数々の選択を積み重ねてきたビジネスオーナーたちのストーリーには、ビジネスを築き、発展させていくうえでの貴重なヒントが詰まっています。「彼女たちの選択」は、自分らしさを糧に、ビジネスを築いてきた女性ビジネスオーナーたちのあらゆる《選択》をスポットライトしたシリーズコンテンツです。彼女たちの鋭い洞察力や大胆な行動力に触れることで、思いもしなかった選択肢が見えてくるかもしれません。

キャリアの方向転換には、それなりの度胸と努力が必要だ。株式会社つぐつぐ(以下、つぐつぐ)を立ち上げた俣野由季(またの ゆき)さんは、ある経験をきっかけに異業種に飛び込んだ。大学では薬学を専攻し、製薬会社に勤めたのち、2020年にはじめたのはそれまでとはまるっきり異なる金継ぎを専門とする会社だった。

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ものとの付き合い方を考え直すきっかけになったコロナ禍で、金継ぎを知った人もいるかもしれない。器の割れやヒビを漆(うるし)で修復する日本の伝統的な技法で、割れ目をつなぎあわせた部分に金や銀の粉を飾りつけることが特徴的だ。

つぐつぐは現在、恵比寿と浅草に拠点をかまえ、金継ぎ教室の開催や修理サービスの提供、自宅で金継ぎができるキットの販売などを行っている。実店舗でのキャッシュレス決済と、修理代金の回収方法として俣野さんが選んだのは、Squareだ。

なぜ金継ぎを仕事にしたのか。なぜSquareを選んだのか。代表の俣野さんに話を聞いた。

業種 小売、スクール、修理サービス
業態 金継ぎ教室の開催、器の修理サービス、⾦継ぎに関する商品の販売
利用しているサービス Square 請求書Square リーダーSquare POSレジSquare データ
導入を検討した理由 ・複数店舗の売り上げと在庫の管理を1カ所から行えるようにしたかった
・銀行振込による入金漏れを防ぐためにオンライン決済機能付きのクラウド請求書を使用したかった
Squareが役に立っている点 ・Square 請求書の導入で入金サイクルを早められたうえ、入金漏れをなくすことができた
・手間をかけずに売上・在庫の管理ができている

薬剤師から金継ぎの世界に飛び込む

薬学部を卒業後、製薬会社に就職。20代の多くを製薬関連の仕事に注ぎ込んだ。そんな俣野さんが他のキャリアパスを模索しようと思ったのは、キャリアアップを目指してのことだった。

「製薬会社では薬剤師のキャリアアップはここまで、という上限があるんです。それ以上は医科学の修士課程を取得している人と決まっていて」

一定のところまで行くと上を目指せなくなる仕組みがなかなか腑に落ちず、製薬会社に勤める傍ら、週末を活用して経営学修士(MBA)を取得しようと動き出した。ちょうどそのとき、大事にしていたお皿をたまたま割ってしまったという。どうしても直したい一心で出合ったのが、金継ぎだった。2018年のことだ。

金継ぎでお皿を直せたことに大きな感動を覚えた俣野さんは、どんどんと金継ぎの深みにはまっていくことになる。金継ぎ教室に通うところからはじまり、金継ぎ職人に取材をしたり、一般の人を対象に金継ぎの認知度調査を実施したりと、気になったことはすべて行動に移し、金継ぎの知識を吸収していった。いざ修士論文を書くときには金継ぎのビジネスを想定し、仮の事業計画を立てた。

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副業としてはじめ、半年後に独立

MBA取得後は、論文から生まれたアイデアをもとに起業することにした。商品として開発したのは、誰でも自宅で金継ぎができる「TSUGUKIT」。どれだけの人が興味を示すかわからず、製薬会社で働きながら副業としてはじめたが、想像以上の数が売れた。

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▲俣野さんが開発したTSUGUKIT

売れ行きが順調なことから、起業から半年が経ったタイミングで思い切って製薬会社を離れることにした。

「なんとか一人で慎ましく生きていける分の売り上げが立ってきました。二足の草鞋だとどちらかが中途半端になると思い、金継ぎに絞ることにしました。人生、一度きりですしね」

そこからは、誰でも金継ぎ職人に修理を依頼できるマッチングプラットフォームを立ち上げたり、金継ぎを教える教室を開講したりと、とどまることなくビジネスの領域を広げていった。

思いついたことはとにかく行動に移し、睡眠時間を削るような過密スケジュールをこなしながらも、新たな発見をするたびに欠かさずしていたことがある。公式サイト内にあるブログページに、記事を公開することだ。コツコツと書いていくうちに、「金継ぎ師になるには」のキーワードでつぐつぐのブログ記事がトップに表示されるようになり、いつしか金継ぎの情報を求める人が集まるサイトになった。記事を経由して、TSUGUKITを販売するネットショップの存在を知った人も少なくないという。

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いよいよ実店舗をかまえることに

次のステップになったのは、実店舗を開くこと。選んだのは、恵比寿駅から歩いて15分ほどの閑静な住宅街である。2021年2月のことだった。店舗は建物の1階、ガラス張りで外から店内の様子が見えるので、ついつい「何のお店だろう?」と覗き込みたくなる。店構えは、まさに興味を持ってもらうことを意識したという。前述の認知度調査で、実際に誰がどのように金継ぎをしているのかを見る機会があまりなく、不安を感じる人も少なくないと知ったことから「見える化」を重要視するようになったそうだ。

店舗では、金継ぎ教室の開催、修理サービスの提供、金継ぎされた器やTSUGUKITの販売などを行っている。一番売れている商品を聞くと、教室の受講チケットという答えが返ってきた。

複数ある受講チケットのなかで人気なのは、レッスンが4回受けられるもの(単価22,000円)で、平均の決済額は約2万円。現金を希望する人は2割以下だという。

店舗オープン前に急いで購入したのが、キャッシュレス決済端末のSquare リーダーだ。家電量販店の従業員に勧められるままに購入したものの、セットアップは簡単で、端末とセットで使うPOSレジアプリに表示された指示通りに進めたら、決済が受け付けられる状態になったという。

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2号店では迷わずSquareを導入

月を追うごとにメディア露出が増え、金継ぎ教室の埋まり具合も好調に。オープンから1年半で200人以上の生徒が通う教室になった。修理サービスを利用する人もどんどん増えていき、いまや7人の修理師で月に100個以上の器を直しているという。高まるニーズに対応しようと、オープンしたのが浅草にある2号店だ。1号店のオープンから1年後のことだった。

「恵比寿店の生徒さんとの取り合いにならないような少し離れた場所で、かつ都内にもう1店舗開けたいと思い、浅草を選びました」

認知度向上に向けた戦略づくりや新商品の開発、プロモーションの業務、取材や講演の対応など、経営者としての仕事が絶えない毎日だからこそ、売り上げや在庫の管理は1カ所で行いたいという思いが強かった。そんな背景から、2店舗目でも迷わずSquareを導入することにした。Squareでは、同一アカウントで最大300店舗まで管理できる。つぐつぐでも、恵比寿店と浅草店の売り上げや在庫数を一つのアカウントから確認している。使い勝手について聞いてみた。

「使いやすいです。浅草、恵比寿と店舗を切り替えるだけでそれぞれの店舗情報が1カ所で見れます。スタッフのみんなで見ていますね。特に教室の売り上げがどれくらいあるか、先月より上がったか、下がったかに注目しながら、課題探しに活用しています」

指定月の売り上げを商品別で確認できる売上分析機能は無料で使うことができる。

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店舗で販売している商品の在庫情報はエクセルシート上で更新し、適宜Squareの在庫管理ページにアップロードしているそうだ。そうすることで、両店舗に最新の在庫情報を反映させることができる。さまざまな業務をこなすなかで、このように一括で更新できるのは効率化につながり、うれしい点だそう。

入金漏れを防ぐために、Square 請求書を導入

Squareの決済端末はオープン当初から使用していたものの、POSレジは2022年の夏頃まで、他社のものを利用していた。移行を決めた理由は何だったのだろう。

「オンライン決済ができる請求書を利用したくて、完全にSquareに乗り換えたんです」

当時使用していたPOSレジには、Squareのように請求書からお客様がそのままクレジットカード決済できる機能が備わっていなかった。

なぜこの機能を使いたいと思ったのだろうか。

つぐつぐでは、店頭で修理を受け付けることもあれば、オンラインで修理依頼を受け付けたり、「MUJI 新宿」と提携し同店舗で壊れた器を回収したりしている。

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店頭に来れないお客様とのやりとりは、基本的にオンライン上で行う。Square 請求書を導入する前までは、修理代金は銀行振込にしていた。修理した器をお客様が確認してから支払いをするという流れだったため、印刷した紙の請求書を器に同梱し、入金を待った。修理の受付から代金回収までには半年ほどかかっていたという。この流れを変えた理由について詳しく教えてもらった。

「(器と一緒に)請求書を入れておいても、振り込みがないことがありました。つまり修理しても、代金を回収できないことがあったんです。あと銀行振込だと、入金確認は振込履歴からしか見れないじゃないですか。これではダメだと思いました。Squareの請求書なら誰が入金したかも一覧できますし、自動でリマインダーも送れるので、つぐつぐにとっては大きな変革でした」

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Square 請求書に切り替えてからは、修理の見積金額を知らせ、金額に同意が得られたらSquare 請求書を送り、そこからクレジットカード決済をしてもらう流れにした。修理は、決済を確認してから取り掛かる。銀行口座の取引記録からだと入金された内容しか確認できないが、Square 請求書なら未入金のお客様情報も一覧できるので、どの器の修理を進めていいかがすぐに判断できる。

何よりも大きかったのは、後払いから事前決済に切り替えたことで入金漏れがなくなったことだそうだ。入金サイクルもぐっと短くなった。

「事前決済ならもう絶対に漏れがないですしね。それってビジネスでものすごく大事なことです」

クレジットカード決済機能が備わった請求書サービスはいくつか検討したそうだが、店頭とSquare 請求書の売り上げを1カ所でまとめて確認したかったことに加えて、いかに簡単に作成できるか、お客様にとって請求書は見やすいかなどを鑑みて、Squareを選んだのだという。

Square 請求書なら、作成からオンライン送信まで簡単スピード対応

請求書の作成、送信、支払いまでの流れが簡単に。自動送信、定期送信など便利機能も無料。

金継ぎの魅力を広めることに今後も注力

教室はもちろん、修理サービスの人気は絶えず、目の前の課題や、将来に向けた施策づくりで大忙しの俣野さん。そんななか、今後力を入れていきたいのは、金継ぎの魅力にもっと興味を持ってもらえるような取り組みだという。現状、教室に来る生徒の大きな目的は、壊れた器を直すこと。そこを入り口に、漆塗りの多様な技法など、金継ぎの奥深いところにまで興味を広げられたらうれしいという。日々進化していくつぐつぐから、今後どのような取り組みが生まれるのか注目したい。

「Squareの請求書なら誰が入金したかも一覧できますし、自動でリマインダーも送れるので、つぐつぐにとっては大きな変革でした」ー株式会社つぐつぐ 代表取締役 俣野由季さま

Squareが実現したこと

未払いの心配がなくなった

つぐつぐでは店頭に加えて、遠方のお客様からも修理依頼を受け付けています。遠方から修理を受け付ける際、代金回収方法は後払いの銀行振込にしていましたが、代金が回収できないトラブルが時折発生していました。Square 請求書を活用した事前決済に切り替えてからは、代金回収後、修理に取り掛かる流れに変更できたため、入金漏れの心配がなくなり、入金サイクル(※)も早まりました。

※売り上げは最短翌営業日に振り込まれます。

売上・在庫の管理業務に効率よく取り組める

つぐつぐではSquare POSレジを使用し、恵比寿店と浅草店の売り上げや在庫数を、一つのアカウントから管理しています。また実店舗の売り上げはもちろん、Square 請求書で受け付けたオンライン決済もすべて同アカウントから確認できるため、複数のアカウントを行き来する必要がなく、効率化が図れています。

売り上げの傾向を簡単に共有できる

無料で使えるSquareの売上分析機能では、店舗を選択し、指定期間の商品別売上を見ることができます。確認の手順が簡単なため、従業員全員が思い立ったときに、教室の売り上げを簡単に見ることができています。

この事例に登場したSquareのサービスは: