個人事業主が知っておくべき、個人事業税について

個人事業主として独立したばかりの人、独立を考えている人が押さえるべき知識に「個人事業税」があります。所得税や住民税についてはこれまで聞いたことがあっても、個人事業税はよく知らないという人も多いのではないでしょうか。

今回は、個人事業主特有の税金である「個人事業税」について、わかりやすく解説します。



個人事業税とは

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個人事業税は「地方税」であり、都道府県が徴収します。個人事業主が事業をする上で行政サービスを利用していることから、費用の一部を負担してもらう、というものです。しかし、すべての個人事業主に等しく納税義務が発生するわけでもありません。一定以上の所得を持ち、特定の事業を行っている個人に対して課税されます。

参考:個人の事業税(千葉県)

個人事業税が課税される条件

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個人事業税は、以下の三点すべてに該当する人に課税されます。

・個人事業主であること
・所得が290万円以上あること
・該当事業を行なっていること

それぞれについて、詳しく見ていきます。

個人事業主であること
「個人事業税」という名前のとおり、個人事業主であることが前提です。もし個人で仕事をしてきた人が法人化をした場合は、「法人税」を払うことになります。

所得が290万円以上あること
所得、つまり売り上げから経費を引いた金額が290万円を上回った場合、納税義務が発生します。個人事業税には「事業主控除」があり、年間で一律290万円となっています。290万円をオーバーした部分に税金がかかってきます。逆にいえば、所得が290万円を下回っている場合は、個人事業税を払う必要はありません。

該当事業を行なっていること
個人事業税がかかってくる業種は、全部で70種類あります。
・第1種事業(37業種):税率5%
・第2種事業(3業種):税率4%
・第3種事業(30業種):税率5%または3%
の三つに区分されています。

第1種事業はもっとも幅広く、飲食店や物品販売のほか、マスコミ系や不動産系の業種です。第2種事業は、畜産業、水産業、薪炭製造業の三つです。第3種事業は医療関係のほか、税理士やコンサルタントなど、国家資格や専門資格が必要な業種となります。

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税額の計算方法

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個人事業税の計算方法は、以下のとおりです。

個人事業税額=(総所得額+青色申告特別控除額-各種控除額)✕税率

ややこしそうに見えますが、簡単にいえば「利益から控除できる金額を全部引き、残った数字に自分が該当する税率をかける」ことです。

「総所得額」とは、すべての収入から経費を引いた額です。事業所得はもちろんのこと、不動産所得がある場合は、それも合計します。また、雑所得が含まれる場合もあります。

なお、所得の総額の計算方法は
総所得額=総収入(売り上げ)-必要経費-事業専従者給与(控除)額
です。

「事業専従者給与(控除)」は、生計を共にしている家族が事業に携わっていた場合、賃金として払うお金に関するものです。青色申告の場合は特別に必要経費扱いとなり、「給与」として支払った全額が適用されます。白色申告の場合は、一定金額を「控除」してもらえます。配偶者ならば86万円、それ以外の親族であれば、一人につき50万円が上限です。

「青色申告特別控除」とは、確定申告において「青色申告」を選んだ場合に受けられる控除のことです。具体的には、65万円または10万円の控除が受けられるもので、この控除額のことを「青色申告特別控除額」と呼びます。なお、こちらの控除が受けられるのは、あくまで所得税の話であり、個人事業税の場合は差し引くことができません。そのため、65万円または10万円を加算する必要があります。

参考:
No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除(国税庁)
個人事業税(東京都主税局)

さて、個人事業税では青色申告特別控除は適用できませんが、「事業主控除」および「繰越控除」が用意されています。

「事業主控除」とは、前述の290万円のことです。一年間事業を行なっていれば、誰でも一律で差し引けます。一年に満たない場合は、事業を行った月数分が控除されます。たとえば、半年ならば145万円です。

「繰越控除」とは、その名のとおり、その年に控除し切れなかった金額を、翌年以降に繰り越せるというものです。

・所得が赤字だったとき(青色申告のみ)
・災害で事業用資産が損失したとき(白色申告のみ)
・資産の譲渡で損失が発生したとき(青色申告のみ)
に適用できます。

該当するものがあれば、その数字も差し引きましょう。

所得税の確定申告をしていれば申告手続き不要

本来であれば、個人事業税は申告手続きが必要です。しかし、所得税の確定申告書、もしくは住民税の申告書を提出していれば、改めて個人事業税の申告書を提出する必要はありません。確定申告で所得税を納めている場合は、そのデータをもとに都道府県が税額を計算し、納税通知書を送付してきます。

納付時期は8月と11月の二回

個人事業税は、8月(第一期分)と11月(第二期分)の二回に分けて納付します。各都道府県の税事務所から納税通知書が届くため、期限までに支払います。ただし、事業を廃止したり、修正申告をしたりすると、これら以外の時期に納税通知書が届く場合もあります。いずれにせよ、延滞とならないように気をつける必要があります。

個人事業税は「経費」にできる

個人事業税は、事業に関係するお金であるため、経費として計上できます。帳簿をつける際は、「租税公課(そぜいこうか)」で仕訳しましょう。

コンビニやクレジットカードでも納付できる

個人事業税は、税事務所の窓口以外でも納付可能です。口座振替のほか、30万円以内であればコンビニでも納付ができます。土日祝日や夜間などでも支払えるため、便利です。また、必要な手続きを行えば、クレジットカード払いができる場合もあります。自分にとって都合のいい方法を選びましょう。

減免措置あり。期限までに申請

以下のケースに該当する場合、個人事業税を減免してもらえる可能性があります。

・地震や洪水などの災害にあったとき
・生活保護を受けているとき
・自分や生計を共にしている家族の高額な医療費を払ったとき
・本人や扶養する家族が障害者のとき

減免をするには、納税者本人が納付期限までに申請をする必要があります。できるだけ早く都道府県の税事務所に行き、相談するのがおすすめです。

個人事業税は、290万円以上の所得があり、該当事業を行なっている個人事業主にかかる税金です。所得税や消費税に比べて知名度は高くありませんが、個人で事業を行う上では、必ず押さえておきましょう。

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執筆は2019年6月17日時点の情報を参照しています。2023年6月27日に記事の一部を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash