客単価を上げるには?クロスセリング・アップセリングについても解説

客単価は、企業や店舗の売り上げを向上させるための重要な指標です。1人の顧客が1回の購入で支払う金額の平均を示すこの指標は、顧客数や来店数が一定であっても、売り上げを大きく伸ばす可能性を秘めています。この記事では、客単価の定義や計算方法に加え、客単価を上げるための具体的な戦略を紹介します。

目次


客単価とは?基本の考え方

客単価とは、1人の顧客が1回の購入で支払う金額の平均を指します。客単価が上がると、来店数や顧客数が同じでも、売り上げを伸ばすことができます。たとえば、飲食店では単品メニューだけでなく、セットメニューを提案することで、まとめて注文してもらう工夫ができます。小売店では、関連商品を一緒に購入してもらうような提案することができます。このように、客単価を上げることは、顧客満足度を高めつつ売り上げを増加させる効果的な方法といえるでしょう。商品価値を適切に伝え、納得してもらえれば、顧客は「高い買い物をした」と感じるのではなく、「自分にとって必要なものを揃えた」という満足感を得やすくなります。

客単価の定義と計算方法

客単価の計算方法は以下の通りです。

客単価 = 売上総額 ÷ 顧客数
たとえば、ある店舗で1カ月の売り上げが100万円で、来店した顧客数が500人だった場合、客単価は次のように計算されます。

100万円 ÷ 500人 = 2,000円

つまり、1人の顧客が平均して2,000円を支払っていることになります。

客単価を求める計算自体はシンプルですが、その背景を分析することが重要です。まずは特定期間中の総売上を来店客数で割ってみましょう。週単位や月単位だけでなく、曜日や時間帯ごとの変動にも着目すると、特定のタイミングで客単価が上下する要因が見えてきます。たとえば、平日の昼間は客単価が低いのに、週末の夜は上がるといったパターンが見つかるかもしれません。こういった情報を基に、セット販売を実施する時間帯やアップセリングを提案するタイミングを見極めていきます。業種によっては購入の点数をカウントして、平均購入点数を検証することも大きなヒントになります。

業種別の客単価の目安

客単価は業種、業態、メインとなるターゲット層などによって変わります。同じ飲食店でもファストフード店と高級レストランでは、一度の支払い額に大きな開きがあるのはいうまでもありません。小売においても、日常的に使う消耗品がメインの場合と、高額なブランド品を扱う場合では平均値が異なります。美容院やエステサロンなども、施術内容によって値段が変わってくるため、客単価の目安は幅広いです。同業種内でも地域やブランドのコンセプト次第で違ってくるので、大まかな数字を知っておくのは参考になりますが、自店舗に合わせた指標をしっかり確立することが肝心です。まずは競合の事例や業界の標準値と比較し、自店舗だけ著しく低かったり高かったりする場合は、その要因を探ってみると有効でしょう。

客単価を上げるメリット

客単価を上げるメリットを詳しく見ていきましょう。

売り上げを伸ばしやすい

客単価が上がれば上がるほど、来店客数がやや少なくとも目標の売り上げに届きやすくなります。たとえば七五三シーズンの写真館が、高単価のアルバムプランや追加焼き増しを提案して売り上げを伸ばすケースなどは典型的です。新規顧客の獲得は広告や宣伝費、あるいはスタッフの労力が大きくなることも多いですが、すでに来店している顧客に価値ある商品を提示して単価を上げるほうが費用対効果が良い場合が多々あります。こうした取り組みを通じて事業全体の売り上げを底上げすることで、より安定感のある経営が築きやすくなります。

利益率が上がる

付加価値の高い商品やサービスを提供すれば、材料費や人件費などの固定コストを一定に保ちつつ、得られる利益総額を増やせます。たとえば、飲食店で高級食材を使った特別メニューを販売する場合、仕入れコストは確かに上昇するかもしれませんが、その分だけ価格を高く設定できれば、利益率の拡大に結びつきやすくなります。また、割引頻度を下げたり、過度なサービスを控えて付加価値を強調することで、顧客の満足感を失わずに高い客単価を狙えます。こうした仕組みによって、1人当たりの売上増が収益を大きく支え、経営基盤を強化する流れを作り出せる点が客単価を上げる大きなメリットです。

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クロスセリング(クロスセル)とは?

クロスセリング(クロスセル)は、お客さまが購入を検討している商品や既に利用しているサービスに加え、別の商品やサービスも同時に買ってもらうことで客単価を上げるテクニックです。

クロスセリングの例として、レストランで料理を注文するお客さまに対し「ご一緒にドリンクはいかがですか?」と声をかけることが挙げられます。実際にセットで注文するほうがドリンクの料金が割安になるので、お客さまは「お得さ」を感じながら追加注文ができます。この場合、クロスセリングの販売手法を従業員のマニュアルや商品メニューに組み込むことで、すべての従業員が顧客単価アップのためのアプローチをお客さまに対してできるようになっています。

また、ECサイトなどの商品のページに「関連のある商品」を自動的に表示させることで、お客さまの関心のありそうな商品を提示することもクロスセリングの一つです。購入商品が財布であれば、同じデザインのバッグ、あるいは同色の小銭入れやカードケースといった商品を表示します。これによってお客さまは「そういえばこれも欲しい」と買い物への意欲を刺激されるほか、「この商品も良さそうだ」と新製品の存在を知ることもあります。

このときに「◯円以上のお買い上げ」に対して送料無料や割引などのキャンペーンを実施することで、お客さまの購買欲求をいっそう刺激できます。

成功するクロスセリングのポイント

クロスセリングを実践するときに気を付けたいポイントが、もとの商品との「関連性」です。追加でおすすめする商品が全く関係のないものであっては、お客さまの購買意欲は刺激されにくいと考えられます。

お風呂掃除用のスポンジを購入しようとしている人に皮脂汚れがよく落ちる洗剤や専用のゴム手袋をおすすめすれば効果的ですが、洗車用の洗剤や道具をおすすめしても、よほどタイミングが良くない限りは効果が現れないと考えられます。ECサイトなどで自動的におすすめ商品を表示する際は、適切な商品が表示されているかどうか定期的にチェックし見直すようにしましょう。

また、後述するアップセリング同様に強引な販売促進は逆効果になることもあります。あくまでお客さまの生活の快適さのために関連商品を案内するにとどめましょう。

クロスセリングのタイミング

クロスセリングのタイミングは一般的に、「購入の検討中」または「購入した瞬間」が最適だとされています。前述のレストランの例でいうと、お客さまがテーブルに着いて料理メニューを見始めたとき(=購入の検討中)や、料理をオーダーする際(=購入した瞬間)が効果的です。

アップセリングもクロスセリングも、特別な予算が必要なマーケティング手段ではなく、お客さまの心理や需要を理解したうえで、今日からでもすぐにはじめられるものです。トレーニングを積めば、アルバイトスタッフなどの従業員でも実践可能です。効果的なおすすめの言い回しや文言をスタッフ内で共有することで、よりいっそう精度を高めていくこともできます。

クロスセリングの具体例

クロスセリングは、以下のような商品やサービスの販売に有効な販売手法です。

  • カフェやレストランでの追加注文
  • ECサイトでの関連商品
  • スポーツシューズとウェアなどの関連商品
  • 不動産の賃貸契約とカギ交換サービスのセット

このように、お客さまがその商品を使う背景を想像した上で、その需要や商品のライフサイクルに合致した商品をセット販売などでお得に提供することがクロスセリングを成功させる秘訣です。

アップセリング(アップセル)とは?

アップセリング(アップセル)とは、お客さまが購入を検討している商品よりも価格が高い別の商品を購入してもらうための販売や営業のテクニックです。

たとえば、家電製品を購入する際の販売員の対応などを想像するとわかりやすいでしょう。販売員は、お客さまが購入しようとしているものと同様の製品について、あると便利なオプション機能や耐久性、汎用性、デザイン性などをアピールしたうえで、グレードと価格の高い方をすすめます。お客さまがその説明に納得すれば、多少は高くても高額な方の製品に乗り換えることになり、結果的に顧客単価が上がり、売り上げも上がります。

効果的なアップセリングのテクニック

ただやみくもに高い商品やサービスを売るのではなく、お客さまにとってメリットとなる情報を提供することで、顧客満足度の向上を図り、お客さまに納得してもらうことがアップセリングを成功させる秘訣です。お客さま自身が考慮に入れていなかった機能や使い方などを提案することが、お客さまを満足させるコツです。

無理にすすめてしまうと、お客さまには「高いものを無理やり売りつけられた」「本当は安い方で良かったのに断りきれなかった」などというネガティブな印象が残ってしまいます。これでは一時的な売り上げはアップしても、長期的に見ればお店の評判を下げることにつながったり、お客さまが買ったものを返品したりするなど、双方にとって不満な状態になりかねません。

また、おすすめする商品がもともと検討していた商品より著しく高価である場合は、お客さまは興味を持ってくれないという可能性があります。検討商品の値段やお客さまの予算を把握した上で、慎重にハイグレードな商品をすすめる必要があります。

アップセリングのタイミング

消耗品は、「まとめ買い」や「定期購入」をおすすめし、継続利用を促すアップセリングが可能です。お客さまは既に商品に魅力を感じ、まさに今購入に踏み出そうとしているところなので、割安な定期購入プランを提示することで「どうせなら長期で安く続けてみよう」という感情を刺激します。また、お試し期間が終了する間際にテレマーケティングなどをし、継続する気持ちのあるお客さまの背中を押してあげるといった方法も有効です。

家電製品や家具など高額商品の購入を考えているお客さまも、既に購入の準備をしているため、買い物をサポートするつもりで販売員が声をかければ耳を傾けてくれることが多いのではないでしょうか。

結婚式や葬儀といったライフイベントについても、「生涯に一度のことだから」「せっかく人が集まるのだから」といったように、お金をかけるべきところにはかけたいお客さまが多いと考えられます。そうした価値観を聞き出すことで、より希望に沿うサービスを提供できます。

アップセリングの具体例

販売する商品やサービスの種類によっても、アップセリングが適しているものとそうでないものがあります。適しているのは以下のようなものです。

  • 飲食店での飲み物のサイズアップ
  • 携帯電話やパソコンのハイスペック商品への誘導
  • 結婚式や葬儀プランのグレードアップ
  • ホテルの部屋やフライト座席のグレードアップ
  • 雑誌の12カ月定期購読
  • 化粧品やサプリなど消耗品の定期購入
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客単価を上げるその他の戦略

客単価を引き上げるには、クロスセリングやアップセリング以外にも多面的なアプローチがあります。たとえば、オンラインショップと実店舗の両方でサービスを展開している場合は、その連携を強化しつつポイント制度や会員特典などを織り交ぜると、一度の買い物でより高額な支出をしてもらうきっかけが増えます。また、季節やイベントに合わせた限定企画を打ち出し、「今だけ」という魅力をアピールする施策も効果的です。あるいは、特典付きセット販売は購入のハードルを下げるだけでなく、「セットでそろえればお得」と感じてもらえるため大きな成果を期待できます。

価格設定を見直す

お客さまが支払う金額と得られる価値のバランスを考え、今の価格設定が妥当なのかどうかを改めて見極めることは重要です。

安すぎる価格で長期的に続けていると、利益を十分に出せないだけでなく、商品の価値を過小評価される恐れもあります。逆に高すぎると顧客離れを引き起こすリスクがあるため、適切な価格帯を慎重に検討することが不可欠です。こうした価格戦略を刷新する際には、一部の限定商品を高めに設定し、標準品は据え置くなど、段階的な導入も有効でしょう。

リピーター獲得の工夫をする

一度購入してくれたお客さまに再来店や再購入を促す仕組みを整えることで、結果的に客単価アップを狙いやすくなります。ポイント制度や会員限定のクーポン配布、誕生日特典などを活用し、再訪の動機を増やすのが基本的な施策です。

ロイヤルカスタマーが増えれば増えるほど、単価の高い新商品やオプションを案内しやすくなります。また、リピーター獲得の取り組みを根気強く続けることで、結果として客単価も大きく上がり、安定した売り上げを確保しやすい環境をつくれます。

接客を見直し顧客満足度を高める

スタッフの知識や提案力を高めるだけでも、顧客満足度と客単価は大きく変動します。たとえばホテルのフロントで、通常の部屋からアップグレードしたプランをさりげなく提案し、その場で「部屋の広さ」「専用アメニティ」などの具体的メリットを丁寧に伝えることで、アップセルは成立しやすくなります。

接客で大切なのは、顧客が望んでいることを察知し、それに沿ったオプションや商品を選別できるかどうかです。慣れないスタッフが押し売りのような説明をすると逆効果ですが、十分なトレーニングを受けたスタッフが「まさにこれが必要だったのだ」と思わせるような提案をすれば、多少の価格差を超えてスムーズに成約へと結びつくでしょう。心地よい接客による体験向上が、顧客満足度と客単価の両軸にプラスの効果を及ぼすことを忘れてはなりません。

業種別の成功事例

アパレルショップでは「何が似合うか分からない」「印象を変えたい」というお客さま向けに全身コーディネートサービスを提供し、単に洋服を買うだけでなくシューズやアクセサリーなどを提示してトータルの売り上げを伸ばすケースがよく見られます。

飲食店では、特別感のある食材を使用したメニューを季節限定で用意することで、「せっかく来店したなら食べてみたい」という心理を刺激する手法が散見されます。サービス業では、基本プランにオプションを付与する形で「ここでしか体験できない独自サービス」をアピールし、単価を上げつつも顧客満足度を損なわない施策が功を奏している場面が多いようです。これらの事例から学ぶべきは、それぞれの業種が持つ特性や強みを理解し、顧客のニーズや期待に合致した付加価値を打ち出すことが何よりも大切だという点です。

まとめ

客単価を上げることは、売上増加や利益率向上に直結します。クロスセリングやアップセリングなどの戦略をうまく活用することで、顧客満足度を損なうことなく、収益を増やすことが可能です。重要なのは、顧客のニーズに応じた価値を提供し、適切なタイミングで提案することです。また、価格設定や接客力を見直すことで、より多くのリピーターを獲得し、安定した売り上げを確保することができます。この記事を参考に、ビジネスの成長を支える客単価向上の取り組みをぜひ実践してみてください。


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執筆は2018年5月16日時点の情報を参照しています。最終更新日は2025年5月14日です。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash