摘要とは?​意味や​備考との​違い、​3つの​目的、​書き方の​ルール

事業を​手がけるに​あたり、​会計帳簿や​請求書、​領収書など、​さまざまな​帳簿・書類を​作成します。​会計帳簿や​請求書、​領収書などには​摘要を​記載する​箇所が​あります。​帳簿や​書類では​取引年​月日や​金額などに​注目が​行きがちですが、​実は、​摘要には​重要な​意味が​あります。​ここでは、​摘要の​意味や​書き方の​ルール、​備考との​違いなど詳しく​解説します。

摘要とは?

摘要は、​英語では​「summary」などと​表現され、​要約や​概要などの​意味が​あります。​帳簿や​書類には​取引先や​金額などを​記載しますが、​それだけでは​何に​使った​お金なのかわからない​ことも​多いです。​そこで、​摘要欄に​お金の​用途に​関する​情報を​書き加えます。​また、​特記事項などが​ある​場合も、​摘要に​記載します。​基本的に​摘要には、​その取引に​おいて​重要な​ことがらを​記載します。

摘要と​備考の​違い

摘要と​似ている​意味の​言葉と​して​「備考」が​あります。​備考とは、​その名の​通り、​備えや​参考と​して​記載する​事項を​指します。​摘要と​備考を​同じ​意味合いの​もので​使っている​ケースも​ありますが、​基本的には、​次のような​違いが​あります。

摘要:取引の​内容が​わかるように​要点を​記載した​もの
備考:覚書と​して​参考程度に​記載する​もの。​取引の​内容や​要点が​わからなくても​よい

例えば、​固定資産台帳には​摘要欄と​備考欄が​あります。​摘要欄には​「〇〇工務店 改修費」や​「○年 減価償却費」など、​内容が​わかるように​記載します。​備考欄には、​事業専用割合や​必要経費算入額を​記載します。​備考欄だけでは、​取引の​内容が​わかりません。

会計帳簿に​よっては、​摘要欄しかない​ものも​あります。​作成する​帳簿や​書類に​よって、​摘要と​備考を​使い分けましょう。

【参考ページ】
帳簿の​記帳のしかた​|国税庁

領収書・請求書・​見積書に​おける​摘要の​役割

次に、​領収書や​請求書、​見積書に​おける​摘要に​ついて​見ていきましょう。​領収書や​請求書、​見積書は​会社に​よって​フォーマットが​異なります。​ここでは、​一般的な​形式に​おける​摘要の​役割を​解説します。

領収書や​請求書、​見積書に​おける​摘要は、​それぞれ以下のようになります。

・領収書

領収書に​おける​摘要とは、​但し書きの​ことです。​領収書では、​相手先名や​金額、​取引年月日の​記載と​但し書きの​記載が​必要です。​相手先名や​金額では、​何に​対する​領収書なのかが​わからないため、​但し​書きには​取引内容を​記載します。​例えば、​ノート代や​書籍代など、​販売した​商品を​記載します。

・請求書

請求書には、​相手先名や​金額、​取引年月日の​ほかに​品目​(名目)​欄が​あります。​品目​(名目)​欄には、​販売する​商品名や​提供する​サービス名などが​記載されている​ため、​そこで​取引内容が​わかります。​そのため、​一般的に​摘要は​不要です。​請求書では、​摘要欄の​代わりに​備考欄が​あります。​補足事項が​ある​場合は、​備考欄に​その内容を​記載します。

・​見積書

見積書の​摘要も、​請求書と​同じ​取り扱いとなります。​見積書には、​相手先名や​金額、​取引年月日の​ほかに、​品目​(名目)​欄が​あります。​品目​(名目)​欄には、​販売する​商品名や​提供する​サービス名などが​記載されている​ため、​そこで​取引内容が​わかります。​そのため、​一般的に​摘要は​不要です。
見積書には、​摘要欄の​代わりに​備考欄が​あります。​補足事項が​ある​場合は、​備考欄に​その内容を​記載します。

【参考ページ】
経理担当者必見!​ 領収書の​但し​書きで​気を​つけるべきポイントと​正しい​記入方法
請求書の​基礎知識
見積書の​書き方・​作り方を​見本つきで​解説!

摘要の​ルールと​注意点

摘要には​売上や​経費、​消費税に​ついて​それぞれ記載ルールが​あります。​ここでは、​それぞれの​記載ルールや​注意点を​解説します。

1.​売上

売上に​ついて、​以下の​項目を​記載します。
① 取引の​年月日
② 売上先​その他の​相手方
③ 品名​その他給付​(サービス)の​内容
④ 数量
⑤ 単価と​金額
⑥ 1日の​売上の​合計

帳簿付けの​際、​6つの​項目を​満たす​必要が​ありますが、​納品書控や​請求書控などで​取引内容を​確認できる​場合は、​取引相手ごとに​1日の​売上合計金額のみを​一括記載してもかまいません。​また、​小売業などで​現金売上の​場合も、​1日の​売上合計金額のみの​一括記載で​OKです。

帳簿に​よって、​摘要に​記載する​項目は​異なります。​例えば、​売掛帳は​相手先ごとに​記帳する​ため、​相手先名を​摘要に​書く​必要は​ありませんが、​仕訳帳など​相手先を​書く​欄が​ない​帳簿は、​摘要に​記入します。

仕訳帳の​摘要欄には​「売上先​その他の​相手方」や​「品名その他給付​(サービス)の​内容」を​記入します。​例えば​「〇〇株式会社へ​A商品1万円を​10個販売」と​なります。

2.​経費

経費に​ついて、​以下の​項目を​記載します。
福利厚生費や​消耗品費、​地代家賃、​水道光熱費など​取引内容に​応じて​科目に​区分
② 各取引の​年月日
③ 事由
④ 支払先
⑤ 金額

ただし、​少額費用に​ついては、​科目ごとに​1日の​合計金額を​一括で​記載するだけでもかまいません。​上記の​うち​「事由」と​「支払先」を​摘要欄に​記載します。​例えば​「〇〇文房具店 ノート代」などと​記載します。

今回ご紹介した​売上や​経費の​記載内容は、​所得税の​青色申告の​記載事項に​基づいています。​摘要の​内容に​ついては、​細かくなりすぎないように​注意しましょう。

法人で​接待飲食が​ある​場合は、​お店の​名前や​会食相手、​人数などを​記載するなど、​勘定科目や​状況に​よっては、​上記の​①~⑤以外の​項目も​記載した​ほうが​望ましい​ことが​あるので​注意が​必要です。​必要項目が​記載されていれば、​摘要の​書き方は​自由ですが、​複数の​人が​帳簿付けする​場合は、​書き方の​ルールを​決めておいた方が​良いでしょう。

3.​消費税

消費税の​仕入税額控除を​受けるには、​帳簿に​以下の​事項を​記載しなければなりません。

① 取引の​相手方の​氏名・名称
② 取引年月日
③ 取引内容
④ 取引金額

上記の​うち​「取引の​相手方の​氏名又は​名称」と​「取引内容」を​摘要欄に​記入します。​ただし、​消費税だからと​いって​特別に​記載しなければならない​内容は​なく、​上述の​売上や​経費と​同じように​摘要を​記載します。​また、​軽減税率対象品目が​あれば、​その旨が​わかるようにします。

摘要は​わかりやすく​記載する​ことが​前提ですが、​簡略化できる​ケースも​あります。​例えば、​1回の​取引で​複数の​商品を​購入した​場合は、​「文房具など」と​してもかまいません。​また、​得意先など、​毎月​継続して​月ぎめで​取引の​ある​業者の​場合は、​1か月の​取引を​まと​めて​「〇月分」と​できます。

4.​インボイス制度導入後の​摘要

納税者が​消費税の​課税事業者​(適格請求書発行事業者)の​場合、​インボイス制度導入後には、​帳簿付けで​さらに​気を​付ける​ことが​あります。​インボイス制度には​いくつかの​特例が​あり、​その特例に​よって​帳簿の​記載内容が​異なります。​代表的な​ものには​次の​ものが​あります。

・帳簿のみの​保存で​仕入税額控除が​認められる​場合
インボイス制度で​仕入税額控除を​受ける​ためには、​取引先から​インボイス​(適格請求書)を​受け取る​必要が​あります。

しかし、​インボイスの​受け​取りが​できない​ケースも​あります。​例えば、​3万円未満の​公共交通機関に​よる​旅客の​運送は、​インボイスの​交付が​免除されています。​このような​場合は、​一定事項を​記載した​帳簿のみの​保存で​仕入税額控除が​認められます。​この​場合の​記載内容は、​次のと​おりです。

① 取引の​相手方の​氏名又は​名称
② 取引年月日
③ 取引内容​(軽減税率の​対象となる​場合は​その旨も​記載)
④ 取引金額
⑤ 取引先の​住所​(鉄道など​国税庁長官が​指定する​業者は​記載不要)
⑥ 特例の​対象となる​旨

摘要に​関係するのは​「取引の​相手方の​氏名又は​名称」​「取引内容」​「取引先の​住所」​「特例の​対象となる旨」です。​例えば​「〇〇鉄道 電車代 公共交通機関特例」などと​記載します。
※公共交通機関は、​国税庁長官が​指定する​業者の​ため、​住所の​記載は​不要

・免税事業者等からの​仕入れに​係る​経過措置
インボイス制度では、​取引先から​インボイス​(適格請求書)を​受け取らないと、​仕入税額控除を​受ける​ことができません。​取引先が​免税事業者の​場合、​免税事業者は​インボイスを​発行できないため、​免税事業者への​支払いは​原則、​仕入税額控除が​できません。

ただし、​インボイス制度の​開始から​一定期間は、​免税事業者への​支払いであっても、​仕入れ税額の​一定割合を​仕入税額控除する​ことができます。​免税事業者への​支払いに​対し、​インボイス制度開始から​3年間は​課税仕入れの​80%に​ついて、​次の​3年間は​課税入れの​50%に​ついて、​仕入税額控除の​計算対象と​できます。

免税事業者等からの​仕入れに​係る​経過措置を​適用する​ためには、​摘要に​「80%控除対象」と​いうように、​経過措置の​対象である​ことが​わかるように​記載する​必要が​あります。

【参考ページ】
大蔵省告示
仕入税額控除の​ために​保存する​帳簿及び請求書等の​記載事項
帳簿の​記帳のしかた

摘要の​書き方と​記入例

摘要の​書き方は​帳簿の​種類に​よって​異なります。​所得税の​青色申告で​55万円の​青色申告特別控除を​受ける​ためには、​最低限次の​帳簿を​備え付けなければいけません。

① 仕訳帳
② 総勘定元帳
③ 現金出納帳
④ 売掛帳
⑤ 買掛帳
⑥ 経費帳
⑦ 固定資産台帳

それぞれに​ついて、​摘要の​書き方を​見ていきましょう。

・仕訳帳、​総勘定元帳

仕訳帳と​総勘定元帳は​主要簿となる​ものです。​仕訳帳は​取引を​発生順に​記載する​もので、​借方と​貸方に​勘定科目を​記載します。​総勘定元帳は​勘定科目別に​分類した​帳面で、​仕訳帳を​基に​作成されます。

基本的に、​仕訳帳と​総勘定元帳は、​摘要の​記載内容は​同じです。​「取引の​相手方の​氏名又は​名称」と​「取引内容」を​記載します。​例えば、​次のように​記載します。

日付 借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
4月1日 消耗品費 10,000 現金 10,000 〇〇商店 テーブル代

・現金出納帳

現金出納帳とは、​現金の​取引を​すべて​記載する​帳簿です。​入金も​出金も​すべて​現金出納帳に​記載します。​現金出納帳に​おける​摘要の​記載内容は​「取引の​相手方の​氏名又は​名称」と​「取引内容」です。​例えば、​次のように​記載します。

日付 摘要 入金(現金売上) 入金(その他) 出金(現金仕入) 出金(その他) 残高
4月10日 現金仕入 〇〇商店 飲料水 100個x100※     10,000    
4月15日 修繕費 〇〇株式会社       30,000 238,210

・売掛帳、​買掛帳

売掛帳や​買掛帳は​掛取引に​よる​売上や​仕入の​発生、​掛代金の​回収や​支払に​ついて​記載する​帳簿です。​相手先ごとに​作成し、​取引内容も​掛取引に​よる​ものと​決まっている​ため、​品名欄は​ありますが、​摘要欄は​ありません。​そのため、​摘要の​記載は​不要です。

・経費帳

経費帳は​仕入以外の​経費に​ついて​記載する​帳簿です。​経費の​勘定科目ごとに​作成します。
経費帳に​おける​摘要の​記載内容は​「取引の​相手方の​氏名又は​名称」と​「取引内容」です。​例えば、​次のように​記載します。

消耗品費

日付 摘要 金額(現金) 金額(その他)
5月10日 電球2個x300 〇〇商店 600  
6月15日 ノートパソコン 〇〇電気店   80,000

・固定資産台帳

固定資産台帳とは​事業で​使用している​機械や​備品など、​事業用の​固定資産に​ついて​記載した​帳面で、​固定資産ごとに​作成します。​固定資産台帳は​その他の​帳簿と​異なり、​固定資産の​状況を​記載します。​金額も​取得時の​価額や​現在の​価額、​必要経費の​算入額などを​記載していきます。​そのため、​摘要欄も​固定資産の​状況に​ついての​記載と​なります。​固定資産台帳の​摘要には​「店舗購入」や​「〇年減価償却費」​「改修費 〇〇工務店」などを​記載します。

【参考ページ】
帳簿の​記帳のしかた​|国税庁

摘要に​関する​よく​ある​質問

  • 摘要とは​何ですか?

    帳簿や書類では取引先や金額などを記載しますが、それだけでは何に対する代金なのかがわからないことも多いです。

    そこで重要になるのが摘要です。摘要として内容がわかりやすいように、情報を書き加えます。また、特記事項などがある場合も、それがわかるように記載します。摘要は基本的に、その取引において重要なことを記載します。

    摘要と似ている意味の言葉として、備考があります。備考は、覚書として参考程度に記載するものです。取引の内容や要点がわからなくても良いものとなっています。帳簿や書類によっては、摘要でなく備考しかないものもあります。状況に応じて使い分けましょう。

  • 摘要を​記入する​目的は​何ですか?

    摘要を記入する目的は「取引内容を明確にする」「税法上において必要なため」「第三者が確認できる」の3つです。

    会計帳簿に勘定科目や金額を記載しただけでは、その取引がどのようなものかがわかりません。摘要に取引内容を記載することで、どのような取引であるのかを明確にできます。後で取引内容を確認する際にも、内容が把握しやすくなります。

    また「整然と、かつ明瞭に記録」するという帳簿のルールを満たすため、あるいは消費税の仕入税額控除を受けるためには、摘要に必要事項を記載する必要があります。

    さらに、税務調査や顧問税理士など、第三者が帳簿を確認することがあるため、第三者がみてもわかるように摘要を記載しなければなりません。

  • 摘要を​記入しないと​どうなりますか?

    税法では帳簿の記帳方法について、いくつかの定めがあります。その中に、摘要に記載すべき事項も決められています。

    摘要に必要な記載がなければ、経費に認められない可能性があったり、消費税の仕入税額控除が受けられなかったりと、納税者にとって不利なことがあります。忘れずに摘要を記載しましょう。


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