生産管理の方法として1960年代に考案された、「MRP」(資材所要量計画)。経済産業省の2024年経済構造実態調査1によると、日本には約22万の製造業事業所が存在しています。多くの企業にとって、生産計画や在庫管理を効率化することは重要な経営課題の1つです。そのような課題を解決する手法として活用されているのが、MRPです。
今回は、MRPについて知りたい人のために、MRPの概要と歴史、MRPを取り入れる目的、MRPで起こり得る問題、MRPの導入方法について解説します。
📝この記事のポイント
- MRP(資材所要量計画)は、生産計画・部品表(BOM)・在庫情報をもとに必要な資材の数量と納期を算出する生産管理手法
- MRPは1960年代に米国で開発され、その後MRP2、ERPへと発展し、企業の生産管理や経営資源管理の基盤となっている
- MRPを導入すると、在庫の最適化・コスト削減・生産計画の効率化などの効果が期待できる
- MRPシステムを導入する際は、導入目的の整理、生産方式との適合性、ベンダーのサポート体制などを確認することが重要
- 小規模事業者は本格的なMRPの前に、SquareのPOSシステムを活用した在庫管理から業務の効率化を進める方法も有効
目次
- MRP(資材所要量計画)とは? わかりやすく解説
・MRP(資材所要量計画)とは?
・MRPの歴史と変遷
・MRPを取り入れる目的 - MRPシステムのメリット
・在庫の最適化
・コストの最適化
・生産の最適化 - MRPシステムの選び方
・導入目的の確認
・生産手法の適合性確認
・ベンダーのサポート体制の確認
・MRPで起こり得る問題 - MRPの導入方法
- 小規模な事業者にはSquareがおすすめ
- まとめ
- よくある質問
・MRPは何の略ですか?
・MRPシステムを導入するとどんな効果がありますか?
・MRPシステムを選ぶにあたって何を確認すればいいですか?
MRP(資材所要量計画)とは? わかりやすく解説
MRP(資材所要量計画)とは?
MRP(Material Requirements Planning)は、日本語では「資材所要量計画」と訳されている生産管理手法の1種です。製品の生産計画を基に、原材料や部品などの資材がどのくらい(所要量)必要なのかを算出します。
MRPでの資材所要量の算出に必要なもの
MRPを行うには、次の3点が必要です。
- 生産計画
- 部品表(BOM)
- 在庫管理
生産計画
製品の品目には、独立して需要が生じる品目(独立需要品目)と、他の品目に従って需要が生じる品目(従属需要品目)があります。まず、ある製品(独立需要品目)の生産計画を立てます。
部品表(BOM)
製品の生産計画に対して、原材料や部品などの従属需要品目は、何が(品目)・どのくらい(総所要量)・いつまでに(納期)必要か、部品表をもとに算出します。部品表には、品目や製品構成、ロットサイズやリードタイムなどの基本的な情報が必要です。
在庫管理
各従属需要品目の総所要量を算出したら、実際にはどれだけの所要量(正味所要量)をいつまでに(納期)手配すればよいのか、在庫数や発注残、仕掛品などの在庫管理情報をもとに算出します。その後、リードタイムを考慮して各品目を発注します。
MRPの歴史と変遷
1970年代は製品の出荷量は安定していましたが、資材調達が費用や納期の面で不安定という傾向があり、資材の所要量や納期の把握が重要課題でした。そのような状況をうけて、MRPは1960年代から70年代初めにアメリカで提唱され、70年代後半には日本でも広まります。
1980年代に入り、MRPやリーン生産方式などの普及によって資材調達が安定しましたが、今度は市場のニーズにあわせた製品出荷量の変動が課題となってきました。そのため、資材のみに留まらず、人員や設備など生産ライン全体の能力をもとに生産計画や管理を行う、MRP2(Manufacturing Resource Planning、生産資源計画)が登場します。
1990年代には、MRP2の考え方をさらに拡大し、生産から販売・物流・人事にいたるまでの企業活動全般において、企業の全資源を管理・最適配分するERP(Enterprise Resource Planning)へと発展します。

MRPを取り入れる目的
財務省の法人企業統計によると、日本企業の棚卸資産回転期間は1.12月で、製造業に限っては1.64月です2。企業は一定量の在庫を保有しながら事業を運営しており、在庫の最適化は経営効率に大きく影響します。MRPはこの在庫管理の精度向上にも役立つ手法です。
MRPを導入する目的として、主に次の点が挙げられます。
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所要量の算出による在庫リスクの軽減
MRPの導入により、製品ごとに必要な従属需要品目における最適な所要量を算出できます。そのため、感覚や慣習に頼った発注や、欠品を恐れた過剰発注などにより、ムダな在庫を抱えるリスクを軽減可能です。 -
業務の効率化による生産性の向上
所要量を人力のみで算出しようとすれば膨大な手間がかかりますが、システム化によって作業時間が大幅に短縮され、計算ミスや二重発注なども削減されます。適正な所要量の算出により、納期調整などにかかる時間の短縮や、欠品による工程の遅れなども軽減され、業務の効率化や生産性の向上が可能です。
MRPシステムのメリット
MRPを実際の業務で活用するには、MRP機能を備えた生産管理システムを導入するケースが一般的です。ここでは、MRPシステムを導入する主なメリットについて紹介します。
在庫の最適化
MRPシステムでは、生産計画や部品表(BOM)、在庫情報をもとに資材の必要量を計算するため、過剰在庫や欠品を防ぎやすくなります。必要な資材を必要なタイミングで調達できるようになることで、在庫を適正な水準に保つことが可能です。
在庫量の適正化は、保管スペースの削減や在庫管理コストの削減にもつながり、企業の資金効率の改善にも寄与します。
コストの最適化
MRPシステムの導入により、資材調達や生産計画が効率化されるため、コストの最適化が期待できます。たとえば、必要以上の資材を発注することが減るため、在庫保管コストや廃棄ロスの削減につながります。
また、計画的な資材調達が可能になることで、急な追加発注や納期調整などに伴うコストを抑えられる点もメリットです。
生産の最適化
MRPシステムを活用すると、資材の調達計画と生産計画を連動させることができます。これにより、資材不足による生産停止や工程の遅れを防ぎやすくなります。
さらに、生産工程ごとの必要資材や納期が明確になるため、製造現場のスケジュール管理がしやすくなり、生産効率の向上にもつながります。
MRPシステムの選び方
MRPシステムにはさまざまな種類があり、企業の規模や生産方式によって適したシステムは異なります。導入後に十分な効果を得るためには、自社の業務に適したシステムを選ぶことが重要です。ここでは、MRPシステムを選ぶ際に確認しておきたいポイントを紹介します。
導入目的の確認
MRPシステムを選ぶ前に、まずは導入目的を明確にすることが重要です。たとえば、「在庫を削減したい」「生産計画の精度を高めたい」「部門間の情報共有を効率化したい」など、目的によって必要な機能が変わります。
目的を整理せずにシステムを選んでしまうと、導入後に機能が不足したり、使いこなせなかったりする可能性があるため注意が必要です。
生産手法の適合性確認
企業によって、生産方式は「見込み生産」「受注生産」「個別受注生産」などさまざまです。MRPシステムを選ぶ際には、自社の生産手法に対応しているかどうかを確認する必要があります。
特に、製品構成が複雑な場合や品目数が多い場合には、部品表の管理機能や生産計画の柔軟性が重要になります。
ベンダーのサポート体制の確認
MRPシステムは導入して終わりではなく、運用や改善を続けながら活用していくものです。そのため、導入支援や運用サポートなど、ベンダーのサポート体制を確認することも重要です。
操作方法のトレーニングやトラブル対応、システム更新などのサポートが充実しているベンダーを選ぶことで、導入後も安心してシステムを活用できます。
MRPで起こり得る問題
MRPは有効な生産管理方式ですが、導入するうえでは課題も存在します。
生産計画などの精度に結果が左右される
MRPは、生産計画や部品表(BOM)、在庫管理情報などのデータを基に資材の所要量を算出するため、生産計画など基となるデータの精度が低い場合、所要量の算出精度も低くなります。
計画変更により修正が発生する
MRPは1960年代にアメリカで開発され、1970年代に普及した生産管理手法であり、生産計画に基づいて資材の所要量を算出します。そのため、市場や取引先のニーズによって計画が変更されると、システムへの再登録など修正業務の時間が発生します。

MRPの導入方法
近年、多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいます。中小企業基盤整備機構の調査3によると、中小企業では「アナログで行っていた作業やデータのデジタル化を進めている」と回答した企業が2024年で35.7%となっています。また、「個別の業務や製造等のプロセスのデジタル化を進めている」と回答した企業も28.6%にのぼり、業務のデジタル化が着実に進んでいることがわかります。
このような流れの中で、生産管理や在庫管理を効率化するためのシステム導入も進んでいます。MRPシステムもその1つであり、企業のDX推進を支える重要な仕組みといえます。
MRPはパソコンとソフトウェアさえあればすぐに導入できますが、前述した課題を克服して導入するには、次の点に注意する必要があります。
ルールの整備
MRPの実施にあたっては、最低でも1カ月分の生産計画、品目や製品構成などを正しく記載した部品表、在庫量や発注残の正確な把握が必要です。
そのため、生産計画の度重なる変更や、在庫管理のルールが曖昧で在庫量が信用できないなどの状況を改善しないままMRPを導入しても、失敗に終わってしまいます。特に在庫管理において、許可なく在庫を持っていく、現場で紛失するなど、入出庫についてのルールが守られていないケースも多くみられます。
MRPの導入にあたっては、生産計画の変更や在庫管理などについてのルールを整備し厳守している状態が前提となります。
部品表の一元管理
部門間で部品表が不統一だったり、整合性がとれていなかったりする状態では、MRPを導入しても正しい資材所要量が算出できません。全社で部品表の書式を統一し、管理担当の部門を決めて管理していく仕組みを整備することが求められます。
生産計画の精度向上
ルールの整備や部品表の一元管理を行ったうえで、生産計画などの精度を向上する必要があります。生産計画は、まず3カ月先程度の計画を立案し、最新情報をもとに段階的に計画をアップデート、製造1カ月前には計画変更が最小限で済むように調整して、計画の精度を向上していきましょう。
計画変更による影響の最小化
MRPは計画変更による修正が発生するため、対策を立てておくと影響を小さくできます。
計画変更が与える主な影響には、納期遅れがあります。納期遅れの原因には、部品の未発注や人手不足などが挙げられますが、比較的ハードルの低い対応策は不良の削減です。不良削減には、たとえば、品質管理に関する数値を毎日記録し、管理図を作成して工程を見直すなどの対応が考えられます。
納期遅れの原因には、できることから対応していき、計画変更が発生してもMRPによる影響ができるだけ小さくなるよう、日々品質管理の向上を心がけましょう。
部門を横断して情報を共有できる仕組み作り
MRPで最適な所要量を算出するには、最新の情報が求められます。そのため、部門を横断して、計画変更などの情報をタイムリーに共有できる仕組み作りが必要です。
小規模な事業者にはSquareがおすすめ
MRPは主に製造業で活用される生産管理手法ですが、小規模な事業者の場合、本格的なMRPシステムを導入するにはコストや運用負担が大きくなることがあります。そのため、小規模事業者や店舗ビジネスでは、まずは在庫管理や売上管理を効率化できるツールを導入することが現実的な選択肢となるでしょう。
そのような場合におすすめなのが、SquareのPOSシステムです。Square POSレジは、販売と同時に在庫情報を自動で更新できる機能を備えており、商品ごとの在庫数をリアルタイムで把握できます。
商品が販売されると在庫数が自動で減算されるため、手作業による在庫管理の手間を減らすことが可能です。また、売上データと在庫データをあわせて管理できるため、どの商品がよく売れているのか、どのタイミングで仕入れが必要かといった判断もしやすくなります。
さらに、SquareのPOSシステムはタブレットやスマートフォンでも利用できるため、初期費用を抑えて導入できる点も特徴です。小規模な店舗や事業者でも導入しやすく、在庫管理の効率化や売上管理のデジタル化を進めることができます。
SquareのPOSレジは高機能なのに初期費用0円
Square POSレジは業務効率化を実現する、高機能な無料アプリです。売上分析、在庫管理、スタッフ管理など、必要な機能が1つのアプリにまとまっています。業務をなるべくシンプルにしたい、小規模なアパレル店、美容院、理容室、サービス業に適しています。
まとめ
MRP(資材所要量計画)は、生産計画や部品表(BOM)、在庫情報をもとに、必要な資材の数量や納期を算出する生産管理手法です。1960年代にアメリカで考案されて以降、多くの製造業で活用されており、生産管理や在庫管理の効率化に役立っています。
MRPを導入することで、資材の所要量を正確に把握できるようになり、過剰在庫や欠品のリスクを軽減できます。また、生産計画と資材調達を連動させることで、生産工程の効率化やコスト削減にもつながります。
一方で、MRPは生産計画や部品表、在庫情報などのデータの精度に大きく影響を受けるため、導入にあたってはルールの整備や情報管理の仕組み作りが重要です。自社の生産体制や業務フローを整理したうえで、適切なシステムを選定することが求められます。
また、小規模な事業者の場合は、まずPOSシステムによる在庫管理など、導入しやすいツールから業務の効率化を進める方法もあります。自社の規模や業務内容に合った方法で、在庫管理や生産管理の改善に取り組むことが大切です。
よくある質問
MRPは何の略ですか?
MRPは「Material Requirements Planning」の略で、日本語では「資材所要量計画」と訳されます。製品の生産計画をもとに、必要な原材料や部品の数量や納期を算出する生産管理手法です。主に製造業において、生産計画と資材調達を効率的に管理するために利用されています。
MRPシステムを導入するとどんな効果がありますか?
MRPシステムを導入すると、資材の所要量を正確に計算できるようになり、過剰在庫や欠品を防ぎやすくなります。また、生産計画と資材調達を連動させることで、生産工程の効率化や納期管理の精度向上にもつながります。結果として、在庫コストの削減や生産性の向上が期待できます。
MRPシステムを選ぶにあたって何を確認すればいいですか?
MRPシステムを選ぶ際には、まず導入目的を明確にすることが重要です。そのうえで、自社の生産方式(見込み生産・受注生産など)に対応しているか、部品表管理や生産計画機能が十分かどうかを確認しましょう。また、導入支援や運用サポートなど、ベンダーのサポート体制も重要なポイントです。自社の業務に適したシステムを選ぶことで、導入後の効果を最大化できます。
Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。
執筆は2019年7月11日時点の情報を参照しています。2026年3月16日に記事の一部を更新しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。

