飲酒運転による交通事故は後を絶ちません。2007年には飲酒運転の厳罰化、2009年には行政処分の強化と、飲酒運転した人と飲酒運転をさせた人・酒類を提供した側には厳しい罰則が設けられています。
道路交通法の改正に伴い、飲酒運転は運転者だけの問題ではなく、その周囲にいる人や運転者に酒類を提供した飲食店にも責任が問われることになりました。
今回は、飲酒運転が発覚した場合の飲食店側の責任や罰則、飲酒運転防止のための対策について紹介します。
目次
飲酒運転の現状
警察庁が公表した「飲酒運転による交通事故の発生状況」によると、2017年に発生した飲酒運転による交通事故は3,582件でした。
道路交通法の改正や飲酒運転根絶を目指した社会的な関心の高まりにより、一時減少傾向にありましたが、2008年以降は減少傾向がゆるやかになっています。
参考:平成29年中の道路交通事故の状況(平成30年交通安全白書)
注目すべき、飲酒運転の死亡事故率が飲酒なしの約8.3倍であるというデータです。それだけ、飲酒運転は運転者自身や周囲の人の命を危険な状況に巻き込む可能性が高いということが分かります。
参考:みんなで守る「飲酒運転を絶対にしない、させない」(警察庁)
飲酒が及ぼす運転への影響
飲酒運転をしてしまうとき、「ビール一杯くらいなら大丈夫だろう」という軽い考えを持つ人も少なくありません。
しかし、500mlのビールを飲み、摂取したアルコールが体内で完全に分解されるまで約4時間もの時間がかかるといわれています。もちろん、アルコール分解には個人差があります。
実際に、飲酒した際に運転には以下の影響が及ぶと考えられます。
- 動体視力が落ちる
- 視野が狭くなる
- 判断力が低下する
- ハンドルやブレーキ操作が遅れる
- 速度超過
- 蛇行運転
参考:2.飲酒が運転に与える影響とは?(政府広報オンライン)
飲酒運転が発覚した場合の飲食店側の責任や罰則は
お客様の飲酒運転が発覚した場合、お客様に酒類を提供した飲食店はどのような責任が問われ、罰則を受けることになるのでしょうか。
飲酒運転が発覚すると、運転者本人への事情聴取が行われ、酒類を摂取した場所や時間、一緒に摂取した人などの事実が明らかにされます。
道路交通法の第65条第3項に定められている「何人も、第一項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない」が適用され、飲食店側は運転者に酒類を提供した責任を問われることになります。
飲食店側が受ける罰則は以下の通りです。
- 運転者が酒酔い運転をした場合
3年以下の懲役または50万円以下の罰金 - 運転者が酒気帯び運転をした場合
2年以下の懲役または30万円以下の罰金
飲食店側が受けるダメージは法的な罰則だけではありません。社会全体から飲酒運転に関わった飲食店として見られてしまいます。一度、メディアに報道されれば、飲食店へのマイナスイメージがつき、客足が遠のいてしまう恐れがあります。
一度下がった評判を取り戻すには長い時間がかかります、飲食店には大きな大打撃といっても過言ではありません。
飲酒運転防止のために飲食店がするべき対策
運転手にお酒を提供しないために、飲食店でできる対策を紹介します。
ハンドルキーパー運動の推進
全日本交通安全協会では、「ハンドルキーパー運動」の推進をしています。ハンドルキーパーとは、飲食店にてグループで飲酒する場合、お酒を飲まずに仲間を安全に自宅まで送り届ける人を指します。
グループの中で1人飲酒しない人を決めることで、飲酒運転を防止しようというのがハンドルキーパー運動の目的です。飲食店ではハンドルキーパー運動を推奨していることをお客様に示し、声掛けなどを行うことで飲酒防止を図ることが可能です。
具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。
- ハンドルキーパーに対し、ソフトドリンクの飲み放題や割引サービスを行う
- ハンドルキーパーの証としてリボンやバッジを準備し、対象者に配布する
- 店内や座席など目立つ場所に飲酒運転撲滅やハンドルキーパーなどのポスターやステッカーを貼っておく
このように、「当店では、ハンドルキーパー運動を推奨している」とお客様に伝わる工夫をする必要があります。
来店時は運転の有無や帰宅方法を確認
来店時にできる対策として、お一人様、グループのお客様別に運転の有無や帰宅方法を確認することも大切です。声掛けをすることで、お客様自身にも「飲酒運転はダメなんだ」と意識を高めてもらうことができます。
また、グループで来店したお客様の場合、ハンドルキーパーが誰かを明確にし、ハンドルキーパーにはお酒をすすめないように注意を促すことも有効です。
酒類とソフトドリンクのグラスを分けて使用
従業員も日常業務をこなしながら、お客様への声掛けやハンドルキーパーが飲酒していないかどうかを監視し続けるのは困難なことです。
そこで、おすすめなのが酒類とソフトドリンクのグラスを分けて使用することです。グラスを分けて使用することで、飲酒したかどうかを確認する目安になります。徹底するためには、店員がグラスの使い分けを間違わないようにしておくことが大切です。
タクシーや運転代行の手配や終電時間の掲示
飲酒したお客様が退店する際にできる対策として、タクシーや運転代行の手配を行うことや、電車やバスの終電時間を提示することも大切です。
もしもお客様が説得に応じない場合
飲食店側が行わなければならない飲酒運転防止対策は、一見飲食店側への大きな負担となりかねません。しかし、視点を変えて考えれば、飲酒したお客様の安全を守るサポートができるだけでなく、自店や従業員を守ることができるのです。
とはいえ、お客様の中には従業員の説得にも応じず、飲酒運転をしてしまう人もいるかもしれません。この場合、110番や最寄りの警察署に通報しましょう。飲酒運転したお客様に酒類を提供した以上、どんな理由があれ、飲酒運転を見過ごせば飲食店側も罰せられます。自店や従業員を守るためにも、必ず通報するようにしましょう。
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執筆は2019年4月9日時点の情報を参照しています。2023年6月27日に記事の一部を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by,Unsplash