慶弔休暇の設定ポイント。従業員が働きやすい環境をつくるには

冠婚葬祭にまつわる欠勤は、従業員がいれば自然と発生するものです。慶弔(けいちょう)休暇は従業員の福利厚生の一環として会社が独自に設ける休暇のため、従業員の状況に応じて調整が必要な場合もあります。

一方で基準が明確でないと、従業員に誤解を与えて不満要因となったり、トラブルが生じる恐れもあります。

規模の小さな事業者こそ、慶弔休暇に関するルールをしっかりと決めておきたいところです。休暇の定義や範囲を明確にすることで互いに安心して業務に打ち込める環境をつくり、モチベーションを上げていくことができます。

慶弔休暇とは

休暇は、大きく分けて法定休暇と法定外休暇とがあり、慶弔休暇は法定外休暇の一種です。

法定休暇は法令に基づき定める休暇で、労働基準法に基づく年次有給休暇、生理休暇、産前産後休暇、育児・介護休業法に基づく育児休暇、看護休暇、介護休暇などがあります。

法定外休暇は会社が任意の目的で取得形態を設定する休暇で、夏季休暇、年末年始休暇、特別休暇などがあります。慶弔休暇は特別休暇の一つで、結婚や出産、葬儀などの際に取得できる休暇です。

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慶弔休暇で定めておく事項

慶弔休暇には法的な義務はありませんが、2018年7月に独立行政法人労働政策研究・研修気候が発表した「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」によると、9割以上の企業が慶弔休暇を設定しています。慶弔休暇は社会的に浸透し、導入が望まれている休暇といえるでしょう。

慶弔休暇の事項については、企業が任意に定めるため明確に決まったものはありませんが、次のような項目について会社としての基準を決めておくことをおすすめします。

取得要件

慶弔休暇に当てはまる場合を明確にしましょう。慶事としては従業員本人や子の結婚、配偶者の出産などがあります。弔事は一般的に近親者が亡くなった場合が挙げられます。出産については、産前産後休暇や育児休暇といった関連する法定休暇もありますので、会社が任意で行う特別休暇をどこまでにするかを決めておきましょう。

このとき、慶事・弔事ともに、子や親(1親等)、きょうだいや祖父母、孫(2親等)など、休暇取得可能となる近親者の範囲を明確にしておきます。

その他、慶弔休暇を取得できる従業員の範囲も定めます。パートやアルバイト従業員はもともとシフト調整ができるため、慶事や弔事で休みたい場合シフトをずらせば対応できるともいえます。従業員側で混乱しないよう、取得できる従業員の範囲を明示しておきましょう。

取得日数、有効期間

慶弔休暇として取得できる日数についても、会社が任意で設定するため決まりはありません。一般的な傾向として本人の結婚や配偶者の死亡など関係性が近いほど長くなります。また、慶弔ごとが遠い場合、往復の移動日数を別途考慮する旨の設定をすることもあります。

慶弔休暇を申請できる有効期間の設定について、結婚式の前後に仕事が詰まっていて休暇の申請が難しい、訃報を受けたらすぐに駆けつけたい、休暇を分散させて使いたいなど、従業員によってさまざまな事情があるため、何日以内に申請しなければならないといった期限は設けにくいかもしれません。

できれば厳密な規定にせず臨機応変にしていける余地を残したいところですが、時期を明示することで従業員の不平等感を軽減することができるのも事実です。

誤解やトラブルを招かないためにも、弔事では「通夜の日から◯日以内」、慶事では「入籍日または挙式日から◯カ月以内」などと規定した上で、やむを得ない事情と会社が認めた場合に例外を承認するという補足を加えておくとよいでしょう。

賃金の有無

慶弔休暇を有給にするのか無給なのか、有給の場合全額支給するのか、何割かにとどめるのかなど、賃金の支給についても会社側で決めることができます。

ただ、休暇というと年次有給休暇をイメージしがちで、有給と思っている従業員もいるかもしれません。曖昧にしておくと後々トラブルを引き起こす可能性もありますので、慶事・弔事それぞれについて、有給か無給かの区別を明示しておきましょう。

手続きなど

慶弔休暇の手続方法も会社側で自由に設定できます。口頭ではトラブルが発生しやすいため、所定のフォームを用意し、記録を残しておくことをおすすめします。

弔事の場合は突然起きることが多く、予め申請するのは難しいため、いったん電話などで連絡を受け、後日改めて申請してもらうのが現実的です。

記載内容は次のようなシンプルな記載事項でよいでしょう。

・申請者の氏名
・希望する日程
・目的(慶事・弔事の別や、申請者との関係性など)

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就業規則に慶弔休暇を設定するときのポイント

就業規則は、賃金や労働時間などの労働条件や職場内の規律などを定めた職場の規則集です。

労働基準法第89条に「就業規則に記載する事項」が定められていますが、休暇は就業規則に必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)の一つとされています。

参考:就業規則を作成しましょう(厚生労働省)

職場でのルールを就業規則に明示し、従業員側も雇用側も双方が規則を守ることにより、安心して働く場をつくることができ、無駄なトラブルを避けることができます。

慶弔休暇を規則に定める際のポイントには次のようなものがあります。

従業員が誤解しないルールにする

慶弔休暇が誰でも公平に取得できるよう、細かな点に気を配りましょう。

状況により差が生じやすいものに休暇日数の数え方があります。慶弔休暇の期間内に休日が挟まったとき、休日を除いて数えるのか、休日を含まず数えるのかにより、トータルで休める日数に差が出ます。明確な記載がないと従業員によって解釈がわかれてしまい、不公平感が出てくる可能性があります。

休暇の定義からすれば、休日を含まず労働日だけを数えるほうが自然なイメージかもしれませんが、慶弔休暇は法定休日に上乗せされるもので企業の裁量に任されているため、休日を含んでカウントしても問題ありません。

また、入社後どのくらいの期間勤めてから取得できるかも、あいまいにしておくと誤解を与える可能性があります。

従業員のモチベーションを下げないルールにする

人手不足の中、休暇の明記は中小企業にとって十分な福利厚生をアピールするチャンスともいえるでしょう。職場環境の整備をしっかりと行ない、休暇を取得してもうまく回っていくだけの業務効率化を図っている、という姿勢を示すことができます。

休暇制度を充実させることで業務改善にも効果的な影響が出ると、従業員の就労に対するモチベーションが上がり、離職率が低下するかもしれません。さらに求人のアピールポイントとなってよい人材確保につながることも期待できます。

絵に描いた餅にしない

当たり前ですが、就業規則に慶弔休暇を記載するだけで職場環境を改善できるわけではありません。規則が自然な形で運用できるようにしていく必要があります。

休暇の制度を浸透させていくには、従業員へきちんと周知した上で、実際にスムーズな取得ができるよう、日頃からの業務の効率化を図って環境を整えることが重要です。慶弔休暇をうまく活用して職場の好循環をつくっていきましょう。

執筆は2019年10月15日時点の情報を参照しています。
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