原材料価格や燃料費の高騰、人手不足による人件費の高騰など、値上げの話題が後を絶ちません。こうした値上げの影響を価格に転嫁しようと考えている飲食店の中には「値上げをしたらお客様が離れてしまうのではないか」と不安を抱えている店もあるかもしれません。この記事では、お客様に不満を持たせないための上手な値上げのポイントを解説します。
目次
- 値上げの状況
- 値上げの必要性
- 飲食店の値上げを検討する際のポイント
・値上げによる売上変化を予測する
・10%までの値上げに止める
・商品やメニューの価値を正しく伝える
・気軽に食べてもらう機会を作る
・高価格帯のメニューを作る
・メニューの値上げと改訂を同時に行う
・競合店の価格調査を行い参考にする
・お客様へ値上げを告知する - 値上げの告知方法
・メニュー表に記載
・店内のPOPやポスターに記載
・店舗のホームページで記載
・SNSで告知
・メルマガで告知
・告知文のサンプル - メニューの値上げとともに、オペレーションも見直そう
・POSレジの導入
・在庫管理ツール
・スタッフ管理ツール
・セルフオーダーシステムの導入
・キャッシュレス決済の導入 - 飲食店の業務効率化はSquareで!
値上げの状況
帝国データバンクの調査では、2023年に値上げする食品は上場・非上場の主要食品メーカー195社で4月までに1万品目を超え、夏まで常態化する可能性もあることが報告されています。その原因として挙げられるのが、原材料高、エネルギー価格の高騰です。また、2022年10月に1米ドル150円を記録して1990年8月以来およそ32年ぶりの円安水準となるなど、円安が続いていることも原因として挙げられています。この流れを受けて、大手外食チェーンでも値上げの動きが相次いでいます。
参考:
・23年値上げ、前年比2倍ペース 4月に1万品目突破、3カ月早く到達(2023年1月31日、帝国データバンク)
・外食チェーン今月も値上げの動き ステーキは8~19%値上げも(2023年3月6日、NHK)
値上げの必要性
一般的に飲食店での原価率は30%といわれています。たとえば、1,000円で販売する料理の原価を300円として、原材料費が20%上昇した場合、
300円×20%=60円
の原材料費の値上げとなります。1日50食の注文があるとすると、
60円×50食=3,000円
の利益を圧迫することになります。これが1年300日間の営業だとすると
3,000円×300日=900,000円
なんと90万円も利益を圧迫することになります。
飲食店にとって原材料の価格高騰は深刻な問題で、価格転嫁できないと経営難に陥ることも十分に考えられます。値上げの必要性をどうやったらお客様に理解してもらえるかを考えてみましょう。
飲食店の値上げを検討する際のポイント
値上げを検討する際に、気をつけるべき点にはどのようなことが挙げられるでしょうか。
値上げによる売上変化を予測する
値上げを行ったとしても、売り上げに対しての効果がなければ、意味がありません。たとえば、1日の中で販売数の多くないメニューで値上げを行っても、その効果は限定的です。現状の販売状況や仕入れの状況などから、値上げすることによって想定される売り上げや利益の変化を予測しましょう。また、値上げをすることで注文数が減ってしまう可能性も考慮する必要があります。POSレジなど売上分析ができるツールを活用し、どのメニューでの値上げが効果的なのか検討しましょう。
10%までの値上げに止める
日本政策金融公庫の調査によると、食品の値上げに対する価格許容度は、「全ての品目で10%までの値上げであれば許容できる」とする割合が6割を超えています。しかしながら、年代別でみると20代では「全ての品目で許容できない」が4割を超えています。このことからも、たとえば若者世代向けのメニューなど、値上げをすることでマイナスの影響が大きそうなものは慎重に判断しましょう。また、全部のメニューを値上げすると、お客様に割高なイメージを与えてしまうかもしれないので、値上げをするのは一部のメニューに限定するなどの工夫も必要でしょう。
参考:食の志向 20代の経済性志向高く、4割以上が値上げを「許容できない」<消費者動向調査(令和4年1月調査)>(2022年2月22日、日本政策金融公庫)
商品やメニューの価値を正しく伝える
使用している食材へのこだわりや、どれだけの手間をかけているのかを、商品POPやメニューに記載し、お客様に伝えましょう。価格以上の価値があることをしっかり伝えることで、商品やメニュー、サービスの価値を理解してもらえるように心がけることも必要です。
気軽に食べてもらう機会を作る
たとえば、ディナーメニューで値上げを行ったレストランが、ランチは1,000円で提供するなど、お客様が気軽に食べられる機会を作ってみるのも一つの手です。ランチで気に入ってくれたお客様がその味や価値を認め、ディナーに通ってくれるようになるかもしれません。
高価格帯のメニューを作る
商品を三つの価格帯に分けて展開した場合、多くの人が真ん中の価格帯の商品を購入する傾向にあるという心理を「松竹梅の法則」といいます。この松竹梅の法則を利用して、提供しているメニューの価格よりワンランク上のメニューを作ることで、既存のメニューを安く感じさせることができるかもしれません。
メニューの値上げと改訂を同時に行う
メニューの値上げと改定を同時に行うことで、前のメニューと比較されづらくなります。たとえば、牛肉を使ったメニューであれば、ヒレやサーロインなどの部位単体での提供をやめて、比較的安価な部位を盛り合わせて「食べ比べ」とすることで、提供価格を調整することができます。また、お客様にとっても「一皿で複数の部位が楽しめる」という満足感につながることでしょう。
競合店の価格調査を行い参考にする
競合店の価格を調べ、値上げをしているのであればどのくらいの値上げ率なのかを参考にするのも一つの手です。その上で、自店舗が競合と比べて選ばれている点が何なのかを分析し、競合店が提供するメニューやサービスよりも優れた顧客体験を提供するように心がけるといいでしょう。
お客様へ値上げを告知する
お客様には、値上げすることをきちんと告知し、店舗の誠意を伝えましょう。告知せずに容量を減らすステルス値上げや、安い原材料に変更するなどして実質の値上げするのは控えた方がいいでしょう。お客様に隠れてこっそり値上げした場合、今まで何度もリピートしてくれていた常連のお客様が離れていく可能性が高くなります。
値上げの告知方法
十分な検討を重ねて値上げをすると決めたら、値上げ前に一定の告知期間を設けましょう。その上で、値上げを行うのが理想的です。告知の方法には、以下の手段が考えられます。
メニュー表に記載
来店してくれたお客様に必ず伝わるのが、メニュー表に記載する方法です。値上げの理由や背景なども付記しておくと、お客様の納得度も高まるかもしれません。
店内のPOPやポスターに記載
レジ前やテーブルのPOP、店内のポスターなどで告知します。値上げ前であれば駆け込み需要で注文が増える可能性もあります。
店舗のホームページで記載
全てのメニューを値上げするような大掛かりな価格改定をするのであれば、店舗のホームページなどでも掲載するとよいでしょう。
SNSで告知
LINE公式アカウントやInstagramなど、SNSでも値上げの告知をしましょう。フォローしてくれているお客様は、すでにお店のファンであることが多いので、誠意を持って伝えることができます。また、値上げ前に来店をしてくれるかもしれません。
メルマガで告知
SNSのフォロワーでないメルマガ会員のお客様向けに、誠意ある文面を配信します。しばらく来店していないお客様も、「値上げ前に一度来店してみよう」という気持ちになってくれるかもしれません。
告知文のサンプル
お客様に値上げの必要性を伝えるための告知文のサンプルです。店内POPやポスター、SNSやメルマガなどの参考にしてみてください。
お客様へ
【(商品名)価格変更のお知らせ】
平素より、〇〇(店舗名)をご利用いただき、感謝申し上げます。
この度、原材料の高騰に伴い、〇月〇日より一部メニューの
価格変更をさせていただきます。
当店では、お客様に高品質のお食事をリーズナブルに
楽しんでいただけますよう、努力を続けてまいりましたが、
昨今の原材料の高騰により、これまでの価格を
維持することが困難となりました。
日頃より当店をご利用いただいておりますお客様におかれましては、
何卒ご理解くださいますようお願いいたします。
これからも、多くの方に愛していただけるレストランであり続けられるよう
サービスの向上に努めてまいりますので、
是非変わらぬご愛顧をお願い申し上げます。
店長 〇〇
メニューの値上げとともに、オペレーションも見直そう
原材料費の高騰は、自分たちでコントロールできるものではありません。その代わり、在庫管理やスタッフ管理ツール、セルフオーダーシステムを導入するなど、店舗オペレーションの効率化によって人件費を抑えることは可能です。
株式会社ぐるなびが加盟店を対象に行った「飲食店のDX(※)化」のアンケートでは、7割超の店舗が「DX化が必要」と回答し、導入した店舗では、業務の効率化や時間・人手の削減につながるなどメリットを感じていると報告されています。店舗オペレーションの効率化に役立つツールには、以下のようなものが挙げられます。無料で利用できるサービスもあるので、自店舗にあったサービスを見つけてはいかがでしょうか。
※DXとは、デジタルトランスフォーメーションを指し、デジタル化でビジネスを変革させることを意味します。
参考:7割がDX化が必要と回答。効率化、省人化など多くのメリットも~飲食店のDX化の最新動向~(2022年6月28日、株式会社ぐるなび)
POSレジの導入
商品を販売した時点で、売上情報を自動的に記録するシステムを搭載したレジです。いつ、何が売れたかを自動で記録するので、売上分析が可能になります。この売上分析を基に、どのメニューの値上げに踏み切るのかを検討してもいいかもしれません。
在庫管理ツール
在庫管理は、過剰な食材の発注をしないことや食材を無駄にしないことなどを目的として行います。食材だけでなく、テイクアウト用の梱包資材などの在庫量を把握することで、在庫不足による機会損失を防ぐことができます。
スタッフ管理ツール
飲食店にとって、スタッフのシフト調整や管理は必須です。最近では専用アプリなどでスタッフの管理を行うことができます。スタッフ管理ツールでは、概ね以下のことが可能です。
- シフト作成
- 勤怠管理
- シフト確認
- 給与計算
- タイムカード
- スタッフ別の売上成績
セルフオーダーシステムの導入
セルフオーダーシステムとは、スタッフを介さずに注文を受け付けるシステムのことです。導入することで注文ミスの削減、人員コストの削減につなげることができます。セルフオーダーシステムには、いくつかの種類があります。
- 食券販売機から食券を購入する
- テーブルに設置してある専用タブレットから頼む
- QRコードにアクセスし、お客様が自身のスマートフォンから注文する(QRオーダー)
食券販売機や専用タブレットを設置すると、店舗の規模にもよりますが数十万円のコストがかかることもあるようです。コストを抑えてセルフオーダーシステムを導入したい場合は、QRオーダーを検討するといいかもしれません。
キャッシュレス決済の導入
クレジットカードやQRコード、電子マネーなど、現金以外の決済方法で支払いをするユーザーが増えており、実際にクレジットカード会社が行った調査では、キャッシュレス決済が利用できないと分かってお店の利用をやめた人が約50%いることが明らかになっています。また、先述のクレジットカード会社が行った決済速度に関する実証実験では、キャッシュレスは現金よりも16秒速く、非接触型に限ると現金より20秒速く決済できることが明らかになっています。消費者が完全にキャッシュレスへ移行した場合、1店舗あたりの労働時間は1日約4時間減少する可能性も示唆されています。キャッシュレス決済は、会計業務の効率化にも大きなメリットがあるといえます。
参考:
・JCB、「キャッシュレス決済に関する調査~コロナ禍におけるキャッシュレス決済事情~」を発表(株式会社ジェーシービー)
・決済速度に関する実証実験結果(2019年8月28日、株式会社ジェーシービー)
飲食店の業務効率化はSquareで!
Squareでは、飲食店のオペレーションを効率化するツールを提供しています。無料で導入できるSquare POSレジには、売上分析はもちろんのこと、在庫管理、スタッフ管理などの機能が搭載されています。Squareの決済端末と連携させれば、キャッシュレス決済も可能になります。キャッシュレス決済の比率が多くなれば、会計時間とレジ締めの時間を大幅に省略することができるでしょう。
規模の大きい飲食店であれば、飲食店に特化したSquare レストランPOSレジがおすすめです。ホールのレイアウトをそのまま登録できるテーブル管理をはじめ、メニュー管理、オーダーエントリーシステムなどの機能が利用できます。入店時の空きテーブル確認から、注文受け付け、料理提供までの一連のオペレーションを効率よく行うことができるので、少人数でのオペレーションが可能になります。Square レストランPOSレジには無料プランと有料プランがあります。
飲食店にとって原材料の高騰は、頭の痛い問題です。価格転嫁に抵抗を覚える飲食店もあるかもしれませんが、お客様に不満を抱かせないような工夫を凝らして、上手に値上げを行いましょう。
飲食店ならSquareにおまかせ
Square レストランPOSレジなら、店内、オンライン、デリバリーのオーダーを1か所で管理して飲食店の運営をもっと効率化できます。メニューごとの売上レポートやシフトレポートなど、リピート率アップとコスト削減に役立つ機能が使える有料プランも。
Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。
執筆は2023年4月24日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash