歯科医院の開業と年収のリアル|成功するためのポイントと資金計画

歯科医として開業するうえでは、その収益性や年収が気になるところです。歯科医の開業資金や収益モデルの考え方、また資金調達の方法や年収アップのコツなどを開業前に理解しておきましょう。この記事では、経営戦略やスムーズな運営のポイント、日々の業務に役立つツールも解説します。

【この記事のポイント】
-開業歯科医の年収は診療メニューや運営スタイルによって大きく差が出る
-保険診療中心か自費診療中心かで収益モデルが異なる
-開業の成功には立地選び、診療メニューの設計、効果的なマーケティングが不可欠
-開業資金は自己資金に加えて融資や補助金の活用が現実的
-開業後はSquareの決済・資金管理サービスが効率化に役立つ

目次


歯科医院の開業は本当に儲かる?

独立開業する歯科医は多く、人口対比でもたくさんの歯科医院が存在する傾向が続いています。そんな中、歯科医院の収益性は診療メニューや運営スタイルに左右されるところもあります。まずは開業歯科医という仕事の収入の形にはどんな特性があるか、基本を理解しておきましょう。

開業歯科医の収入の特徴

病院に雇用されて働く勤務歯科医の年収は平均で700万円程度、開業歯科医の年収は平均1,400万円程度といわれます。

勤務歯科医と異なり、開業医の歯科医の場合は年収の幅が広いことも特徴で、その理由は大きく二つあります。一つ目は、開業する場合は医院の運営にコストがかかることです。場所や設備といったハード面から、人の雇用やデジタルツールなどのソフト面まで、どういったコストをどれだけ使うかという点が開業歯科医の収入に影響します。

二つ目は、提供する診療メニューの違いです。治療を主とした保険診療を中心に提供するのか、または歯科矯正やインプラントなどの自費診療(自由診療)をどの程度取り入れるのか、歯科医院の運営スタイルも収入に反映されます。

歯科医院の開業に必要な資金と収益モデル

歯科医として開業するには具体的にどれくらいの資金が必要か、収益モデルと併せて確認しておきましょう。

開業資金の目安

歯科医院の開業には最低でも約5,000万円の資金が必要といわれています。開業資金がどんなものに使われるか、一般的な例は次の通りです。

  • 物件(初期費用、内装・外装など)
  • 医療機器・材料(診療ユニット、滅菌器、バキュームクリーナーなど)
  • 開業直後の運転資金(約6カ月分)
  • 広告・宣伝(チラシ、ウェブサイト、求人広告など)

歯科医院の開業では、診療場所となる物件と医療機器にかかる費用が開業資金の大部分を占めます。なお、医院の立地や規模、提供するサービス、雇用する人数などによってはさらに多くの開業資金が必要となるケースもあります。

開業資金の調達方法については記事の後半で詳述します。

収益モデルの考え方

開業したい歯科医院の収益モデルによっても、開業資金の必要額は違ってきます。歯科医院の収益モデルはコンセプトにも直結するもので、大きく分けると「保険診療中心の歯科医院」と「自費診療を取り入れた歯科医院」の2通りが考えられます。

保険診療中心の歯科医院は、健康保険や国民健康保険が適用される診療を軸とする収益モデルです。一方、自費診療を取り入れた歯科医院は、保険適用ではない自費診療が収益に貢献するタイプの収益モデルです。保険診療と自費診療それぞれのメリット・デメリットを、患者と歯科医の立場から見てみましょう。

  保険診療 自費診療
患者側のメリット ・基本的な治療や予防歯科診療を受けることができる
・料金負担が1〜3割と低い
・治療法、使う材料などに制約がなく、選択肢が多い
・保険非適用の歯科矯正、インプラント、ホワイトニングなどができる
患者側のデメリット ・治療法、使う材料などに制約が多い
・保険非適用の歯科矯正、インプラント、ホワイトニングなどができない
・料金負担が10割(全額)と高い
歯科医側のメリット ・社会貢献度の高い診療ができる
・多くの地域で需要が高い
・治療法や診療メニューにこだわることができる
・収益性が高い
歯科医側のデメリット 収益性があまり高くない
・治療法・提供できるサービスが限定される
・地域によっては競合が多い
・地域・立地によっては需要が低い

保険診療は社会貢献性が高く地域の患者から利用されやすいものの、診療報酬は高いとはいえないため、高い収益性を目指すなら自費診療と組み合わせた開業方法が現実的といえるでしょう。

近年は審美歯科に特化した自費診療のみの歯科医院も存在します。この他、ファミリー層が多い地域で開業するなら小児歯科に力を入れるなど、開業の条件と同時に収益モデルを検討することが望ましいといえます。

jp-opening-a-dental-practice-2

歯科医の年収を決めるポイント

歯科医として開業するにあたって、理想とする年収に合わせて医院を運営することも可能です。年収を左右する要素として、立地、診療メニュー、マーケティング戦略の三つのポイントに絞って考えてみましょう。

立地の影響

「提供する診療メニューが立地と合っているかどうか」は、歯科医院の開業計画を立てるうえで重要なポイントです。たとえば、高価な素材や機器を売りにした歯科診療を提供するなら、高級住宅街の近くといった立地での開業が効果的といえます。

収益性の高いインプラントや歯科矯正、ホワイトニングなどは定期的な通院が必要であることから、都市部なら駅周辺など通いやすい立地も開業におすすめです。駐車場が確保できる、商業エリアやオフィス街にあって寄りやすいといった立地も検討してみましょう。

診療メニューの選択

自分で開業するにあたり、診療メニューのラインアップは年収に大きく影響する要素です。自費診療のインプラントやホワイトニングなどのメニューを用意するだけでなく、検査方法などにも自費診療のメニューを提供することができます。

マーケティング戦略

理想的な立地と診療メニューがそろっていても、マーケティング施策なしでは簡単に収入につながりません。歯科医院そのものや診療メニューの認知度向上から、患者の不便を解消して来院促進を図る施策まで、基本的なマーケティング戦略を試してみましょう。

  • ウェブサイトやSNSでの集客(SEO対策、効果的なアカウント運用など)
  • 患者満足度を向上させ、口コミを活用
  • チラシ、ウェブ広告の利用
  • 来院の利便性向上(Google マップの登録など)
  • 支払いの利便性向上(キャッシュレス決済の導入など)

歯科医や歯科医院の認知度・好感度は、診療内容だけで決まるものではないことを踏まえ、トータルでの患者満足度を上げるためのマーケティング戦略が必要です。

成功する歯科医院の経営戦略

多くの歯科医が独立開業をする中、患者の来院が絶えない成功例と、患者数に伸び悩む例とがあります。歯科医院として成功するには、経営戦略として次の2点が欠かせません。

効果的な集客を実施する

歯科医院における効果的な集客とは、診療メニューや立地などの条件に合った集客活動のことです。

審美歯科に力を入れる医院として開業するなら、審美歯科に興味がある層への宣伝やブランディングが求められます。高価な精密機器を使った自費診療がセールスポイントなら、プラスアルファの料金を払ってでもより良い診療を受けたいと考える人、つまり健康意識や収入の高い層を狙ったウェブサイトや広告のデザインが不可欠です。

リピーターを増やす施策を行う

歯科医院の安定的な運営のためには、リピーターの存在が重要です。特に歯科医院が多いエリアでは、かかりつけの歯科医として認知してもらう施策を行うことで、リピーターを増やしていきましょう。

リピーター化につながりやすい診療メニューとしては定期検診の他、クリーニングやフッ素塗布などの予防歯科診療もあります。こうした診療メニューを用意していることを伝え、来院時に次回の予約をしてもらう、SNSなどで定期検診や予防歯科について情報提供をするといった努力でもリピーターの増加が期待できます。

「またここで診療を受けたい」と感じてもらう雰囲気作りやコミュニケーション、使いやすい予約システム、好みに応じて選べる決済方法など、利用時の快適さも大切です。

歯科医院開業の資金調達方法

歯科医として開業するイメージが湧いてきたら、開業資金の調達方法についても理解を深めておきましょう。預貯金などの自己資金を1,000万円ほど用意したら、残りは融資や助成金・補助金を活用するという方法が一般的です。

融資の活用

融資は返済が必要ですが、確かな事業計画があり、返済の見通しが立てられるなら現実的な手段です。歯科医院の開業のために活用しやすい融資は次の3種類です。

  条件 最大融資額 無担保 無保証人
日本政策金融公庫の融資(新規開業・スタートアップ支援資金 新たに事業を始める人、あるいは事業開始後7年以内の人 7,200万円(うち運転資金4,800万円)
独立行政法人 福祉医療機構の融資(建築資金 診療所不足地域で新たに開業する人(建物の建築・賃借などの用途が対象) 3億円
銀行・信用金庫などのプロパー融資 金融機関により異なる  

いずれも実際の融資額はケースバイケースですが、歯科医院の開業計画を立て始めると同時に融資の情報を集め始めると良いでしょう。

助成金・補助金の活用

商工会や地方自治体が提供する助成金・補助金は返済不要で、歯科医院にも利用可能なものがあります。代表的なものは次の3種類ですが、都道府県などが独自に提供している助成金・補助金も確認してみましょう。

  条件 上限額
ものづくり補助金 新サービス開発のための最新医療機器導入時などに活用できる(保険診療事業は対象外、自費診療事業には利用可) 4,000万円
IT導入補助金 生産性向上のためのITツール導入のために活用できる(例:電子カルテ用端末、決済ツール、セキュリティーシステムなど) 450万円
事業承継・引継ぎ補助金 身内や第三者から事業を引き継ぐ形で開業する場合、新規設備の導入などに活用できる 600万円または800万円(条件による)

いずれも、申請後に審査が行われ、採択された(審査に通った)場合にのみ補助金・助成金を受け取ることができます。融資ほど上限額は大きくなく手続きのプロセスは多いものの、返済不要の資金を活用できるメリットは大きいため、必要に応じて検討してみるのがおすすめです。

Squareでスムーズなクリニック開業をしよう

収益モデルや資金調達の検討と同時進行で、開業初日から業務で使うデジタルツールについても下準備を進めておきましょう。

Square(スクエア)は、無料でアカウントを一つ作成するだけで、歯科医院の開業後に役立つ多様な機能を利用できます。患者のリピーター化や業務効率化に役立つSquareの機能について探ってみましょう。

キャッシュレス導入で利便性を高めよう

クレジットカード電子マネーQRコード決済などのキャッシュレス決済はもはや消費行動の一角を占めるものであり、歯科医院などの医療機関であっても例外ではありません。利用ポイントが貯まる、利用額を管理しやすいといった理由から、現金払いよりもキャッシュレス決済を好む人がいる中で、歯科医院でもキャッシュレス決済への対応は必須といえます。

jp-blog-waf NSP0337

Squareのキャッシュレス決済は、決済端末の購入と2.5%〜の決済手数料だけで利用できるシンプルな仕組みのサービスです。初期費用や月額利用料がかからず、導入が簡単なこともあり、多くの小規模な店舗・サービスで利用されています。決済端末は歯科医院の受付にもなじむスタイリッシュなデザインです。

Squareなら今すぐキャッシュレス決済導入できる

カード決済、タッチ決済、電子マネー決済、QRコード決済が簡単に始められます

審査も入金も早いSquare 資金調達で資金繰りもスムーズ

Squareにはキャッシュレス決済以外にも、顧客管理システムや請求書発行の仕組みなど、ビジネスの効率化・省人化に役立つ機能が備わっています。

さらに、Square 資金調達という独自の資金調達サービスもあり、急きょ資金が必要になった際に活用できそうです。オンラインで申請でき、歯科医院の収支のタイミングのズレなどによる急な資金需要にも対応しやすく、調達額も15,000円〜3,000万円と幅広い点が特徴です。

まとめ

歯科医の開業計画では、希望する年収額と連動する形で収益モデルを選ぶなど、自由度の高いビジネス設計が可能です。治療や予防歯科、審美歯科などの診療メニューを用意し、地域や社会のニーズに応える歯科医院を開業しましょう。資金繰りや事業計画と合わせて開業後のオペレーションも想定し、Squareなどのデジタルツールも賢く導入してみてください。


Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。

執筆は2025年6月23日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash