「キャッシュレス決済について教えて」「卵焼きの作り方が知りたい」「子猫とサンタクロースの友情を描いた物語を書いてほしい」など、検索エンジンに問いかけるような質問から少し風変わりなお願いまで、ものの数秒でチャット形式で返事をしてくれるチャットボット「ChatGPT(読み:チャットジーピーティー)」。利用者数は、2022年11月30日に一般公開してからたった6日間で100万人を突破しました。まるで人間が書いたかのような文章で受け答えをしてくれるうえに、ChatGPTに仕事を奪われてしまうのではないかと不安の声が上がるほど回答の精度が高いことが話題を呼んでいます。
参考:ChatGPT、公開6日目で100万ユーザー突破(2022年12月6日、アイティメディア株式会社)
この記事ではChatGPTの仕組みや利用方法、ChatGPTを使ううえで注意したいことなどについて触れていきます。
目次
- ChatGPTとは
・ChatGPTの使い方
・ChatGPTは日本語でも使える?
・ChatGPTは無料で使える?
・ChatGPTの仕組みとは - ChatGPTにできること
- ChatGPTにおける懸念点
- ChatGPTの問題点における対応策
・教育機関に与える影響への対応策
・マルウエアに与える影響への対応策
・フェイクニュースに与える影響
・職業に与える影響 - 店舗経営者がChatGPTを使用してできること
ChatGPTとは
ChatGPTとはアメリカはサンフランシスコ州発、人工知能の研究を行うOpenAI(オープンエーアイ)社が開発した対話型のAIツールです。現在は退任しているものの、共同創業者にはテスラなどの最高経営責任者を務めるイーロン・マスク氏の名もあり、創業当初から動向が注目されていたようです。
2022年に晴れてChatGPTが一般公開されるとマイクロソフトは早々に1兆円の規模の投資を行うことを発表し、2023年2月には自社の検索サービス「Bing」にOpenAIの技術を搭載したことを発表。Googleでは事業の基盤を揺るがす緊急事態を指す「Code Red(コードレッド)」が発令されたことが報じられ、ChatGPTの競合となる対話型AIツール「Bard」の実装まであとわずかであることを明らかにしました。このように両社が早々と動きに出ていることから、IT業界の大手が抱いている危機感が伺えます。
参考:
・グーグル、「ChatGPT」の脅威に対処するため共同創設者らの協力を要請か(2023年1月23日、CNET Japan)
・Microsoft、ChatGPTのオープンAI追加投資 数十億ドル(2023年1月24日、日本経済新聞)
・Google、会話型AIサービス「Bard」を発表。テストユーザー向けに提供開始(2023年2月10日、INTERNET Watch)
・MicrosoftがAI搭載の「Bing」を発表。“ウェブの副操縦士”のような存在に(2023年2月13日、INTERNET Watch)
ChatGPTの使い方
ChatGPTの利用方法は簡単です。ChatGPTのウェブサイトにアクセスし、アカウントを作成するだけで誰もが使うことができます。チャット画面に質問や要望などを打ち込むと、まるで誰かが画面の向こう側で回答を打ち込んでいるかのように回答が一文字ずつ表示されていきます。
以下は「キャッシュレス決済について教えてください」という要望に対しての回答内容です。
ChatGPTは日本語でも使える?
上記の問いかけからもわかるように、ChatGPTは日本語でも使うことができます。特別な設定をする必要はなく、基本的には日本語で質問すると日本語で返事が来ます。日本語で問いかけても英語で返事をされてしまう場合は、質問のあとに「日本語で返信して」などと指示すると日本語による返答がもらいやすくなります。
ChatGPTは無料で使える?
2023年2月時点では、誰でも無料で使うことができますが、同月には有料プランの提供をはじめることも発表されています。月々20ドルを支払うと、アクセスが集中する時間帯でも制限なしに利用できたり、チャットボットの応答が早くなったり、新たな機能などをいち早く利用できたりするようです。
ChatGPTの仕組みとは
まるで人間かのような自然な文章構成で精度の高い回答を提供できるのはどうしてなのか、と疑問に感じる人もいるかもしれません。
ChatGPTの名前に含まれるGPT(Generative Pre-trained Transformerの略)は開発に使用されたプログラムの名前ですが、その大きな特徴としてあるのが人間のような文章を書けることだそうです。おおまかな仕組みとしてGPTはインターネットにあるさまざまなテキストをインプットしながら文章の構造や内容を分析し、回答を生成するそうです。ChatGPTのほかにも、コピーライティングをしてくれるAIツールのJasperやCopysmithなどがGPTを採用しています。
さらなる人間らしさをくわえる方法として、ChatGPTは実際の人間のフィードバックを反映させた強化学習方法「RLHF(Reinforcement Learning with Human Feedbackの略)」を取り入れています。具体的には質問する側と回答する側の両方を演じるAIトレーナーたちが会話形式で情報をシステムに登録しているそうです。
参考:ChatGPT General FAQ(OpenAI)
またユーザー自身も回答の横に表示されている親指(上向きがいいねサイン、下向きが嫌いサイン)をクリックすることで、ChatGPTをトレーニングすることができます。ChatGPTは回答がわからない場合、正直に「あまり詳しくない」と返答してくることもあるので、その際には回答をこちらから提供して学習させることもできます。
ChatGPTにできること
ChatGPTはちょっとした疑問への回答を提示できるのはもちろんのこと、以下のような頼みごとにも対応してくれます。
(1) ソースコード(プログラミング言語)の生成
(2) ソースコードのバグ検知
(3) 最適なSEOキーワードの提案
(4) 記事や投稿文の作成
(5) 計算
(6) メール文の作成
(7) 本や映画への感想文の作成
(8) 物語の執筆
(9) 作詞や作曲
(10) レシピの作成
など
たとえば定型文を書くならまだしも、ちょっとした想像力も要する(8)の出来具合は気になるところかもしれません。「キャッシュレス決済の物語を村上春樹のような文体で書いてください」という問いかけには、以下のような返答がありました。
言葉遣いにはほんの少しだけ違和感があり、キャッシュレス決済に対して好意的なため少し偏見があるようにも思えますが、物語としては成立しているといえるでしょう。登場人物をはじめストーリーの細かな設定にも大きな違和感はなく、本当にAIが書いたのかと驚いてしまうかもしれません。
ChatGPTにおける懸念点
一つの娯楽として対話を楽しむだけならいいものの、プログラミング言語や論文までもが簡単に書けてしまうことから以下のような懸念点が浮上しています。
(1) 簡単にサイバー攻撃を行えるようにならないか
(2) フェイクニュースが大量生産できてしまわないか
(3) 学生が論文をChatGPTに書かせるのではないか
(4) 仕事を失う人が出てくるのではないか
実際に(3)はすでに問題として挙げられており、ペンシルバニア大学ウォートン・スクールでは経営学修士課程(MBA)の試験を試しにChatGPTに受けさせたところ、結果はB-からB程度の評価で合格とみなされていました。
参考:「ChatGPT」、MBAの最終試験に「合格」–ペンシルバニア大教授が報告(2023年1月25日、Yahoo!ニュース)
ChatGPTの問題点における対応策
ここでは前章で挙げた以下への対応策を見ていきましょう。
教育機関に与える影響への対応策
教育機関では「生徒がAI任せになり論文を書けなくなるのではないか」という極論まで出るほど、ChatGPTの誕生は多かれ少なかれ不安を掻き立てています。対応策としてはすでにニューヨーク市教育局が学校組織の端末などからChatGPTにアクセスができないよう設定をしたり、AIが生成した文章を検知できるツールが少しずつ登場したりしています。誕生してまだ間もないこともあり、ChatGPTのようなAIツールとどのように共存していくべきかは今後も協議されていくことが予想されます。
参考:ニューヨーク市、学校での「ChatGPT」利用を禁止(2023年1月5日、CNET Japan)
マルウエアに与える影響への対応策
ChatGPTには個人情報や機密情報の窃取をはじめ、さまざまな被害を故意におよぼすマルウエアなどを書かないようフィルターがかけられているようですが、促し方によってはマルウエアに必要なコードを書かせることもできてしまうようです。特にChatGPTが得意とするものはセキュリティソフトにも見破られにくい「ポリモーフィック型」のマルウエアだといわれています。現時点では具体的な対応策などは発表されていないようです。
参考:話題のChatGPT、AIによるマルウエア作成の可能性浮上(2023年2月2日、日本経済新聞)
フェイクニュースに与える影響
2022年にはAI(人工知能)で作成された偽動画である「ディープフェイク」が悪用されるニュースが度々報じられていました。ChatGPTが記事を書けるとすれば、フェイクニュースの量産に加担するだけではないかと心配の声も挙がっています。特に最近ではOpenAI社の「Dall-E(ダリ)」をはじめ、描写を文で打ち込めば数秒でそれを表した画像が生成されるAIツールもあり、技術が磨かれていくにつれて事実と嘘の区別はどんどんつきにくくなるのではと思うかもしれません。
対応策としてはAIが生成した文章・動画・画像などを検知する技術の開発が進んでおり、今後こういった技術を頼りにする機会が増えていくかもしれません。
参考:「ディープフェイク」見破る技術、日本でも開発進む…難問でAI特訓・音声に検知信号(2022年8月25日、読売新聞)
職業に与える影響
プログラミング言語や文章が書けてしまうことから、ChatGPTによって、エンジニアやライター、カスタマーサービス、デジタルマーケティングなどの職が消えてしまうのではないかと囁かれています。
ここで念頭に置いておきたいのは、言語の構造はある程度つかめているとしても情報が必ずしも正しいとは限らないことです。実際に現時点ではChatGPTより出力される回答がインターネットに存在する幾多の情報のうち、どれを参照したかまではわからないようになっています。さらにOpenAI社が公開しているFAQによれば、ChatGPTは2021年以降の情報が不足しているそうです。このような弱点を抱えていることから前述のような職業がすぐになくなるとは言い切れないですが、今後目まぐるしく成長していくことが予想されるこの技術の動向は、追いかけていきたいところかもしれません。
店舗経営者がChatGPTを使用してできること
シェフや美容師、ネイリストなど対面でないと提供できないようなサービスはChatGPTに置き換えられる可能性は低いといわれているため、このような職種についている場合、ChatGPTを使うことはあまりないだろうと思うかもしれません。
ただし上記のような職種でも、以下のような場面でChatGPTの力を借りてみることはできるかもしれません。
- SNSに投稿する文章の作成
- 英語でのメール文の作成
- 飲食店メニューの翻訳
- 簡単なリサーチ
たとえば文章を書くのが苦手だと感じている人は、SNSなどに投稿したいことを簡単に要約しChatGPTに投げかけることで、よりわかりやすく書き換えてもらうことができるかもしれません。
海外のお客様にメールを送らなければいけない際には「購入 感謝のメール 20%オフクーポン今月末まで 英語で作って」などと打つだけで丁寧なメール文を作成してくれます。
質問を投げかけるだけで精度の高い回答を返してくれることから、ChatGPTは簡単なリサーチにも適しているといえるでしょう。たとえば店舗にキャッシュレス決済が導入できるSquareの端末はどこで手に入れられるのだろうと思えば、ChatGPTに尋ねることができます。
ただし現時点では下記のように正確とは言い切れない情報が提供されることもあるので、しばらくは様子を見たいところです。
ここでは知りたいことを問いかけると数秒で回答を提示してくれるチャットボット「ChatGPT」について説明してきました。人間らしい文章が書けることと、回答の精度が高いことから悪用されてしまうことが大きな懸念点として挙げられていますが、英語でのメールを書いてもらうなどちょっとしたタスクを楽にしてくれることも考えられます。まだ情報には誤りもあることから、今のところはほかの情報と照らし合わせながらその正確性を確かめるのがよさそうです。
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執筆は2023年2月17日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。
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