ドミナント戦略の実践のポイントとは?国内5社の成功事例やメリット・デメリットを解説

飲食や小売りなどのチェーン店の戦略的な出店方法として、「一地域への集中」をキーワードとするドミナント戦略は日本国内での成功例が少なくありません。ドミナント戦略のメリットやデメリットを、5社の事例と共に確認していきましょう。ネットビジネスにも応用可能な、ドミナント戦略実践のためのポイントも解説します。

目次



ドミナント戦略とは

ドミナント戦略とは、一つの地域の中にチェーンの店舗を複数出店し、そのエリアをあたかも「支配」するように経営の優位性を確保する戦略です。ドミナント(dominant)という言葉が「支配的な、優勢の、優位な」を意味するように、ドミナント戦略に基づく特定の地域内への集中的な出店で、他店より強い存在感を確立できるだけでなく、店舗運営の効率化などのメリットも生まれます。

ドミナント戦略のメリット・デメリット

ドミナント戦略の実施には、メリットと同時にデメリットも存在します。ビジネスモデルごとに、デメリットにも対応した経営プランを持つことがドミナント戦略の成否を分けるといえそうです。

ドミナント戦略の五つのメリット

チェーン展開におけるドミナント戦略のメリットは、以下の通りです。

1.特定地域における認知度の向上
2.エリアマーケティングの最適化
3.競合他社の参入に障壁
4.限られた経営資源の有効活用
5.配送効率の向上

地域内に複数の店舗があれば、住民にとって見慣れた店になり、アクセスしやすくなり、結果的に売り上げにつながるなど、「特定地域における認知度の向上」が経営に好循環をもたらします。

ドミナント戦略のマーケティング側面では、一つの地域を対象としていることで生活様式やインフラなどに即した「エリアマーケティングの最適化」が可能です。地域理解が深まることで、商品戦略、価格戦略なども立てやすくなり、住民に愛される店舗作りに生かせます。
こうした地域密着型の経営は、同業種間での「競合他社の参入に障壁」としても機能します。また、一例として地域内にすでにドミナント戦略を実施するスーパーマーケットの店舗が複数あり、市場が最適な需給バランスを保っていれば、他社が遅れて参入する動機を見出すことは困難です。

ドミナント戦略は店舗運営のコスト効率にも貢献し、「限られた経営資源の有効活用」ができます。たとえば、小売店なら商品の配送拠点を全国に設置せず出店エリアに倉庫を集約する、店舗間で人材の過不足を細かく調整するといったリソース配分のほか、複数店舗同時にセールやキャンペーンを行うマーケティングコストの効率化なども現実的です。

加えて、仕入れや顧客へのデリバリーなどの「配送効率の向上」も、ドミナント戦略の確かなメリットといえます。特定地域内への複数出店で配送時間が短縮され、自動車の燃料費や車両費が削減されるだけでなく、SDGsや環境負荷低減の観点からもサプライチェーン全体での温室効果ガス削減に貢献でき、現代における企業経営のセールスポイントの一つとなり得ます。
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ドミナント戦略の四つのデメリット

ドミナント戦略を採る場合のデメリットには、戦略の特性ゆえの環境要因などが考えられます。

1.災害の影響の受けやすさ
2.需要の変化による影響の受けやすさ
3.同チェーン内での顧客の奪い合いの可能性
4.出店地域の拡大がチャレンジング

特定地域にフォーカスした出店方法だからこそ、ドミナント戦略は「災害の影響の受けやすさ」が課題です。出店した地域で大規模な台風や地震などが起これば、エリア内の全店舗が直接的にマイナスの影響を受ける可能性があります。

もう一つの環境要因は「需要の変化による影響の受けやすさ」です。何らかの要因による地域人口の減少、エリア内の強力な競合店や大型ショッピングモールの出店などで、急速に自社の顧客が減少するリスクが挙げられます。これらは予測が難しい環境変化であるため、実際にそうした事態が起きた場合の対策や改善策を事前に協議しておく必要があります。

また、ドミナント戦略で人口対比の出店数を見誤る、あるいは人口や需要に大幅な変化が生じると、「同チェーン内での顧客の奪い合いの可能性」も否めません。これはカニバリゼーション(共食い)とも呼ばれ、共に成長するはずの店舗同士が競う事態になってしまったら、店舗数の削減、あるいは出店地域の拡大が求められます。

しかし、ドミナント戦略は「出店地域の拡大がチャレンジング」であることもデメリットの一つです。新たな対象地域を特定し複数店舗を出店するためには、資金力の増強に加え、新規出店エリアの開発に日頃から組織的に取り組むことが課題といえます。

ドミナント戦略の成功事例5選

これまで、ドミナント戦略でビジネスの発展に成功してきた有名企業も多く、その事例を参考にすることも可能です。コンビニエンスストア、カフェ、ドラッグストア、ホテル、スーパーマーケットの5業態の成功例を紹介します。

事例1. セブン-イレブン 

2018年に国内小売業で初めて出店数2万店舗を達成した、コンビニエンスストアのセブン-イレブン。1974年の国内1号店の出店時から徹底したドミナント戦略を採り、地域単位で出店を進め、2019年には全国47都道府県に店舗を持つに至りました。

同店のドミナント戦略の例では、集中出店地域のエリア内や近辺に工場を作り、商品配送にかかる時間の短縮を可能にしています。新鮮さが求められる弁当や総菜などの品質を高く保つことは、顧客への提供価値、そして企業価値にも大きく影響していると考えられます。

参考:セブン-イレブン|今、さらなる「近くて便利」へ。進化の原動力を読み解く5つの視点

事例2. スターバックス コーヒー

アメリカ生まれのコーヒーチェーンとして日本で人気のスターバックス コーヒーも、ドミナント戦略で成功しているチェーン店です。東京都を例に取ると、2022年現在で港区に40店舗、渋谷区に38店舗、新宿区に32店舗。この他にも都内各地に出店しており、店舗マップからは、駅周辺などの比較的狭いエリアを対象にドミナント戦略を実施していることが窺えます。

テレビコマーシャルを使用しないことでも知られるスターバックス コーヒーですが、ドミナント戦略は広告効果にも寄与します。集中出店した地域ではスターバックス コーヒーの看板がいくつも目に入り、同店のテイクアウト用カップや紙袋を持ち歩く人も見られ、ブランドの認知度アップに効果的です。一つの店舗が混雑していても、徒歩圏内に別店舗があることで、顧客の満足感を維持しながらチェーン全体としての売り上げを確保できるメリットもあります。

参考:東京都|店舗検索|スターバックス コーヒー ジャパン
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事例3. ツルハグループ

2022年現在、33都道府県に2,000店舗以上のドラッグストアを展開するツルハグループ。同グループの特徴は、「ツルハドラッグ」や「くすりの福太郎」など8ブランドのドラッグストアチェーンを持ち、ドミナント戦略エリア内に異なるブランドの店舗を出店していることです。この手法により、同じドラッグストアという業態でありながら地域のニーズや実情に細かく対応した店舗運営ができ、カニバリゼーションを防いで成長しています。

参考:ツルハグループ総合採用サイト 3つのポイント

事例4. アパホテル

リーズナブルな宿泊料金と安定した品質で知られるアパホテルは、2021年現在、日本全国に700棟近くのホテルを展開するホテルブランドです。同じエリア内で「主要駅の出口ごと」や「地下鉄の駅ごと」など、立地条件やニーズに合わせたドミナント戦略で出店数を伸ばしています。

同ホテルのドミナント戦略の一例として福岡県福岡市では9棟を有し、「博多駅東」「博多駅筑紫口」「博多駅前3丁目」などのホテル名が示す通り、その立地の多くはターミナル駅である博多駅周辺です。ブランド力を生かしながら、「どこにでもある」という利便性を提供し、ビジネスやレジャー、インバウンドなどの需要に対応しています。

参考:ニュースリリース|博多駅周辺エリア集中出店アパホテル〈博多駅前3丁目〉本日開業

事例5. ヤオコー 

都心から20キロから40キロのドーナツ型のエリアに集中的に出店するドミナント戦略で成長してきた、スーパーマーケットのヤオコー。東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県などの人口集中地域をターゲットとして出店し、同エリア内に物流・製造拠点を設けることで、物流コストの低減、配送の迅速化、商品鮮度の維持などを実現しています。店舗の半径1キロから3キロを商圏とし、競合やカニバリゼーションへの対策も採られていることが分かります。

ヤオコーのドミナント戦略では、地域のターゲット層や立地に合わせた施策にも注力。客層に若者が多い地域では売り場でポップなフォントを使用する、狭い店舗では売り場が広く見える内装デザインを施すなど、地域や店舗の特性を理解した施策がドミナント戦略の成功の一助となっているようです。

参考:
ヤオコーグループの基本戦略
事業内容 | 会社情報 | ヤオコー

ドミナント戦略のポイント4点

ドミナント戦略を実施する上では、以下の4点のポイントを特に意識して検討してみましょう。

ポイント1. 出店エリアの立地調査をしっかり行う

「地域」を出店のポイントとするドミナント戦略では、出店エリアの事前リサーチが肝要です。人口動態などの数字のデータだけでなく、地域住民のライフスタイルや価値観についても入念に調査します。

  • 現在の人口および将来の人口増減予測
  • 時間帯による人口の増減
  • 地域住民の年齢層、性別、世帯構成
  • 需要特性

こうしたデータを集め、そのエリアにどんな人が住み、どのような働き方をしていて、どんな生活を送っているかを知ることは、ドミナント戦略の命運にも関わります。地域ごとの食習慣や味付けの好みなどの需要特性も重要で、たとえば多忙な共働き世帯や単身世帯が多い地域のスーパーマーケットやコンビニエンスストアでは、弁当やインスタント食品などの中食需要が高い可能性があります。

ポイント2. 競合他社の動向をチェックし、差別化を図る

同じエリアに競合他社が出店を計画しているかどうかは、ドミナント戦略を展開する上で要となる情報です。既に同業他社が出店している場合は、支配権をめぐって価格競争に陥るよりも差別化による住み分けが有効といえます。

他社店舗が低価格を売りにしたカフェやホテルなら、自社は高級感やリラックス感を訴求する、他社が若者向けの小売店なら、自社はファミリー層向けに展開するなど、地域特性に合わせて差別化でドミナント戦略を有効化しましょう。

既に自社がドミナント戦略を展開中のエリアに、他社が参入してくる可能性も否定できません。その場合も、他社の計画を分析し、差別化できるポイントに的確に力を入れることでビジネスの減速を回避します。

ポイント3. リスク管理を徹底的に行う

ドミナント戦略の肝である特定地域内での店舗数拡大には、人材教育と管理コストの問題が付きものです。特に飲食業や小売業、サービス業ではビジネスにおける人の存在が大きく、出店計画の際に雇用の見込みは確認済みでも、雇った人材の教育が追いつかず、人手不足が続くようでは店舗経営は立ち行かず、ビジネス継続のリスクとなり得ます。

ドミナント戦略の実施に際しては、低コストで教育と人材管理ができる仕組みに加え、本社と現場責任者との間で共有しやすい管理システムを用意することが理想的です。報告などの管理業務の効率化で人的資本を有効活用し、リスク要因を排除しましょう。

ポイント4. オンラインビジネスにも応用が可能

ドミナント戦略の考え方は、実店舗ビジネスだけでなくオンラインビジネスにも有効です。

たとえば、基礎化粧品に興味のある40代のインターネットユーザーを「市場」、つまり特定エリアとした場合、ターゲット層が利用するSNSや販売サイトで集中的に商品をアピールします。オンラインの特定市場での商品アピールは「特定エリアでの出店」に相当し、商品の存在感と市場優位性を高めながら売り上げにつなげていくことが可能です。もちろん、市場やサイトごとの特性など、需要特性に合うアピールを行うことで結果が出やすくなります。
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リスクとコストを減らし、業務効率化を目指す施策

成功するドミナント戦略のポイントのうち、出店前から準備を進めやすいのが「リスク管理の徹底」です。同時にコストも削減し、業務を効率化する仕組みづくりを進めておきましょう。

接客や衛生管理、現金管理など人的ミスが起きやすい業務については、予防策として業務のマニュアル化が挙げられます。文字を読むだけのマニュアルでなく、ビデオやクイズなどを使ったマニュアルを用意すると、インプットの効率化と同時に業務の標準化に役立ちます。人材育成もマニュアル化することで、人手不足のリスク回避につなげることが可能です。

現金管理については、現金のやり取りや集計といった手間の多さがミスの一因でもあります。現金管理の工数削減には、キャッシュレス決済の導入が効果的です。クレジットカード、電子マネー、PayPayなど多様な決済方法に対応した決済サービス「Square(スクエア)」は、POSレジやオーダーシステムと連動できる端末もあるため店舗に導入しやすく、プリンターなどの周辺機器にも対応しています。

売り上げや在庫管理などもSquareで一元管理ができ、画面操作の方法も簡単であることから、毎日の管理業務や教育にかかる時間が一気に短縮され、ドミナント戦略を進めるビジネスの課題解決に貢献します。なお、Squareは実店舗とネットショップの両方で利用可能なサービスです。

ドミナント戦略は特定地域にフォーカスし出店するという特性から、大手企業だけでなく中規模ビジネスでも実現可能な戦略です。ドミナント戦略のメリットとデメリットをしっかり理解した上で、1店舗だけでなく1地域全体での価値提供を目指しましょう。まずはドミナント戦略を実践中の身近な企業例を参考にしながら、上述の4点のポイントを意識して戦略導入を検討してみてください。

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執筆は2022年9月20日時点の情報を参照しています。
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