フォームやメールからの問い合わせに、迅速な対応ができないことはありませんか。お客様の質問にいち早く回答することは顧客満足度向上において大切ですが、人手不足や営業時間外、優先度が高い仕事が入ってしまった……など、やむを得ない理由でお客様をお待たせしてしまうこともあるでしょう。そこで多くのビジネスから注目を浴びているのが、自社サイトやアプリを通してお客様の質問にその場で答えてくれるチャットボットです。興味はあるけれど、費用や効果において疑問を抱える人も多いのではないでしょうか。
今回はチャットボットの特徴やメリット、そして導入方法などを伝えます。
チャットボットとは
チャットボットとは「会話(チャット)」と「ロボット(ボット)」を掛け合わせた言葉で、音声やテキストを通じてお客様の質問に自動で答えるプログラムです。 ITの調査・コンサルティングを行うITRが発表したビジネスチャット市場の調査結果によると、2016年から着々と注目を集めているチャットボットの同年の市場規模は、3億円でした。それが2018年には24億円にまで拡大、2022年には100億円規模まで成長すると予想されており、注目を浴びている技術といえます。
チャットボットは、主にテキストベースの「チャットサポート」と音声でコミュニケーションをとる「アシスタント代替」の二つに分類されています。
参考:企業担当者のための「チャットボット」解説:代表製品や導入のポイントをITRが解説(2019年2月13日、ビジネス+IT)
チャットサポート(チャット接客)
自社のウェブサイトやメッセージアプリなどを通して、テキストでやりとりを行うのがチャットサポートです。たとえばウェブサイトのFAQ内にユーザーが求める回答がなかった場合、チャットサービスを通して質問を投げると、疑問点をその場で解消することができます。
問い合わせ対応のほかにも、下記のような活用法があります。
・お客様のニーズをよりよく理解する
ECサイトを運営しているのであれば、「本日はどのような商品をお探しですか」といったメッセージをウェブサイト上に表示させ、ユーザーのニーズをデータで収集できます。また、メッセージアプリにチャットボットを導入し、同じようにユーザーのニーズを掘り下げることで、ユーザーに合った情報を提供できるようになるでしょう。
・業務の受付ツールとして
最近ではメッセージアプリ内のチャットボットと会話をすることで、レストランの予約や荷物の再配達依頼ができるサービスも登場しています。このように受付ツールとして使うのも一つの活用法です。
参考:技術視点ではなく、顧客視点での導入が求められるチャットボット(XD)
アシスタント代替
アシスタント代替のわかりやすい例は、Appleの「Siri」やAmazonの「Alexa」でしょう。わざわざスマートフォンを開いたりアプリを操作したりしなくても、チャットボットが必要な情報へと誘導してくれ、ユーザーの手間を省いてくれます。アシスタント代替もチャットサポートと同じように、お客様のニーズを掘り出したり、受付ツールとして使用したりできます。
チャットボットの種類
チャットボットはニーズや予算に合わせて、簡易な「シナリオ型(=ルール型)」と回答領域が広い「AI型」の2種から選ぶことができます。もう少し詳しく見ていきましょう。
シナリオ型(ルール型)
シナリオ型はチャットボットが提示する質問に対して、チャットボットが用意した回答のなかからユーザーに選択してもらう仕組みです。たとえば、チャットボットの「本日のご用件を下記からお選びください」といった質問に対して、「料金」「資料請求」「導入の流れ」など、チャットボットが提示する選択肢からもっともふさわしいものを選ぶことで、ユーザーは求めている情報にたどり着くことができます。
ただし、チャットボットに組み込まれていない質問がある場合は、やはり電話やメールで問い合わせる必要があります。一方で、設定がシンプルなので、シナリオ設計さえできればスピーディーに導入できます。「AI型」に比べるとコストも抑えられるので、予算を抑えたいビジネスオーナーにとってはうれしいオプションでしょう。
AI型
選択肢を用いた構造では問題解決が難しい場合は、ユーザーにテキストボックスに質問を入力してもらい、回答を出すAI型が適しているでしょう。
ただしこれを実現するためには、FAQに掲載されている情報や、ユーザーの問い合わせ内容を含むビッグデータをまずチャットボットに学習させる必要があります。チャットボットは問い合わせ内容を分析し、学んだ情報をもとに回答を出します。そこから正解する確率の高い回答をアルゴリズムで算出し、どんどん正答率を上げていく仕組みです。しかしながら、顧客からのデータを頼りにするため、あまり問い合わせがないと精度が上がりにくいところが弱みです。また、ビッグデータを取り扱うため、シナリオ型に比べて導入費用や維持費が高額であることも視野に入れておきましょう。
チャットボットを取り入れるメリット
導入には費用が発生するため、その必要性を疑うビジネスオーナーもいるかもしれません。チャットボットを導入することで、具体的にどのようなメリットが生まれるのかを見ていきましょう。
事業者のメリット
1, カスタマーサポートに割く人件費を削減しつつ、対応漏れを防げる
従来の電話やメール対応における弱点は、ユーザー側に待ち時間が発生してしまうところです。営業時間外や人手不足で対応ができない、などを理由に対応漏れにつながることも考えられます。また、電話がつながらなかったり、メールの返事が遅かったりすると顧客満足度が下がり、見込み顧客を逃してしまう可能性が出てきます。チャットボットであれば1日中、時間を問わず対応ができるので、顧客の取りこぼしもある程度防げるでしょう。
また、一定の業務をチャットボットに任せることで人件費削減につなげられるのもチャットボットのうれしいところです。例としてインターネット通販サイト「LOHACO」は、2014年よりお客様対応のチャットボットを導入しており、2018年時点で月間6.5人分の省力化を行うことに成功しています。
参考:LOHACOのCSを支えるチャットボット「マナミさん」。ユーザー体験と業務効率を高める“人間らしさ”の実現を(2018年8月21日、ECOのミカタ)
2, より幅広いユーザー層にリーチできる
電話やメールなど疑問を解決するツールは揃っていても、「できることなら知りたいけど、問い合わせる時間がない」「困っているわけではないので、わざわざ時間を割いて聞くほどでもない」という思っている顧客も少なくありません。このように普段電話やメールでは聞かない些細なことでも質問できるのは、チャットボットの強みでしょう。
NTTレゾナント株式会社が2019年に行なったチャットボットの調査では、チャットボット利用以前は「好きではない」「知らない」と回答していた非ロイヤリティユーザーが、チャットボット利用後は「興味を持った」(45.9%)、「イメージがよくなった」(25.3%)、「商品を勧めたくなった」(40.7%)と回答しています。このようになかなかリーチしにくいユーザーにも魅力を伝え、より幅広いユーザー層に商品やサービスを知ってもらうのにも、チャットボットは有効でしょう。
参考:【チャットボットの利用に関する調査】利用者の7割が便利さを実感、一方でおよそ半数が会話精度に不満(2019年5月30日、ニュースAGARA)
3, サイトのユーザビリティ向上やマーケティング戦略に活かせる
チャットボットは、問い合わせ対応に限らず、顧客の声を収集するツールとしても活用できます。たとえば予約完了画面にたどり着いたときに、「予約の手順はわかりやすかったでしょうか」といった質問を表示させることで、ユーザビリティを探り、改善につなげることもできます。同じように、質問を投げかけるタイミングを工夫することでユーザーのデータを収集し、マーケティング戦略に生かすこともできるでしょう。
チャットボットを取り入れるうえで注意したい点
前述のNTTレゾナント株式会社の調査によると、76%はチャットボットの利用を「便利」と報告している反面、不満点も挙げられます。なかでももっとも多くの数を占めていたのは、「回答が的確ではない」(57.4%)といった点です。
チャットボットの正解率や精度を上げていくためには大量のデータを学習させ、随時調整していく必要があり、「AI型」を導入する場合はそれ相応のコストと時間がかかることが予想されます。そのため、「シナリオ型」と「AI型」のいずれを導入するにしても、どこまでを人間が対応し、どこまでをチャットボットに任せるかを設計段階で決めておく必要があるでしょう。
参考:【チャットボットの利用に関する調査】利用者の7割が便利さを実感、一方でおよそ半数が会話精度に不満(2019年5月30日、ニュースAGARA)
中小企業の導入方法
自社サイトにチャットボットを組み込む場合、チャットボットを自社で開発する、チャットボット構築サービスからチャットボットを作成する、の二つの手段が一般的です。自社に開発者がいない限り、後者の方法で導入するのがスムーズでしょう。
なかには月額1,500円ほどで導入できるチャットサポートツールもあれば、月額費が数十万円ほどかかるものや、システムと自社サイトの連携に100万円以上のコストがかかる高額なものも存在します。ただ、最近では簡単に始められるうえ、無料で導入できるチャットボットサービスも登場しているので、「あまり予算が割けない」という事業でも手軽に導入できるようになっています。
見込み客の取りこぼし防止、業務効率化、そしてお客様のニーズをより理解するツールとして、チャットボットを視野に入れてみてはいかがでしょうか。
参考:問い合わせの自動化を実現するanybotのウェブ版チャットボット完全無料(2019年6月20日、PR TIMES)
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執筆は2019年7月4日時点の情報を参照しています。
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