※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。
個人事業主にとって税金の滞納は、単なる支払い遅れでは済まされません。延滞税や加算金による負担増、財産の差押え、事業運営や信用への悪影響など、さまざまなトラブルにつながります。
特に事業用資産や運転資金が差し押さえられれば、経営そのものが立ち行かなくなる恐れもあります。本記事では、税金滞納がどのような流れで進むのか、差押えに至るまでの過程や影響、全額免除の可能性や利用できる制度、滞納を防ぐための対策まで詳しく解説します。
📝この記事のポイント
- 税金滞納は延滞税や加算税、差押え、信用低下などのリスクを招く
- 督促状や延滞税、加算税を無視していると、財産を差押えられることもある
- 全額免除は例外的であり、分割払いや猶予、減免などの救済制度を活用するのが現実的
- 日常的に納税資金を確保し、ルールや期限を理解して早めに対応することが大切
- 税金の支払い義務は本人のみだが、滞納すれば家族や融資審査にも間接的影響が及ぶ
目次
- 個人事業主の税金滞納リスクとは?延滞税や差押えに注意
・まずは督促状が届く
・延滞税や加算金が発生する
・財産の差押えに発展することも
・ローンや融資の審査に悪影響が出る - 税金が払えない個人事業主は全額免除される?活用できる4つの制度
・全額免除は原則不可、知っておきたい制度の限界
・(1) 一括で払えないときは「延納」が可能
・(2) 特別な事情がある場合は「納税の猶予」も選択肢
・(3)「換価の猶予」で差押えを回避
・(4) 災害や深刻な事情がある場合は「減免」が認められることも - 税金滞納を防ぐためにできること
・普段から納税資金を見える化・準備しておく
・納税の流れとルールをしっかり理解しておく
・申告や納付は「ギリギリまで待たない」が鉄則 - よくある質問 (FAQ)
・税金の延滞金は時効になる?
・税金を滞納すると家族にも影響する?
・一度滞納したら完済しないと信用回復はできない? - まとめ
個人事業主の税金滞納リスクとは?延滞税や差押えに注意
税金を滞納すると、延滞税や加算金による負担増だけでなく、財産の差押えや信用低下といった深刻なリスクを招きます。
個人事業主の場合、事業資金や設備が差し押さえられることで経営に大きな支障が生じる可能性もあります。ここでは、督促状が届く段階から差押えに至るまでの流れと、それに伴う影響について解説します。
まずは督促状が届く
個人事業主が税金を納期限までに納付しなかった場合、原則として次の期間内に督促状が送付されます。
- 国税(所得税・消費税など):納期限から50日以内1
- 地方税(住民税・個人事業税など):納期限から20日以内2(自治体によっては30日以内の場合もあり)
督促状は納付を促すための通知であると同時に、将来的に差押えを行うための法的要件にもなります。督促状発行日から10日以内3に完納しなければ差押えが可能となるため、無視をしてはいけません。
延滞税や加算金が発生する
納期限を過ぎて税金を納めると、本来の税額に加えて延滞税や加算金が発生します。延滞税は滞納期間に応じて日割りで加算され、長引くほど負担が増えます。これらは税金と同様に徴収されるため、支払いの先送りは結果的に大きな負担増につながります。
財産の差押えに発展することも
督促や催告に応じず納付しない場合、自治体や税務署は財産調査を行い、滞納者の意思に関係なく財産を差し押さえることができます。
給与や預貯金、不動産、自動車などが対象となり、差押え後は売却や贈与といった処分が禁止されます。差し押さえられた財産は公売などで換価され、滞納税に充てられる仕組みです。
個人事業主の場合、事業用口座や売掛金が差し押さえられると資金繰りが急速に悪化し、仕入れや従業員への給与支払いに支障をきたす恐れがあります。さらに、店舗や工場、不動産など事業基盤となる資産が差し押さえられれば、営業の継続自体が困難になるケースも少なくありません。
ローンや融資の審査に悪影響が出る
税金の滞納情報は、クレジットカードやローンの信用情報機関(JICCやCICなど)に登録されることはありません。したがって、税金を口座振替や現金納付している場合、その支払い状況が信用情報に記録されることは基本的にありません。
しかし、税金をクレジットカード払いにしている場合は注意が必要です。カードの引き落とし日に残高不足で支払いが遅れると、その延滞情報はクレジット情報機関に登録され、いわゆる「金融ブラック」として扱われる可能性があります。
また、信用情報には載らない滞納であっても、融資や補助金申請時に必要な「納税証明書」には未納額が記載されるため、結果として審査に通らないリスクが高まります。
税金が払えない個人事業主は全額免除される?活用できる4つの制度
「分割払い」や「一時的な猶予」、「差押えの回避」などの制度を活用して、納付方法や時期を調整できます。ここでは、個人事業主が利用できる四つの制度とその特徴、注意点について解説します。

全額免除は原則不可、知っておきたい制度の限界
税金の全額免除は、災害や重大な損害といった特別な事情がある場合を除き、認められません。免除制度はあくまで例外的措置であり、多くは納付期限や方法の変更、延滞金の軽減といった形での救済です。そのため、制度の仕組みや適用条件を理解し、自分に合った方法を選ぶことが重要です。
(1) 一括で払えないときは「延納」が可能
国税は原則として一度に現金で納める必要がありますが、相続税や贈与税に限って納付額が10万円4を超え、期限までに納付が難しい事情がある場合は「延納」が認められることがあります。
申請書の提出と担保の提供が条件で、年賦(分割払い)で納めることができますが、その間は利子税が発生します。なお、加算税や延滞税、連帯納付責任額などは延納の対象外です。
(2) 特別な事情がある場合は「納税の猶予」も選択肢
特別な事情で税金を一時に納付できない場合には、「徴収猶予5」という制度を利用できる可能性があります。これは、納税者が災害や盗難、重い病気やケガ、事業の廃止・休止、大きな事業損失などにより納付が困難なときに、所轄の税務署や自治体の税務担当窓口へ申請することで認められる措置です。
また、本来の期限から1年以上経って税額が確定した場合なども対象に含まれることがあります。徴収猶予が認められると、原則最長1年間は新たな督促や差押えが行われず、すでに差押えを受けた財産の売却も一時的に停止されます。
さらに、猶予期間中の延滞金が全額または一部免除されることもあります。申請には、事由を証明できる書類の提出が必要で、手続き先は国税であれば税務署、地方税であれば市区町村や都道府県の税務担当課です。なお、徴収猶予はあくまで一時的な措置であり、期間終了後には分割などで納付を完了する必要があるため、計画的な返済スケジュールを立てることが重要です。
(3)「換価の猶予」で差押えを回避
「換価の猶予5」は、税金を一時に納付すると事業の継続や生活の維持が難しくなる場合に利用できる制度です。申請が認められると最長1年間、すでに差押えを受けている財産は売却されず、差押え前であれば差押え自体が猶予されることもあります。
また、猶予期間中の延滞税あるいは延滞金が一部免除される点も特徴です。猶予期間は申請者の財産状況や収支に応じて決定され、原則として期間内は毎月分割で納付します。やむを得ない事情で完納できない場合は、追加申請により延長が可能で、当初の期間と合わせて最長2年間まで認められます。
この制度を活用することで、差押えによる事業資産や生活基盤の喪失を防ぎながら、計画的な納税が可能となります。申請先は、国税の場合は所轄税務署、地方税の場合は市区町村または都道府県の税務担当課です。
(4) 災害や深刻な事情がある場合は「減免」が認められることも
「減免2」は、災害や深刻な事情によって税金の納付が困難になった場合に、申請によって税額が軽減または免除される制度です。
たとえば、地震や台風などの災害で地方税の納付や申告が期限までにできないときは、災害のやんだ日から2カ月以内に行えば期限内の手続きとみなされる場合があります。
不動産取得税では、取得した不動産が短期間で災害により滅失・損壊した場合や、一定期間内に代替不動産を取得した場合に、減免が適用されることがあります。
自動車税(種別割)では、被災により使用不能となった自動車を廃車にすれば翌月分以降が減額され、修理して使用する場合も修理期間や修理費用に応じて減免が認められる場合があります。また、代替車両の取得時には自動車税(環境性能割)や軽自動車税(環境性能割)の減免を受けられる可能性があります。
さらに、事業用資産の損害や被災による傷病で事業を休止した場合には個人事業税が減免されることがあり、事業主本人だけでなく扶養親族の入院や自宅療養でも対象となる場合があります。住民税の減免については、自治体ごとの基準に基づいて判断されるため、居住地の自治体窓口での確認が必要です。
税金滞納を防ぐためにできること
税金の滞納は、一度発生すると延滞税や差押えといった大きな負担につながります。しかし、多くの場合は事前の準備によって防ぐことが可能です。ここでは、日常的にできる税金滞納の予防策について解説します。

普段から納税資金を見える化・準備しておく
税金の支払いは突然やってくるものではなく、あらかじめ納付時期や金額が予測できます。そのため、日頃から売り上げや収入の一部を納税用として確保しておくことが大切です。たとえば、売り上げが入金されたらすぐに一定割合(所得税・消費税・個人事業税などを考慮して20〜30%程度)を別口座に移す方法があります。
このように資金を「見える化」しておくことで、事業資金や生活費と混ざらず、納税時に慌てることがなくなります。
納税の流れとルールをしっかり理解しておく
税金は種類によって計算方法や納付期限が異なります。所得税は年1回の確定申告で納付しますが、消費税や個人事業税、住民税などは複数回に分けて支払うことがあります。また、予定納税や中間納付といった制度もあり、想定外の時期に納付が必要になる場合もあります。
こうしたスケジュールやルールを理解しておけば、資金繰りの計画が立てやすくなり、滞納を防ぐことができます。特に事業をはじめたばかりの人は、税務署や自治体からの案内だけでなく、自分でも積極的に制度や期限を確認することが重要です。
申告や納付は「ギリギリまで待たない」が鉄則
申告や納付の期限ギリギリまで待つと、予期せぬトラブルで間に合わなくなるリスクが高まります。たとえば、入金予定が遅れる、帳簿の不備が見つかる、システム障害で電子申告ができないなど、思わぬアクシデントが起こることがあります。
余裕をもって申告・納付を済ませておけば、こうしたリスクを回避できるだけでなく、延滞税や加算税といった余計な負担も防げます。特に確定申告は、期限が近づくほど税務署や会計ソフトのサポート窓口が混み合うため、早めの行動が大切です。
よくある質問 (FAQ)
税金の滞納は、多くの個人事業主やフリーランスにとって頭を悩ませる問題です。延滞税や差押えといった直接的なペナルティだけでなく、信用や家族への影響など、見落としがちなリスクもあります。ここでは、特に質問の多い三つの疑問に回答します。
税金の延滞金は時効になる?
税金の延滞税には5年の時効がありますが、実際には督促が行われるたびに時効がリセットされるため、成立するケースはほとんどありません。さらに、偽りや不正行為がある場合は7年に延長されます。
延滞期間が長くなるほど税率も上がり、負担は増していきます。滞納を続ければ財産差押えのリスクも高まるため、支払いが難しい場合は早めに税務署や自治体に相談し、分割納付や猶予制度などの利用を検討することが重要です。
税金を滞納すると家族にも影響する?
税金を滞納しても、原則としてその支払い義務は滞納者本人にのみ課せられます。家族が代わりに返済を求められることはなく、税務署や自治体から家族あてに直接催促が行われることも通常はありません。
ただし、差押えが行われた場合には、同居家族の生活に間接的な影響が及ぶ可能性があります。たとえば、滞納者の預金口座が凍結されたり、給与が差し押さえられたり、不動産が処分されると、世帯全体の生活費や住環境に支障が出ることがあります。
特に事業用資産や家屋が差し押さえられると、家族の生活基盤そのものに影響を与えるため、滞納は早期に解消することが重要です。
一度滞納したら完済しないと信用回復はできない?
税金や公共料金を口座振替や現金で直接支払っている場合、その支払い状況は信用情報機関(JICCやCICなど)には登録されません。そのため、税金を一度滞納したとしても、その情報自体が信用情報に載ることはありません。
ただし、税金や公共料金をクレジットカードで支払っていて、そのカードの引き落としが遅れた場合は別です。カードの延滞情報は信用情報機関に登録され、完済するまでの間はもちろん、完済後も一定期間(通常5年程度)記録が残ります。この場合、完済しない限り信用回復は不可能であり、完済しても情報が消えるまでの期間はローンや新規クレジットカードの審査に通りにくくなります。
また、信用情報には載らない税金滞納でも、「納税証明書」には未納額が記載されるため、事業融資や住宅ローンなどの審査で不利になる場合があります。そのため、信用情報上の回復だけでなく、実務的な信用回復のためにも、滞納分は早期に完済することが重要です。
まとめ
税金滞納は、延滞税の増加や財産の差押えなど深刻な事態を招き、事業や生活基盤に大きな影響を与えます。全額免除は極めて限られた場合にしか認められず、多くは猶予制度や分割払いでの対応が必要です。日頃から納税資金を確保し、納付期限や制度を把握しておくことで、こうしたリスクは大幅に減らせます。
もし支払いが難しい状況になっても、放置せず早めに税務署や自治体へ相談し、利用できる制度を検討することが重要です。本記事で解説した内容を参考に、税金滞納による損失を未然に防ぎましょう。
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執筆は2025年9月1日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash

