人手不足による物流コストの増大などから、SCM(Supply Chain Management、サプライチェーンマネジメント)が再度注目されています。SCMの概念と再注目されている理由、SCMを導入するメリットと注意点について解説します。
SCMとは
サプライチェーン(Supply Chain)とは、原材料の調達から始まり、製造・販売を経て、消費者に製品が届くまでの一連の流れです。Supply Chainは直訳すると「供給連鎖」となり、製品を供給するための鎖状の輪を意味します。SCM(サプライチェーンマネジメント)とは、一連のサプライチェーンを管理する手法であり、サプライチェーンの情報を一元管理して最適化し、生産性や利益を高めることが目的です。
SCMが再び注目される理由
SCMはアメリカで1980年代に生まれた概念ですが、日本で広く紹介されたのは2000年前後です。当時は企業によるSCMの導入がブームとなりました。近年、SCMが再度脚光を浴びている理由として、主に次の点が挙げられます。
物流のあり方の再検討
物流現場において、ネット通販の利用拡大や少子高齢化の影響により、従来と同じコストとスケジュールでは荷物を受け付けられない事態が起きています。このような物流に要する時間やコストの増大により、自社のサプライチェーンにおける物流のあり方の再検討が求められています。
ビジネスモデル見直しの必要性
2000年代と比べて、グローバル化による海外との取引増加、インターネット取引の拡大、BtoC対応の増加、AIやドローンの登場など、外的要因が激しく変化しました。そのため、企業の規模を問わず、ビジネスモデルの見直しが必要となってきています。
中小企業の意識の変化
前述の外的要因の変化を受けて、2000年代当時はSCMを導入する必要性を感じなかった中小企業でも、ある程度のコストを負担してもサプライチェーンを最適化したいと、意識が変わってきている状況があるようです。
SCMの導入によってもたらされるメリット
SCMの導入によってもたらされるメリットを考えていきます。
中小企業でのSCMの導入事例
中小企業診断協会が行った「中小企業にとってのSCMビジネスモデルに関する調査・研究」に掲載されている事例を紹介します。
靴下屋ののFC(フランチャイズ)チェーンを展開する株式会社ダン(現、タビオ株式会社)では、SCMを導入する前は、次のような形態を採用していました。
- 年2回の内見会で、FC店が商品を発注
- 内見会後は、営業担当がFC店を回って追加発注を受ける
この方法だと、流行の売れ筋商品に対して生産・発注システムが十分に対応できずに品切れ状態が発生したり、売れると思って追加発注したFC店から返品を受けたりといった問題点が生じていました。
そのため株式会社ダンでは、仮需要に左右されないシステムを構築するために、本部とFC店との間にオンライン受注システム、靴下メーカー・素材工場などにオンライン生産管理システムを導入し、協同組合の設立を行いました。
併せて、内見会での発注を廃止し、本部が販売情報や経験をもとにシーズン前に需要を予測し、各店の品揃えと発注数を決定、シーズン後は各店の店長が追加で発注を行うという方法に切り替えました。
結果、株式会社ダンではSCMを導入することで、売れ筋情報の即時把握と、小売店からの発注から2日で商品を届けられるシステムを実現できました。
SCMの導入によってもたらされるメリット
導入事例からも導き出されるように、SCMの導入によってもたらされるメリットには次の点が挙げられます。
在庫の可視化・最適化
返品などによる在庫過剰は生産・保管コストの増加に、品切れなどの在庫不足は販売機会の損失へとつながります。
SCMの導入で、サプライチェーン全体のプロセス把握が可能となり、仕入れ・販売など各プロセスの情報を在庫管理に反映でき、在庫数を最適化できます。
リードタイムの短縮化
前述の事例では、オンライン発注システムの導入前は、FC店からの発注には内見会の開催や営業担当がFC店に出向くなどの手間と日数がかかっていました。
SCMの導入で、手間を省けるとともに、サプライチェーン全体のプロセスにおける無駄な工程が洗い出され、リードタイムを短縮できます。
サプライチェーン全体における情報の一元管理
サプライチェーンの全プロセスにおける情報を一元管理することで、各プロセスや全体での課題・目標を共有化でき、さらなる効率化を図れるようになります。
ニーズの変化への対応
サプライチェーン全体の情報を一元管理することで、収集した情報から市場分析や需要予測が可能となり、ニーズの変化に対応しやすくなります。
SCMを導入する際の注意点
SCMを導入する際に注意したいポイントを紹介します。
社内の意識統一が必要
SCMの導入には、サプライチェーンにおける全てのプロセスに携わる担当者の意識統一が必要です。全プロセスでの情報共有や課題の洗い出し、改善策の立案などを、従来の縦割り組織を脱して、横一列で目線を合わせて行うことが要求されます。
具体的には、システム部門と業務部門が連携して取り組むことが必要です。たとえば、業務をシステム化する際に、一見非効率に見える業務も、業務部門にとっては何らかの必要性がある可能性があります。業務部門の実態を加味することなく効率性重視でシステムを構築すると、実際に導入してもシステムが使われないなどの弊害が生じます。
コスト負担の覚悟が必要
SCMの導入には、インフラの整備や場合によっては独自システムの構築などが必要となるため、コストを負担する覚悟が必要です。加えて、システムの運用・保守を担える高度な人材が必要な点も中小企業にとっては負担が大きいかもしれません。
取引先とのネットワークを活用
中小企業は大企業と異なり、すべてのサプライチェーンを自社のコントロール下に置いている状況は稀です。特に、物流機能は外部に委託しているケースが多いため、SCMの導入と再構築には、取引先などとのネットワークを活用するのが効果的です。
SCMは、サプライチェーンにおける情報を一元管理することでプロセスを最適化する経営手法です。人手不足による物流コストの増大が進むなか、自社ビジネスにおいて物流に与える負荷の軽減を目指すには、SCMの導入は中小企業においても有効といえるでしょう。
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執筆は2020年5月28日時点の情報を参照しています。
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