スマートフォンユーザー向けに携帯電話会社が提供しているキャリア決済は、どのような特徴を持つサービスなのでしょうか。利用者や事業者にとって、どのような利点や注意点があるのでしょうか。
この記事では、キャリア決済の種類や仕組み、期待できるメリットと注意すべきデメリットなどについて、わかりやすく解説します。
目次
キャリア決済とは
キャリア決済は、携帯電話会社が提供する決済サービスです。このサービスでは、オンライン上で購入した商品・サービスの代金と携帯電話の料金をあわせて支払うことができます。ECサイトでのショッピングやアプリの課金、動画・音楽配信サービスの月額利用料などの支払いを手軽にできる決算手段として注目されています。
契約中の携帯電話のIDとパスワードを使って決済を完了できる手軽さ、使いすぎを防ぐことができる利用上限の設定なども、このサービスの特徴です。
キャリア決済の種類
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクといったキャリア各社のキャリア決済の概要と相違点を確認しましょう。
ソフトバンク:ソフトバンクまとめて支払い
ソフトバンクまとめて支払い1は、株式会社ソフトバンクが提供する決済サービスです。ソフトバンク、LINEMO、Y!mobileのユーザーであれば、代金を携帯料金とあわせて支払うことができます。
ソフトバンクまとめて支払いの利用可能額は、下表の通りです。
年齢 |
利用可能額 |
12歳未満 |
最大2,000円/月 |
13~19歳 |
最大20,000円/月 |
20歳以上 |
最大100,000円/月 |
NTTドコモ:d払い
d払い2は、株式会社NTTドコモが提供する決済サービスです。ドコモ回線利用者以外でも、dアカウントを発行することでd払いを利用できます。電話料金合算払いにくわえて、クレジットカードやd払い残高、dポイントでの支払いにも対応しています。
d払いの利用可能額(電話料金合算払い時)は、下表の通りです。
使用者年齢 |
利用可能額 |
20歳未満 |
最大10,000円/月 |
20歳以上 |
最大100,000円/月 |
au:auかんたん決済
auかんたん決済3は、KDDI株式会社の決済サービスです。au、UQ mobile、povoのユーザーであれば、既存のIDですぐに利用を開始できます。通信料金合算払い以外に、au PAY 残高、WebMoney、クレジットカード、au PAYカードで利用代金を支払うことも可能です。
auかんたん決済の利用可能額(通信料金合算払い時)は、下表の通りです。
年齢 |
利用可能額 |
12歳未満 |
最大1,500円/月 |
13~17歳 |
最大10,000円/月 |
18~19歳 |
最大50,000円/月 |
20歳以上 |
最大100,000円/月 |
キャリア決済の仕組み
利用者が商品を購入した段階で、事業者(ECサイトの運営事業者や決済代行業者など)から携帯キャリアに決済情報が送信されます。キャリア各社は代金を通信費用と合算して利用者に請求し、事業者へはキャリアが代金を支払います。
基本的な流れは、以下のようになります。
1.利用者が使用するキャリア決済を画面上で選ぶ
2.ログインして商品を購入する
3.キャリアが通信料と合算して利用者に代金を請求する
4.キャリアが代金を事業者(決済代行業者など)に支払う
5.利用者がキャリアに料金を支払う
キャリア決済の支払い手順は非常に簡潔です。画面上で使用するキャリア決済を選択し、IDでログインした後にパスワードを入力すれば、決済手続きが完了します。
【利用者向け】キャリア決済のメリット
キャリア決済を利用する主なメリットとして挙げられるのは、以下の2点です。
スムーズな支払いができる
キャリア決済を利用する最大のメリットは、オンラインで商品を購入する際に必要なクレジットカード情報を入力する手間が省ける点にあります。カード番号や有効期限、セキュリティーコード、個人情報などを入力するクレジットカードと比べて、手続きが簡単で、誰でも短時間でスムーズに使用できる決済手段です。また、クレジットカード情報の漏えいや不正利用といったリスクも回避できます。
クレジットカードを持っていない未成年の利用者がオンラインショッピングをする際の有効な支払い方法でもあります。
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使いすぎが防げる
各キャリアが定めるキャリア決済の利用上限は、利用者の年齢によって異なりますが、いずれのキャリアでも20歳以上で10万円が利用限度額となっています。一般的なクレジットカードよりも利用限度額が低いことにくわえ、利用者自身が限度額の範囲内で上限を設定できるので、使いすぎの防止に効果的です。若年層の利用者でも、予定以上の出費を心配することなく安心して利用できます。
【利用者向け】キャリア決済のデメリット
キャリア決済を利用する際にはどのような点に注意すべきでしょうか。ここでは、主なデメリットについて説明します。
利用限度額の上限が低い
キャリア各社が設定している利用上限は、20歳以上の利用者の場合でも月間10万円です。一般的なクレジットカードと比べて利用可能額が低いという特徴は、使いすぎを防ぐというメリットとなります。その反面、一定期間内の利用額が制限されるため、高額な商品の購入には向いていないというデメリットでもあります。
購入する商品の価格帯や購入頻度などに応じて、他の決済方法と使い分けるといった工夫が必要です。
モバイル回線が必要
携帯電話と連携した決済方法であるキャリア決済は、利用時にモバイル回線を経由してインターネットと接続する必要があります。Wi-Fiや有線インターネット接続をしたパソコンでは、基本的に利用できません。
パソコンでの購入に利用できるサービスも存在しますが、その際はスマートフォンによる認証が求められます。
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【事業者向け】キャリア決済のメリット
事業者側が得られる二つのメリットについて説明します。
機会損失を防げる
クレジットカード決済を行う場合は、16桁のカード番号や有効期限、セキュリティーコードといった各種情報を入力する必要があり、その手間を「面倒で、わずらわしい」と感じる利用者は少なくありません。決済手続きの途中で購入をやめてしまうケースも見られます。
IDでログインしてパスワードを入力するだけで決済手続きが完了する手軽さは、キャリア決済の大きなメリットです。決済手順の簡略化を実現することによって、機会損失のリスクを低減できます。
また、クレジットカードを持っていない若年層の顧客獲得に取り組むことで、売上向上が期待できます。
代金の未回収リスクが減る
代金を回収できないリスクを軽減できることも、メリットの一つです。正常に手続きが完了した代金は、キャリアが事業者に支払います。キャリアへの代金が未払いになった場合も、債権はキャリアに譲渡されているので、事業者が回収する必要はありません。
【事業者向け】キャリア決済のデメリット
キャリア決済の導入を検討する際に事業者が注意を払う必要のあるポイントには、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、主なデメリットについて解説します。
決済手数料が高い
キャリア決済の決済手数料は、クレジットカードよりも高めだといわれています。決済代行業者やキャリアによって決済手数料は異なりますが、代金の数%〜10%程度が目安とされます。
決済手数料の負担増加による影響を慎重に考慮したうえで、キャリア決済の必要性を検討する必要があります。
キャリアごとに審査が必要
キャリア決済の導入に際しては、所定の審査を受ける必要があります。
各キャリアが実施する審査の内容や基準などについては、非公開となっています。事業形態や販売する商品のカテゴリーによっては、審査を通過できないケースがあることを知っておきましょう。また、キャリアによって審査基準が異なるため、一つのキャリアの審査を通過しても他のキャリアは落ちてしまう可能性もあります。
高額な商品やサービスの販売には不向き
利用者のメリット・デメリットの項目で説明した通り、キャリア決済の利用可能額は、一般的なクレジットカードよりも低く設定されています。
購入代金が限度額をオーバーすると決済できないため、機会損失につながるリスクが非常に高くなってしまいます。価格帯が高い商品を販売する事業者にとっては、不向きな決済方法だと考えるべきでしょう。
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キャリア決済の導入方法
キャリア決済の導入は、通信キャリアとの直接契約、あるいは決済代行会社を通した契約のいずれかの方法で行います。二つの方法の相違点について説明します。
通信キャリアと直接契約する
決済代行会社を通さずに直接キャリアとの契約を結ぶことによって、キャリア決済を導入できます。自社で各キャリアに申し込み、所定の審査を経て契約を締結。ウェブサイトやアプリなどに決済機能を実装する開発作業を実施します。
直接キャリアと契約を結ぶ際には、キャリアごとに異なる契約内容や決済手数料、運用方法、利用可能な商品などに関する確認が必要です。
キャリアとの直接契約では、導入時の仲介手数料などを削減できる一方で、システムを導入するための開発コストや導入後の運用コストがキャリアごとに発生します。直接契約を検討する際には、導入時に生じる作業の負担やコスト面について十分に検討することをおすすめします。
決済代行会社を通して契約する
決済代行会社を経由して、キャリア各社と契約する方法もあります。決済代行会社を通すことによって、個々のキャリアと交わす契約を一括して実施できるうえ、決済システムへの接続もまとめて実施できます。決済代行会社を通した導入では、仲介手数料や利用料などのコストが発生しますが、直接契約と比べて導入や運用に必要な作業やコストを大幅に軽減することが可能です。
また、直接契約した場合には、入金日がキャリアによって変わってしまう場合があります。決済代行会社を通した契約では、すべてのキャリアの入金日を統一でき、売り上げ管理の効率を高めることができます。
まとめ
手軽でスムーズな決済サービスであるキャリア決済の導入は、若年層をはじめとした新規顧客の獲得や売上アップにつながる、EC運用改善策の一つです。代金未回収のリスク軽減にもつながります。
この記事で取り上げた種類や仕組み、メリット・デメリット、導入方法などの情報を参考にして、キャリア決済の導入を検討してみてください。
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執筆は2025年1月23日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash