マッサージ師になるには?必要な資格、独立・開業までのロードマップ

現在ボディケア店舗などで働いている人はもちろん、これから経験を積んでマッサージやもみほぐしサービスを行う事業で独立開業しようと思っている人も多いのではないでしょうか。本記事ではそのような人に向けて、マッサージ師の種類や必要な資格などのほか、開業する上で必要となる知識や情報を紹介します。

目次


マッサージ師の種類と仕事内容

一般的にマッサージと呼ばれているサービスにはいくつか種類があります。厳密にいうとマッサージとは治療院で行う医業類似行為のことを指し、国家資格が必要である「あん摩マッサージ指圧師」以外はマッサージの施術を提供する行為が認められておらず、資格を持っていない施術者はマッサージ師とは呼べません。そのため、「あん摩マッサージ指圧師」ではない施術者が治療院ではない店舗などで提供するサービスは「もみほぐし」と呼ばれたり、表記されたりしています。

本記事では説明が冗長になることを避けるため、便宜上、同様のサービスを提供する施術者を広義で「マッサージ師」と表記しています。

現在、マッサージ師と呼ばれる職業はおおむね次の6種類にカテゴライズできます。

  • あん摩マッサージ指圧師
  • 鍼灸師
  • 柔道整復師
  • エステサロンのマッサージ師
  • カイロプラクター
  • もみほぐしを専門としたマッサージ師

「あん摩マッサージ指圧師」以外にも「鍼灸師」「柔道整復師」になるには資格が必要であり、その点でほかのマッサージ師とは大きな違いがあります。では、それぞれについてみていきましょう。

あん摩マッサージ指圧師

あん摩マッサージ指圧師は、「あん摩」「マッサージ」「指圧」という3種類の技術によって治療を目的とした施術を行う職業です。

「あん摩」は東洋医学の考えに基づき、基本的に器具は使わずに素手で部位を抑えたり撫でたりして血流を促すのが特色です。「マッサージ」はヨーロッパで確立された手法で、主に部位を擦ることによってリンパの流れを改善するものであり、「指圧」は日本で生まれた施術方法で、「ツボ」と呼ばれる身体のスポットに圧力をかけて刺激し、筋肉や神経を調整する療法です。

鍼灸師

鍼灸師は、東洋医学に基づいて症状にあわせたツボに「鍼(はり)」を使って刺激を与えて改善を促す「はり師」と、同様の場所に据えて燃やした「艾(もぐさ)」の熱による刺激で治療を行う「きゅう師」の総称です。これらの施術を行うには資格が必要であり、この二つの資格をあわせて取る人が多いため、これらの有資格者を「鍼灸師」と呼んでいます。

柔道整復師

柔道整復師は、関節や骨などの怪我に対して、手術によらず整復や固定で治療を施す仕事です。「ほねつぎ」や「整骨院」「接骨院」の先生などがこれにあたり、資格が求められます。柔道整復は柔術の活法から生まれた日本独自の伝統医療ですが、近年は西洋医療との融合も積極的でスポーツの分野と親和性が高いという特徴がみられます。

エステサロンのマッサージ師

リラクゼーションや美容を目的としたマッサージ師で、リンパマッサージやオイルマッサージ、タイ古式マッサージ、リフレクソロジーなど、さまざまなスタイルのサービスがみられます。

カイロプラクター

アメリカで開発された、背骨や骨盤のゆがみを改善することで身体の不調を緩和したり姿勢を矯正したりするカイロプラクティックの施術を提供する業者です。

もみほぐしを専門としたマッサージ師

一般的に「ボディケア」と呼ばれる業種で、手技を使って身体のゆがみを矯正し、肩こりや筋肉疲労を緩和したり身体の不調を軽減したりする施術を行う業者です。治療を目的とした行為は認められておらず、施術を受ける側が痛みを感じる強さでの施術はできません。

開業に資格の取得が必要なマッサージ師、資格の取得方法

「あん摩マッサージ指圧師」「鍼灸師」「柔道整復師」は、開業したり従事したりする際に資格が必要ですが、どのように取得すればよいでしょうか。それぞれを詳しくみていきましょう。

あん摩マッサージ指圧師

あん摩マッサージ指圧師になるには、まず高校卒業後に文部科学大臣または厚生労働大臣の指定する学校・養成施設で3年以上勉強し、あん摩マッサージ指圧師になる試験の受験資格を得なくてはなりません。

受験資格を取得後、東洋療法研修試験財団が実施する国家試験を受験、合格すれば「あん摩マッサージ指圧師」になることができます。試験は年に1度2月に行われ、2022年度の合格率は88.6%でした。

参考:過去の受験者数(東洋療法研修試験財団)

鍼灸師

鍼灸師になるには、年1回の国家試験に合格し、資格を取得する必要があります。試験を受験するためには高校卒業後に鍼灸学科のある専門学校などを卒業して受験資格を得なくてはなりません。2022年度の場合、はり師の合格率は70.4%、きゅう師の合格率は71.7%でした。

柔道整復師

柔道整復師になるに場合も国家試験に合格し、資格を取得する必要があります。試験を受験するためには高校卒業後に柔道整復学科のある4年制大学か3年制の短期大学、もしくは専門学校で3年以上学び、規定のカリキュラムを修了して受験資格を得なくてはなりません。

試験は年に1回3月上旬に実施され、2022年度の場合、合格率は49.6%でした。

参考:受験者数等一覧(柔道整復研修試験財団)

開業に資格が不要なマッサージ師とは

「あん摩マッサージ指圧師」「鍼灸師」「柔道整復師」以外のマッサージ師には治療を目的とした施術は認められておらず、おもにリラクゼーションや美容を目的とした施術を提供することになります。

必要な国家資格はありませんが、NPO法人などによってそれぞれの分野で検定試験やプログラム受講に基づく称号認定などが実施されています。

エステサロンのマッサージ師

美容を目的としたマッサージなども行う業種で、リンパマッサージやオイルマッサージ、タイ古式マッサージ、リフレクソロジーなど、それぞれの特色に合わせた専門知識が求められます。

また、民間の検定試験として日本セラピスト認定協会が実施している1級から3級までの「Tリラクセーション検定」というものがあります。

jp-blog-massage01

カイロプラクター

骨格の歪みを矯正することをベースとした施術法であるため、人体の骨格や関節、神経などについての詳しい知識が必要です。WHO(世界保健機関)では鍼灸と同様の扱いとなっており、アメリカなどでは国家資格が設けられています。日本では、「日本カイロプラクターズ協会」によるWHOのガイドラインに沿ったプログラムの受講することで「Diplomate of Chiropractic Science」の修了書が得られ、安全なカイロプラクターの指標として示すことができます。

もみほぐしを専門としたマッサージ師

もみほぐしをあわせて提供されることの多い整体については、日本セラピスト認定協会が実施している「整体セラピスト検定」という1級から3級までの民間検定があります。

マッサージ師が独立開業する前に検討すること

マッサージ師として独立開業する前に検討しておくべきこととして、いくつかの事項が挙げられます。どのようなことを決めるべきか、それぞれ詳しくみていきましょう。

マッサージの種類

前述のとおり、ひとくちにマッサージといっても、施術内容や立脚する理論などによりいくつかのカテゴリーに分けられます。これまでマッサージ関連の経験をしていない場合、あらかじめどの種類のマッサージを提供するのかを決め、その技術を身に着けておくのが一般的です。選ぶスタイルによっては開業前に技術だけでなく資格を取得しておかなければならないものもあるので注意しましょう。

開業の形態

開業の形態としては、店舗を借りて営業するほかにも、自宅や賃貸マンション、レンタルサロンなどを利用する方法があり、フランチャイズ契約で営業するスタイルもあります。また、出張訪問して施術する業態にすれば、店舗などを借りる費用が発生しないため、経費を抑えて運営することが可能です。

開業する場所

事前にある程度顧客を獲得していない場合、開業する場所の選択は集客面で非常に重要な要素となります。マーケティング分析を行い、自身の提供するサービスへの需要が見込める地域を選択しましょう。スパなどの温浴施設やショッピングモールなど、顧客が多く集まりそうな施設にテナントとして出店するのも一案です。

開業後の収入と売上予測

マッサージ店に限ったことではありませんが、資金繰りを間違うと経営が行き詰まります。発生する経費や収めなくてはならない税金、借入金の返済なども考慮しながら、開業からしばらくの期間を見越したシミュレーションを行い、売上目標ではなく売上予測を立てましょう。計画どおりに進んでいるかチェックするタイミングを設定し、予測と違った場合のオプションプランも用意しておくと安心です。

マッサージ師の独立開業に必要な資金の目安

では、マッサージ師として独立開業する場合、どのくらいの資金が必要になるでしょうか。営業形態別に目安となる金額を紹介します。

店舗を構える場合

立地や広さにも左右されますが、貸店舗で開業する場合、初期費用として店舗の契約費用(敷金や礼金、仲介手数料、初月の家賃など)に100万円程度、改装費用で50万円程度が目安となります。

そのほか、施術用のベッドやタオル、施術着といった備品代として40万円程度、営業が軌道に乗るまでの家賃や光熱費、人件費などのランニングコストを3カ月分用意しておきましょう。

自宅で開業する場合

自宅の場合は店舗の契約費用などが必要ありません。ただし、生活感を抑えるために部屋を改装する場合には、その費用が必要になります。程度にもよりますが、50万円程度を見込んでおくとよいでしょう。

出張訪問サービスとして開業する場合

出張訪問する場合には、店舗の契約費用や自宅の改装費なども発生しません。ただし、看板などでアピールすることができないため、新規の顧客に告知する場合には広告宣伝費が必要になります。

マッサージ店の開業までの準備

マッサージ店を開業するまでにはどのような準備がひるようになるでしょうか。一般的な例を紹介します。

開業計画の立案

まず、進行のベースとなる開業計画を立てましょう。自身の拠り所となるだけでなく、金融機関から融資を受ける場合は必ず求められるので、できる限りしっかりとつくっておくのが肝心です。時間軸に沿ったお金の流れと、工事や手続き面をスケジュールとして落とし込んでおきます。

物件の選定

店舗を借りる場合には物件の選定をしなくてはなりません。家賃や開業するタイミングを考えて選ぶのはもちろん、初期費用を抑えたいのであれば居抜きの物件を探すのも効果的です。

資金調達

必要な資金のシミュレーションができたら、資金調達をします。全額自己資金で賄えない場合には、家族から借りたり金融機関から融資を受けたりすることになります。その際は再融資を受けることが厳しい可能性を考えて、必要ギリギリの額ではなく、可能な限り余裕をもった金額にしておくようにしましょう。

内装、外装工事

店舗を借りたり、自覚を改装して営業したりする場合には、内装や外装の工事が必要です。目指している開業のタイミングに間に合うよう、プランが固まったらなるべく早く業者を当たるようにしてください。

施術所開設届出書、開業届などの手続き

開業に必要となる各種届出も忘れずに行いましょう。

資格が必要ないマッサージ店を開業する場合は所轄の税務署に開業届を提出するだけ可能ですが、店舗の屋号や看板などで医療行為を想起させる文言を用いることは禁止されているので注意してください。

資格が必要なマッサージ店の場合は、開業届のほかに事業開始から10日以内に保健所へ施術所の開設届を提出しなくてはなりません。

備品や決済システムの準備

さまざまな備品のほか、顧客の支払いに対応する決済システムも準備しておく必要があります。現金以外にも決済方法は多様化しているので、汎用性の高いシステムを選び、事前に運用に慣れておくようにしたいものです。

カードも電子マネーも、マルチ決済端末はこれ1台

全画面タッチディスプレイ、レシート印刷機能、ワイヤレスで持ち運び可能、スタイリッシュなオールインワン決済端末「Square ターミナル」でキャッシュレス決済を始めよう。

スタッフ採用

自身以外にスタッフが必要になる場合は人材採用も進めておかなくてはなりません。応募がいつあるかは相手任せなので、可能な限り早めに着手しておきましょう。

マッサージ店の施術以外の業務

マッサージ店を開業した場合、施術者としてだけでなく経営者としての役割も発生します。いくつかの項目に分けてその内容を紹介します。

集客

事前に顧客を獲得していない場合には、集客する必要があります。ターゲットの特性に合わせてチラシやポスティング、SNSなどコミュケーション方法を使い分けてアプローチしてください。

予約管理

予約方法は、電話、ウェブサイト、スマートフォンのアプリなど、複数用意しておくと安心です。受けた予約はトラブルが発生しないように一元管理できるシステムを導入しておくと効率的です。

会計管理

会計管理もシステムを導入しておくと経営の効率化がはかれます。予約と合わせて管理できるシステムもあるので、自店が求める機能と費用のバランスを考えて選ぶようにしましょう。

備品管理

業務の効率化やセキュリティーの向上、私物化の防止などを考えると、備品管理も専用のシステムを導入しておきたいものです。無料、有料さまざまなサービスが提供されているので過不足ないものを選んでください。

Square 予約を導入して予約受付から決済までスムーズに

マッサージ店の経営には施術の技術だけでなく、経営の手腕も求められます。できるだけ施術に集中できるよう、予約や会計などの店舗業務の管理にはシステムを導入するのがおすすめです。

Square 予約は、無料で導入できる予約管理システムです。Squareが提供する決済端末POSレジ在庫管理スタッフ管理とも連携できるので、一度導入すればマッサージ店経営に必要なさまざまな機能を利用できます。ぜひ検討してみてください。


Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。

執筆は2024年3月5日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash