ビジネスの持続的・永続的な成長を考える上で、「ライフタイムバリュー」という考え方が重要性を増しています。ライフタイムバリューは、ビジネスのジャンルや規模を問わず、売り上げを長期的な視点で予測する際や、モノやサービスの価格設定、目標の設定にも影響します。
ライフタイムバリューを高める具体的な方法も含めて、詳しく解説します。
ライフタイムバリューとは何か
ライフタイムバリュー(Life Time Value)は略して「LTV」と表記されることもあり、日本語で「顧客生涯価値」と訳されます。ライフタイムバリューとは、1人のお客様あるいは1社のクライアントが、商品やサービスを購入をしてから終了するまでの間(=生涯、ライフタイム)に、どれくらいの利益(バリュー)をもたらすかを総合的に捉え、数字として算出したものです。
つまり、1回しか商品を購入しないお客様より、数年に渡り複数回購入したお客様の方が「ライフタイムバリューが高い」ということになります。
リピート購入を前提とした指標のため、日用品や食品など、定期的な買い替えが必要な商品などに対して主に用いられるようです。
お客様が特定の企業(またはブランドや商品)に愛着を持ち、何度も購入している場合、その企業はライフタイムバリューを高めることに成功していることになります。高いライフタイムバリューを創出している企業には、以下のような特徴があるといわれます。
• その企業にしか提供できないモノやサービスがある
• お客様にとって、特別感を与えている
• お客様をファンとして強く惹きつけている
こうした理由から、お客様は企業を信頼しリピーター(常連、愛用者)になります。ライフタイムバリューにはいくつか計算方法がありますが、その中のひとつを例に考えてみましょう。
式1:売上 +(売上 ✕ リピート率)= ライフタイムバリュー
仮に、10,000円の商品を、上の式に当てはめてみます。
①【1回だけの購入の場合】
10,000 +(10,000 ✕ 0%)= 10,000
②【2回購入(一度だけリピート)した場合】
10,000 +(10,000 ✕ 50%)= 15,000
この式では、1人のお客様の購入回数と売り上げに着目していますが、特定の期間における複数のお客様のライフタイムバリューを比較する式もあります。
式2:(一回当たりの平均購入単価 ✕ 期間中の購入頻度 ✕ 利用期間) - (顧客の維持・獲得コスト)=ライフタイムバリュー
たとえば、500円のお弁当を売っているお店のある1ヶ月間を、上の式に当てはめてみます。顧客の維持・獲得コストは一人あたり200円だとします。
①【1ヶ月間に4回購入したAさん場合】
(500 ✕ 4 ✕ 1)ー200=1,800
②【1ヶ月間に8回購入したBさん場合】
(500 ✕ 8 ✕ 1)ー200=3,800
週に1回来てくれるAさんよりも、Bさんの方がライフタイムバリューが高いことがわかります。
提供する商品やサービスによっても計算方法が変わりますので、ビジネスのタイプや目的にあった算出方法を検討してみてください。
ライフタイムバリューは最近よく使われるようになりましたが、昔からある「常連客を大事にする」という概念を数値化したものだということが分かります。従来の価値観が、理論的に見直されたものといえるかもしれません。
オリジナルデザインのギフトカードを導入
自店限定カードを作るライフタイムバリューを高めることの大切さ
ではなぜ、ライフタイムバリューを重視することが利益につながるのでしょうか。
仮に、ある店舗で同じ商品Aを2つ販売する場合、あるお客様が商品Aを1つだけ購入したとします。すると、店舗は2つ目を販売するためにさらなる営業努力や宣伝をする必要があり、人件費や宣伝費などのコストがかかります。
ところが、1つ目を買ったお客様が商品を気に入り、再来店して2つ目を購入したとすると、かかるコストは格段に少なくなります。ここで、お客様が同商品を再び購入した理由を考えてみましょう。
• 商品の質が良く、自分に合うものだった
• 商品のイメージが良く、また買いたくなった
• 商品を買ったときのスタッフの対応が良く、また買いたくなった
上記はお客様にとっての再購入の動機付けになったものですが、店舗側から見ると、商品の特性や宣伝方法、販売対応によってライフタイムバリューが高まったといえます。
例からも分かるように、ライフタイムバリューの高さは、新規顧客獲得のコストに深く関わってきます。
CPAを決定付ける
お客様1人を獲得するために必要な費用をCPA(Cost Per Acquisition、顧客獲得単価)といいますが、商品ごとに「かけられるCPA」は異なります。CPAの上限額(目標CPA)を設定する上で、ライフタイムバリューが目安となり、以下の式に当てはめて考えられます
ライフタイムバリュー × 粗利率 = 目標CPA
例えば、1個10,000円で粗利60%の商品Aがあり、式1でライフタイムバリューを算出します。①1回だけ購入した場合と、②2回購入した場合を比較すると以下のようになります。
① 10,000 × 60% = 6,000
② 15,000 × 60% = 9,000
このように、CPAの額に3,000円もの差が出ました。ライフタイムバリューを算出することで、新規顧客開拓のコストにどれだけかけられるかが明確になります。同時に、ライフタイムバリューが高まればCPAも上がる、つまり新規顧客開拓に潤沢な予算を確保し、利益増加のチャンスを増やせるのです。
ライフタイムバリューを高める方法
ライフタイムバリューは計画的に高めることが可能です。そのためには、お客様1人あたりの「購入単価を高める」「購入頻度を高める」「利用期間を伸ばす」ことが鍵となります。具体的に、どんなアクションを起こすことで可能になるのでしょうか。
お客様の「声」を聞く
どんなに良い商品やサービスを提供していても、お客様にその価値が伝わらなかったり、要望から焦点がずれていては意味がありません。そこで、お客様の意見を聞くことが重要です。
商品の良い点だけでなく、不満点も聞き、商品そのものや販売方法を改善していくことで、リピート購入の頻度が上がり、長期にわたって需要が絶えない商品を生み出すことが可能になります。
また、消耗品が切れた頃にメールで再購入を提案する、まとめ買いや定期購入による割引を設定する、お客様の購入傾向に合わせて類似商品をお勧めするなど、お客様と適切なコミュニケーションを図ることでも購入単価や頻度を高めることができます。
競合を意識して改善を図る
せっかく獲得したリピーターでライフタイムバリューが高まっても、より高品質で低価格の競合商品が登場した場合、何もせずにいてはお客様は流出してしまいます。
1つの商品をきっかけとして、他の商品も他社に乗り換えてしまうこともあり得るため、日頃から競合商品や他社のチェックを欠かさず、お客様の視点に立って「商品を買い続けたくなる理由」を常に提供し続ける必要があります。
定期的に「お得意様限定セール」を開催して特別感を演出したり、取引期間の長さに応じてポイント還元率を高めるなど、ライフタイムバリューの高さが自社にとってだけでなくお客様にとってもメリットとなる仕組みを考えましょう。
ライフタイムバリューの向上に役立つツール
ライフタイムバリューを高め、保つためには、お客様との「つながり」を持ち続けることがポイントです。商品を売り買いだけではコミュニケーションが十分に取れず、お客様の不満や感想も、店舗側の想いもあまり伝わらないかもしれません。
Square メッセージといった、双方向でコミュニケーションが取れ、かつ効率的にフィードバックを受けられる方法を取り入れましょう。
Square メッセージは、メールやSMS宛に送られた電子レシートから、お客様が感想や要望を気軽に送れる機能です。店舗側はレシートの送付とお客様とのコミュニケーションを一度で行うことができます。
お客様から不満の声があった場合、Square データ上から購入履歴をすぐに確認でき、必要に応じてクーポンの発行や一部返金などの操作も可能です。迅速なクレーム対応でお客様の不満を満足に変えれば、お客様からの信頼が高まり、リピーターとして定着しやすくなります。
また、現代では顧客対応の良さや迅速さがソーシャルメディアを通して口コミで広まりやすいため、企業とお客様の良いコミュニケーションそのものがマーケティングツールになっているともいえます。
ツールを活用し、ライフタイムバリューを高めれば、ビジネスの持続的な成長にもつながるのではないでしょうか。
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執筆は2018年1月26日時点の情報を参照しています。
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