料理の仕上がりチェックを担当する「デシャップ(ディシャップ)」は、お客様に提供する料理の品質を保ち、スムーズにホール担当に引き継ぐための重要な役割を担っています。
効率よく飲食店のオペレーションを回し、顧客満足度を高めるためには、デシャップの役割や仕事内容を把握し、担当スタッフを育成していく必要があります。今回は、飲食店を支える役割である「デシャップ(ディシャップ)」について詳しく解説します。また、「効率」という観点からは、デシャップの配置に加えてPOSシステムの導入も欠かせません。合わせておすすめのPOSシステムについても紹介します。
目次
- デシャップとは
- デシャップの不在によるデメリット
- デシャップの役割と仕事内容
・(1)伝票の管理
・(2)料理の仕上がりの確認
・(3)テーブル状況の確認
・(4)スタッフの状況の把握
・(5)クレームを未然に防ぐ - デシャップ担当に向いている人の特徴
・(1)店内における権限がある人
・(2)先回りして行動ができる人
・(3)臨機応変に対応できる人
・(4)飲食店の経験が豊富な人
・(5)他スタッフからの信頼が厚い人
・(6)声が通る人 - 効率のよい飲食店運営に欠かせないPOSシステム
・POSシステムとは
・POSシステムを導入するメリット
・Squareの飲食店向けPOSレジアプリでできること
デシャップとは
デシャップとは、キッチンの料理をホールスタッフに受け渡す場所や、その場を担当するスタッフのことを指す飲食業界の専門用語です。由来は英語「Dish up」で、「料理を盛り付ける」「料理を提供する」という意味になります。
この記事では、場所の名前ではなく、盛り付け確認やホールへの受け渡しを担当するスタッフのことを想定して解説します。工場など製造現場における製品チェックの部分を担当するのがデシャップです。お客様に提供する料理の出来栄えを確認し、スムーズな提供につなげるための重要な役割を担っています。
デシャップの役割は多岐にわたります。盛り付けの出来栄えの確認のほか、注文伝票の管理、料理の提供タイミングの把握、ホール担当スタッフへの指示などがデシャップの業務内容になります。デシャップが機能している飲食店は、回転率と顧客満足度も高いため、売り上げのアップが見込めます。
デシャップは、お店全体の流れやメニューを熟知していて、スタッフなどへも滞りなく指示のできるスキルや権限を持った人が担当するケースがほとんどです。コース料理の提供が主である高級店であれば、料理の提供タイミングなどを含めた顧客サービスが重要となるため、店長やオーナークラスが担当することが多く、客席数の多い大型店では専任のデシャップを配置することもありますが、小規模の店舗ではキッチンやホールのスタッフが兼任することも多いようです。
デシャップの不在によるデメリット
デシャップ不在の店舗だと、次の状況になることが想定されます。
・料理がいつまでも配膳されず、お客様を長時間待たせる
・遅く頼んだテーブルの料理の方が先に提供される
・同じテーブルで料理の提供タイミングがバラバラになる
・メニューと仕上がりが違う料理を提供する
デシャップが正しく機能している飲食店であれば、上記のような出来事を未然に防げます。まさに、デシャップは飲食店のオペレーションを支える要といえます。
デシャップの役割と仕事内容
キッチンとホールを連携し、お客様にスムーズに料理を提供するのがデシャップですが、改めてその役割と仕事内容を整理します。
(1)伝票の管理
デシャップは、ホールスタッフが聞いてくる注文などを把握し、キッチンに料理のオーダーを通します。特に高級店であれば、お客様の注文内容に関わらず、全員が温かいものを同時に食べられるようにオーダーを調整します。スムーズに伝票管理を行うには、どの料理がどのくらいの時間で仕上がるのか、料理の完成時間まで把握していることが重要です。
さらに、単に伝票が届いた順にオーダーを通すのではなく、「お客様に最適な状態で提供するためにはどのタイミングでオーダーを通すのか」を瞬時に判断することが求められます。同時にキッチンの効率的なオペレーションも管理する必要があるので、なるべく同じ料理は別のテーブルのものであっても同時にオーダーするという工夫も必要です。
常に入ってくる伝票の内容を把握しながら、キッチンの状況にも気を配り、間違いなく調理が進んでいるかを確認する、というのが伝票管理をしているときのデシャップの業務内容です。
(2)料理の仕上がりの確認
オーダー通りの料理が提供されたら、ホールスタッフに受け渡す前に、料理の仕上がりをチェックします。工場でいうところの「製品チェック」です。料理の仕上がりを確認するには、デシャップが各メニューの完成形を正しく把握している必要があります。
具体的には、注文された料理に瑕疵がないかを冷静な目で判断します。たとえば、サイドメニューの盛り付け忘れがある、皿のフチがソースで汚れている、盛り付けの見栄えが汚い、異物が混入している、揚げ物が焦げている……など、細かい部分をチェックします。
スタッフにとってはたくさんの注文の中の一つでも、お客様にとっては楽しみにしていた一皿です。ほんの少しの汚れや違いであっても、がっかりしたお客様は二度とお店に来てくないかもしれません。クレームに発展すれば、お店のブランドにも傷が付きます。
ときにはキッチンに作り直しを要求する必要もあります。デシャップには、「お客様に最高の料理を提供する」という最終チェックの役割が求められます。
(3)テーブル状況の確認
スムーズにオーダーを通し、料理を提供するためには、デーブル状況の確認も必要です。ただし、ピーク時には伝票の管理で持ち場を離れられないので、スタッフと密なコミュニケーションを取りながら把握していくことになります。
たとえば、食後のドリンクやデザートなど、一つのテーブルに複数の料理を提供するようなタイミングが発生する場合、スタッフに声をかけながら提供タイミングを見計らいます。
(4)スタッフの状況の把握
当日ホールに配置されているスタッフの人数やスキルを把握して、全員が能力を発揮できるように指示を出すのが理想的なデシャップの役割です。スタッフそれぞれが得意分野やキャパシティに違いがあるので、無理をさせすぎてキャパオーバーにならないよう、できる限り調整します。
忙しいタイミングには、テーブル状況が確認できるように、全員が料理の提供だけに専念するのではなく、ホールの状況を見てデシャップと情報共有をするスタッフ、オーダーに専念するスタッフ、帰られたお客様のテーブルの片付けに専念するスタッフなど、各スタッフの習熟度に合わせて役割を分担することもあります。適切な采配をするためにも、デシャップは各スタッフと信頼関係を築き、各人の能力を把握しておく必要があります。
もし忙しさが想定を超えてしまったらどうするか、想定より少ない人数でホールを回さなくてはならなくなったらどうするかなど、事前にシミュレーションしておくことも重要です。
(5)クレームを未然に防ぐ
総じて、デシャップの役割は「お客様からのクレームを防ぐこと」ともいえます。「オーダーと違う料理が来た」「メニューの写真と料理が違う」「料理がいくら待っても来ない」「あとから来た人の料理が先に配膳された」など、お客様から発生するクレームは、デシャップがキッチンやホールと連携していれば防ぐことができます。
最近はタブレット端末等を用いた伝票管理も増えていますが、最終的にお店をスムーズに回すのはデシャップの役割です。
デシャップ担当に向いている人の特徴
デシャップは、飲食店の要となる業務です。料理の提供が遅かったり、客席の回転が悪かったりという店舗は、キッチンよりもデシャップ業務が滞っている可能性があります。デシャップ担当が明確ではない飲食店の場合は、デシャップという役割の重要性を意識して、担当者を設定してみるとオペレーションが改善されるかもしれません。
では、どんな人材がデシャップの担当に向いているのでしょうか。
(1)店内における権限がある人
デシャップは、キッチン・ホールのすべてのスタッフに指示をする役割です。他のスタッフがスムーズに指示を聞いて動くよう、権限のある人が担当することが多いです。店長クラスやそのお店での経験の長い人、社員など、店内における管理職の立場にある人が向いているでしょう。メニューやスタッフ一人ひとりの適性など、店内におけるあらゆる情報に精通している必要があるので、そのお店のことを一番熟知している人が担当する、という認識で選ぶことをおすすめします。
(2)先回りして行動ができる人
デシャップには、同時に複数のことを把握し、優先順位を決め、指示を出すという高度なスキルが求められます。特に忙しい時間帯には、同時に複数の注文が入ってくることがほとんどです。注文をそのままキッチンに渡すのではなく、一つ一つの注文を分解して、キッチンがスムーズに料理を提供できるように分かりやすくオーダーする必要があります。
常に2個先、3個先の作業を見据えながら動くのが有能なデシャップです。日頃の働き方を見て、周りがよく見えている人、先読みしながら動けている人、物ごとの段取りがいい人がいれば、デシャップ担当として育ててみてもいいかもしれません。
(3)臨機応変に対応できる人
その場その場で臨機応変に対応できるスキルがデシャップには必須です。注文の流れもお客様の入り方も、出勤しているスタッフの顔ぶれも日々変わります。どんなオーダーが入って来たとしても、その時の最善を考えながら動ける人が向いています。
(4)飲食店の経験が豊富な人
デシャップを頼むのであれば、飲食店で経験を積んだ人が向いています。もちろん、それぞれのお店ごとにルールはありますが、全体を見渡す視野の広さや、臨機応変な対応など、飲食店経験者ならではのスキルが身についているので、デシャップとして存分に能力を発揮してもらえます。
(5)他スタッフからの信頼が厚い人
スタッフに指示をするという立場上、コミュニケーションスキルも重要です。普段から周りの人とも積極的に関わり、信頼を得ている人の方が、指示出しがスムーズに行きます。混み合う時間帯でホールやキッチンの雰囲気が悪くなりそうなときでも、「この人の指示に従えば大丈夫」という安心感がスタッフ間で共有されいれば、お店全体のチームワークがよくなります。
(6)声が通る人
他の要因に比べると重要度は高くありませんが、デシャップは混み合う時間帯のホールやキッチンで指示をする必要があります。調理の音や会話の声が響く中での指示出しでもあるので、しっかり声を出せる人でなければ、伝達ミスや聞き返しによる時間のロスが発生する可能性があります。
(1)から(6)までデシャップに向いている人の要素を紹介しました。最初から全てのスキルを身に着けている必要はなく、やっているうちに自然と身につくものも多いです。「該当する人材がいないから、現状のままデシャップ担当は曖昧でいい」とするのではなく、デシャップ人材を育てるという意識で選任しましょう。
効率のよい飲食店運営に欠かせないPOSシステム
ここまで、デシャップが飲食店を効率的に運用するための要という説明をしてきました。人材という観点から重要なデシャップですが、システムの観点から考えると「POSシステム」の導入も非常におすすめです。
POSシステムは飲食店の業務効率の他、デシャップの業務をより楽にするために活用することができます。
POSシステムとは
POSシステムとは、商品の販売に関する情報を集約して、管理するためのシステムのことです。小売店では、お客様情報や在庫状況、売上額などを連動させ、データを売上分析などに活用しています。飲食店においても、商品や料理ごとの値段を登録し、注文管理・伝票管理など業務の効率化に使われています。さらに、POSシステムによっては従業員の勤怠管理なども一貫して行えるため、店舗運営者の負担減にもつながります。
POS機能を搭載したアプリのことを「POSレジアプリ」といい、タブレットやスマートフォンにPOSレジアプリをダウンロードし、活用することで会計業務のスリム化につながります。タッチパネル操作で会計が済むだけでなく、売り上げの確認がすぐできたり、お客様データをマーケティングに生かせたりと、さまざまな可能性を秘めています。
POSシステムを導入するメリット
飲食店がPOSシステムを導入すると、次のようなメリットがあります。
デシャップ業務が効率的に行える
オーダーエントリーシステムのついたPOSシステムを活用すると、お客様のオーダーを自動的にキッチンに伝えることができます。忙しい時間帯に手書きの伝票を書いて、それをキッチンまで持っていくという工程を踏むのは大変ですが、瞬時にオーダーを伝えることができるので料理提供までの時間短縮にもなります。オーダーを通す業務がなくなるので、デシャップ担当者の負担も減ります。
経験の浅いスタッフでも、スムーズに会計業務ができる
飲食店の全てのメニューの値段を覚えるのは大変です。POSレジなら、誰でも簡単に会計業務ができるので、新人スタッフも短期間でレジ業務をこなせるようになります。
人為的なミスが減る
注文や会計などをシステム化することで、人為的なミスが減ります。「注文を通したと思ったのに通っていなかった」「間違えてオーダーしてしまった」など、クレームにつながるトラブルを防げます。また、レジ締め業務も効率的に、正確に行えるので、経営者や担当者の業務効率化につながります。
売上状況をリアルタイムで把握できる
売上状況やお客様情報を常に管理できるので、経営状況をリアルタイムで把握できます。どのメニューの売れ行きが良いかなどの情報も分析できるので、仕入れやメニュー開発にも活かすことができます。
お客様へのサービスの質が上がる
デシャップ担当をはじめ、スタッフ一人ひとりの負担が少なくなるので、その分お客様へ丁寧なサービスを提供できるようになります。お客様満足度が高まり、リピーターや口コミの評価アップなど、さらなる売上増が期待できます。
Squareの飲食店向けPOSレジアプリでできること
飲食店に特化したPOSレジアプリを手軽に導入できるサービスとしておすすめなのがSquareです。上記で説明した伝票管理やお客様管理、従業員の勤怠管理など、さまざまな情報を自動で連携することができます。
レジ業務がスムーズになり、飲食店のスタッフの動きが効率化できるというメリットの他、1日の売上高、客数、客単価、混み合う時間帯など売り上げに関するさまざまな情報が自動的に記録されます。データ分析により、翌日の仕込みの予測や混雑に合わせたスタッフの配置管理など、経営の効率化が期待できます。複雑な手続きがなく、無料から使用可能という点も、小規模な店舗に喜ばれているポイントです。
さらに、キャッシュレス決済端末のSquare ターミナルをハンディとして使用すれば、注文受付、お会計、レシート・領収書発行までの一連の流れをお客様のテーブルで行うことができます(※)。
※Square ターミナルをハンディ端末として利用するには、Square レストランPOSレジの有料プランへのお申し込みが必要です
また、Squareでは、キッチンディスプレイシステム(KDS)も提供しています。Android端末にSquare KDSアプリをダウンロードして厨房に設置すれば、ホールからの注文を一つのスクリーンで管理できます。伝票を紛失する心配もなく、スムーズな調理と料理提供の手助けになるでしょう。キッチンディスプレイシステムは、月額3,500円で利用できます。
デシャップ担当の育成や、POSシステムの導入を通して、飲食店の業務効率化を見直し、売上拡大にぜひつなげてください。
飲食店ならSquareにおまかせ
Square レストランPOSレジなら、店内、オンライン、デリバリーのオーダーを1か所で管理して飲食店の運営をもっと効率化できます。メニューごとの売上レポートやシフトレポートなど、リピート率アップとコスト削減に役立つ機能が使える有料プランも。
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Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。
執筆は2022年11月8日時点の情報を参照しています。2023年6月27日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash