業務効率化のためにPOSシステムの導入を考えているという店舗オーナーもいることでしょう。クラウド型POSシステムなら、導入コストと運用コストを抑えてPOSシステムを導入できます。難しいシステムを使いこなす必要もありません。この記事では、POSシステムとは何かから始め、クラウド型POSのメリット・注意点、おすすめのシステムを紹介します。
目次
POSシステムとは
POSとは、Point Of Salesの頭文字をとった略称で、日本語では販売時点情報管理を意味します。POSシステムは販売時点の情報を管理するためのシステムで、商品情報を読み取り、いつ・どのような商品がいくらでいくつ売れたのかを記録します。POSシステムには、バーコードリーダーやサーバー、アプリケーションといったハードウェアとソフトウェアの両方が含まれます。
日本では1970年代にバーコードの一種であるJANコードが制定されました。1980年代には大手コンビニエンスストアを中心にJANコードを読み込むPOSシステムの利用が始まりました。
POSシステムというと、一昔前までは多額の費用をかけてサーバーを設置し、専用のアプリケーションをインストールしたハードウェアを使って運用する方式が主流で、導入と運用面で大きなハードルがありました。インターネットの利用が広まり、クラウド環境が整う中で、ネットショッピング、スマートフォンやタブレット端末が普及するのとあいまって、現在ではこれらを組み合わせてPOSシステムを提供する「クラウド型POSシステム」の利用が進んでいます。
クラウド型POSシステムとは
クラウド型POSシステムとは具体的にどのようなシステムで、従来のPOSシステムとどこが異なるのでしょうか。初期のPOSシステムでは、サーバーを用意して、専用のアプリケーションをインストールしたPOS専用の端末を利用し、販売情報を蓄積し、分析していました。POSシステム用のサーバーや端末を用意して運用するのは多くの事業者にとって簡単なことではありません。
2000年代から2010年代に入り、さまざまなサービスがインターネットを介して、提供されるようになりました。コンピューターやスマートフォン、タブレットなどにアプリケーションをインストールすることなく、ブラウザさえあれば多彩なサービスを利用できるようになりました。
あまりにも日常生活に溶け込んでいるため、意識することは少ないかもしれませんが、日々使っているSNSや、バックアップをインターネット上に保存するクラウドストレージなどが典型的な例です。サービスの中にはよりよい操作性を実現するために、専用のアプリケーションを提供しているものもありますが、いずれにせよ、サービスの根幹となる処理はクラウド上で行われるところがポイントです。
POSシステムもこれらのサービスと同様にクラウドベースで提供されるようになっています。クラウド型POSシステムでは、POSレジから販売する商品の情報をサービス提供者のサーバーに送ります。情報の蓄積や分析はサーバー、つまりクラウド上で行われます。クラウド型POSシステムでは、タブレット端末やスマートフォンにPOSレジアプリをインストールして、POSレジとして利用します。また、サービス提供者のサーバーに蓄積されたデータをブラウザや専用のアプリで閲覧したり分析したりできます。
クラウド型POSレジは専用のサーバーやPOSレジを導入する必要がなく、費用面、運用面での負担が少なくなります。また、多くの人が使い慣れているタブレット端末やスマートフォンをPOSレジとして利用できるのもクラウド型POSシステムの利点です。
クラウド型POSシステムでできること
クラウド型POSシステムの概要がわかったところで、ここではクラウド型POSシステムで具体的に何ができるのか見てみましょう。クラウド型POSシステムには以下のような機能があります。
オーダーと会計
記事の冒頭でPOSは販売時点情報管理を意味することを紹介しました。クラウドPOS型システムを使うと、従来のPOSシステムと同様に、販売時点での情報を管理できます。小売店であれば、お客様が購入を希望してレジに持ってきた商品をPOSレジの端末から商品情報や個数を入力し、会計をします。この過程でPOSシステムに販売した商品の情報や会計情報が蓄積されます。
クラウド型POSシステムは他のシステムと柔軟に連携でき、会計システムと連携させれば経理処理などがスムーズです。また、業界に特化した連携サービスもあり、たとえば、飲食店向けにオーダーエントリーシステムとPOSシステムを連携させるサービスもあります。お客様の注文がオーダーエントリーシステムでまずデジタル化されます。POSシステムと連携していれば、会計時に入力をし直す必要がありません。会計がスムーズになるだけでなく、入力ミスによる会計時のトラブルを防ぐ効果もあります。
次項で説明しますが、会計システムやオーダーエントリーシステムだけでなく、クラウド型POSシステムは、ECサイトと連携させることもできます。
ECサイトとの連携
ECサイトの作成サービスの中には、タブレット端末やスマートフォン向けのPOSレジアプリを提供しているサービスも少なくありません。小売業などで、実店舗に加えて、ECサイトを持っているという場合、売上情報や在庫情報を一元的に管理できると業務の効率が上がります。
売り上げ分析
クラウド型POSシステムでは、クラウド上にPOSデータが一元化され、売り上げの分析がしやすくなります。クラウド型POSシステムを提供しているサービスでは、売上分析をしやすい操作画面を提供しているので、数字には強くないという人やツールを使いこなす自信がないという人も安心です。
商品管理
クラウド型POSシステムが扱うのは、売上情報だけではありません。商品を入荷した時点で入荷数を登録すれば、そこから売れた商品の差分が引かれ、現在どれだけの在庫があるのかを把握できます。販売情報と入荷情報が連動することで、効率的に商品管理をできるようになります。
顧客管理
POSシステムではどのような人に対して、何が・いくつ売れたのかも記録します。お客様の属性を把握できれば、どのようなお客様が買い物に来ているのか、どの商品が特定の属性のお客様に好まれているのかといった事業に活かせる情報が見えてきます。
クラウド型POSシステムでは、より柔軟にお客様の情報を扱えます。実店舗を持って事業を営んでいるという人の中には、すでに顧客リストや顧客管理システムを持っている人もいるでしょう。クラウド型POSシステムでは、新しくお客様の情報を入力できるだけでなく、既存の情報をインポートすることもできます。お客様に対してメッセージを送ったり、今後のよりよい関係構築のための内部的なメモを残したりできるシステムもあります。
勤怠・スケジュール管理
POSシステムの対象である販売情報と直接関係はありませんが、より広範に事業をサポートするシステムとして、従業員の勤怠情報やスケジュール管理機能を提供するクラウド型POSシステムもあります。
クラウド型POSのメリット
クラウド型POSシステムのメリットは、従来のPOSシステムと比べて以下のようなメリットがあります。
低コストで導入できる
サーバーやアプリケーション、POSレジといった専用のハードウェアやソフトウェアを必要とする従来のPOSシステムは導入と運用のコストが高く、手軽に利用できるものではありませんでした。一方で、クラウド型POSシステムは、サービスを契約し、POSレジとして使うタブレット端末やスマートフォンがあれば、低コストで導入できます。決済サービスが提供するクラウド型POSシステムは、決済に手数料がかかるのみで、POSシステムの利用自体は無料のものもあります。
すぐに、簡単に使える
クラウド型POSレジシステムでは、サーバーを設定したり、アプリケーションをインストールしたりする必要がありません。普段使い慣れたパソコンのインターネットブラウザやモバイル端末を操作するので、学習に長い時間を費やすことなく使い始められます。
省スペース
クラウド型のPOSシステムでは、店舗にPOSレジを置くだけです。このPOSレジもタブレット端末やスマートフォンを利用すれば、店舗の大きさや、スタッフの人数によって柔軟に端末のサイズや数を調整できます。特に小さい店舗にとって、スペースを節約できるのは大きなメリットといえるでしょう。
柔軟な会計スタイル
インターネットにつながったワイヤレスのタブレット端末やスマートフォンをレジとして利用するので、持ち歩きが簡単にでき、お客様の座席で会計処理を完了できます。スムーズな会計はお客様満足度の向上にもつながることでしょう。また、店舗内だけでなく、より柔軟に、イベントでも決済を受け付けられるのもクラウド型POSシステムの魅力です。
クラウド型POSシステムの注意点
多くのメリットのあるクラウド型システムですが、利用にあたって注意しておきたい点もあります。
ネットワーク環境が必要
クラウド型POSシステムに接続するにはインターネットにつながっている必要があります。店舗では一般的に安定したインターネット接続が期待できますが、アクシデントが起きる可能性はゼロではありません。もしもの時に備えて、Wi-Fiだけでなくモバイルネットワークも準備しておくといった対策もあらかじめ考えておくとよいでしょう。
また、イベントなど屋外での使用を考えている場合は、タブレット端末やスマートフォン単体でインターネットにつながっているのが理想的です。キャリアによってつながりにくい地域もあります。可能であればイベント会場のインターネット環境を確認しておくとよいでしょう。もしも通信回線にトラブルがあったときに備えて、ポケットWi-Fiや私用のスマートフォンによるテザリングなどを利用して、POSレジとして利用するタブレット端末やスマートフォンをインターネットにつなぐ練習もしておくと安心です。
端末に触り慣れていないと難しい
クラウド型POSシステムのPOSレジとしては、タブレット端末やスマートフォンが利用されることが多いです。タブレット端末やスマートフォンは多くの人にとって身近なデバイスで、クラウド型POSシステムに慣れるのは難しいことではありません。ただ、普段からタブレット端末やスマートフォンを利用していないという人は、慣れるまでに数時間、数日練習が必要になるでしょう。
多くのクラウド型POSシステムは誰にでも使いこなせるようにシンプルな作りになっていて、すでに世界中で多くの人がビジネスに活用しています。電子機器に強くないという人も心配は必要はありません。
おすすめのクラウド型POSシステム3選
さまざまなクラウド型POSシステムが提供されていますが、ここでは特に使いやすいシステムを紹介します。
Square POSレジ
カード決済サービスを提供するSquareでは、iPhone、iPad、Android端末に対応したクラウド型POSシステムも提供しています。Squareで開設したネットショップと連携でき、実店舗とネットショップの売上情報や在庫情報、顧客データなどを一元化管理できる点が特徴です。
導入と運用にかかる費用は、カード決済のためのカードリーダーのハードウェア代と、カード決済の手数料のみです。クラウドPOSシステム自体は端末数にかかわらず無料で利用できます。
ユビレジ
株式会社ユビレジが提供するクラウド型POSシステムで、iPadに対応しています。ユビレジは有料のサービスですが、飲食店向けオプション、小売店向けオプションといった業種に特化したオプションが用意されているのが魅力といえそうです。無料のお試しプランも提供されています。
スマレジ
株式会社スマレジが提供するクラウド型POSシステムで、対応端末はiPad、iPhone、iPod touchです。アパレル、小売、飲食などさまざまな業種で利用されています。1店舗対象で機能が限られたスタンダードプランの利用料は無料です。有料プランとしては、ユビレジ同様、飲食店向け、小売店向けの業種に特化したプランも用意されています。
従来のPOSシステムは導入と運用のハードルが低くありませんでしたが、クラウド型POSシステムなら多額の費用と労力をかけずに導入できます。本記事をきっかけにぜひクラウド型POSシステムの導入を検討してみてください。
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執筆は2021年12月8日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash