欠勤控除とは?ノーワーク・ノーペイの原則と計算方法を解説

※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。

欠勤控除とは、従業員が本来勤務すべき日に仕事を休んだ際、働かなかった期間分の給与を減額するしくみです。勤怠控除ともいい、「ノーワーク・ノーペイの原則」にもとづいて適用されます。本記事では欠勤控除の対象となるケースや控除額の計算方法、給与明細への記載方法にくわえて、適用時の注意点をわかりやすく解説します。

目次


欠勤控除(勤怠控除)とは?

欠勤とは、従業員が本来勤務すべき日に働かないことを指し、控除は「差し引く」という意味です。つまり欠勤控除は、欠勤して働かなかった期間の給与を、もともと支払う予定の給与から差し引くしくみです。

なお、欠勤控除は仕事を丸1日休んだ日とは限らず、遅刻や早退など一部の勤務がなかったときにも適用されます。

欠勤控除が適用されるケースは?

欠勤控除が適用される具体例をみてみましょう。

  • 家庭の事情など私的な理由による欠勤
  • 子どもや親の看病などによる欠勤
  • 無断欠勤
  • 体調不良による早退
  • 通院による遅刻

このように、自己都合で仕事を全日または一部欠勤したときが欠勤控除の適用対象です。家庭の事情や体調不良などやむを得ない事情での欠勤であっても、欠勤した日にち・時間分の給与を差し引いてもよいこととされています。

欠勤控除が適用されないケースは?

以下のようなケースでは、欠勤控除が適用されません。

  • 年次有給休暇や育児・介護休業など、各種休暇・休業を取得したとき
  • 会社都合による休業

有給休暇は、申請により所定の休日以外に賃金の支払いを受けて仕事を休むことが認められた日であり、欠勤とは明確に異なります。

ノーワーク・ノーペイの原則と労働法上の注意点

ノーワーク・ノーペイの原則とは、「従業員が仕事を休み、勤務すべき日に働かなかったとき、使用者はその分の給与を支払う義務がなくなる」という考え方です。この原則は労働基準法第24条と、民法第624条を根拠としています。

労働基準法第24条
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。

民法第624条
労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。

ノーワーク・ノーペイの原則に関する直接的な文言が条項に明記されているわけではありませんが、一般的に、欠勤や遅刻・早退があった際は欠勤控除しても問題ないと解釈されています。

ただし、欠勤控除を適用する際には、大きく四つの注意点があります。

一つ目は、有給休暇をはじめとする休暇・休業を取得した休みと、会社都合の休業は欠勤控除できない点です。これらの休みは適用範囲外として取り扱う必要があります。

次に、欠勤した期間分に対応する給与を超過するような控除もできません。たとえば「1分でも遅刻したら15分遅れとして扱い、15分相当の給与を控除する」といった行為が該当します。欠勤の時間に応じて、適切に控除額を計算しましょう。

三つ目に、欠勤控除後の給与が最低賃金を下回らないように注意する必要があります。欠勤日数が極端に多い月には、欠勤控除を適用すると給与の支給額が最低賃金を割ってしまうかもしれません。この場合の対応としては、「1日あたりの給与×出勤日数」で計算した額を支給するケースが多くみられます。

最後に、欠勤控除のルールを就業規則に明文化しておくことです。欠勤控除の詳細なルールは法律で定められているわけではありません。したがって、自社の就業規則への詳細な規定の記載が求められます。ルールの明示は従業員とのトラブルを防止する効果もあるため、整備を進めておきましょう。

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欠勤控除の計算方法【給与体系別に解説】

欠勤控除の金額は、従業員の給与体系によって計算方法が異なります。ここでは、月給制、日給制、時給制のそれぞれについて、控除額の計算方法を理解していきましょう。あわせて、給与明細における記載ルールについても紹介します。

月給制の場合

月給制は「完全月給制」と「日給月給制」に大別されます。

完全月給制は、給与が月額で定められている給与形態です。特別な取り決めがなければ欠勤、遅刻・早退があっても控除を適用しないのが一般的です。欠勤控除を適用する際は、月々の給与ではなく賞与から差し引くケースがみられます。

日給月給制は、給与が月額で決まっている点は完全月給制と同様です。しかし、1カ月の給与を1日単位で計算し、欠勤や遅刻・早退については該当月の給与から控除して支給できる点が異なります。

多くの企業が日給月給制を採用しており、「月給制」といえば一般的には日給月給制を指します。日給月給制における欠勤控除の計算方法は以下のとおりです。

1日あたりの給与の額=月給÷所定労働日数
欠勤控除の金額=1日あたりの給与の額×欠勤日数

例として、月給が20万円、所定労働日数が20日で、欠勤が1日あった月については下式のように計算します。
1日あたりの給与の額=20万円÷20日=1万円
欠勤控除の金額=1万円×1日=1万円
実際の支給額=20万円-1万円=19万円

日給制の場合

日給制は、給与が1日あたりの金額で定められており、出勤した日数に応じて月々の支給額が決まる給与体系です。「日給×1カ月の勤務日数」でその月の給与が算出され、月ごとの基本給はありません。

日給制は日給月給制と混同されがちですが、たとえば勤務日数が20日の月と22日の月では、日給制は支給額に2日分の差が出ます。一方の日給月給制は月給が定められており、勤務日数による支給額の差が出ません。

このように、日給制は働いた日数分だけ給与が支払われるしくみのため、欠勤については「給与が発生しなかった日」と考え、その日の給与をゼロにするだけです。欠勤分を「差し引く」という欠勤控除の考えは当てはまりません。遅刻や早退の場合は、日給を労働時間で按分した額を支給するのが通常です。

時給制の場合

時給制は、従業員の給与が時間単位で決まっており、実際に働いた時間に応じて支給される給与体系です。給与は「時給×1カ月の勤務時間」で算出されます。

欠勤控除の考え方は日給制と同様で、欠勤した時間分はそもそも給与計算に含まれません。遅刻や早退があった場合も実働時間分だけを支給すればよく、計算はシンプルです。時給制は働いた「時間」に対して賃金が発生する性質上、勤怠記録の正確性がとくに重要になります。タイムカードや勤怠管理システムを用いて、勤務時間の正確な把握が欠かせません。

給与明細と欠勤控除の記載ルール

欠勤控除を適用したときには、給与明細にもその内容を反映させましょう。給与明細は「勤怠」「支給」「控除」と大きく3項目に分かれており、欠勤控除に関する情報はこのうち「勤怠」と「支給」に記載します。

まず、実際に欠勤した日数、遅刻・早退の回数を、「勤怠」のなかの「欠勤日数」欄、「遅早時間」欄にそれぞれ記載します。次に、欠勤控除の金額を「支給」内の該当欄に入力しましょう。全日欠勤による控除は「欠勤控除」欄を、遅刻・早退による控除は「遅早控除」欄を使います。

欠勤控除のよくある質問(FAQ)

ここからは欠勤控除に関してよく聞かれる質問とその回答をQ&A形式で紹介します。間違えやすいポイントをいま一度整理しておきましょう。

Q. 欠勤と有給休暇の違いは?

欠勤と有給休暇の最大の違いは「給与が支払われるかどうか」です。

欠勤は、従業員が本来勤務すべき日に自己都合で働かなかったことを指し、原則としてその時間分の給与は支払われません。一方、有給休暇は、年間で定めた休暇の日で、従業員が事前申請したうえで取得できる休みであり、給与の支払いが発生します。給与が支払われる休暇・休業として、ほかには産前産後休業、介護休業、慶弔休暇などが挙げられます。

Q. 半日欠勤でも控除されますか?

半日欠勤も控除の対象です。半日欠勤は、「半日の遅刻」または「半日の早退」と考えられるためです。日給月給制で遅刻・早退があったときには、具体的には以下の計算方法で控除額を算出します。

遅刻・早退の欠勤控除額=月給÷月平均所定労働時間×欠勤時間数

計算結果に小数点以下の端数が生じた場合は、切り捨てて処理しましょう。

Q. 欠勤控除を行わないと違法ですか?

欠勤控除を行わないからといって、必ずしも違法になるわけではありません。たとえば完全月給制など、欠勤や遅刻があっても控除しない給与体系もあります。

注意すべきなのは、体調不良などによる欠勤で有給休暇を消化するケースです。有給休暇への振り替えはよくみられますが、従業員からの申し出がない限り、欠勤を勝手に有給休暇に振り替えて欠勤控除を省略してはいけません。有給休暇は原則として従業員が指定した日に取得することとなっているためです。必ず従業員本人の希望を確認しましょう。

Q. リモート勤務や時短勤務でも欠勤控除の対象になりますか?

リモート勤務や時短勤務も、ノーワーク・ノーペイの原則に基づいた勤務時間の計算の対象となります。

リモートワークでは、家事や育児といった私用での一時離席が発生することも考えられます。こうしたリモートワークならではの状況への対応が必要です。どのように時間を管理するかの検討を行い、就労規則を変更するなど、ルールを明確にしておきましょう。
時短勤務については、それまでの通常勤務から変更された勤務時間を基準として欠勤控除を適用します。具体的には、もともと9時~17時の勤務時間を9時~16時の時短勤務に変更している従業員が15時に早退した場合には、1時間分の欠勤控除を適用します。

欠勤控除を正確に適用するには

欠勤控除を計算するには、勤怠情報の正確な把握が不可欠です。

労働時間は賃金と密接に結びつき、企業は従業員に対して実働時間分に応じた給与を支払います。このため、控除額の計算は原則として1分単位で行う必要があります。たとえば「30分単位で給料をカットする」といった取扱いは本来許されません。会社と労働者の関係に悪影響が生じないよう、取扱いには注意が必要です。

欠勤控除を正確に適用するときに役立つのが勤怠管理システムです。ここでは、勤怠管理システムの概要と、おすすめのツールを紹介します。

勤怠管理システムを取り入れる

勤怠管理システムとは、従業員の出退勤や労働時間をデジタルで記録・集計できるしくみです。今では多くの製品がインターネット経由でのデータ入力・管理に対応しており、パソコンやスマートフォンからの打刻、有給休暇の申請、シフト作成などの機能を備えています。勤怠管理システムを使うと、紙やExcelによる手作業よりも入力ミスや集計ミスが起きにくくなり、業務の負担軽減にもつながります。

とくにリモートワークを導入している職場やシフト制の職場などでは、勤怠管理システムの利用が効果的です。

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まとめ

欠勤控除は、ノーワーク・ノーペイの原則にもとづき、欠勤や遅刻・早退によって働かなかった時間分の給与を差し引くしくみです。有給休暇をはじめ適用できないケースもあり、欠勤時間を適正に算出する必要があるなど、対応を誤るとトラブルを招くおそれもあります。欠勤控除の取扱いについては就業規則に明示したうえで、勤怠管理システムなどを活用し勤務実績を正確に記録・管理して、適切に対処しましょう。


Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。

執筆は2020年1月23日時点の情報を参照しています。2025年5月30日に記事の一部を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash