弁当屋を開業するには?必要な資格や資金と失敗しないためのコツを紹介

「料理の腕に自信がある」「栄養のある食事を多くの人に提供したい」という思いで弁当屋を開業してみたいという人もいるのではないでしょうか。本記事では、弁当屋を開業したいという人を対象に、弁当屋の営業業態をはじめ、必要な資金、資金調達の方法、資格や届出、そしてビジネスを成功させるためにおさえておきたいポイントについて説明します。合わせて、スムーズな運営には欠かせない事前注文システムとキャッシュレス決済についても紹介します。

目次


弁当屋の業態

弁当屋というと、店内でお弁当を調理して、販売するような業態をイメージする人が多いかもしれません。インターネットが普及して、さらに昨今ではコロナ禍を経て、従来の弁当屋以外の業態も増えています。具体的には以下のような業態があります。

・店舗販売
・宅配専門
・ゴーストレストラン
・移動販売(キッチンカー)

それぞれについて詳しく見てみましょう。

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店舗販売

店舗を構えて弁当を販売します。オフィス街など集客力のある立地で開業すれば、一定の売り上げを見込むことができます。また、直接お客様と対面して販売するため、ニーズを把握しやすく、リピート顧客を増やすチャンスもあります。一方で、内装や設備を整えるための初期投資がかかり、立地によっては店舗に少なくない固定費がかかる傾向にあります。

宅配専門

店舗を持たずに弁当の調理と配達を行います。調理設備と注文を扱うオフィスがあるだけでよく、店舗販売と比べ、対面販売の設備や、店舗にかかる費用を抑えることができます。ただし、集客には広告宣伝活動が不可欠で、配達費用も考慮しなければなりません。

ゴーストレストラン

ゴーストレストランは、宅配専門の弁当屋と似ていますが、主にオンライン上で注文を受け付けます。デリバリーサービスでのみ料理を提供します。宅配専門の弁当屋と同様、対面販売でないため、物件の選択については比較的自由度が高いです。集客には、デリバリーアプリに加え、SNSも活用します。

移動販売(キッチンカー)

キッチンカーとは、調理と販売の設備が車両に搭載された移動式の店舗です。キッチンカーでは、場所や時間に応じて営業を行えます。イベント、オフィス街など、需要が高まる場所を選んで営業できます。ただし、車両の購入・改装には少ない費用がかかり、営業許可の取得など、開業と営業には他の業態にない手続きをする必要があります。

これらの業態の違いを知って、自身のビジネスモデルやターゲットとしたいお客様の層、目指すビジネススタイルに合った業態を選びましょう。

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弁当屋の開業に必要な資金

弁当屋の開業に必要な資金は、選ぶ業態によって大きく変わります。以下に各業態の目安となる開業費用について解説します。

店舗販売

店舗販売の弁当屋の場合、敷金などの店舗を契約するための費用、内装費用、設備投資(厨房機器など)といった初期費用がかかります。店舗の契約にかかる費用は、立地や地域、物件の広さなどによって異なりますが、最低家賃の3カ月分は見ておかなければなりません。これに加えて内装や設備投資に数百万円かかることも少なくありません。広告宣伝にも一定の金額がかかるでしょう。

これらに加えて、売り上げが安定するまでのむこう数カ月分の家賃、食材や梱包資材のための初期の運転資金を数百万円確保しておく必要があります。初期費用としては、1,000万円ほどを用意することも珍しくなく、立地によってはそれ以上必要になる可能性もあります。

ただし、資金が足りないからといって諦めることはありません。内装をシンプルにする、以前レストランや弁当屋が使っていた居抜きの物件を借りる、中古の設備を購入するなど、さまざまな節約方法があります。

宅配専門

宅配専門の弁当屋では、店舗販売に比べて、物件と設備にかかる費用は抑えられますが、それでも、物件の契約や内装、設備投資には100万円以上はかかるとみておいた方がよいでしょう。加えて、弁当を自前で配達をする場合は車両の購入費用またはレンタル契約の費用がかかります。広告宣伝にも一定金額がかかるでしょう。

これらに加えて、売り上げが安定するまでのむこう数カ月分の家賃、食材や梱包資材、車両の維持費などのための初期の運転資金、届出にかかる費用を確保しておく必要があります。初期費用としては、数百万円から1,000万円ほどを用意するのが一般的で、立地によってはそれ以上必要になることもあります。

ただし、以前飲食店が使っていた居抜きの物件を借りる、中古の設備を購入するといった方法で節約できるので、資金が足りない場合はこれらの選択肢も検討してみましょう。自前で配達する代わりにデリバリーサービスを利用するのも一つの手です。

ゴーストレストラン

ゴーストレストランでは、厨房設備、デリバリーサービスの登録費用、初期の運転資金、広告宣伝費、届出にかかる費用などが主な開業費用となります。車両を用意する必要がないため、一般的には宅配専門の弁当屋よりも開業費用は抑えられ、開業費用は数百万円程度が目安とされています。費用を抑えられ、始めやすい業態ともいえます。

さらに費用を抑えたいという場合には、一週間のうち決まった曜日だけレンタルキッチンを借りて営業することもできます。

移動販売(キッチンカー)

キッチンカーによる弁当屋の場合、キッチンカーの購入・改装費用に多額の初期投資が必要です。車両の種類やサイズによって金額は大きく異なりますが、100万円以上の費用がかかることは覚悟しなければなりません。車両の費用に加えて、売り上げが安定するまでの駐車料金やガソリン代、食材や梱包資材のための初期の運転資金、届出や営業許可にかかる費用がかかり、開業費用は数百万円が目安とされています。

費用を抑えながらキッチンカーでの弁当屋を試してみたいという人は、車両を購入するのではなく、まずは必要に応じてレンタルして営業を始めてみるのも一つの手です。

開業費用は、あくまで目安です。不動産業者やレンタル業者と相談したり、見積もりをとったりしながら具体的な事業計画を立て、開業に向けて必要な資金を算出しましょう。

弁当屋の開業資金を調達する方法

開業に必要な資金を知って、圧倒されてしまったという人もいるかもしれません。でも、この資金すべてを個人でまかなう必要はありません。個人でまかないきれない場合やリスクを分散したい場合には、以下のような資金調達の方法があります。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は、起業を支援するために7,200万円を上限として新規開業資金の融資を行っています。また、女性、若者、シニアを対象にした有利な条件の融資も提供しています。事業計画を提出し、審査に通ると融資を受けられます。融資を検討したいという人は、最新情報を日本政策金融公庫のウェブサイトでチェックしましょう。

制度融資(融資あっせん制度)

制度融資とは、各自治体が信用保証協会と金融機関とともに実施している制度で、自治体に事業所を置く事業者が融資を受けやすくするための制度です。たとえば、東京都は以下のような制度融資を提供しています。

▶︎ 東京都中小企業制度融資(東京都産業労働局)

自治体にごとに制度融資の詳細が異なるので、開業する予定の自治体にどのような制度融資が受けられるのか制度を問い合わせてみるとよいでしょう。

補助金・助成金

国や地方自治体が事業の開始や拡大を支援するために補助金や助成金を提供しています。返済が不要な点で融資とは異なります。弁当屋の開業に直接関係するものに加えて、IT導入補助金のようにITサービスやソフトウエアの導入を支援する補助金などもあります。

IT導入補助金や飲食店が利用できる助成制度については、以下の記事も参考にしてください。

▶︎IT導入補助金の概要や申請の流れ・方法について解説
▶︎飲食店が利用できる給付金・補助金制度とは

インターネットで制度を調べてみるのと合わせて、開業する予定の自治体や商工会議所などに、弁当屋の開業にあたって利用できる補助金や助成金制度はどのようなものがあるのか問い合わせてみるとよいでしょう。

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弁当屋の開業に必要な資格や届出と注意点

ここでは、まず弁当屋の開業に必要な「食品衛生責任者」「飲食店営業許可」について見てみましょう。

食品衛生責任者

弁当屋を開業するにあたって、食品の衛生管理にあたる食品衛生責任者を置く必要があります。似た名前の資格に「食品衛生管理者」というものがありますが、弁当屋の開業にあたって必要なのは食品衛生責任者です。

食品衛生責任者の資格は、都道府県による講習または都道府県知事が認める6時間ほどの講習を受けて取得できます。栄養士、調理師、医師など特定の資格を持っている人は、講習会を受けずに食品衛生責任者になれます。

また、東京都のようにeラーニング型講習会を提供している自治体では、会場で講習を受講して取得するほか、オンラインでも食品衛生責任者の資格を取得できます。

飲食店営業許可

弁当屋として営業するには、都道府県知事が交付する飲食店の営業許可が必要です。宅配専門、ゴーストレストラン、キッチンカーなど店舗を構えない場合でも営業許可は必要です。

保健所に事前に相談し、申請書類を用意し、衛生面や設備に関する検査を受けます。飲食店営業許可については、以下の記事も参考にしてください。

▶︎飲食店開業に必要な営業許可の取得方法を解説

調理師免許は必須ではない

弁当屋では食材を調理することから、調理師免許が必要だと考える人もいるかもしれませんが、調理師免許は必要ではありません。一方で、調理師免許は料理の技術や知識を身に付けられる有益な資格であり、弁当屋の信頼性向上につながることから、弁当屋の事業が軌道に乗ったら取得を検討してもよいでしょう。

弁当屋の業態ごとの資格や届出の注意点

弁当屋を開業するにあたって、業態ごとの資格や届出の注意点も知っておきたいところです。

特に宅配専門やゴーストレストランを営む場合、物件費用を抑えるために一般的な住宅である自宅での営業を検討する人もいるかもしれません。一般的な住宅では営業許可が下りないため、リフォームが必要です。生活とのバランスや、リフォーム費用を考慮して、どこで営業するか検討しましょう。

キッチンカーで営業する場合、調理場と運転席の分離、給排水タンクの容量など、飲食店営業許可の審査項目が異なります。営業許可証を申請する予定の保健所にあらかじめ審査項目を問い合わせておくとよいでしょう。また、キッチンカーを使って道路上で営業する場合は、管轄の警察署に道路使用許可を得る必要があります。

弁当屋の開業で失敗しないためには

弁当屋の成功は、経験やスキルだけでなく、事前の準備と計画によっても大きく左右されます。ここでは弁当屋の開業にあたって失敗しないためのコツを紹介します。

独自のメニューやコンセプトを考える

お客様は、コンビニエンスストアでも弁当を購入できます。一般的な弁当と差別化するには、独自のメニューやコンセプトが重要です。地元の食材を使用した地産地消の弁当、健康志向の弁当など、ターゲットとするお客様を明確にして、お客様にとって魅力的なメニューを考えましょう。

開業する立地を慎重に選ぶ

弁当のメニューやコンセプトに加えて、特に店舗で営業する場合は、弁当屋の立地も重要なポイントです。通勤通学の経路上、オフィス街、商業施設の近くなど、ターゲットにしたいお客様が多く通る場所を選ぶとよいでしょう。

事前注文を取り入れる

事前注文システムを導入することで、作りすぎや、商品の売り切れを防げます。社会問題となっているフードロスの問題にも対処でき、イメージ向上にもつながることでしょう。お客様にとっても、好きな時間に注文でき、事前決済ですぐに商品を受け取れるというメリットがあります。

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Square オンラインビジネスを使えば、パソコンからでもモバイルからでも簡単に事前注文を受け付けられます。Squareのアカウントの作成は無料で、事前注文を始めたい事業者向けの無料プランも提供しています。事前注文については、以下の記事を参考にしてください。

▶︎【飲食店向け】Squareで事前注文を効率化!

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広告・宣伝しよう

すでに知名度がある場合を除いて、弁当屋を開業しただけでは、どれだけ素晴らしい弁当を用意していても、お客様にはその存在を知ってもらえません。

SNSでおいしそうな弁当の写真や、調理風景の動画を投稿するほか、お得なキャンペーンや新メニューについても積極的に発信しましょう。新規顧客の獲得やリピーターの維持につながります。また、地域に根差した弁当屋を開業するのであれば、近隣にチラシを配ったり、オフィスにあいさつに行ったりといった地道な営業活動も必要になるでしょう。

ターゲットと価格設定を見極める

ターゲットにするお客様を明確にし、お客様が納得する価格を設定することが重要です。必要に応じて近隣の弁当屋や飲食店の価格も調査しましょう。価格設定はビジネスの成功に直結しますし、そう頻繁に変えられるものではないため、慎重な決定が求められます。

キャッシュレス決済に対応する

キャッシュレスの決済比率は年々着実に上昇しています。お客様の利便性が高まるだけでなく、事業者としても扱う現金を少なくなるメリットがあります。現金が少なくなると、盗難の心配が減り、売り上げをデータで管理しやすくなり、さらに衛生面でのメリットも。Squareのキャッシュレス決済は、最短で即日導入でき、決済端末さえ購入すれば、そのほかに初期費用はかかりません。先述の事前注文に加え、POSレジ請求書などSquareの各種サービスと連携できます。

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弁当屋は店舗での調理・販売からキッチンカーでの営業まで、さまざまな形態が可能です。初期投資は業態により、場合によってはかなりの金額になりますが、融資や補助金、助成金などを活用して資金を調達することもできます。本記事を参考に、メニュー開発、物件選び、資金調達、許可や届出の手続き、宣伝活動など、開業を成功させるためのポイントを押さえ、事業計画を進めてください。


Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。

執筆は2023年7月31日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash