※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。
企業が納める法人税は、最終的に益金(税務上の収益)から損金を差し引いた所得に基づいて計算されます。損金が多ければ納税額は減りますが、企業の支出のすべてが損金として認められるわけではありません。この複雑なルールを理解するために、経理・税務において核となるのが「損金算入」と「損金不算入」の概念です。
この記事では、損金の基本から、損金算入・損金不算入について、わかりやすく解説します。
📝この記事のポイント
- 損金とは、法人税を計算する際に所得から差し引くことができる費用・損失(税務上の控除対象額)
- すべての支出が損金算入できるわけではなく、税法上のルールにより損金不算入(全額または一部が損金とならない)となる場合もある
- 公平な課税を実現するため、交際費、役員給与、寄附金など、一部の費用には損金算入できる額に上限や条件が設けられている
- 損金不算入のルールを正しく理解し、適切な経理処理を行うことが、税務調査への備えと適正な納税につながる。
目次
- 損金とは?簡単にわかりやすく解説
・損金とは?
・損金と費用・経費の違い - 損金算入とは?わかりやすく解説
・損金算入とは?
・損金算入できるもの(勘定科目)
・損金算入のメリットとデメリット - 損金不算入とは?わかりやすく解説
・損金不算入とは?
・損金不算入の仕訳の勘定科目 - 損金算入と損金不算入の覚え方
- 損金算入と損金不算入における注意事項
・税法上の交際費の扱い
・租税公課は損金算入できるか
・一部の役員報酬のみ損金算入できる - 会計ソフトと連携できるSquareで経理を楽に
- まとめ
- よくある質問
・損金にはどんな勘定科目が該当しますか?
・損金算入できるものはどんな勘定科目がありますか?
・損金不算入にはどんな勘定科目が該当しますか?
・損金算入にどのようなメリットがありますか?
損金とは?簡単にわかりやすく解説
損金を正しく理解することは、適切な納税はもちろん、税務コストを最適化する方法を考えるうえでも欠かせません。しかし、費用・経費といった似た言葉があるため、混乱しやすい側面もあるでしょう。
損金が費用や経費とどう違うのか、そしてなぜ法人税を計算するうえで損金が重要になるのかを、解説していきます。
損金とは?
損金とは、簡単にいうと「法人税を計算するときに、課税所得から差し引くことができる費用や損失(=税務上控除できる金額)」です。損金が多いほど所得は少なくなるので、所得に課税される法人税も少なくなるという仕組みです。
損金には、事業活動に必要な支出(例:仕入、人件費、地代家賃など)が該当しますが、すべての支出が損金として認められるわけではありません。
法人の儲け(利益)を確定させる方法には、財務会計と税務会計の2つがあります。財務会計は法人の経営成績を明らかにする目的で行うものです。一方、税務会計は法人税を計算するために行われるもので、公平な課税や税収確保を目的としています。
財務会計上の儲けは「利益」、税務会計上の儲けは「(法人税法上の)所得」と呼ばれます。これはそれぞれ、以下の計算式で求められます。
財務会計上:利益 = 収益 - 費用および損失
税務会計上:所得 = 益金(※) - 損金
※益金は税務上の収益、損金は税務上の費用に相当します。
損金と費用・経費の違い
「損金」と「費用」「経費」は、いずれも企業の支出を指すという点では共通しています。しかし、この三者はそれぞれ適用される会計基準や税法の目的が異なるため、厳密には区別が必要です。
| 適用されるルール | 概念 | |
|---|---|---|
| 費用(経費) | 企業会計原則などの会計上のルール | 企業の経営成績(利益)を計算する際の支出 |
| 損金 | 法人税法などの税務上のルール | 企業の課税所得を計算する際の控除対象額 |
費用と経費は、事業に関係する支出を指します。費用は、企業の経営成績(利益)を計算する会計上の概念です。企業会計原則などのルールに則っていれば、損益計算書上、原則として全額計上が認められます。経費は、費用の中でも、特に営業活動などにかかる支出を表します。
一方で損金は、法人税法上の概念です。企業会計では費用として全額計上されている支出であっても、法人税法上の所得を計算する際には、その一部または全部の計上が損金として認められない場合もあります。

損金算入とは?わかりやすく解説
企業の支出を税法上の「損金」として認め、所得から控除することを「損金算入」といいます。事業活動に必要な費用を適切に損金算入することで、企業は正しく税負担を軽減できます。
ここからは、その損金算入の定義や、実際にどのような費用が損金として認められるのか、そしてそのメリット・デメリットについて、具体的に見ていきましょう。
損金算入とは?
損金算入とは、企業会計上で「費用」として計上された支出が、税務会計上でも「損金」として認められ、課税所得から控除することです。事業の継続・運営に不可欠な支出は、原則として損金算入が可能です。
前述したように、法人の所得は「所得=益金−損金」で求められるので、損金算入すると、課税所得が減少して法人税額を抑えられるようになるのです。
損金算入できるもの(勘定科目)
原則として、法人が収益(税務上の益金)を得るために支出した費用は、税法上の制限を受けない限り損金算入が可能です。主な勘定科目の例は以下の通りです。
| 具体的な勘定科目例 | 内容 | |
|---|---|---|
| 売上原価 | 仕入高、期首・期末棚卸高など | 商品や製品の製造・仕入れにかかった費用。 |
| 人件費 | 給与手当、福利厚生費、通勤手当など | 従業員に支払う給与や、法定福利費、健康診断費用など。ただし、役員給与のうち一定の要件を満たさない部分は損金不算入となります。 |
| 事業費 | 旅費交通費、通信費、水道光熱費、消耗品費 | 営業活動や業務遂行に通常必要となる費用。 |
| 販売促進費 | 広告宣伝費、販売手数料など | 製品・サービスを販売するためにかかった費用。 |
| 管理費用 | 地代家賃、修繕費、保険料など | 事務所や設備に関する費用。 |
| 減価償却費 | 建物、機械装置、備品などの償却費 | 固定資産の取得価額を耐用年数に応じて費用化するもの。 |
| 租税公課 ※法人税・地方法人税・法人住民税(均等割・所得割)は損金不算入。 |
固定資産税、印紙税、事業税(付加価値割・資本割)など | 一部の税金は損金算入が可能。 |
ただし、上記の勘定科目であっても、交際費、寄附金、役員給与の一部などについては、後述の通り税法上の制限(損金不算入のルール)が適用されるため、全額が損金算入できるわけではありません。これらは税務上、損金算入限度額や届出要件が定められています。
損金算入のメリットとデメリット
損金算入には、以下のようなメリットとデメリットがあります。
損金算入のメリット
①法人税負担の軽減
損金算入が認められることで課税所得が減り、支払うべき法人税や法人住民税(法人税割・均等割)の額が軽減されます。
②適正な経営成績の反映
事業に必要な支出が正しく所得から差し引かれるため、企業の実態に即した収益力を示せるようになります。
損金算入のデメリット
①税務処理の複雑化
損金算入には、支出内容ごとに税法上の細かいルール(例:交際費の上限、減価償却の計算方法など)が適用されるため、経理や税務申告の処理が複雑になります。
②誤処理によるリスク
損金算入のルールを誤って適用すると、税務署の調査で誤りを指摘され、追徴課税(過少申告加算税など)を受けるリスクが生じます。
例:交際費の按分や役員給与の届出漏れ

損金不算入とは?わかりやすく解説
法人税を計算する際、損金として認められる費用がある一方、一部の支出については、税法上のルールによってその全額、または一部が損金として認められません。
この章では、損金不算入の定義と、具体的な項目をチェックしていきます。
損金不算入とは?
損金不算入とは、会計上は費用として計上されているものの、税法上の規定により損金としては認められないものを指します。損金不算入は、納税の公平性を保つことを主な目的としており、企業が意図的に利益を圧縮し、不当に税金を逃れる事態を防ぎます。
損金不算入の仕訳の勘定科目
代表的な損金不算入となる項目は、以下の通りです。
①交際費などのうち、損金算入限度額を超えた部分
交際費や接待費、機密費、贈答費の代金などの費用は、法人税上、原則として損金不算入となります。意図的に交際費をたくさん計上した場合、すべて損金に算入してしまうと不当に税金を逃れることができてしまうからです。
しかし、交際費が一律損金不算入になるわけではありません。交際費の目的は、取引先との関係を円滑にすることです。令和6年度税制改正により制度が拡充され、一定の条件下で損金算入が認められるケースもあります。
損金算入するためのポイントは、以下の2つです。
1.一人あたり10,000円までの飲食費は全額損金算入
一人あたり10,000円までであれば、交際費から除外され、「会議費」として扱うことができるため、損金に算入されることになります。なお、飲食費が一人あたり10,000円を超える場合は全額が交際費扱いとなり、会議費と交際費に按分することはできません。
会議費として計上するためには、飲食した年月日、参加者の氏名や関係、参加者の数、金額や飲食店の名前・住所を記載した書類を保存しておく必要があります。

2.会社の規模に応じて一定額が損金算入
資本金が1億円を超えているかどうかによって、損金算入限度額が異なります。資本金が1億円を超えている会社の場合、接待飲食費のうちの50%を損金として算入できます。それを超えた分は、すべて損金不算入となります。
資本金が1億円以下の会社の場合、以下2つの条件のうち自社に有利な方を選択できます。
A:交際費等のうち、年800万円までの部分を全額損金算入
B:接待飲食費の総額50%を損金算入
②一部の役員給与・役員賞与
役員の給与は、原則として損金算入が制限されています。もしこれが損金扱いになると、利益が多くなった年度において、年度末に役員給与を意図的に大きくして課税所得を減らすことができてしまうからです。
ただ、これも一律全てが損金不算入になるのではなく、定期給与(いわゆる月給)と賞与については、以下の3つの条件を満たす場合には、損金算入が認められます。
1.定期同額給与
支給時期が1カ月以下の一定期間ごとで、事業年度内における支給額が同額であるもの。毎月支払われる固定給に該当します。
2.事前確定届出給与
所定の時期に確定した額を支給するもので、決められた日までに税務署に届出書を提出しているもの。支給時期や支給額をコントロールできるので、賞与のような支給形態に利用されるケースもあります。ただ、届出書に記載した対象者や支給日、金額の通りに支給しなければ損金算入は認められないので、慎重に検討する必要があります。
3.業績連動給与
市場での株価や有価証券報告書に記載されている売上高など客観的な業績指標(売上高・営業利益など)と役員給与を連動させるものです。主に上場企業などが対象となります。
ただ、上記に該当したとしても不相当に高額な部分の金額は損金として認められないので注意が必要です。支給水準が同業他社と比較して著しく高額な場合などが該当します。
③寄附金のうち、損金算入限度額を超えた部分
寄附金については、原則として損金に算入できる金額に上限が決められています。意図的に寄附金を高く設定することで、納税額を減らすために使われる可能性があるからです。
上限の計算式は、以下のとおりです。
(期末の資本金の額および資本準備金の額の合計額または出資金の額 ×12分の当期の月数×1000分の2.5+所得の金額×100分の2.5)×4分の1=損金算入限度額
※上記は、一般の寄附金に適用される損金算入限度額の計算式です(法人税法第37条第4項)
ただし、例外もあります。1つは、国・地方公共団体への寄附金で、全額が損金算入されます。また、「特定公益増進法人」や「認定NPO法人」など、公益性が高い団体への寄附金についても、損金算入される割合が高く設定されています。
④法人税、法人住民税(法人税割・均等割)
これらは税金を支払うための費用であり、損金として認めると課税所得の算定が適切でなくなってしまいます。
損金算入と損金不算入の覚え方
損金算入と損金不算入を見分ける際は、「その支出が事業の目的と税の公平性に照らして正当かどうか」で判断するとよいでしょう。
- 損金算入:事業活動に直接的に必要で、客観的に合理性が認められる支出(人件費、地代家賃、消耗品費など)
- 損金不算入:利益調整が可能な性質を持つ費用(高額な役員給与、過大な交際費、多額の寄附金)や、税金そのもの・加算税などのペナルティ
事業に必要でも、税の公平性や課税所得の適正な算定を損なうおそれがある場合には、損金算入に制限が設けられていることを覚えておきましょう。

損金算入と損金不算入における注意事項
損金算入・不算入のルールを正しく理解しておくと、適正な税務対応の基礎であると同時に、税務調査で不備を指摘されないための重要なリスク管理となります。ここでは、特に間違いやすい項目について、税法上の具体的な取り扱いを解説していきます。
税法上の交際費の扱い(令和6年度改正対応)
交際費は、原則として損金不算入ですが、前述したように税法上の特例措置により、一定の条件を満たす場合には損金算入が認められます。
そのため、取引先などとの飲食費で、一人あたり10,000円以下であれば、交際費等から除外され、「会議費」として全額が損金算入できます。資本金1億円を超える会社は、接待飲食費の50%を損金算入でき、資本金1億円以下の会社は、交際費等の定額控除限度額の800万円までもしくは接待飲食費の50%を損金算入できます。
租税公課は損金算入できるか
租税公課は、国や地方公共団体に納める税金や公的負担金などを総称する勘定科目です。これには損金算入できるものと、できないものがあります。
損金算入できる租税公課には、印紙税や都市計画税、固定資産税(事業用資産にかかるもの)など、事業の運営に必要な費用とみなされるものが該当します。法人事業税(所得割)も損金算入が認められます(法人税法第42条第1項、施行令第139条)。
一方、損金不算入となる租税公課には、法人税、地方法人税、法人住民税(都道府県民税・市町村民税)、および延滞税・加算税・過怠税など、所得に対して課税される税金そのものや、法令違反によるペナルティが該当します。
一部の役員報酬のみ損金算入できる
役員報酬は、原則として損金不算入ですが、以下の条件を満たすものに限り損金算入が認められます。税法上、損金として認められる役員報酬は次の通りです。
①定期同額給与:毎月一定額を支給するもの。
②事前確定届出給与:税務署へ事前に届出を行い、定められた時期に確定した額を支給するもの。
③業績連動給与:株価や売上高など客観的な業績指標と連動して支給するもの。
上記の要件を満たしていても、同業他社の水準と比べて著しく高額な部分については損金算入が認められません。
会計ソフトと連携できるSquareで経理を楽に
損金や費用の複雑な計算、仕訳、申告は、会計ソフトを利用することで効率化できます。
Squareの決済サービスやPOSレジを利用すれば、売上データは自動で記録されます。さらに、クラウド会計ソフトとの連携も可能。店舗でのキャッシュレス決済だけでなく、見積書や請求書の作成・送信といったサービスもあるため、経理業務の負担を大幅に軽減し、本来の事業活動に集中できます。

まとめ
損金算入・不算入のルールは、適正かつ公平な法人税を確保するために不可欠なものです。 しかし、会計上は費用として処理していても、税務上は損金として認められない場合があります。
知らずに経理作業を行っていると、税務署からの指摘を受ける可能性もあるので、今回の内容を踏まえ、不明点があれば専門家のアドバイスも得ながら、適切な経理体制を構築しましょう。
よくある質問
損金と費用の違いや、損金算入・損金不算入の概念は、混乱しやすい箇所です。ここでは、これまで解説してきた内容を踏まえ、よくある質問とその回答をまとめました。
損金にはどんな勘定科目が該当しますか?
売上原価、給与手当、福利厚生費、地代家賃、消耗品費、広告宣伝費、旅費交通費、減価償却費など、事業の売り上げを得るために必要な費用として計上されるものが広く該当します。これらは、会計上の費用のうち、法人税法上も損金として認められる代表的な項目です。
損金算入できるものはどんな勘定科目がありますか?
基本的に「損金に該当する勘定科目」と同じです。ただし、交際費、役員給与、寄附金、租税公課など、一部の科目については、税法上の要件や限度額を満たした部分のみ損金算入が認められるものもあるため、要件を確認することが重要です。
損金不算入にはどんな勘定科目が該当しますか?
法人税・法人住民税、罰金、交際費の損金算入限度額を超えた部分、役員給与のうち不相当に高額な部分や要件を満たさない賞与、寄附金の損金算入限度額を超えた部分などが該当します。主に、税の公平性を保つために制限される項目と、税金そのものやペナルティに該当するものと考えておきましょう。
損金算入にどのようなメリットがありますか?
損金算入の最大のメリットは、法人税の適正な税務対応です。損金算入された金額の分だけ課税所得が減るため、結果として支払うべき法人税額が減少します。また、税負担の軽減により、企業の資金繰りにも余裕が生まれるという効果もあります。
Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。
執筆は2019年12月6日時点の情報を参照しています。2025年10月29日に記事の一部を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。

