海外で話題のBNPL(後払い決済)とは。ネットショップ運営者必見ガイド

昨今海外で利用者が急増している決済方法、「Buy Now Pay Later(以下、BNPL)」。「今買って、あとで支払う」を意味するBNPLは、日本でいう「後払い決済」や「先延ばし決済」と似ており、クレジットカードに代わる決済方法として注目されています。後払いは以前から存在している決済方法です。なぜ今話題になっているのかと疑問に思う人もいるのではないでしょうか。この記事ではBNPLと従来の後払い決済との違い、国内外でのBNPLの利用状況、またネットショップ運営者がBNPLを導入するメリットなどを紹介します。

参考:BNPLなぜ伸びる? 日本市場特有の理由とは(ITmedia ビジネス、2021年9月16日)

目次



後払い決済とは

後払い決済とはその名の通り、商品の購入代金を後日支払う決済方法です。指定された日までにコンビニで支払う、あるいは指定された銀行口座に購入額を振り込むのが一般的で、手元の現金が不足している、また、クレジットカードを持っていないなどの場合でも、商品を購入できる決済方法だといえます。実店舗よりも、ネットショッピングの決済方法として提示されることが多いです。

国内で親しまれている後払い決済には、

  • 翌月、あるいは翌々月まで支払いを先延ばしにできる
  • 支払回数は一括のみ
  • 手数料などは消費者が負担する

といった特徴があります。

一方、海外で近年利用者が増えている「BNPL」と呼ばれる後払い決済は、上記とは少し異なります。特徴としては以下の点が挙げられます。

  • 分割手数料無料(※1)で分割払いが可能
  • 決済手数料(※2)は加盟店が負担する

※1:使うサービスによって、手数料が発生する場合もあります。また、手数料なしで利用できる分割回数はサービスごとに異なります。
※2:支払いが遅延した場合、手数料が発生するサービスもあります。

どちらも後日代金を支払う決済方法ではありますが、前者は基本的に一括払いであることに対して、後者は分割払いが可能な点が大きく異なります。

分割払いの利用には基本的にクレジットカードが必要でした。言い換えれば、クレジットカードを所有していない、所有できない層にとって分割払いは選択肢になりにくい決済方法でした。また、分割払いを選択できた場合にも手数料が発生することから、分割払いを敬遠するクレジットカード所有者も少なくありません。

実際に一般社団法人日本クレジット協会が2021年9月に発表した調査によると、クレジットカードの信用供与額のうち、2カ月を超える支払いの利用率は6.7%でした。

参考:クレジットカード動態調査集計結果について(一般社団法人日本クレジット協会、2021年9月30日)

BNPLは従来の分割払いとは異なり、クレジットカードが必要なく、手数料もほとんどの場合はかかりません。利用のしやすさはもとより、高額な商品でも分割して支払えることから、欧米では若年層を中心に人気を集めています。

BNPLの仕組み


分割手数料無料など消費者にとってメリットが大きいBNPLですが、クレジットカード決済と同様、決済手数料を加盟店が負担することで成り立ちます。ネットショップ運営者がBNPLを導入した際の流れを見てみましょう。

ネットショップの購入画面で購入者が「BNPL」を決済方法として選択すると、お金のやりとりなしに購入手続きが完了します。その後、BNPLの事業者が決済手数料を除く決済額を立て替えて加盟店に支払います。加盟店は入金確認後、通常通り、商品の発送作業に進みます。

国内外でのBNPLの利用状況

決済手数料を加盟店が負担する点は、導入時の懸念事項になるかもしれません。一方で、海外では多くのネットショップがすでに導入しており、若年層の需要に応えるために押さえておきたい決済方法といった認識が高まりつつあります。

まずは欧米を中心に利用者数が急激に伸びている理由や海外の代表的なBNPL事業者を見ていきましょう。

海外で拡大するBNPL市場の背景

BNPL市場が海外で勢いを増しはじめたのは、2020年でした。BNPLのトレンドを牽引する企業には、

  • 米のAffirm(アファーム)
  • 豪のAfterPay(アフターペイ)
  • スウェーデンのKlarna(クラーナ)

の3社が挙げられますが、いずれも5年以上事業を続けてきたにもかかわらず2020年に急成長を遂げた理由には、新型コロナウイルスの感染拡大が挙げられます。外出の自粛が求められるなかで、世界各国の消費者がネットショッピングにシフトしていったことは、BNPLの利用を促進した大きな理由とされています。クレジットカードが必要ないうえ、手数料不要で分割払いできることで、利用者層を拡げることに成功したともいえます。

利用を開始するには、利用したいサービスのアプリをダウンロードし、アカウントを作成するだけ。サービスによってはアプリ内から商品を探すこともできますが、普段から利用しているネットショップがBNPLサービスを導入していれば、ショップから直接利用することもできます。

利用できる分割回数はサービスごとに異なり、Klarnaでは「Pay in 4」と名付けて、分割手数料無料で購入額を4分割できるプランを提供しています。利用状況や支払期限などは、簡単にアプリから確認することができます。

感染拡大前後での成長ぶりは、米国での利用状況をまとめた調査に顕著に現れています。

2020年7月にCardifyが発表した調査によれば、米国でのBNPLの2020年上半期の流通取引総額は、前年同期比で197%増加していました。

参考:COVID-19 and the surge of “buy now, pay later”(Cardify、2020年7月29日)

イギリスにおけるKlarnaのアクティブユーザー数からもその発展は明らかです。

■感染拡大前の月間アクティブユーザー数:約19万人(2019年12月時点)
■感染拡大後の月間アクティブユーザー数:約46万人(2020年7月時点)

同国では2018年12月時点での月間アクティブユーザー数が1.4万人だったことから、2年ほどで目覚ましい成長を遂げたことがわかります。

参考:Buy now pay later (BNPL) statistics(Finder)

大手企業も急成長するBNPL市場に参入しはじめています。

2021年8月にはAffirmが米Amazonとの提携を発表、同年10月には米PayPalが日本発の後払い決済Paidy(ペイディ)の買収を完了したことを発表しており、市場は今後も拡大していくことが見込まれます。

参考:後払いの「BNPL」、Amazonも米で導入 Affirmと提携(日本経済新聞、2021年8月28日)

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国内でBNPLは浸透しているのか

国内では海外のような盛り上がりはまだ見られず、「BNPLを使ったことがない」という人がほとんどかもしれません。

そうした中、国内でいち早くBNPLを導入しているのがPaidy(ペイディ)です。従来の後払い決済を提供しつつ、分割手数料0円(※)で決済金額を3回に分けて支払えるサービスも用意しています。ただし、決済額が3,000円以上の買い物でのみ利用できるとのことです。

※2021年10月時点。コンビニ払い利用の場合は、1回あたり最大356円の手数料がかかります。
参考:分割払いについて教えて下さい。(Paidy)

同社は2021年6月に「ペイディあと払いプランApple専用」の提供も開始しており、Appleのウェブサイト、またはAppleストアでも分割手数料0円での分割払いが可能となりました。Apple専用の後払いプランとして、最大24回に分けて支払うことができます。

このように日本においてBNPLを利用できる場所はまだ限られていますが、従来の後払い決済の利用率が年々伸びていることから、国内でもBNPLの需要は十分見込めるといえるかもしれません。

2021年4月に株式会社矢野経済研究所が発表した調査によれば、後払い決済サービスの市場規模は2016年から拡大しており、年平均で毎年20%以上で成長しています。さらに同調査では、2024年度までに市場規模が2020年度の見込値である8,820億円の二倍を超える1兆8,800億円に膨れ上がることを予想しています。

実際、購入額の翌月一括払い、または手数料が発生する定額払いを選択できる「メルペイスマート払い」の利用者も、2019年から2021年の間で増加傾向にあります。

参考:
EC決済サービス市場に関する調査を実施(2021年)(2021年4月27日、株式会社矢野経済研究所)
「メルペイスマート払い」若年層に広がりを見せるが、利用者/非利用者の認識ギャップなど課題も(2021年3月24日、株式会社インプレス)

BNPLが人気を集めている年齢層とは

BNPLはクレジットカードを所有しない層やジェネレーションZを含む若年層などに利用者が多いことは、これまでの章でも触れてきました。具体的には、どの年齢層の人に利用されているのでしょう。

まずは海外で発表されている調査結果を見てみましょう。

BNPL市場を牽引する企業として紹介した米Affirmの調査では、以下の結果が出ていました。

32%

は18歳〜25歳

40%

は26歳〜34歳

62%

は35歳〜50歳

16%

は51歳〜64歳

参考:The future of buy now, pay later(Affirm、2021年4月15日)

次に国内の調査を見てみましょう。従来の後払い決済を導入している株式会社メルペイが実施した調査を見てみると、「後払い経験あり」と答えた消費者は年代別で以下のような結果になっていました。

35.6%

は20代

33.8%

は30代

30.0%

は40代

16.9%

は50代

参考:メルペイ、消費と支払手段に関する調査を実施(メルペイ、2021年10月11日)

米国ではBNPLの利用率が最も高い年齢層が35歳から50歳であることに対して、国内では40代以上の消費者の間では利用率が下がる傾向にあることがわかります。いずれの場合も明らかなのは20代から30代の利用率が高いことです。これらの年齢層に向けた商品を提供するネットショップでは国内でもある程度の需要があることが予想されます。

BNPLを導入するメリット

事業者にとってBNPLの魅力は、今以上に幅広い客層の獲得と客単価アップが狙える点です。詳しく見ていきましょう。

幅広い客層に利用してもらえる

BNPLをネットショップ上の決済方法に加えることは、大きく二つの客層の拡大につながるといえます。

一つはクレジットカードを所有しない層です。具体的には18歳以下の学生や、職業や年収によって所有が難しい層などです。

もう一つは、クレジットカードを保有しているけれど積極的に使いたくないと考える層です。株式会社メルペイの調査によれば、後払い決済の利用者のうち7割はクレジットカード所有者であることがわかっています。クレジットカード利用に関する課題を尋ねてみると、「ついお金を使いすぎてしまう(49.5%)」に最も多くの回答が集まりました。

ただ、使いすぎを懸念する一方で、購入における考え方を問われると、「自分が欲しいと感じる時に購入する(32.8%)」に最も多くの回答が集まりました。

このように欲しいものはできるだけ早く手に入れたいけれど、使いすぎを懸念している層の購入を促す決済方法となりえるのがBNPLです。

同調査では後払いを利用する方法として、「支払うタイミングを調整できるから(60.9%)」「利用金額を把握しやすいから(34.8%)」が多くの回答を集めており、自身の出費をある程度コントロールしながらも欲しいものを手に入れられる方法として後払いが活用されていることが伺えます。

参考:メルペイ、消費と支払手段に関する調査を実施(メルペイ、2021年10月11日)

客単価アップが望める

一人暮らしをはじめたばかりの社会人1年目の男性を想像してみましょう。念願の一人暮らし、実家では買う機会がなかったソファを今回はじめて自分で購入すると仮定します。惚れ込んだ商品の値段に目をやると、5万円の文字が……。一括で払うには少し躊躇してしまう金額ですが、手数料なしで分割支払いができると知ったらどうでしょう。「分割で払えれば、一度の出費も大きくない」と購入する方向に気持ちが傾くかもしれません。

社会人1年目の男性に限らず、思い切りが必要な買い物に二の足を踏む消費者は少なくありません。政府統計の総合窓口で公開されている統計表(2021年4月から6月期)によれば、全国の単身世帯のインターネットを通じた支出金額の月平均は10,953円でした。この額を超えるような商品を提供している場合は特に、総額を分割して払えるBNPLを導入しておくことで客単価アップを狙えるかもしれません。

参考:家計消費状況調査 平成29年改定(2015年1月~) 単身世帯(政府統計の総合窓口)

BNPLを導入するうえでの注意点

国内でもBNPLを提供する事業者の増加に合わせて利用者が増えていくことが予想されますが、導入に際しては以下についても留意しておきましょう。

手数料は加盟店負担

これまでの章でも触れてきた通り、BNPLの決済手数料は導入する加盟店が負担することになります。ただし、初期費用や月額利用料金の有無はBNPL事業者によって異なる点になりそうです。たとえばいち早く国内でBNPLを提供しはじめた株式会社Paidyでは、初期費用や月額利用料金は発生せず、決済が発生したときにだけ手数料が発生する仕組みを採用しています。

参考:あと払いペイディ 法人のお客様(株式会社Paidy)

決済手数料の負担は避けがたいですが、このようにその他の手数料がかからないサービスを選ぶことで、金銭的な負担は減らせるかもしれません。国内ではBNPL事業者が多く登場していないため決済手数料の相場についてはまだ言及しにくい状況ですが、海外では4%から6%ほどの決済手数料が相場のようです。

新たな決済方法に警戒心を抱く消費者も

前章ではクレジットカード使いすぎを懸念する消費者が多くいるという調査結果を紹介しましたが、BNPLも使いすぎのリスクを少なからずはらんでいます。現にBNPLの利用が浸透している海外では、一度の支払額が少額であることから、消費者が気づかないうちに過剰債務を抱えてしまうリスクが課題として挙げられています。

BNPL事業者は返済実績をもとに利用限度額を基本的に設定しますが、BNPLに係る法規制は利用実態に比べて少し遅れをとっている状況のようです。たとえばイギリスの金融サービス規制当局が規制の指示を出したのは2021年2月のことでした。このようにまだまだ発展途上の決済方法であることから、警戒心を抱く消費者も少なからずいるかもしれません。

参考:後払い販売(Buy-Now-Pay-Later)が英国で規制対象に(TechCrunch Japan、2021年2月3日)

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この記事では、従来の後払い決済に取って代わる勢いで急成長している「BNPL」について説明してきました。主にネットショップで使われるこの決済方法は、手数料なしで分割払いを利用できるため、高額商品における購入のハードルを下げ、客単価アップ、新規顧客獲得などが期待できることがわかりました。

2021年時点では海外を中心に利用者が急増していることから海外の決済トレンドと見て取ることもできますが、国内でも大手企業をはじめ、BNPLを導入しているビジネスはすでに登場しており、利用が広がりはじめる日もそう遠くはなさそうです。ネットショップ運営者であれば特に今後の動きに目を向けておきたいところです。


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執筆は2021年11月23日時点の情報を参照しています。
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