企業の実際の財政状況が把握できる、税効果会計とは?

税効果会計とは、会計上の利益と税務上の所得が一致しない場合のズレ(差異)を適切に期間配分するための処理です。

税効果会計は上場会社と一部の非上場会社に義務付けられていますが、これらに該当しない非上場の中小企業であっても適用するかどうか選択することができます。適用することにより、会計方法のズレを調整して企業の財政状態を正しく計算・把握する効果が期待できます。

この記事では税効果会計の概要とメリット・デメリット、具体的な適用手順を解説します。

税効果会計とは何か

企業は、事業の結果生じた売り上げや、かかった費用をもとに、最終的な利益を会計としてまとめなければなりません。

企業の会計には、「企業会計」と「税務会計」の2種類がありますが、これらの計算方法は異なっているため、それぞれで計算された利益は必ずしも一致するものではありません。

この2種類の会計はそもそもの目的が異なっています。

具体的にいうと、企業会計は株主や投資家などに対して財務諸表など事業の成果についての適切な情報提供を行うことを目的としています。一方で税務会計は、納税額を割り出すために行うもので、納税者間での税負担の公平性を確保したり、脱税などの納税を回避する不正行為を防止したりことを目的としています。よってそれぞれ求める数値が異なることから、会計の計算方法も違ってきます。

税効果会計とは、それぞれの会計方法で計算した結果のズレを調整し、合理的かつ適切に期間配分して財務諸表に反映させる手続きのことを指します。

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企業会計と税務会計の違い

企業会計と税務会計では、利益の計算がどのように異なるのか具体的に解説します。分かりやすくするため、以下のサンプルケースを使って説明します。

収益 500
費用 400
(ただし、税務会計上損金と認められない長期滞留在庫の評価損として
100が含まれている)
法人税率 40%

ちなみに、企業会計では「収益」「費用」「税引前利益」という用語を使うのに対し、税務会計では「益金」「損金」「課税所得」という言葉を使います。

企業会計では、発生した費用は合理的な範囲で早期に計上する考え方があります。そのため上記の例では、費用400のすべてを収益から控除できます。

税引前利益は、収益500-費用400=税引前利益100、となります。

一方税務会計では平等に課税する観点から、はっきり損金といえるものだけを損金にする考え方があります。費用に含まれる長期滞留在庫の評価損は廃棄するまで金額が確定しないので、損金として認められない場合があります。

税務会計の計算では、企業会計の税引前利益に計算の違いを加算・減算することで課税所得を計算します。

企業会計の税引前利益100 + 損金として認められない金額100 = 課税所得200です。

上記の計算では企業会計の税引前利益よりも、税務会計の課税所得の方が大きくなっているとわかります。これ以外でも利益や費用の計上に関する考え方の違いによって、二つの会計はズレが発生することがあります。

ちなみに、税務会計の課税所得から計算された税額は、会計上「法人税、住民税および事業税」として扱われます。

税額は課税所得200×法人税率40% = 税額80、です。

税効果会計の適用対象となるズレ

企業会計と税務会計のズレにも2種類あります。

一次差異: 発生しても、時間の経過にともなって解消されるズレ

【具体例】

  • 税務上認められない評価損(棚卸資産など)
  • 貸倒引当金の損金算入限度超過額
  • 退職給付引当金
  • 賞与引当金
  • 積立金方式による圧縮積立金

永久差異: 発生したら永久に解消されないズレ

【具体例】

  • 交際費などの損金不算入額
  • 受取配当金の益金不算入額

税効果会計で調整の対象になるズレは、いずれ解消される一時差異のみです。永久差異は時間が経過しても解消しないため、調整の対象になりません。一次差異が将来解消する時期に合わせて各事業年度の税額を加減し、トータルで見た納税額が適正になるよう調整します。

税効果会計のメリット

税効果会計を適用することで、企業会計上の損失と利益に対応する税金の関係をより分かりやすく可視化します。その結果、会社の財務状態や経営実績の実態を正確に表示できます。

税効果会計のデメリット

たとえば会社の事業がうまくいっていない場合など、将来いくら利益が発生して納税するのかが見込みにくい状況の場合、計上できる繰延税金資産の金額が少なくなっていきます。

結果、繰延税金資産を取り崩すことになると、法人税等調整額の費用が発生してしまいます。これは費用の増加につながるため、ただでさえ良くない決算をさらに悪化してしまうことになっていく場合があります。

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税効果会計の具体的な適用方法

税効果会計を適用する方法について、手順ごとに解説していきます。前述のサンプルケースをもとにして仕訳例を記載します。

【一時差異を集計する】
まずはじめに、企業会計の収益・費用と税務会計上の益金・損金とを比較し、一時差異にあたる部分だけを集計します。将来にわたって解消しない永久差異にあたる部分は対象にならないので注意してください。

差異が解消されたときに課税所得が減るものは「将来減算一時差異」、解消されたときに課税所得を増やすものは「将来加算一時差異」です。

前述のサンプルケースでは、長期滞留在庫の評価損100が一時差異に該当します。評価損が解消すると損金が増えて課税所得が減るため、これは将来減算一時差異です。

【法定実効税率を計算する】
法定実効税率とは、法人税・住民税・事業税などの表面税率を使って計算した総合的な税率のことです。税効果会計の計算に用いるため、先に計算しておく必要があります。基本的な計算式は以下の通りです。

[法人税率 + { 法人税率 ×(地方法人税率 + 住民税率)} + 事業税率] 
÷ (1 + 事業税率) 

ここでは計算を簡単にするため、サンプルケースの法人税率40%をそのまま使います。

【繰延税金資産・繰延税金負債の算出】
集計した差異に法定実効税率を乗じることで、繰延税金資産や繰延税金負債の金額を計算します。それぞれの差異に法定実効税率を乗じます。

将来減算一時差異 × 法定実効税率 = 繰延税金資産
将来加算一時差異 × 法定実効税率 = 繰延税金負債

ここでは100 × 実効税率40% = 40です。

【税効果会計の仕分け計上】
上記の手順全てが終了したら、算出した金額の仕訳計上を行います。この場合、借方に繰延税金資産40、貸方に法人税等調整額40です。

税効果会計は計算が複雑なため、適用するのは少しハードルが高いものです。しかし正しく適用できれば損失や利益を明確化させることにつながり、会社の経営実績がわかりやすくなります。また繰延資産の計上により財務健全性を向上させることも期待できます。実際に適用する場合は、「税効果会計に係る会計基準」といったルールを十分理解し、正しく使用するようにしましょう。


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執筆は2020年4月7日時点の情報を参照しています。
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