近年、サブスクリプション型のビジネスモデルが多くの業界で採用されつつあります。月額制や年額制のサービスを通じて定期的に収益を得ることができ、安定したビジネス運営を期待できるため、すでにサブスクリプションで商品やサービスを提供しているという事業者もいることでしょう。サブスクリプションにはメリットも多い一方で、ビジネスの成功にはさまざまな要因が関わってきます。その中で非常に重要なのが「チャーンレート」(解約率)です。
本記事では、チャーンレートとは何かから始め、どの程度が目安なのか、チャーンレートが上がる理由と具体的な対処方法をわかりやすく説明します。
目次
- チャーンレート(解約率)とは何か
- チャーンレート(解約率)の種類
- チャーンレート(解約率)の計算方法
- チャーンレート(解約率)の目安と平均
- チャーンレート(解約率)とLTV(顧客生涯価値)の関係性
- チャーンレート(解約率)が上がる要因
- チャーンレート(解約率)を下げるべき理由
- チャーンレート(解約率)を下げる方法
- チャーンレート(解約率)の分析・改善方法
- Squareを利用してチャーンレート(解約率)を下げよう
チャーンレート(解約率)とは何か
チャーンレート(Churn Rate)という言葉を見聞きするのは初めてという人もいるかもしれません。難しい概念ではなく、日本語で「解約率」というとわかりやすいでしょう。
チャーンレートは、一定期間内に解約・退会するお客さまの割合を示します。サブスクリプションをはじめとする継続的なサービスを提供するビジネスモデルにおいて非常に重要な指標の一つです。チャーンレートからは、商品やサービスの魅力、顧客のロイヤルティの度合いを知ることができます。
高いチャーンレートは顧客満足度の低さを示すため、事業の健全性や成長性に悪影響を及ぼす可能性があります。一方で、低いチャーンレートはビジネスの安定性や将来的な成長の見込みを強く示唆しており、事業者にとっては望ましい状態といえます。
長期的にお客さまと良好な関係を築き、安定した収益を得られるよう、チャーンレートを継続的に低く保つことが理想的な状態でしょう。
チャーンレート(解約率)の種類
チャーンレートと一口にいっても、分析・改善すべきチャーンレートの種類は一つではありません。ここでは代表的なチャーンレートとして「カスタマーチャーンレート」「アカウントチャーンレート」「レベニューチャーンレート」について説明します。
カスタマーチャーンレートとは
カスタマーチャーンレートは、どのくらいのお客さまが一定期間内に商品やサービスから離れたのかを表す指標です。カスタマーチャーンレートは、サービスの魅力やお客さまのロイヤルティの指標となります。
アカウントチャーンレートとは
アカウントチャーンレートは、どのくらいのアカウントが一定期間内に商品やサービスから離れたのかを表す指標です。カスタマーチャーンレートと似ていますが、一人で複数のアカウントを持っている、家族など複数人で一つのアカウントを共有しているといったケースがあり、カスタマーチャーンレートとは必ずしも一致しません。
レベニューチャーンレートとは(グロス/ネット)
レベニューとは収益を表します。収益に関するチャーンレートには「グロスレベニューチャーンレート」と「ネットレベニューチャーンレート」の2種類があります。いずれもMRR(Monthly Recurring Revenue、月間定期収益)などの一定期間の収益をもとに計算します。レベニューチャーンレートでは収益の増減をもとにダウングレードやアップグレードもとらえるため、より細かい分析が可能です。
チャーンレート(解約率)の計算方法
カスタマーチャーンレートの計算方法
一定期間内に商品やサービスを解約したお客さまの数を、その期間の初めのお客さまの総数で割って計算します。パーセンテージを求める場合はこれに100をかけます。計算式にすると以下の通りです。
カスタマーチャーンレート = (一定期間内に商品やサービスを解約したお客さまの数) /(期間開始時点のお客さまの総数) x 100
たとえば、ある月の初めに1,000人のお客さまがいて、その月に50人がサービスを退会した場合、カスタマーチャーンレートは、50 / 1,000 x 100 = 5%です。
アカウントチャーンレートの計算方法
アカウントチャーンレート計算方法は、カスタマーチャーンレートと同じ考え方で、以下の通りです。
アカウントチャーンレート = (一定期間内に商品やサービスを解約したアカウントの数) /(期間開始時点のアカウントの総数) x 100
たとえば、ある月の初めに1,000アカウントが存在し、その月に50アカウントでサービスが解約された場合、アカウントチャーンレートは、50 / 1,000 x 100 = 5%です。
グロスレベニューチャーンレートの計算方法
グロスレベニューチャーンレートは、一定期間内に失われた収益を見てチャーンレートを計算します。
グロスレベニューチャーンレート = (一定期間内に失われた収益) /(期間開始時点の収益) x 100
たとえば、ある月の初めのMRRが1,000万円で、月末時点でMRRが50万円減少したとすると、グロスレベニューチャーンレートは5%です。
ネットレベニューチャーンレートの計算方法
ネットレベニューチャーンレートは、失われた収益に加えて、新たに獲得した収益も考慮してチャーンレートを計算します。
ネットレベニューチャーンレート = (一定期間内に失われた収益 – 一定期間内に獲得した収益) /(期間開始時点の収益) x 100
たとえば、ある月の初めのMRRが1,000万円で、月末時点でMRRが50万円失われ、新たにMRRを20万円獲得したとすると、ネットレベニューチャーンレートは3%です。
ネットレベニューチャーンレートでは、アップグレードなどよる収益の増加も考慮するため、全体的な収益の健全性を評価できます。
チャーンレート(解約率)の目安と平均
チャーンレートの目安と平均は、事業の規模、業種、ビジネスモデルだけでなく、サービスを提供するお客さまの層や地域などによっても異なります。以下の目安と平均はあくまで参考値で、いずれの場合でも自社事業のチャーンレートを分析し、下げていくことを目標とするとよいでしょう。
規模別の目安と平均
一般的に、スタートアップや小規模な中小企業が提供するサブスクリプションの場合、チャーンレートは高めになることが多く、大手企業や成熟したビジネスモデルを持つ企業では、チャーンレートは低く安定します。これは、スタートアップのサービスを「おもしろそうだしとりあえず試してみよう」と契約してみたお客さまが「やっぱり自分には合わなかった」と解約する可能性が高いからです。事業内容やその他の要素にもよりますが、大企業では1%ほど、中小企業で数パーセント、より小さい企業や新しいサービスを提供する場合は10%以下を目安とするとよいでしょう。
業種別の目安と平均
チャーンレートは業種によっても異なります。物販やコンテンツ販売など、生活やビジネスに必須ではない娯楽要素の強い商品やサービスのサブスクリプションを提供する業種の場合、チャーンレートは高くなります。一方、企業や個人が生活やビジネスで欠かすことのできないソフトウェアなどだとチャーンレートは低くなります。5%前後を目安とするとよいでしょう。
ビジネスモデル別の目安と平均
企業に対してサービスを提供するBtoBを強みにし、さらに一度契約したあとの乗り換えが比較的少ないソフトウェアを提供するような場合、チャーンレートの平均は5%前後を目安とするとよいでしょう。一方、一般の消費者をお客さまとするBtoCの場合は、チャーンレートが高くなる傾向にあります。とはいえ、BtoBのチャーンレートを大幅に上回るようなことはなく、BtoBに加えて数パーセント高くなったとしても、10%を超えないことが一定の目安になるでしょう。
チャーンレート(解約率)とLTV(顧客生涯価値)の関係性
LTV(Life Time Value、顧客生涯価値)とは、お客さま一人が事業者にもたらす収益の総計を指す指標です。具体的には、お客さまがサービスを利用し続ける期間全体での収益から、そのお客さまを獲得・維持するためのコストを引いた金額です。LTVが高いお客さまは、長期的に見て事業者にとって価値のあるお客さまといえます。逆に、LTVが低いと、お客さまの獲得・維持コストが収益を上回ってしまうことがあります。
サブスクリプションでは、チャーンレートとLTVは密接な関係にあります。チャーンレートが上昇するとLTVは低下します。お客さまが短期間でサービスから離れてしまうと、そのお客さまからの収益期間が短くなるため、LTVは低下します。お客さまの獲得コストがLTVを上回る可能性も高くなります。チャーンレートを低く保つことで、LTVを増やせます。お客さまが長くサービスを利用することで、そのお客さまから長期的に収益を得られるからです。また、チャーンレートが低く、一定期間当たりの単価が高くなれば、お客さまの獲得にかかった費用を回収する期間が短くなります。
つまり、チャーンレートを低く抑えることができれば、LTVを最大化し、ビジネスの収益性を高められます。
チャーンレート(解約率)が上がる要因
商品やサービスの品質の悪さ
お客さまの期待を裏切るような商品を提供し続けたり、サービスの品質が低下していったりすると、チャーンレートが上昇する可能性があります。お客さまは高い期待を持ってサブスクリプションを始めるからです。一度お客さまがサブスクリプション契約をしたら安泰というわけではありません。
商品やサービスの需要の減少
市場のトレンドやお客さまのニーズは、時代とともに変化します。サブスクリプションを提供する中で、商品やサービスが時代遅れになったり、業界がにぎわったとしても競合が現れたりすることもあります。他の新しいサービスに魅力を感じるお客さまが増えると、チャーンレートが上昇する可能性があります。
顧客データの分析不足
お客さまのサービス利用状況やフィードバックを適切に分析し、理解しないと、お客さまの不満や解約のサインを見逃してしまいます。サービスの改善も難しくなるでしょう。
チャーンレート(解約率)を下げるべき理由
低コストで売り上げを維持できる
通常、既存のお客さまを維持する方が、新規のお客さまを獲得するよりも経費がかかりません。チャーンレートを下げることで、企業は低いコストで安定した売り上げを維持できます。
LTV(顧客生涯価値)が上昇する
チャーンレートを下げることで、お客さま一人一人からの収益を得られる期間が長くなり、その結果、LTVも上昇します。長くサービスを利用するお客さまは、多くの金額を使い、サービスのアップグレードを行うかもしれません。結果、収益が増加し事業の持続的な成長につながります。
新規顧客を獲得できる
低いチャーンレートは、お客さまの満足度やサービスの信頼性を示しているといってよいでしょう。商品やサービスに対する高い満足度や評価は、口コミや評判を通じて新しいお客さまを引き寄せる力となり、新規顧客の獲得にあたって有利になります。
チャーンレート(解約率)を下げる方法
KPIを設定する
KPI(Key Performance Indicator)は、事業の成果を定量的に測定・評価するための主要な業績指標で、KPIを設定することで事業の目標が明確になり、効果的な戦略を立てられます。期待される結果や成果に基づき、チャーンレートの低下を目指します。
顧客ターゲティングを調整する
チャーンレートが高止まりしているのは、想定しているターゲットがずれているからかもしれません。適切なターゲットを設定する、現在サブスクリプションを契約しているお客さまを分析することで、より商品やサービスに合ったお客さまを獲得できるようになります。
離脱の可能性を把握する
お客さまがサブスクリプションを解約するサインを早い段階でキャッチしましょう。この時点で商品やサービスを改善したり、特別なオファーを提示したりして介入することで、お客さまが解約を思いとどまる可能性があります。
顧客の属性別分析をする
お客さまの性別や年齢、職業といった属性やサービスの利用パターンに基づき、可能であればパーソナライズされたアプローチでサービスや商品を提供します。お客さまの個々のニーズを満たし、チャーンレートを下げることにつながります。
顧客の不満を改善する
お客さまからのフィードバックを収集し、しっかり目を通しましょう。改善によってお客さまの信頼を回復し、長期的で良好な関係を作ることで、チャーンレートの低下にもつながります。
チャーンレート(解約率)の分析・改善方法
解約の理由を調査する
お客さまにヒアリングをする、解約フォームに解約理由を記入できるようにするなどし、解約理由を明らかにしましょう。解約理由を詳細に調査することで、商品やサービスの問題やお客さまの不満を明確に把握できます。
顧客満足度のヒアリングを実施する
定期的にお客さまにヒアリングすることで、商品やサービスにどのくらい満足しているか、さらにどのようなニーズがあるのか確認できます。ヒアリングはお客さまと良好な関係を築くきっかけにもなるでしょう。
顧客の成功を支援する
商品やサービスを利用するお客さまの生活を豊かにしたり、ビジネスの目的を達成したりするのを支援するという視点で商品やサービスを提供してみましょう。商品やサービスの利用を通じてお客さまが成功を実感できると、ロイヤルティが向上し、チャーンレートが低下するでしょう。
商品やサービスの品質を上げる
すでにお客さまが商品やサービスに満足している場合でも、商品やサービスの品質を上げることには意義があります。商品やサービスの品質が上がると、既存顧客の解約率が下がり、口コミで新規顧客開拓につながることも。品質向上は事業の成長にもつながります。
顧客エンゲージメントを強化する
顧客とのコミュニケーションを深め、商品やサービスに対する関与度合いを上げることで、長期的な関係を築き、チャーンレートを下げられます。エンゲージメントの強化は、顧客のロイヤルティ向上や口コミによる新規顧客獲得にも寄与します。
Squareを利用してチャーンレート(解約率)を下げよう
Squareを使えば簡単にサブスクリプションの支払いを受け付けられます。サブスクリプションを受け始めるうえで必要なのは、Squareの無料アカウントだけ。ほとんどの機能が決済手数料のみで利用できます。サブスク決済にはSquare 請求書を使った定期請求書のほか、Square リンク決済でも定期的な支払いを受け付けられます。
詳しくは「【Squareガイド】Squareでサブスク決済を受け付けよう!で紹介しています。
Squareでは対面でのキャッシュレス決済や売上分析ツールなど、さまざまなサービスやツールを提供しています。Squareのアカウント一つで対面決済とサブスク決済を連携でき、売り上げやお客さまに関するデータ分析もできます。データを有効活用してチャーンレートを下げましょう。
ECサイト不要でオンライン販売が可能に
Square リンク決済なら会計リンクを作成しSNSやメールで共有するだけ。ECサイトがなくても誰でも簡単ににオンライン販売が可能です。
本記事では、チャーンレートとは何かから始め、チャーンレートの種類や計算方法、チャーンレートが上がる要因と対処方法について説明しました。自社の各種チャーンレートを計算してみて、考えていたよりもチャーンレートが高いことに驚いた人もいたかもしれません。そんなときにも慌てずに、チャーンレートが高止まりしている要因をデータから分析してみてください。きっと解決策が見つかるはずです。チャーンレートが一定以下におさまっている場合でも、本記事を参考にSquareのサービスなどを利用して、チャーンレートを定期的に分析して、低く抑えられるようにチャレンジしてみてください。
Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。
執筆は2023年11月6日時点の情報を参照しています。2024年7月31日に記事を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash