通販サイトを運営したいと考えている事業者の中には、どの運営方法が自分のビジネスに最適なのか迷ってしまうという人も少なくないことでしょう。この記事では、通販サイトの代表的な四つの出店方法の概要を説明し、それぞれの出店方法のメリットとデメリットを説明します。
目次
- 通販サイトを作るにあたって知っておきたい出店方法
- モール型のメリット・デメリット
- ASP型のメリット・デメリット
- ソフトウエアインストール型のメリット・デメリット
- スクラッチ型のメリット・デメリット
- 最適な方法を見つけよう
通販サイトを作るにあたって知っておきたい出店方法
インターネットが普及し、それに続く形でスマートフォンの利用が広がったことで、インターネットで買い物を楽しむ消費者の数が増え、年々通販サイトの構築や運営が手軽になりつつあります。通販サイトの出店方法は以下の四種類に分類できます。
・モール型
・ASP型
・ソフトウエアインストール型
・スクラッチ型
日々インターネット上のショッピングモールで便利に買い物を楽しんでいるとい人は少なくないでしょう。通販サイトを作るにあたって、このようなインターネット上のショッピングモールに出店するのも一つの手で、モール型ECとも呼ばれています。
モール型と合わせて人気なのが、ASP型(Application Service Provider、アプリケーション・サービス・プロバイダ)です。ASPと英語表記すると難しく聞こえますが、ブラウザからネットショップ作成サービスを使用して、通販サイトを作り、運営する方法です。
通販サイトの多くはモール型かASP型ですが、自由にカスタマイズしやすいソフトウエアインストール型やスクラッチ型の通販サイトを作りたいという人もいます。ソフトウエアインストール型やスクラッチ型の通販サイトを作るには、少なからずITに関する知識と興味が必要です。ソフトウエアインストール型の通販サイトの場合、サーバーにソフトウエアをインストールし、通販サイトを機能させます。スクラッチ型の場合は、通販サイトのシステムの部分を自社もしくは専門業者に依頼して開発して作ります。
通販サイトの四つの出店方法の概要がわかったところで、続いてそれぞれの出店方法のメリットとデメリットを見てみましょう。
モール型のメリット・デメリット
メリット
モール型の通販サイトの最大のメリットはやはり集客力の高さにあるでしょう。すでに有名なインターネットショッピングモールに出店するのであれば、他のショップや商品を目当てにやってきたお客様の流入が期待できます。また、そのモールですでに買い物をした経験のあるお客様からはモールの中の一店舗として認識され、開店当初から一定の信頼を置いてもらえる可能性が高いです。さらに、モールを訪れるお客様は買い物をしようとしてショッピングモールを訪れていることから、購買意欲が高いことが期待できます。
通販サイトを作って運営するにあたって、専門知識がいらないのもモール型のメリットといえるでしょう。
デメリット
インターネットショッピングモールには、集客力、信頼性、お客様の購買意欲の高さといったメリットがあるものの、デメリットもあります。たとえば、出店費用や販売手数料はそのほかの出店方式と比べて安くはありません。これから通販サイトを作ろうという人の中には、初期費用だけで数万円、数十万円とお金がかかることに驚く人も少なくないでしょう。
一定以上の初期費用がかかりますが、必ずしも自由に見た目をデザインできたり、通販サイトをカスタマイズしやすかったりするわけではありません。モール全体としてのデザインや機能にしばられてしまいがちなのは覚えておきたいところです。
また、インターネットショッピングモールの集客力の高さは、そこに出店しているショップ数や取扱商品が豊富かにもよります。これは競合他社や競合製品が多いことを意味します。目当ての商品について、価格や送料、サービスの良さなどを複数のショップから検討するお客様も少なくありません。
ASP型のメリット・デメリット
メリット
ASP型のメリットは、手軽にかつ安く通販サイトを作り、運営できる点にあります。多くのASP型の通販サイトを作れるネットショップ作成サービスでは、出店費用がかからず、販売額に応じて売り上げの数パーセントが手数料としてかかるプランを用意しています。つまり、通販サイトのシステムに多額の初期費用をかけずに通販サイトを始めることができます。もし商品が売れなかったとしても、通販サイトのシステムの運用にはお金がかからないため、心理的な負担が少なくてすみます。
費用面以外では、モール型と同様に、ASP型の通販サイトでも専門知識は必要ありません。普段使っているウェブサービスと同様に、ウェブブラウザからサービスのウェブサイトにアクセスし、サービスの案内に従って通販サイトを作り、早ければその日から運営を始められます。デザイン面はモール型よりも自由で、サービスが用意しているさまざまなテンプレートを使って、自由度高く、流行のデザインを取り入れながら通販サイトを作れます。
実店舗のPOSシステムと連携させられるサービスもあり、専門知識不要で、手軽かつ便利に通販サイトを運営したい場合にはASP型から検討するのがよいでしょう。
デメリット
メリットの多いASP型ですが、モール型と比べて集客力が弱く、お客様との間で信頼を確立する必要があるといった難しさもあります。集客力については、ソーシャルメディアを活用して集客を工夫する、SEOに取り組むといった対策方法が知られています。時間はかかりますが、しっかりと商品情報を提供したり、カスタマーサービスに力をいれたりすることで、徐々にお客様との信頼関係を築いていきましょう。
ソフトウエアインストール型のメリット・デメリット
メリット
手軽にネットショップを作成できるASP型が主流になりつつありますが、ソフトウエアインストール型は、より自由に通販サイトをカスタマイズできることからこの方法を選ぶ通販サイトもあります。デザインについてはASP型でもかなりの自由度でデザインでき、機能も充実していますが、独自に作りたい機能があり、さらに通販サイトの構築や運用に関する専門知識がある場合は、ソフトウエアインストール型も選択肢の一つになるでしょう。
費用面では、サーバー費用や決済手数料などの負担はありますが、出店費用や販売手数料がかかりません。
デメリット
ソフトウエアインストール型はASP型同様、集客とお客様との信頼構築に力を入れる必要があります。また、ソフトウエアインストール型ではソフトウエアをインストールするサーバーを用意する必要があり、レンタルサーバーを利用する場合、サーバーの性能や共用・専用といった利用形態によって月額または年額の費用が決まります。サーバーにインストールするソフトウエアは、無料のものを利用することも考えられますが、有料のものを利用する場合は導入費用がかかります。さらに定期的にソフトウエアを更新する必要があり、費用がかかることがあることも覚えておきましょう。
サーバーやソフトウエアには費用がかかるだけでなく、保守運用には手間もかかります。通販サイトではお客様の個人情報やお金を預かるため、セキュリティー対策は欠かせません。サーバーやソフトウエアのトラブルはいつでも発生する可能性があります。通販サイトがダウンしただけであれば、販売機会損失だけで済みますが、セキュリティーに関する深刻な問題が発生してしまうと最悪の場合、お客様からの信頼を失う可能性もあります。
ソフトウエアインストール型はかつて主流でしたが、専門知識に自信がある、保守運用に人材やコストを割けるといった事業でない場合は、少し機能に妥協してもASP型を検討したほうが良いかもしれません。
スクラッチ型のメリット・デメリット
メリット
紹介する出店方法の中で最も専門知識を必要とする方法ですが、デザイン面と機能面の両面で最も自由に理想の通販サイトを作れる方法でもあります。また、ソフトウエアインストール型同様、出店費用や販売手数料がかかりません。
デメリット
スクラッチ型でゼロから通販サイトを作る自信のある人の中にはサーバーを自分で運用する人もいるかもしれませんが、維持・保守のコストと負担を含め、通販サイトの安定稼働を求めるのであればサーバーを借りる方がよいでしょう。ソフトウエアインストール型のように購入したソフトウエアを使う場合は、ある程度販売元でテストされ、さまざまなユーザーが利用した知見がたまっていますが、自分で作った通販サイトには思わぬところにバグが潜んでいるかもしれません。保守運用についてはソフトウエアインストール型以上に手間がかかる可能性があります。セキュリティー対策についても保守運用と同じく注意が必要です。スクラッチ型では、通販サイトを構築し、バグがないか確認した上で、通販サイトがようやく本稼働します。このため、通販サイトのオープンまでには他の方法以上に長い時間がかかり、さらにオープンした後にもバグが見つかることを考えると、安定稼働までは長い道のりになるでしょう。スクラッチ型は、専門家に外注するという選択肢もありますが、多くの困難を乗り越えて、専門知識を強みとして通販サイトを作ってみたいという人にはおすすめです。
最適な方法を見つけよう
モール型、ASP型、ソフトウエアインストール型、スクラッチ型について、メリットとデメリットを見てきました。ここでは、どのようなケースでどの出店方法を選べばよいのか説明します。
まずは手軽に通販サイトをオープンしたい
手軽さでいえば、通販サイトのシステムをサービス側で管理してくれるモール型とASP型に軍配が上がります。ただ、モール型では初期費用と運営費用がかかります。まずはASP型で通販サイトをオープンしてみて、費用をかけてでもインターネットショッピングモールの集客力を借りたいといった需要が出てきたら、モール型に移行することを検討するとよいでしょう。
お金をかけずに通販サイトを運営したい
販売があったときに売り上げの一部が手数料として差し引かれるASP型が一番費用面でのリスクをかかえずに通販サイトを運営できると説明しましたが、売り上げが増えてくると、ソフトウエアインストール型の方が安く済むこともあります。サーバー費用や保守運用の手間も考慮しながらASP型とソフトウエアインストール型を検討するとよいでしょう。
どちらか決められないという場合は、まずはASP型で始めてみることをおすすめします。ASP型の通販サイトを運営する中で、ソフトウエアインストール型の方が理にかなっていると判断したら、移行を検討するとよいでしょう。
デザインや機能にとことんこだわりたい
インターネットショッピングモールやネットショプ作成サービス、通販サイトのソフトウエアに希望するデザインや機能がないことがあるかもしれません。そのような時はスクラッチ型が選択肢になるでしょう。ただし、スクラッチ型の通販サイトを作る前に本当にその機能は必要なのか、多少妥協してもASP型やそのほかのタイプを選ぶ方が理にかなっていないかじっくり検討する必要があります。
どんどんお客様を呼び込んで売り上げをあげたい
競合他社や競合商品との競争に価格面やサービス面で勝ち抜ける自信があり、売り上げをあげることを最優先とするのであれば、モール型が選択肢になるでしょう。すでに多くのお客様との関係がある、ソーシャルメディアでのコミュニケーションに自信があるという人は、合わせてASP型を検討するのも一つの手です。
本記事では代表的な通販サイトの四つの出店方法の概要から始め、メリットとデメリット、どのような場合にどのタイプの出典方法を検討するとよいか説明しました。よほど強い希望がなければ、まずはASP型で手軽かつお金をかけずにすばやく通販サイトを始めてみるとよいでしょう。実体験として通販サイトを運営するとはどういうことなのか掴めるはずです。ぜひ本記事をきっかけに、通販サイトの作成と運営に取り組んでみてください。
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執筆は2021年7月5日時点の情報を参照しています。
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