジネスを立ち上げたいと考える人もいることでしょう。花屋を経営するとなると事務作業も多く、業務内容は多岐にわたります。店舗の規模にもよりますが、おおまかには以下のような業務が発生します。
- 花や植物の管理
- 接客、会計
- お祝いごとやイベント用の花束の制作
- イベント会場などでの装花
- 商品の仕入れ
- お客さまからの注文の処理
- 問い合わせ対応
- ネットショップの運営
- 配達の手配
など
花屋が提供する商品やサービスの特徴
花屋では基本的に以下のような商品を提供します。
- 生花
- 花束
- フラワーアレンジメント
- ドライフラワー
- 手入れ用の道具
- 花瓶
- 植木鉢
など
花はお祝いのタイミングで贈られることが多いため、「誕生日」「母の日」「結婚祝い」「送別会」などのシーンに合わせたブーケを用意したり、カスタムオーダーを承ったりすることがよくあります。
そのほかのサービスとしては、ワークショップの開催や結婚式・イベント会場などでの装花があります。ワークショップは、リース作りやお正月飾り作りなど、行事に合わせて開催しやすく、5回レッスンといったコースを提供するお店もあるようです。
開業に資格や免許はいらない
花屋を開業するのに特別な資格や免許はいりません。ただ花束をつくるにも装花を請け負うにも技術が問われるため、ある程度の下積みや知識は欠かせないでしょう。花屋の開業に役立つ資格としては、以下の二つがよく挙げられます。
- フラワー装飾技能士検定(一般社団法人東京都フラワー装飾技能士会)
- フラワーデザイナー資格検定試験(公益社団法人日本フラワーデザイナー協会)
最近では通信講座もあるため、近くに学校がなくても知識を身につけて、試験に挑むことができます。
花屋は儲かる?年収やビジネスの特徴
花屋をはじめるとなれば、年収も気になるところでしょう。ここではその目安や、ビジネスの特徴を見ていきましょう。
花屋の年収
花屋の年収はおおよそ200万円から400万円だといわれています。人気のお店だと、1,000万円を超えることもあるようです。
鮮度が落ちるのが早く、商品が長持ちしない
生花は、長持ちしないところが難点です。切花の寿命は、2週間程度です。もっと短期間で萎れてしまうものもあるでしょう。商品の品質を保てる期間が短いことから、売れ残ってロスになることも少なくなく、仕入れはほかの業態に増して慎重になるべき部分だといえます。売れ残った花をブリザードフラワーやドライフラワーにするなど、ロスを減らす取り組みも必要かもしれません。
季節の移り変わりが早く、売り切れるかが勝負どころ
花屋は「正月」「バレンタインデー」「卒業式」「母の日」など、季節ごとに訪れる行事の前が書き入れ時だといわれています。1年を通して行事にあわせたブーケや商品を考えていくことになるでしょう。
決まった時期に需要が高まるのはうれしい反面、行事が過ぎると売り上げがいっきに落ち込むことがあります。客足が減る時期にワークショップを開催するなど、売り上げに大きな波が出ないよう対策を練りたいところです。また繁忙期にはたくさん仕入れたくなりますが、ロスが極力発生しない仕入れ数を見極める力も必要になるでしょう。
花屋開業に必要な資金
開業資金
どこに・どれくらいの広さの物件を確保するのか、什器はどこまでこだわるのか、広告にはいくらかけるのか……など、規模やこだわりによって開業にかかる資金は変わってきます。コストを抑えるのであれば200万円程度、こだわりを貫くのであれば1,000万円以上かかることもあります。
開業資金の内訳を見てみましょう。
金額 | |
物件の保証金(家賃の3から6カ月分) | 60万円から120万円(※家賃を20万円とした場合) |
礼金(家賃1カ月分) | 20万円(※家賃を20万円とした場合) |
仲介手数料(家賃1カ月分) | 20万円(※家賃を20万円とした場合) |
内装・外装工事費 | 100万から400万円 |
什器などの取得費 | 10万から150万円 |
広告宣伝費 | 3万から50万円 |
車両費 | 0から200万円 |
合計 | 213万から960万円 |
店舗用物件には家賃数カ月分の保証金がかかるため、物件の取得だけでもかなりのコストがかかるでしょう。ただ、居抜き物件を選ぶ、中古の什器を使う、コストのかからない方法で広告宣伝するなど、少しずつ節約に取り組むことで開業資金を抑えることもできます。
運転資金
運転資金には、3カ月から半年分の資金を用意しておくといいとされています。
運転資金とは、事業を続けていくために必要不可欠なさまざまなコストの総称です。たとえば家賃や仕入れ費、人件費、光熱費など、不足すると事業が立ち行かなくなる資金です。売り上げが低迷しても事業が継続できるよう、1カ月にどれくらいの資金が必要かを算出したうえで準備しておくのが賢明です。
花屋を開業するまでの流れ
(1) コンセプトを考える
資金を集めたり物件を探したりする前に、どんな花屋にしたいかをまず考えましょう。
最初のコンセプトづくりはとても重要です。一旦決まればコンセプトが軸となり、店内のデザインや商品のラインアップ、ターゲットなども自ずと見えてきます。
コンセプトはさまざまな視点から考えることができます。花き業界が抱える課題をヒントにすることもできれば、どんなお客さまに来てほしいかをもとに案を出していくこともできるでしょう。
たとえば仕入れた花の3割から4割は廃棄されるといわれています。この課題に立ち向かうために、「最後まで愛でる」をコンセプトに掲げ、少し萎れている花もブーケに入れて提供するなど、理想とするお店の形をもとにコンセプトを組み立ていきましょう。
参考:花を堆肥化 再び花に 稚内の生花店が廃棄ゼロへ 年間6トン分、店の庭で活用「思いを形に」(北海道新聞)
(2) 事業計画書を作成する
資金調達する際に必要になるのが、事業計画書です。フォーマットに特に決まりはありませんが、一般的に以下の情報を入れ込みます。
- 事業のビジョン
- 事業内容やコンセプト
- 創業者や創業メンバーのプロフィール
- 事業の強みと弱み
- 市場規模や競合
- ニーズ
- サービスや商品の概要(仕入れ先など)
- マーケティング戦略
- 財務計画
実際にパソコンや紙に向かいながら事業計画書を作りはじめると、現実的でない部分や、考えきれていなかった部分が次々と見えてくるでしょう。どれくらいの資金を調達すべきか、家賃はどの程度が現実的か、どれくらいの利益があれば従業員に正当な額を支払えるか……このようにビジネスをはじめる前に把握しておきたいことを整理できるため、事業計画書は必ず作成しておきたいところです。内容に不安がある場合は、中小企業支援センターをはじめ、無料でアドバイスをもらえるところもあるので、うまく活用するといいでしょう。
(3) 資金調達をする
事業計画がある程度固まってきたら、資金調達に取り掛かりましょう。融資を利用したい場合は日本政策金融公庫や制度融資を検討してみるといいでしょう。これらは、開業実績がない人や小規模事業者などでも利用しやすいことで知られています。
(4) 物件を探す
資金調達と並行して物件探しもはじめましょう。人通りの多い駅前や繁華街の路面店が人目に付きやすく集客しやすいでしょう。花屋では店先に花や植木をディスプレイすることもあります。店舗物件のオーナーや不動産会社にどこまでディスプレイに使えるかなど、確認を取るようにしましょう。
個人で花屋を開業する際は、広さよりも立地の良さや人通りの多さを優先して物件を探したほうが良いでしょう。収支計画を立てながら、無理せず支払える範囲の賃料で店舗を借りることが大切です。
(5) 店舗の工事・什器を手配する
物件が決まったら、次は内装工事に取り掛かりましょう。
花屋では花の保管・展示に合った環境を整える必要があるため、内装工事はアパレル店や雑貨店などよりも高くなりがちです。たとえば後者の工事の坪単価は10万円が相場だといわれていますが、花屋の坪単価は40万円が一般的なようです。
内装工事を進めつつ、設備や什器なども揃えはじめましょう。花屋に必要不可欠なものといえば、花の鮮度を保つための冷蔵庫です。「フラワーキーパー」や「ストッカー」と呼ばれています。そのほかにもレジカウンターや、作業台、花をディスプレイするための陳列棚などが必要になるでしょう。
(6) 仕入先を確保する
次に行うことは、仕入先の選定です。仕入先に関しては、以下の方法が例として挙げられます。
- 生産者と直接契約する
- 市場で仕入れる
- 仲卸業者から仕入れる
市場で競りに参加して花を仕入れる場合、「売買参加権(買参権)」を取得する必要があります。買参権の取得には条件があり、開業したばかりだと難しいかもしれません。各市場に問い合わせて取得条件や、開業直後でも取得できるかどうかを確認しましょう。仲卸業者とは、買参権を取得しており、市場で仕入れた花を花屋などに卸売りする業者です。少量の注文に応じてくれたり、花屋の要望を聞いて仕入れてくれるので、開業したばかりの花屋にとって仕入れやすいルートだといえます。
(7) 宣伝をする
もろもろの準備が整ったら、今度は店舗のオープンを広く知ってもらうための宣伝活動に励みましょう。リピーター客になる可能性の高い近隣の住民にチラシを配ったり、近隣の店舗にチラシを置いてもらったりしてみてもいいでしょう。少し遠出をしてでも「来たい」と思ってもらうには、SNSで広告を打ったり、影響力のあるインフルエンサーに足を運んでもらえるよう働きかけてみたりと工夫を練ってみましょう。
(8) レジの準備をする
開業の準備は嵐のような忙しさになることも少なくありません。そんななかで意外と忘れられがちなのが、レジの準備です。最近だとスマートフォンからでも無料で使えるPOSレジアプリがあるため、こういったツールを選ぶとすぐにPOSレジを導入できるでしょう。
キャッシュレス決済にも対応したい場合は、早い段階から決済サービスの検討をはじめましょう。
決済サービスを選ぶうえで大切なポイントは、導入にかかるコスト、決済手数料率、入金サイクルです。たとえばSquareでキャッシュレス決済を受け付けると、売り上げの入金は最短翌営業日です。Squareを導入している「ex. flower shop & laboratory」は以下のように話しています。
「花業界って、仕入れの支払いサイトが結構短いんですよ。キャッシュフローを考えると、入金サイクルが短いのはかなりありがたいです」ーBOTANIC Inc. 代表取締役 上甲友規さま
▶️ex. flower shop & laboratoryの導入事例を読む
(9) 開業後、開業届を提出する
無事開業ができたら、開業日から1カ月以内に管轄の税務署に開業届を提出しましょう。
花屋の開業で成功するためのコツ
独自性を発揮する方法を探る
周りと差をつけられるところが一つでもあると、そこが多くのお客さまを惹きつけるお店の強みになるかもしれません。たとえば「バーを兼ねている花屋」「ていねいにヒアリングをする花屋」「ワークショップをたくさん開催している花屋」など、「差別化のポイントはこれ!」といえるようにしておけると理想的です。
ディスプレイに徹底的にこだわる
生活に馴染むものなのか、はたまたちょっと珍しい生花が手に入るお店なのか……ディスプレイをひと目見れば、どんな商品を揃えているのかがある程度分かります。このようにディスプレイは通りがかったお客さまがお店に入るか否かを決める判断材料にもなるため、おざなりにできないところです。ターゲットをある程度想定したうえで、魅力的なディスプレイを作っていきましょう。
SNSなどで積極的に集客する
メディアなどに掲載されない限り、広い層に店舗のことを知ってもらうのはなかなか難しいものです。そこで店舗の宣伝に欠かせないツールとして挙げられるのが、SNSです。日々の投稿も大切ですが、インフルエンサーなど影響力のある人に足を運んでもらえると、さらなる認知度のアップが期待できます。
提携できる先がないかを探る
結婚式場やイベント会場などと提携してみるのも、収入を安定させるための一つの手です。繁忙期とそうでない時期で売り上げに差が出やすいため、定期的に収入が得られる手段を見つけられると経営に余裕ができるでしょう。
生花以外のものが売れるかを検討する
生花の販売だけでは経営が立ち行かなくなることもあるかもしれません。そこで、生花以外の商品もいくつか取り揃えておくと安心です。たとえば花の手入れに必要になる道具や花瓶、作業用のエプロン、植物にまつわる本、植物染めをした洋服などを並べてみるのもいいかもしれません。花以外の商品が充実していると、さらに広い層にリーチできる可能性があるので、いろいろなアイデアを検討してみましょう。
ネットショップの開設も検討する
店舗だけの営業だと、どうしても利用者が近隣のお客さまに限定されがちです。そこで最近では幅広い層に商品を届けられるよう、ネット販売をする花屋も増えています。その分、作業負担も大きくなりますが、近隣の集客だけだと限界がある……と感じるのであれば、挑戦してみてもいいかもしれません。
たとえばSquareなら無料でネットショップをはじめられるので、コストを気にせずにネットショップを開業できます。無料プランなら月額利用料もなし、決済ごとに手数料がかかるしくみです。詳しくはSquareのネットショップ機能、「Square オンラインビジネス」のページをご確認ください。
花屋の開業にあると便利な決済機能
キャッシュレス決済端末
「現金だけだと単価の低いものしか売れなかったけれど、キャッシュレス決済を導入したら1万円以上するブーケも売れるようになった」という話を同業者から耳にするかもしれません。このようにキャッシュレス決済は、客単価アップに効果を発揮します。
内装工事や什器などにコストがかかる分、キャッシュレス決済はできるだけ低コストで導入したいところでしょう。Squareの決済端末なら、5,000円以下で手に入れられるものもあります。現時点で提供している決済端末は、以下のとおりです。
店舗の規模や、予算感をもとに決めていきましょう。
クラウド請求書
装花などを請け負う場合には、取引先に請求書を送ることもあるでしょう。最近では紙の請求書の代わりに、メールで送れる「クラウド請求書」を使う人も増えています。Square 請求書はメールで送れるうえに、受取手はメールにあるリンク先からクレジットカード決済までできるため、請求から決済までがすべてオンライン上で完結します。
リンク型決済機能
ワークショップを開催する場合、「当日現金払い」もいいかもしれませんが、直前でキャンセルが発生すると準備した花材の費用を回収できない恐れもあります。参加費用を事前に回収しておけば、キャンセル防止対策にもなるでしょう。
参加費用の事前回収には、リンク型決済の活用がおすすめです。リンク型決済を使うと、商品やサービスの購入ページを簡単に作成することができます。たとえば「Square リンク決済」だと、サービス名と価格を入力するだけでリンクの発行ができます。あとは参加者にリンクを送付すれば、参加者はリンク先からクレジットカード決済をします。オンラインで支払いができるのでイベント前に店頭に立ち寄る必要もなく、参加者の都合のいいタイミングでスマートフォンなどから決済ができます。
予約管理機能
オーダーメイドのブーケやアレンジの注文を受ける際には、メールや電話で要望を聞くこともできるでしょう。ただなかには、じっくりと話を聞いてから花束を提案したいと思う人もいるかもしれません。そうすると予約を受け付ける必要が出てきます。
手書きで予約日時を書き留めておくこともできますが、予約管理機能を導入すると管理もしやすく、空き時間も瞬時に確認できるようになり、ダブルブッキングなどのミスを防げます。Squareでは簡単に、無料で予約サイトを作れる機能も完備しているので、検討してみてはいかがでしょうか。
ネットショップ機能
客層や売り上げの拡大を狙ううえで検討したいのが、ネットショップの開設です。こだわり抜いたサイトを作成するよりも、まずは商品をネットで販売できれば十分と思う人には、無料のネットショップ作成ツールがおすすめです。たとえばSquareなら無料でネット販売をはじめることができます。導入に面倒な手続きはなく、無料アカウントを作成すればすぐにでも作成に取り掛かることができます。
この記事では花屋を開業する前に身につけておきたい知識を解説してきました。なにか一つでも差別化のポイントを見つけ、磨いていくことで、だんだんとファンを増やしていけるはずです。一方で、1人であまりにも多くの作業を抱え込むと、体力も気力も奪われてしまいます。低コストで導入できるツールを活用しながら、効率よく運営できる体制を整えましょう。
Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。
執筆は2018年6月20日時点の情報を参照しています。最終更新日は2024年5月7日です。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash