理学療法士は開業できる?独立・起業のステップと成功のポイント

※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。

理学療法士は、医師の指示の下に理学療法を行うことが法的に定められているため、独立して「理学療法」を提供することはできませんが、整体院やパーソナルジムなどのサービスで起業することは可能です。

本記事では、理学療法士の知識を生かして開業する際のパターンや開業時の留意事項、準備と手続き、ツールなど、理学療法士が独立・開業し、経営で成功するためのポイントを解説します。

【この記事のポイント】
- 理学療法士は医師の指示が必要なため、法律上「理学療法」を目的とした開業はできない
- 整体院、パーソナルジム、自費デイサービスなど、医療行為に該当しない開業は可能
- サービス利用者のターゲット層を明確にし、入念な経営戦略を立てる
- 開業には資金の準備、法的手続き、設備の導入などが不可欠
- Squareを活用することで、予約・決済・顧客管理などを効率化し、スムーズな経営運営が可能になる

目次


理学療法士は開業できるのか?

理学療法士が独立して開業する場合、法律上、「理学療法」を提供する開業は認められていないため、別の事業として起業する必要があります。

理学療法とは、病気やケガ、加齢などにより運動機能や体力が低下した人に対して、日常生活の基本動作の回復や維持、悪化予防を目的に、運動療法や物理療法(電気刺激療法や温熱療法)などを用いるリハビリテーションです。理学療法士は、「医師の指示の下に、理学療法を行なうことを業とする者」と法律で定められています。

理学療法士とよく似た国家資格に、あん摩マッサージ指圧師や柔道整復師がありますが、これらは施術所を開設できるいわゆる開業権のある資格です。理学療法士は医師の指示の下で理学療法を行うことが定められているため、単独で「理学療法」の提供を目的とした開業は法律違反となります。

開業パターンの選択肢

前述の通り、理学療法士は「理学療法」を提供するための開業は法律上認められていませんが、医療行為に該当しない範囲で、保険診療外の整体サービスや予防・健康増進分野での開業および事業運営は可能です。以下に、整体院、パーソナルジム、デイサービス、オンラインサービスでの開業パターンを紹介します。

整体院の開業

整体は、医療行為に該当しない範囲で身体機能の改善を目的とする運動指導やストレッチなどの手技を施すものです。具体的には、肩や腰、骨盤や股関節などの歪みを矯正し、骨格や筋肉の調整を指します。あくまで民間療法であり国家資格は不要で、理学療法士が整体院を開業・運営することは可能です。

整体院で提供するサービスは、「診断」「治療」を目的とせず、あくまで予防・健康づくりの範囲内として実施される必要があります。「理学療法」などの医療用語を用いたり、診療行為や医師の指示の下にのみ使用できる医療機器を用いた療法を行ったりすることは法律違反です。

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パーソナルジムの開業

健康な人を対象に、運動機能の改善プログラムや筋力トレーニングの知識を生かしたパーソナルトレーナとして、ジムを開業する方法もあります。

パーソナルジムでは、ダイエットや体質改善、体幹強化やスポーツ障害予防など、利用者それぞれの目的に応じた指導をします。事業展開が進めば、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)や加齢により心身の活力が低下するフレイルの予防、健康指導などで、社員研修や自治体の教室といった形での契約が広がる可能性もあります。

パーソナルジムでのサービスは、疾病の診断・治療を目的としない健康教育、運動習慣の定着支援の範囲内で提供される必要があります。医療行為や治療を目的としたサービスは認められません。

自費リハビリ型のサロンやデイサービス

診療行為に当たらない自費でのリハビリ型のサロンや、介護保険を使わない自費デイサービスも開業が可能です。

デイサービスは主に高齢者を対象とした通所サービスで、レクリエーションや機能向上のトレーニング、食事、入浴サービスなどを提供します。自費デイサービスは、脳卒中後の維持期(回復期・生活期)や慢性神経疾患、フレイル・ロコモ予防など、介護保険や医療保険でカバーされない層を対象に提供するサービスです。国家資格である理学療法士としての知識や経験を生かして、利用者の身体機能に応じた安全なプログラムの提供や指導ができる点をアピールしましょう。

自費リハビリサービスは、利用者が日数や回数の制限がない状態でリハビリを受けられるのが特徴です。開業する場合、健康増進や心身機能の向上を掲げることは可能ですが、医療行為と誤認されるような表現は避けましょう。

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オンラインリハビリ・遠隔相談サービス

新型コロナウイルス感染症が拡大して以降、自宅でのリハビリ・運動指導のニーズが急増しました。この背景から、理学療法士がオンラインを活用して提供する運動指導や健康増進・生活相談などの自費サービスが注目を集めています。

診断・治療を目的とせず、生活支援・健康増進・行動変容支援を目的とすることが必要です。オンライン指導は、あくまで自主トレーニングの補助・生活支援・健康教育という位置づけに留めることが重要です。

理学療法士が開業で失敗しやすいポイント

理学療法士の開業では、医療行為との境界線が不明確で保険診療と混同してしまったり、自費診療の集客に失敗したり、資金繰りやマーケティングといった戦略が弱く運営が困難になってしまう例がみられます。開業・運営でのリスクポイントをみていきましょう。

医療行為との境界線の不明確化(保険診療との混同)

理学療法士は医師の指示の下でのみ「理学療法」を提供できるため、自費サービスで提供可能な範囲(健康増進・予防支援など)と医療行為(治療・診断を伴うもの)の線引きが曖昧になると、法令違反のリスクが高まります。

たとえば、「理学療法」や「リハビリテーション」といった医療用語を看板や広告・パンフレットに使用するなど、医療機関でないにもかかわらず誤認を招く標榜を行うと法に抵触するため、保健所などから指導を受けたり訴えられたりするかもしれません。

収益モデルの不透明さ(自費診療の集客に失敗)

自費型のリハビリ事業では、収益計画のあいまいさや見通し不足により短期で撤退となるリスクに注意が必要です。

たとえば、利用者数や属性の分析が不十分なまま高額な設備投資をして開業したものの、地域相場に比して料金が高額で、利用者は「保険内サービスとの違いが分からない」「高額サービスは不要」と感じて継続せず、稼働率に伸び悩んで初期費用の回収に失敗し、事業縮小を迫られた可能性があります。

集客・差別化戦略(マーケティング・経営ノウハウ)の不足

事業の強み・特徴が曖昧で、差別化ができていない場合や広報力の不足もリスク要因となります。

たとえば、パーソナルジムを開設したものの、理学療法士ならではの価値(例:動作分析・生活動作支援)が十分に訴求できず、周囲のジムやフィットネス施設との差別化に失敗し顧客が流入しなかった、自治体や包括支援センターとの連携が不十分で広報ができず、集客に苦戦した、地域に介護保険サービスが十分に存在しため自費サービスの必要性が低く利用者が集まらなかった、などのケースがあります。

独立・起業に必要な準備とステップ

理学療法士が独立・起業で成功するためには、ビジネスモデルを明確にし、必要な資金を用意し、サービスを提供する施設や設備を準備したうえで、法的手続きを滞りなく済ませていく必要があります。

ビジネスモデルの明確化

理学療法士が独立して開業するには、たとえ理学療法士の肩書を用いる場合であっても、医療行為と誤認されないよう、事業内容を法的・倫理的に定義した上で、対象者層と提供価値(サービスの価格)を明確化する必要があります。

【ターゲット層の例】

  • アスリート、スポーツ愛好者
  • 健康志向、ダイエット志向の強い人
  • 高齢者、慢性腰痛をもつなど体の機能に不具合を感じている人(治療までは必要としない)

【提供サービスの例】

  • 整体:健康増進目的のストレッチ・姿勢調整(診断・治療ではない)
  • 運動指導:筋力強化、バランス向上、動作練習
  • 訪問支援:生活環境評価、在宅での健康づくり指導、転倒予防指導

【施設など提供手段の例】

  • 実店舗(サロン・ジムなど)
  • 病院・介護施設の空きスペース(訪問リハビリステーションなど)
  • 公共施設のレンタルスペース(地域住民向け、健康教室など)
  • 出張(高齢者、移動困難者向けの自宅運動指導・生活支援など)
  • オンライン(自主トレーニング支援、遠隔生活指導、運動継続モニタリングなど)

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必要資金の計算と準備

開業に必要な資金は、事業形態や規模によってかなりの開きがあります。物件の取得や設備導入、備品や機器、車両の購入など、数千万円におよぶ場合もあります。

ハード面だけでなく、広告費や営業費、システム管理などのソフト面でも資金の確保が必要です。開始したい事業内容を精査して初期投資額を算出し、資金調達に必要な具体策(融資、補助金・助成金の申請など)を立案し、持続的運営が可能な資金計画を立てることが重要です。

【開業・運営に必要な費用例】

  • 物件取得・保証金、内装
  • 設備機器、施術ベッド、簡易トレーニング機器、ストレッチマットなど
  • 事務機器、車両、備品・消耗品
  • 事務機器等(初期投資の中心)
  • 営業・広報費、家賃・リース・光熱費
  • 人件費、保険加入費
  • システム構築、広告宣伝費

施設・設備の準備と法的手続き

開業するにあたっては、施設設備を整えるだけでなく、開業届や法人設立などの手続きも適切に行う必要があります。サービス内容によっては、病院や老健施設との連携、医師・看護師・作業療法士や柔道整復師といった他機関・他事業者との協力体制を構築することも重要です。

【独立・起業に必要な手続き・準備の例】

  • 開業届の提出(個人事業主または法人設立)
  • 物件規模により消防法の対応(消防計画届出・防火管理者選任)
  • 専門職、医療機関(柔道整復師や医師)との連携体制構築

理学療法士のビジネスをサポートするSquareのツール

開業する地域のニーズに合ったビジネスモデルで適切な施設を準備し、持続可能な運営のしくみを構築するには、経営をサポートする経理・人事管理などの業務システムを初期から導入し、事業に専念できる環境をつくっておくことが成功のポイントとなります。

予約管理や決済、顧客・スタッフの情報管理、シフト管理など、経営に関するデータを統合管理できるSquareを例に、システム導入のメリットを紹介します。

キャッシュレス決済対応で利用者の利便性アップ

たとえばSquareでは、クレジットカード(Visa、Mastercard、JCBなど)、電子マネー(Suica、QUICPay、iDなど)、QRコード決済(PayPay、楽天ペイなど)といった多様なキャッシュレス決済方法に対応しており、オンライン予約サイトの開設も可能なため、予約受付から支払いまでをスムーズに連携できます。

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売り上げの時間帯別・サービス別の分析が可能

Squareには、売り上げや顧客分析できるレポート機能が搭載されており、日/週/月単位で収益状況を可視化できます。時間帯やサービス別の売上傾向も把握可能で、サービス内容の改善や集客戦略に生かせます。

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また、消耗品の在庫・商品登録、顧客管理、シフト設定など、日常業務を一括管理できるシステムも構築できます。運用は固定費ゼロから導入でき、中小・個人サロンにも負担にならない設計となっています。

Squareなら今すぐキャッシュレス決済導入できる

カード決済、タッチ決済、電子マネー決済、QRコード決済が簡単に始められます

まとめ

理学療法士が独立して起業する場合、単独で「理学療法」を提供するのではなく、整体院やパーソナルジム、自費型サロンやデイサービスなどの形で起業することになります。医療行為との境界を正しく認識した上で、法的要件を順守しつつ自費サービス分野で展開する経営戦略が求められます。類似の事業者の動向や開業予定の地域のニーズを把握し、事業設計・資金計画・法的整備を慎重に進めることが重要です。

Squareは、アカウント登録後すぐに決済サービスの利用が開始できます。入金までの期間が短いため資金繰りの計画が立てやすく、初期費用・月額固定費は発生しません。手数料もシンプルな料金体系となっており、継続コストが明確で収益管理しやすいシステムです。

予約管理やサービス管理、経理といったデータを統合管理できるSquareを活用して、地域のニーズを捉えた戦略的事業を展開していきましょう。


Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。

執筆は2025年7月18日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash