重加算税とは?要件、税率・計算、対処法などわかりやすく解説

※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。

重加算税は、税務申告で仮装や隠蔽といった不正があった場合に課される、最も重いペナルティーの一つです。単なる申告ミスではなく、意図的な帳簿改ざんや収入隠しが対象となるため、税率も高く、資金繰りに大きな影響を及ぼします。対象は法人だけでなく、個人事業主やフリーランスも含まれるため、事業規模にかかわらず注意が必要です。

本記事では、重加算税の仕組みや税率、適用要件、そして対象になった場合の対処法までわかりやすく解説します。

📝この記事のポイント

  • 重加算税は、隠蔽や仮装などの不正があった場合に科される加算税であり、通常の加算税よりも税率が高い
  • 法人だけでなく、個人事業主やフリーランスも対象になる
  • 不正が認定されると、最長7年分まで遡って課税される可能性がある
  • 税務署からの更正処分に従うだけでなく、不服申立て制度を利用できる
  • 会計上は「租税公課」で処理するが、損金不算入/個人は必要経費不算入となるため税務調整が必要
  • 支払いが困難な場合でも「納税猶予制度」が用意されている
  • Square 請求書を使えば、請求・会計業務を自動化でき、正確な記録管理によって重加算税リスクを減らせる
目次


重加算税とは?わかりやすく解説

重加算税は、帳簿の虚偽記載や取引の隠蔽など、悪質な不正が認められた場合に課される附帯税です。単なる計算ミスや記載漏れではなく、意図的に税額を少なく申告したと判断されたときに適用され、加算税の中でも最も重いペナルティーです。

以下では、重加算税の概要や対象範囲、調査の遡及期間について解説します。

重加算税の概要

重加算税は、納税者が税務申告において事実を隠したり、仮装したりした場合に課される特別な加算税です。単純な計算ミスや記載漏れではなく、意図的に収入を隠す・帳簿を改ざんするといった「不正」があると判断されたときに適用されます。

国税庁の指針では、たとえば以下のような行為が「隠蔽または仮装」にあたるとされています1

  • 二重帳簿を作成する
  • 帳簿や決算書類を破棄・隠蔽する、虚偽の記載をする
  • 架空の証憑書類を作成する、相手方と通謀して虚偽の取引を装う
  • 簿外資産や簿外資金を利用して収入を除外する
  • 本来の株主を隠すなどして同族会社である事実を隠すなど

上記のような行為が発覚した場合、通常の加算税(過少申告加算税や無申告加算税など)よりも重いペナルティーとして重加算税が課されます。

重加算税は法人も個人も対象

重加算税は、法人だけでなく個人にも適用されます。国税通則法第68条により、法人税・所得税・相続税・贈与税など、あらゆる税目において同一の基準で課される仕組みです1

株式会社や合同会社などの法人に限らず、個人事業主やフリーランスも、隠蔽や仮装によって申告を怠ったり過少に申告した場合は重加算税の対象です

重加算税は最大7年遡及調査あり

国税通則法第70条では、更正や決定ができる期間(時効)は、法定申告期限の翌日から原則5年間と定められています2。ただし、仮装や隠蔽といった不正があった場合には例外として最長7年間まで遡って課税されます。

調査では過去7年分の帳簿が確認されることになり、複数年分の税額に加えて重加算税や延滞税をまとめて納めなければならない事態につながります。したがって、一度不正と判断されれば、資金繰りに大きな負担が生じるリスクがあります。

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重加算税の適用要件と4つの具体例

重加算税が課されるかどうかは、単なる申告ミスや計算間違いではなく、納税者に隠蔽や仮装といった不正があったかどうかで判断されます。以下では、適用要件を整理し、続いて代表的な具体例を紹介します。

要件

重加算税の適用要件は、国税通則法第68条3に基づき「偽りその他不正の行為」があったかどうかで判断されます。国税庁では、「偽りその他不正の行為」とは、単なる申告漏れや計算誤りではなく、意図的に課税を免れようとする行為を指すとされています。

具体的には、以下のような条件を満たす場合は重加算税の対象です。

  • 納税申告において、隠蔽または仮装と評価できる不正行為が存在すること
  • 不正行為によって、国税の課税標準や税額を過少に申告したり、申告そのものをしなかったりしていること
  • 結果として、納税者が本来納めるべき国税を免れている、あるいは還付を不当に受けていること

つまり、重加算税の要件は「不正行為の存在+その結果としての課税逃れ」の二つがそろって初めて成立します。

4つの具体例

重加算税は「無申告」「過少申告」「不納付」といった加算税の場面で、隠蔽や仮装といった不正があった場合に課される最も重いペナルティーであり、以下の四つが典型例です1

適用要件 具体例
申告していない場合(無申告) 所得や利益があるのに申告を一切しない。売上帳や伝票を隠す、二重帳簿を作成する、取引資料を廃棄するといった行為。
税金を少なく申告した場合(過少申告) 売り上げの一部を除外したり、架空経費を計上したりして少なく申告している。現金売上を帳簿に載せない、存在しない仕入や経費を水増し計上するといった行為。
納付していない場合(不納付) 従業員から源泉徴収した所得税を納付せず流用、または帳簿から預り金を除外したり、納付を隠して使い込んだり、消費税の預り金を不正流用したりする行為。
悪質な仮装・隠蔽がある場合 架空の取引先を仕立てて架空仕入を計上する、偽の領収書を大量に準備する、証拠帳簿を破棄・隠蔽する、税務調査で虚偽の説明を繰り返すなど、悪質な仮装・隠蔽行為。

参考:4つの加算税

  • 無申告加算税:税金を申告していない場合
  • 過少申告加算税:税額を少なく申告した場合
  • 不納付加算税:納付していない場合
  • 重加算税:上記いずれの場合でも、不正行為(仮装・隠蔽など)がある場合

重加算税の税率と計算方法

重加算税は「どれくらいの割合で課されるのか」「どのように計算されるのか」を理解しておくことが重要です。税率は対象となる加算税の種類によって異なり、計算方法も「増差額」を基準に算出されます。以下では、基本となる税率と計算方法について解説します。

重加算税の税率・何パーセントか

重加算税の税率は、対象となる加算税の種類によって異なります。国税通則法第68条3に基づき、基本となる割合は次のとおりです。

区分 税率
過少申告加算税に代えて課される場合 35%
不納付加算税に代えて課される場合 35%
無申告加算税に代えて課される場合 40%

また2017年の改正4により、過去5年以内に無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合は、税率が10%加重され、

  • 35%→45%
  • 40%→50%

といったことになります。

重加算税は、通常の加算税よりも大幅に高い割合が適用されるため、税務調査で不正と認定されると追徴負担が非常に大きくなる点に注意が必要です。

重加算税の計算方法

重加算税は、仮装や隠蔽といった不正行為によって課税標準または税額を逃れた部分(=「増差額」)を基準に計算されます。増差額とは、本来納めるべき税額から、当初申告していた税額を差し引いた金額を指します。

基本的な税率

過少申告加算税・不納付加算税に代えて課される場合:増差額×35%
無申告加算税に代えて課される場合:増差額×40%

計算例

たとえば、本来納めるべき税額が700万円、当初申告額が200万円の場合、増差額は500万円です。このケースで過少申告と認定された場合は、以下の通りです。

重加算税=500万円×35%=175万円
新たに納める税額=500万円(増差額)+175万円(重加算税)=675万円

加重措置(短期累犯の場合)

さらに、過去5年以内に無申告加算税または重加算税を課された履歴があると、増差額の10%が上乗せされます5

過少申告・不納付の場合:35%→45%
無申告の場合:40%→50%

税務調査で重加算税対象になった場合の対処法

重加算税が課されると、通常の加算税に比べて追徴負担が大きく、納税者にとっては大きな経済的リスクです。税務調査の結果、不正が認定されて処分を受けた場合でも、納税者にはいくつかの対応手段が用意されています。

誤りを修正の上、申告する

申告内容に誤りがあった場合は、納税者自ら修正申告できます。修正申告とは、すでに提出した申告書の内容に誤りや漏れがあった場合に、正しい内容に訂正する手続きです。本来の税額よりも少なく申告していた場合に行い、追加の税額を自主的に納めます。

たとえば、売り上げを一部申告していなかった、必要経費として計上できない支出を誤って計上していたようなケースが該当します。修正申告は、税務調査が入る前に自主的に行うことで、加算税や延滞税が免除される場合があります。

国税庁の案内では、修正申告書は所轄の税務署に提出するほか、e-Taxを利用してオンラインで提出することも可能です。

税務当局による更正処分に従う

税務調査で隠蔽や仮装といった不正が認定されると、税務署長や国税局長は国税通則法第24条・第68条などに基づき「更正処分」を行い、本来納めるべき税額に修正し、確定します。更正処分では、追徴税額に加えて重加算税や延滞税などの附帯税も課されます。

税務署長は、納税申告書の提出があつた場合において、その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたとき、その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは、その調査により、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する。
– 国税通則法第24条

更正処分は、納税者に送付される「更正通知書」によって知らされ、記載内容に従って納付することが求められます7。納期限までに追加の税額を納めなければ延滞税が加算されるため、まずは確定した処分に応じて速やかに納付することが重要です。

不服を申し立てる

処分に納得がいかない場合には「不服申立て」という制度を利用でき、以下の2種類があります。

  • 再調査の請求(処分を行った税務署長や国税局長に対して見直しを求める)
  • 審査請求(第三者的立場にある国税不服審判所に処分の適否を判断してもらう)

国税庁が発表した令和6年度の統計8によれば、再調査の請求は1,447件で、前年度より42.0%減少しました。再調査の請求うち、納税者の主張が認められた割合(認容割合)は5.2%です。

一方、審査請求9は3,537件に上り、納税者の主張が一部または全部認められた割合は17.9%でした。また、審査請求の処理期間については99.4%が1年以内に処理されており、迅速に対応されていることが示されています。

重加算税の仕訳・勘定科目

重加算税は、会計上は「租税公課」という勘定科目で処理するのが一般的です。国や地方自治体に納める税金や公課に含まれるため、企業会計基準上は費用として計上されます。しかし、重加算税は不正に対するペナルティーとして課されるため、法人税法上は損金(課税所得を計算する際に控除できる費用)算入は認められていません。

このため、申告調整においては「会計上は費用計上、税務上は損金不算入」という処理が必要です。つまり、財務諸表上は費用として処理する一方で、法人税の申告書上では別表四などを通じて加算調整する流れです(申請書の調整欄で「損金不算入」として処理)。

実際の仕訳は以下の通りです。

重加算税の支払いが現金で確定した場合(例:105万円)
(借方)租税公課:105万円/(貸方)現金:105万円

支払いがまだ確定しておらず、未払金として計上する場合(例:50万円)
(借方)租税公課:50万円/(貸方)未払金:50万円

国税庁の通達10やFAQ11でも、法人税や源泉所得税に関する重加算税はいずれも「租税公課」で処理することが示されています。ただし、税務上は損金不算入であるため、会計と税務の処理差異に注意が必要です。この調整を怠ると、申告漏れや過少申告につながるリスクがあります。

重加算税を払えない場合

重加算税は追徴課税の一種であり、払えないからといって放置はできません。納付を怠れば、税務署から督促状や催告書が送付され、最終的には差押え(滞納処分)によって強制的に回収されます。

差押えの対象となるのは、銀行口座や給与、不動産、自動車、保険など、生活や事業に直結する財産です。重加算税は「不正に対する制裁税」という性格を持つため、放置すれば通常の加算税以上に大きなリスクを抱えてしまいます。

一括で支払うのが困難な場合には、救済措置として「換価の猶予」や「納税の猶予」を申請することが可能です12。たとえば、事業継続や生活維持が困難になると認められる場合や、自然災害・盗難・病気など特別な事情がある場合に、分割払いが認められる制度です。認められれば、延滞税の一部または全部が免除されることもあります。ただし、申請には担保の提供や 納期限から6カ月以内の申請などの制約があり、必ず認められるわけではありません。

また、国税には消滅時効がありますが、重加算税のように不正行為が絡む場合は7年(国税通則法第70条)とされており、さらに督促や差押えといった滞納処分が行われれば時効は中断されます。つまり、実務上「時効成立による免除」を期待するのはほぼ不可能です。

他に注意すべきなのは、重加算税は自己破産をしても免責されない点です。税金は「非免責債権」とされており、借金とは違って個人が破産しても支払い義務は残ります。法人の場合は破産手続きで会社が消滅するため例外的な扱いとなりますが、個人事業主やフリーランスの場合は、最後まで納付を免れることはできません(破産法第253条)。

重加算税を払えないときは、督促や差押えに至る前に税務署へ相談し、猶予制度の活用を検討することが重要です。早めの対応こそが、資金繰りへの負担を最小限に抑える唯一の手段です。

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追徴課税と重加算税の違い

追徴課税と重加算税の違いは、対象となる行為と課される重さにあります。追徴課税は「本来納めるべき税金を納めていなかった場合に追加で課される税金全般」を指すのに対し、重加算税は「仮装や隠蔽などの不正があった場合に科される最も重い税金」です。

追徴課税の代表的な種類には、過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税・延滞税などがあり、単なる申告漏れや期限遅れなどの過失によっても発生します4。一方、重加算税は「悪質な不正」が前提であり、通常の加算税より税率が高く、納税者にとって大きな経済的負担となるのが特徴です。

区分 対象となる行為 税率の目安 特徴
追徴課税 申告漏れ、期限後申告、納付遅延など 10~20%程度(延滞税は利率による) ミスや遅れでも発生する追加税
重加算税 仮装・隠蔽などの不正行為 35~50% 悪質な不正に対する最も重い罰則

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重加算税の対象になるのは、意図的な収入の隠蔽や帳簿改ざんといった不正行為です。しかし、日々の取引を正確に記録しておけば、思わぬ記載ミスや申告漏れを防ぎ、重加算税のリスクを回避することにつながります。

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まとめ

重加算税は、単純なミスではなく悪質な不正行為に対して課される最も重い加算税です。法人・個人を問わず対象となり、税率は最大50%に達することもあります。不正が認定されれば最大7年間遡って課税され、複数年分の税額や延滞税を含めて一度に支払うことになるため、事業者にとって大きな負担となります。

しかし、重加算税のリスクは、日々の正確な取引記録や早めの修正申告で回避できます。また、納付が困難な場合でも猶予制度があるため、無視せず早めに税務署に相談することが重要です。正しい理解と対策を取ることで、最悪の事態を避け、事業を安定的に続けられます。

よくある質問

重加算税は個人にも適用されますか?

重加算税は法人だけでなく、個人にも適用されます。国税通則法第68条に基づき、法人税・所得税・相続税・贈与税など、税目を問わず同じ基準で課される仕組みです。

重加算税は最大何年遡及されますか?

重加算税を含む追徴課税の時効は、原則として法定申告期限の翌日から5年間です。ただし、仮装や隠蔽などの不正があった場合には、例外として最長7年間まで遡って課税されます。

重加算税は税率は何%ですか?

重加算税の税率は、代替される加算税の種類によって異なります。過少申告加算税や不納付加算税に代えて課される場合は35%、無申告加算税に代えて課される場合は40%が基本です。

さらに、2017年の改正以降、過去5年以内に無申告加算税または重加算税を課された履歴があると、税率が10%加重されます。この場合は35%が45%に、40%が50%に引き上げられ、不正の再発に対してはより重いペナルティーが課されます。

重加算税を払えないとどうなりますか?

重加算税を支払わずに放置すると、税務署から督促状や催告書が届き、最終的には銀行口座や不動産、給与などの財産が差し押さえられる可能性があります。ただし救済措置として「納税の猶予」や「換価の猶予」を申請でき、分割払いが認められるケースもあります。


Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。

執筆は2019年8月13日時点の情報を参照しています。2025年10月23日に記事の一部を更新しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash