接客業なら知っておきたい、カスハラの現状と対策

「カスハラ(カスタマーハラスメント)」という言葉を最近耳にしたという人も多いかもしれません。お客様によって行われる悪質な迷惑行為やクレームのことで、接客業における大きな問題となっています。産業別労働組合であるUAゼンセンが接客対応をする従業員を対象に行ったアンケートによると、7割の人がお客様からの迷惑行為を経験していることがわかりました。

参考:悪質クレーム対策(迷惑行為) アンケート調査分析結果 ~サービスする側、受ける側が共に尊重される社会をめざして〜(全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟)

悪質なカスハラが原因で精神疾患になったり、退職したりする従業員もいるなど、カスハラは人材不足の要因にもなりかねません。

今回は、カスハラの現状と対応策について説明します。

厚生労働省も対策に乗り出す社会問題

「カスハラ」とは、「カスタマーハラスメント」の略でお客様からの過度なクレームや悪質な迷惑行為のことを指します。

職場におけるハラスメントといえば、「パワハラ(パワーハラスメント)」や「セクハラ(セクシャルハラスメント)」がよく知られており、社内で防止策をすでに準備しているという企業も多いのではないでしょうか。パワハラやセクハラと同じように、お客様によるカスハラも従業員にとっては大きなストレスになります。

たとえば、厚生労働省の検討会(職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会)においてもカスハラの現状が問題視され、カスハラに関する検討会の設置などが望ましいという意見も出ています。労働政策審議会でも、「取引先等の労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為については、指針等で相談対応等の望ましい取組を明確にすることが適当である。」とされています。

参考:
2018年1月26日 第7回「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」議事録(厚生労働省)
女性の職業生活における活躍の推進 及び職場のハラスメント防止対策等の在り方について (報告書)(労働政策審議会)

カスハラとクレームの違い

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カスハラはお客様による「悪質な」クレームと表現されることがあります。しかし、カスハラとクレームは全く違うものと考えられます。クレームは、商品やサービスに不満や意見をもつお客様が、問題点を指摘し、苦情をいう行為です。クレーム対応を真摯に行うことで、企業の高感度アップにつながりますし、商品やサービスの質をさらに高めることもできます。クレームは、企業の成長に不可欠なものだといえます。

しかし、そのクレームも度が過ぎると「カスハラ」として問題視されます。理不尽な言いがかりや暴言、暴力行為などはクレームの範囲を超え、カスハラとして対応すべきでしょう。場合によっては、警察や弁護士への相談を検討する必要もあります。

お客様が原因である以上、どこまでが相当なクレームで、どこからがカスハラなのかという判断が難しく、対応が難しいという課題があります。

カスハラの具体的事例

前述のUAゼンセンが行ったアンケートでは、働く立場から見えるカスハラの実態が詳らかにされています。

2017年に実施されたアンケートでは、スーパーマーケットや百貨店、ドラックストアなどの接客業に従事する人のうち、業務中に来店客からの迷惑行為に遭遇したことがある人は全体の7割にのぼっています。業種別に見ると、百貨店と家電関連の業種はカスハラ遭遇率が高いようです。

具体的な回答事例をいくつか見てみましょう。
・「人をバカにして笑った」と大声で罵倒され、土下座させられた
・レジ会計時に、舌打ちをしたと言いがかりをつけられた。他のお客様の前で怒鳴られた
・お客様から「デブ、おばさん、名指し(呼び捨て)で~やれ」とか繰り返し大声で言われた
・約 2 時間一方的な要求を訴えられ、拒否したところ、馬鹿、低能、社会人失格など罵倒雑言を浴びせられた
・3年前に購入した商品が故障した時、交換を求められた
・なぜ出来ないのかとお怒り、お客様相談室で 4~5 時間拘束された
・レジ袋、割りばしをおつけするのか聞いたら、「バカか、何で聞くのか!」と怒鳴られ、カゴごと投げつけられた
・袋に分けて入れようとしたら、2 袋以上にするなと怒鳴られた

このような悪質なクレームにより、精神疾患になったと答えた人もいます。働く従業員を守るのも経営者や管理職の役目です。お客様への誠実な対応を考えると同時に、クレームの域を超えた悪質なクレームにはどう対応するか、ストレスを感じた従業員をどうケアするかという点も考える必要があるのではないでしょうか。

なぜカスハラが起きるのか

カスハラが起きる背景には、過剰なサービスが過剰な期待を生む日本独自の企業風土があるという専門家もいます。また、社会全体の疲弊からくる不寛容という社会に広がる格差意識が背景にあると指摘する専門家もいます。

参考:暴言に土下座! 深刻化するカスタマーハラスメント(NHK クローズアップ現代)

カスハラが深刻化している現状を踏まえると、従来の「お客様は神様」とする企業と顧客の関係は見直すべき時期に入っているのかもしれません。

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カスハラから従業員を守るには

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カスハラは、単なるお客様からのクレームだとして放置していい問題ではありません。精神的な苦痛で休職や退職になった場合、企業は大事な従業員を失うことになってしまいます。

カスハラに対しては実態調査や法整備の必要性が話題になっているところで、具体的にカスハラを取り締まる方法があるわけではありません。またパワハラやセクハラなどと違って、ハラスメントの主体がお客様や取引先であるので、ハラスメント防止教育をするという対応を取ることも難しいです。

そのため、カスハラ対策として取り入れることができるのは、「カスハラに過剰に対応しないこと」「何かあれば、すぐ上司に報告すること」などの職場の環境づくりです。UAゼンセンのアンケート結果でも、現場からの意見として「迷惑行為への対応を円滑にする企業の組織体制の整備」を求める人が4割にのぼっています。クレーム対応をリスクマネジメントととらえ、組織の問題として対応策を整備しておくことが必要でしょう。

モンスタークレーマーと呼ばれるお客様は新人や女性、若者など、比較的クレームがいいやすいとされる相手をターゲットに悪質なクレームや言いがかりを付ける傾向にあります。ターゲットにされた従業員が一人で対応を続けると、状況が悪化することも多いようです。アンケートの回答事例を見ても分かる通り、カスハラのほとんどは理不尽な言いがかりで、現実的な解決策が存在しないことがほとんどです。管理者が出てきて謝罪すると、それで場が収まることもあります。いざモンスタークレーマーが登場したらどうするか、対応フローを考えておくことも大切です。また、すぐに報告ができるように、日頃からの人間関係の構築も心がけてください。

現場の従業員の立場からすると、正当なクレームとカスハラの区別をつけるのは難しいものです。従業員の間で事例共有を行い、判断基準を示しておきましょう。UAゼンセンによるガイドラインも参考になります。

参考:悪質クレームの定義と その対応に関するガイドライン (UAゼンセン)

カスハラに悩まされるのは、現場でお客様とやり取りする従業員たちです。従業員が大きなストレスを抱え込むことで、経営にも影響を及ぼしかねません。従業員をカスハラから守るために、できることから始めましょう。

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執筆は2019年4月1日時点の情報を参照しています。
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