フォームやメールからの問い合わせに、迅速な対応ができないことはありませんか。お客様の質問にいち早く回答することは顧客満足度向上において大切ですが、人手不足や営業時間外、優先度が高い仕事が入ってしまった……など、やむを得ない理由でお客様をお待たせしてしまうこともあるでしょう。そこで多くのビジネスから注目を浴びているのが、自社サイトやアプリを通してお客様の質問にその場で答えてくれるチャットボットです。興味はあるけれど、費用や効果において疑問を抱える人も多いのではないでしょうか。
この記事ではチャットボットの特徴やネットショップに導入するメリット、そして導入方法などを伝えます。
目次
- チャットボットとは
- チャットボットのよくある使い方
- チャットボットの種類
- チャットボットをネットショップに導入するメリット
- チャットボットをネットショップに導入するデメリット
- チャットボットを取り入れるうえで注意したい点
- チャットボットの導入方法
- チャットボットの導入事例
- チャットボットをネットショップに導入しよう
チャットボットとは
チャットボットとは「会話(チャット)」と「ロボット(ボット)」を掛け合わせた言葉で、音声やテキストを通じてお客様の質問に自動で答えるプログラムです。 株式会社グローバルインフォメーションの市場調査レポートによると、チャットボットの世界的な市場規模は2022年の42億8,000万米ドル(約5,800億円)から21.5%の年平均成長率で成長し、2028年には約4倍の137億7,000万米ドル(約1兆8,000億円)に達すると予想されています(※)。
チャットボットは、主にテキストベースの「チャットサポート」と、音声でコミュニケーションをとる「アシスタント代替」の二つに分類されています。
※1米ドル137円で日本円を算出しています
参考:チャットボットの世界市場の予測(~2028年)、分析:コンポーネント別、展開別、タイプ別、用途別、組織規模別、用途別、地域別(2022年11月1日、株式会社グローバルインフォメーション)
チャットボットのよくある使い方
チャットサポート(チャット接客)
自社のネットショップやメッセージアプリなどを通して、テキストでやりとりを行うのがチャットサポートです。たとえばネットショップのFAQ内にお客様が求める回答がなかった場合、チャットサービスを通して質問を投げると、疑問点をその場で解消することができます。
問い合わせ対応のほかにも、下記のような活用法があります。
・お客様のニーズをよりよく理解する
ネットショップを運営しているのであれば、「本日はどのような商品をお探しですか」といったメッセージをページ上に表示させ、お客様のニーズをデータで収集できます。また、メッセージアプリにチャットボットを導入し、同じようにお客様のニーズを掘り下げることで、お客様に合った情報を提供できるようになるでしょう。
・業務の受付ツールとして
最近ではメッセージアプリ内のチャットボットと会話をすることで、レストランの予約や荷物の再配達依頼ができるサービスも登場しています。このように受付ツールとして使うのも一つの活用法です。
アシスタント代替
アシスタント代替のわかりやすい例は、Appleの「Siri」やAmazonの「Alexa」でしょう。わざわざスマートフォンを開いたりアプリを操作したりしなくても、チャットボットが必要な情報へと誘導してくれ、ユーザーの手間を省いてくれます。アシスタント代替もチャットサポートと同じように、お客様のニーズを掘り出したり、受付ツールとして使用したりできます。
チャットボットの種類
チャットボットはニーズや予算に合わせて、簡易な「シナリオ型(ルール型)」や「辞書型」「ELIZA型」と、回答領域が広い「ログ型」の4種から選ぶことができます。もう少し詳しく見ていきましょう。
シナリオ型(ルール型)
シナリオ型はチャットボットが提示する質問に対して、チャットボットが用意した回答のなかからユーザーに選択してもらう仕組みです。たとえば、チャットボットの「本日のご用件を下記からお選びください」といった質問に対して、「配送料金」「支払い方法」「ギフト用ラッピング」など、チャットボットが提示する選択肢からもっともふさわしいものを選ぶことで、お客様は求めている情報にたどり着くことができます。
ただし、チャットボットに組み込まれていない質問がある場合は、やはり電話やメールで問い合わせる必要があります。一方で、設定がシンプルなので、シナリオ設計さえできればスピーディーに導入できます。「ログ型」に比べるとコストも抑えられるので、予算を抑えたいビジネスオーナーにとってはうれしいオプションでしょう。
辞書型
辞書型は、ユーザーが入力したフリーワードでの質問文を解析し、辞書に照らし合わせて回答するものです。たとえばお客様がネットショップで「送料を知りたい」と入力したら、「送料」「知りたい」などに分解して解析し、類義語辞書からあらかじめ設定していた「購入金額が1万円以上の場合は送料が無料になります。1万円未満のご購入のお客様の地域ごとの送料はこちらです」など、送料についてのページに誘導します。
ELIZA(イライザ)型
ELIZA型は、1966年に開発された自動会話システム「ELIZA」を基にしたチャットボットです。ELIZA型は簡単なパターンの受け答えをプログラムされていて、主に相槌をする形で会話を進めていきます。聞き役として相槌を打ったり、会話の要約をしたりすることができます。
ログ型
ログ型とは、会話データを蓄積しながら、質問に対する適切な回答をデータの中から提示するAIのチャットボットです。ユーザーが自由に入力した質問文に対してチャットボットが返答します。利用を繰り返すことで会話データが蓄積され、回答精度が高まっていくのが特徴です。選択肢を用いた構造で問題解決が難しい場合は、ユーザーにテキストボックスに質問を入力してもらい、回答を出すログ型が適しているでしょう。
ただしこれを実現するためには、FAQに掲載されている情報や、お客様の問い合わせ内容を含むビッグデータをまずチャットボットに学習させる必要があります。チャットボットは問い合わせ内容を分析し、学んだ情報をもとに回答を出します。そこから正解する確率の高い回答をアルゴリズムで算出し、どんどん正答率を上げていく仕組みです。しかしながら、顧客からのデータを頼りにするため、あまり問い合わせがないと精度が上がりにくいところが弱みです。また、ビッグデータを取り扱うため、シナリオ型に比べて導入費用や維持費が高額であることも視野に入れておきましょう。
チャットボットをネットショップに導入するメリット
導入には費用が発生するため、その必要性を疑うビジネスオーナーもいるかもしれません。チャットボットを導入することで、具体的にどのようなメリットが生まれるのかを見ていきましょう。
業務の効率化ができる
従来の電話やメール対応における弱点は、お客様に待ち時間が発生してしまうところです。営業時間外や人手不足で対応ができない、などを理由に対応漏れにつながることも考えられます。また、電話がつながらなかったり、メールの返事が遅かったりすると顧客満足度が下がり、見込み顧客を逃してしまう可能性が出てきます。チャットボットであれば1日中、時間を問わず対応ができるので、顧客の取りこぼしもある程度防げるでしょう。
また、一定の業務をチャットボットに任せることで人件費削減につなげられるのもチャットボットのうれしいところです。例としてインターネット通販サイト「LOHACO」は、2014年よりお客様対応のチャットボットを導入しており、2018年時点で月間6.5人分の省力化を行うことに成功しています。
参考:LOHACOのCSを支えるチャットボット「マナミさん」。ユーザー体験と業務効率を高める“人間らしさ”の実現を(2018年8月21日、ECOのミカタ)
24時間365日、対応できる
お客様の中にはなかなか営業時間内に問い合わせの電話ができないという人もいるかもしれません。しかし、チャットボットであれば24時間365日対応が可能です。お客様の「今知りたい」に応えることで顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
より幅広いユーザー層にリーチできる
電話やメールなど疑問を解決するツールは揃っていても、「できることなら知りたいけど、問い合わせる時間がない」「困っているわけではないので、わざわざ時間を割いて聞くほどでもない」と思っているお客様も少なくありません。このように普段電話やメールでは聞かない些細なことでも質問できるのは、チャットボットの強みでしょう。
NTTレゾナント株式会社が2019年に行なったチャットボットの調査では、チャットボット利用以前は「好きではない」「知らない」と回答していた非ロイヤリティユーザーが、チャットボット利用後は、およそ半数が「興味を持った」、「商品を勧めたくなった」、そのほか3割弱が「イメージがよくなった」と回答しています。このようになかなかリーチしにくいお客様にも魅力を伝え、より幅広い層に商品やサービスを知ってもらうのにも、チャットボットは有効でしょう。
参考:【チャットボットの利用に関する調査】利用者の7割が便利さを実感、一方でおよそ半数が会話精度に不満2019年5月30日、NTTレゾナント株式会社)
サイトのユーザビリティ向上やマーケティング戦略に生かせる
チャットボットは、問い合わせ対応に限らず、顧客の声を収集するツールとしても活用できます。たとえば購入完了画面にたどり着いたときに、「購入の手順はわかりやすかったでしょうか」といった質問を表示させることで、ユーザビリティを探り、改善につなげることもできます。同じように、質問を投げかけるタイミングを工夫することでユーザーのデータを収集し、マーケティング戦略に生かすこともできるでしょう。
お客様の疑問解消のハードルが下がる
ネットショップの問い合わせフォームからの質問は、名前やメールアドレス、電話番号を入力する場合が多く、お客様によっては個人情報の入力に抵抗を覚えるでしょう。また、オペレーターが電話対応をする場合は、人と話をすることに心理的ハードルを覚えるお客様もいるかもしれません。チャットボットであれば、個人情報や連絡先を入力する必要もなく、人と話をする必要もないので、質問のハードルが下がります。
チャットボットをネットショップに導入するデメリット
導入までに時間がかかる
チャットボットを導入して、実際に運用するまでには、シナリオ型、辞書型のいずれもシナリオやキーワードの作成と設定が必要になります。チャットボット導入の目的や、どの程度の内容を答えさせるのかにもよりますが、準備期間として1カ月程度かかると考えておくとよいでしょう。また、ログ型の場合は、AIに膨大なデータを学習させなければならないので、より時間がかかることを念頭におきましょう。場合によっては、数カ月から半年の準備期間を要することもあるようです。
費用がかかる
チャットボットには、初期費用のほか、運用費、メンテナンス費がかかります。初期費用は無料から10万円程度が一般的なようですが、ログ型などより高度なチャットボットの場合は数十万円から100万円を超えるものまであるようです。
運用費については、シナリオ型や辞書型の場合、安価なもので月額5万円以下のものもありますが、一般的に月額10万円から30万円程度が相場のようです。ログ型などAIを搭載したものやカスタマイズ可能なものであれば、月額数十万円から100万円程度かかることもあるようです。
チャットボットを運用する上では、メンテナンスも必要です。たとえば「回答できなかった質問に回答できるように調整する」「ユーザーからよく質問されている内容を拡充する」といった、より精度を上げるための調整が必要になります。こうしたメンテナンスにも数万円から数十万円かかるようです。
設定していない質問には回答できない
チャットボットは、設定されていない質問や複雑な内容の問い合わせに対応することができません。お客様が自由に質問内容を入力するチャットボットでは、回答が見つからないときの対応方法を登録しておく必要があります。
チャットボットを取り入れるうえで注意したい点
前述のNTTレゾナント株式会社の調査によると、およそ8割はチャットボットの利用を「便利」と報告している反面、不満点も挙げられます。なかでも半数以上を占めていたのは、「回答が的確ではない」という点です。
チャットボットの正解率や精度を上げていくためには大量のデータを学習させ、随時調整していく必要がありますが、「ログ型」を導入する場合はそれ相応のコストと時間がかかることが予想されます。そのため、チャットボットの種類の章で紹介したチャットボットのいずれを導入するにしても、どこまでを人間が対応し、どこまでをチャットボットに任せるかを設計段階で決めておく必要があるでしょう。
参考:【チャットボットの利用に関する調査】利用者の7割が便利さを実感、一方でおよそ半数が会話精度に不満2019年5月30日、NTTレゾナント株式会社)
チャットボットの導入方法
ネットショップにチャットボットを組み込む場合、自社で開発する、チャットボットツールを導入する、の二つの手段が一般的です。自社に開発環境がない限り、後者の方法がスムーズでしょう。
なかには月額1,500円ほどで導入できるチャットボットツールもあれば、月々が数十万円ほどかかるものも存在します。ただ、最近では簡単に始められるうえ、無料で導入できるチャットボットツールも多数登場しているので、「あまり予算が割けない」という事業でも手軽に始められるようになっています。
チャットボットの導入事例
LOHACO by ASKUL
チャットボットの「マナミさん」が、お客様からの質問に答えます。シナリオ型とログ型の併用で、よくある質問から回答ページに導くもの、質問を自由入力できるフォームが用意されています。「業務の効率化ができる」の項目でも紹介したように、2014年からお客様対応のチャットボットを導入し、2018年時点で月間6.5人分の省力化を行うことに成功しています。
株式会社千成亭風土
滋賀県彦根市を中心に近江牛を取り扱う小売店や飲食店を営む「千成亭」のネットショップでもチャットボットが導入されています。シナリオ型で「配送についてのご質問」「銀行振込についてのご質問」のような項目が設置されています。チャットボットを導入したことで、問い合わせ件数の9割を削減することができ、繁忙期の残業時間も減らすことができたそうです。
参考:千成亭近江牛専門店
チャットボットをネットショップに導入しよう
チャットボットの導入方法の項目でも紹介したように、無料、もしくはリーズナブルな価格でチャットボットを作成できるツールもあります。なかには、数ステップでチャットボットのコードを生成できるものもあるので、コードを自社のネットショップに埋め込んで試用してみるのも一つの手です。
コードを埋め込むことができるネットショップ作成サービスは多数あります。その中の一つが、決済代行会社Squareが提供しているSquare オンラインビジネスです。無料プランと二つの有料プランがあり、ウェブサイトに関する特別な知識なくても、テンプレートを選んで文字と写真を追加すれば簡単なステップでネットショップ作成できます。有料プランでは、埋め込みコードをサイトに追加することが可能です。また、商品レビューやかご落ちメールの送信、広告の非表示、カスタムフォントの利用などの機能も利用できます。主要クレジットカードブランドでの決済が可能で、決済手数料は3.6%です(※)。
※プレミアムプランは3.3%
24時間365日、人間に代わってお客様対応をしてくれるチャットボットは、ここ最近の目まぐるしいAIの進化もあり、今後のビジネスに欠かせない存在になるでしょう。チャットボットを上手に使って顧客体験を向上させ、売り上げアップにつなげましょう。
Square導入のご相談は営業チームに
Squareサービスの導入を検討中のお客さまに、営業チームが導入から利用開始までサポートします。イベントでの利用や、複数店舗での一括導入など、お気軽にご相談ください。
Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。
執筆は2019年7月4日時点の情報を参照しています。2023年6月19日に情報の一部を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash