ネットショップは実店舗に比べて開業資金をおさえられるというものの、実際どのくらいの開業資金が必要なのか知りたいという人もいることでしょう。ネットショップの開業・運営のための費用、準備しておきたい備品や物品とその費用、ネットショップの開業に利用できる補助金について説明します。
目次
ネットショップの開業・運営のための費用
ネットショップを開業し、運営していくにあたって、以下の五つの費用が大きな割合を占めます。ここではそれぞれの費用について詳しく見ていきましょう。
- ネットショップの開業・運営費
- 人件費
- 免許・営業許可取得費用
- 仕入費用
- 広告費
ネットショップ開業・運営費
ITに詳しい人なら自分でネットショップを自作することも考えられますが、多くの人にとってネットショップを開業する場合、ショッピングモール型のサービスに出店するか、ネットショップ作成サービスでネットショップを開業するのか二つの選択肢があります。
ショッピングモール型のサービスの場合、ネットショップの知名度が低くても、ショッピングモールで商品を検索した人がネットショップを利用してくれるといった効果が期待できますが、その分初期費用や月額の出店料は数万円単位で高額です。
一方、ネットショップ作成サービスの場合、ネットショップの宣伝に力を入れる必要はありますが、無料でネットショップを作成できるサービスもあります。運営費については、売り上げがあった際のみ数パーセントが手数料として差し引かれるサービスもあり、売り上げが上がらず大きな赤字を抱えるリスクを取らなくて済みます。また、ショップのデザインに力を入れたい人にとって、ショッピングモールのように、ショッピングモール全体のデザインにしばられないのもネットショップ作成サービスを利用する利点です。デザインに詳しくない人でもネットショップ作成サービスが用意しているテンプレートを利用して、流行のショップデザインを取り入れられます。
無料で開設できるネットショップについては、「無料で開設できるネットショップはどこまで便利に使える?」の記事も参考にしてください。
ネットショップに関するそのほかの費用として、独自ドメインを使いたい場合には、ドメインの取得・維持費用がかかり、ネットショップ作成サービスでは独自ドメインの設定費用がかかります。また、商品登録数を増やしたい、決済手段を増やしたいといった希望に応じて、ネットショップ作成サービスでオプションを指定すると、オプションやプランに応じて課金されます。ただし、それでも多くの場合、ネットショップ作成サービスに支払うのは月々数千円程度におさまるでしょう。
厳密にいうとネットショップ作成サービスを使うためのパソコンやインターネット接続費もかかりますが、ネットショップを開業したいと考える人の中でこれらを日常生活で使っていないという人は少数でしょう。開業初期は普段使っているパソコンやインターネット回線を仕事にも使えば費用の節約につながります。
このようにネットショップ開業・運営費としては、ネットショップ作成サービスを利用すれば、お金をかけて、かつ余裕を見たとしても、数万円の資金が用意できれば十分といえそうです。
人件費
よほどのことがなければ、小規模のネットショップはオーナーが一人で運営できると考えてよいでしょう。このため初期の人件費としては、1日にネットショップにかける時間に時給、毎月の稼働日数をかけ、半年分を開業資金として用意しておくと余裕を持てます。時給については安く見積もりすぎず、将来的に外注することを考え、地域の時給の相場などからきちんと試算しておくことをおすすめします。
時給1,000円で、1日4時間、月20日働いた場合、月額の人件費は8万円、半年の人件費は48万円かかります。考えていたよりも大きな金額が必要と驚いた人もいるかもしれません。
免許・営業許可取得費用
ネットショップで扱う商品によっては、営業許可を申請する必要があります。たとえば、酒類を扱う場合は通信販売酒類小売業免許、化粧品を扱う場合は化粧品製造販売業許可や医薬部外品製造販売業許可が必要です。中古品を扱う場合は古物商許可が必要です。ネットショップで取り扱いたいと考えている商品に特有の免許や営業許可証が必要か、取得にどのくらいの費用がかかるか調べて開業資金に加算してください。
仕入費用
物販のネットショップの場合、商品の仕入れ費用を考慮する必要があります。ネットショップで扱いたい商品のリストを作り、どの商品をどのくらい扱いたいのか書き出し、開業前の仕入費用を計算しましょう。仕入れた商品を保管する場所がない場合は、保管場所についても検討し、保管にかかる費用も用意する必要があります。
広告宣伝費
ネットショップ作成サービスを使ってネットショップを開業する場合には、広告宣伝に力を入れる必要があることはすでに説明しました。すでにお客様やソーシャルメディアでのフォロワーがいる場合は、ソーシャルメディアを活用しましょう。ソーシャルメディアへの投稿はネットショップや商品の宣伝にもなり、大きな費用はかかりません。そのほか、ソーシャルメディアや検索エンジンを利用してターゲットを絞った広告を打つこともできます。費用はかかりますが、少額で実験的に広告を出しながら、効果を測定し、効果があるようであれば継続的に利用するとよいでしょう。
自身で広告宣伝を行うことが苦手だという人は、広告代理店を利用するのも一つの手かもしれません。ただ、開業初期は資金を温存しておきたいところです。できるだけ自身で広告を手がけると、数万円から数十万円の単位で資金の節約につながります。
準備しておきたい備品や物品
ネットショップを作成し、運営していくにあたって準備しておきたい以下のような備品や物品があります。すべてを新たに購入する必要はありません。パソコンやインターネット回線についてふれたように、すでに日常で利用しているものを使い回すことで開業資金をおさえることができます。
- パソコンとスマートフォン、インターネット回線
- プリンター
- 撮影機材一式
- ソフトウエア
- 梱包資材
ここでは個々の備品や物品について詳しく見ていきましょう。
パソコンとスマートフォン、インターネット回線
パソコンやスマートフォンは普段使用しているものを共有すると、開業資金をおさえられます。ただし、共有する場合にはセキュリティー対策を万全にしてください。プライベートでもセキュリティー対策は重要ですが、ビジネスではお客様や取引先の情報も扱うため、パソコンやスマートフォンのセキュリティー対策はより重要になります。
また、ネットショップに掲載する電話番号やメールアドレスをプライベートのものと使い分けたいという人は少なくないでしょう。このような場合は、別途スマートフォンを契約したりメールアドレスを作成したりする必要があります。スマートフォンにかかる費用や通信費をおさえたい人は、月額数千円で利用できる格安スマートフォンを利用するのも一つの手です。
プリンター
スマートフォンやタブレット端末が普及する中、プリンターを持っていないという人も少なくありませんが、ネットショップでは許認可申請に必要な書類、請求書や納品書、送り状など、印刷をする機会が何かと発生します。プリンターを持っていない場合は購入する必要があります。コンパクトな数千円のモデルから、高機能のカラーレーザープリンターまでさまざまなモデルが売られています。カラー印刷をする機会が少ないようであれば、ビジネスでは白黒のレーザープリンターも選択肢の一つです。
プリンターを選ぶ際には、本体価格だけでなく、インクカートリッジやトナーの価格にも気をつけてください。本体価格は安かったものの、インクカートリッジの値段が高ければ、プリンターの維持費が想定以上にかかってしまうからです。
撮影機材一式
ネットショップに掲載する写真のほか、ソーシャルメディアに投稿する写真や動画の撮影には撮影機材が必要です。撮影機材といっても、最低限スマートフォンが一台あれば動画も写真も撮れるので多くの場合こと足ります。
写真や動画にこだわりたい人や、ソーシャルメディアでの動画配信に力を入れたいという人は、高機能のカメラ、商品撮影に用いるライトや三脚、マイクといった機材に投資してもよいでしょう。商品撮影に特化した撮影機材のセットも売られています。何を買ったらよいかわからないという人は、どのようなセットがあるのか調べてみるとよいでしょう。
撮影機材は開業当初にすべてそろえる必要はありません。最初は手持ちのスマートフォンで工夫して写真や動画を撮ってみて、こだわりたい部分が出てきたらその都度機材をそろえるようにすると、開業時の資金をおさえられます。撮影機材や撮影方法については、「ネットショップの商品の撮影方法とは?機材・テクニックなど、初めてでも安心の写真術」の記事も参考にしてください。
ソフトウェア
ソフトウェアというと、画像編集ソフトウェアを思い浮かべる人もいるかもしれませんが、ビジネスではまずセキュリティー関連のソフトウェアが必須です。ネットショップはクラウド型のネットショップ作成サービスを通じて作成・運営することがほとんどですが、業務メールや納品書などが自分のパソコンに保存されているかもしれません。業務に関する情報や個人情報の漏洩はあってはなりません。また、不意にクリックしたリンクからフィッシングの被害にあってしまうかもしれません。このような事態を防止するために、ウィルス対策ソフトウェアに関しては積極的に導入を検討しましょう。
ネットショップを運営する上で、会計管理は欠かせません。ネットショップの売上管理はネットショップ作成サービスの機能として提供されることがほとんどですが、ネットショップ外で発生する人件費、仕入費用、経費などとまとめて管理し、年度末に確定申告をする必要があります。この処理を軽減するのが会計ソフトウエアです。無料のソフトウエアもあり、ネットショップ作成サービス同様にクラウド型のものもあるので、いくつか試してみることをおすすめします。
画像編集ソフトウエアは必須ではありませんが、商品やソーシャルメディアに投稿する画像にこだわりたい場合は導入を検討してみてください。プロも利用している有名画像編集ソフトでも月額数千円で利用できます。試用期間があるソフトウエアもあるので、ネットショップの運営に本当に必要か試用して決めるとよいでしょう。
梱包資材
物販系のネットショップの場合、お客様に商品を配送するための梱包資材が必要です。商品のサイズや、一度に購入される量を想定して梱包資材を用意しましょう。在庫同様、梱包資材は保管に場所を必要とします。保管する場所がない場合は、保管場所についても検討し、保管にかかる費用も用意する必要があります。
利用できる補助金を確認しよう
ここまでネットショップの開業に必要な資金についてみてきました。業種や取り扱う商品にもよりますが、一般に数十万円から百万円の資金があれば、余裕を持ってネットショップを開業・運営できるといえそうです。手元にそこまで資金がないという場合も、ネットショップの開業を諦める必要はありません。金融機関からの融資を受けるほか、IT導入補助金や小規模事業者持続化補助金といった補助金を利用できるか確認するとよいでしょう。
IT導入補助金
中小企業・小規模事業者がITツールの導入に使える補助金で、ソフトウエアの導入関連費の補助を受けられます。募集要項やスケジュールについてはIT導入補助金のウェブサイトで最新情報をチェックしてください。
持続化補助金
持続化補助金は、小規模事業者が販路開拓や生産性向上を支援する補助金です。商工会や商工会議所の支援のもと経営計画書などを作成し、補助金を申請し、審査を受けます。
地域の商工会議所に問い合わせてみる
IT導入補助金や持続化補助金は全国で共通の仕組みですが、地域ごとの助成制度や補助金がある可能性があります。事業所を置く予定の地域の商工会議所に事業について説明し、利用できる助成金や補助金がないか問い合わせてみるとよいでしょう。
本記事ではネットショップの開業にはいくら必要なのかという疑問にこたえるべく、ネットショップ開業と運営にかかる諸経費について説明しました。開業資金の大半を占める人件費や仕入費用を削るのは簡単ではありませんが、無料のネットショップ作成サービスを利用したり、スマートフォンで工夫して写真を撮影したりするなどして、工夫次第で費用を数万円単位で節約できます。また、補助金や助成制度もネットショップ開業の助けとなるでしょう。本記事をきっかけに現実的な開業資金の金額を把握し、ネットショップ開業に向けた一歩を踏み出してください。
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執筆は2021年5月17日時点の情報を参照しています。
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