かねいち商店 | Square導入事例

JR上野駅と御徒町駅のちょうど中間ぐらいにあるその店は、葛飾北斎の「鰻登り」がデザインされたタペストリーが白い壁に掛かり、一際目を引いている。ひとたび暖簾を潜れば、香ばしく甘い香りが鼻腔をくすぐり、一見昔ながらの風情を残した店内は、独自のセンスを感じさせる気の利いた小物で溢れ、メニューにはクラフトビールやワインリストまで載っている——。

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鈴木幸子(すずき・さちこ)さん、紀子(のりこ)さん姉妹が切り盛りするかねいち商店(以下、かねいち)は、今は亡き父親から受け継いだうなぎ店だ。といっても、決して準備万端な状態で事業継承した訳ではない。取材を行った時点で、事業継承からまだ3年足らず。それにもかかわらず、かねいちは、すでに父親の店ではなく、「鈴木姉妹の店」ともいうべき雰囲気を醸し出している。

その背景には、紆余曲折と試行錯誤、そして父親へのリスペクトに溢れた姉妹の物語があった。

単に事業を受け継ぐだけでなく、店を自分たちの理想の姿へとリビルドするために必要だったことは何なのか。その中で、なぜSquareを選んだのか。鈴木姉妹に話を聞いた。

業種 飲食業
業態 うなぎ店
利用しているサービス Square リーダーSquare POSレジ
導入を検討した理由 ・商品の単価が高く、クレジットカードでの支払いを希望するお客さまが増えたため
Squareが役に立っている点 ・クレジットカード払い希望のお客さまに対応できること
・操作が直感的でスムーズ
・その日、その月の売り上げが自動的に集計できる
・何が売れたかが一目でわかる
・入金が早いため、仕入れ先への支払いがスムーズ

うなぎ屋になりたかった、姉

うなぎ店を引き継ぐ前の2人は、全く別の人生を歩んでいた。一言で表現するなら、うなぎ屋の娘であることに誇りを持っていた姉と、うなぎ屋を継ぐ気など「1ミリもなかった」妹、ということになる。

幸子さんは、幼い頃から板場(調理場)が遊び場だった。常連客に可愛がられ、父親のバイクに乗って出前にもついていく。迷子になった時に警察に家を聞かれて「うえののかねいち」と胸を張って答えるほど、実家がうなぎ屋ということが、幸子さんのアイデンティティとして確立していた。

だから、運送会社のトラックドライバーとして就職した時も、勤め先に、いつか自分は実家の仕事を手伝うことになると伝えていた。

それから間もなくして、住み込みで働いていた従業員の1人が病を患ったことをきっかけに、幸子さんは店に入った。

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担当するのは主に接客や出前だったが、幸子さんは父親に板場の仕事も覚えたいと直訴した。しかし、根っからの江戸っ子気質だった父親は取り合ってくれなかったという。

「大変だからいい、の一点張りで、全然やらせてもらえませんでしたね」(幸子さん)

父親から直接手解きを受けることはできなかったが、幸子さんは自然と板場の仕事を目で追い続けていた。実は、それが姉妹の事業継承の際に役立つことになるのだが、この時はまだそれを知る由もなかった。

うなぎ屋になりたくなかった、妹

一方で紀子さんは、幼い頃こそ板場で遊んだりもしていたが、思春期を迎える頃には実家を飛び出すことしか考えていなかったという。

「洋服とか、そっちの世界に興味があって。だから、両親にも店を手伝うつもりはないことははっきり伝えていましたね。そちらは姉が全部やってくれていたし」(紀子さん)

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宣言通り、紀子さんは就職と同時に上野からは離れ、ヘアメイクアーティストの道へ進んだ。しかし、時が経ち、ヘアメイクの経験を積み重ねていくうち、心境に変化が訪れる。

「一度父が病気で倒れたことがあって、その時に丑の日だけ店を手伝いだしたあたりから、ちょっと食べ物に興味を持ち始めたんですよね。私はヘアメイクをやっていましたが、結局、髪の毛も食べたもので作られるんだ、ということがしみじみとわかってきて」(紀子さん)

あれほど興味がなかった実家の店を、いずれ手伝ってみるのもいいのではないか。いつの間にかそう考えるようになり、紀子さんは飲食店でのアルバイトを始める。

いざ働き始めると、意外と性に合っていたのだろう、どんどん飲食の世界にのめり込んでいった紀子さんは、調理師免許を取得したり、ワインの勉強を始めたりするまでになる。そして、実家”以外”の飲食店での経験が、現在のかねいちの重要なエッセンスになっていくのだが、この時はまだそれを知る由もなかった。

店を畳むつもりだった姉、継ごうと背中を押した妹

2020年4月。その日は突然やってきた。昼間はいつも通り働いていた父親が浴室で倒れ、そのまま帰らぬ人となった。

その時点までは、幸子さんはもうかねいちを畳もうと考えていたそうだ。

「父は自分が体が動かなくなるまで働くからという感じで、店を娘に継がせるという考えがそもそもなかったですし」(幸子さん)

ところが、いざ父親がいなくなると、畳むべきか、続けるべきか、葛藤する自分がいたという。

悩む幸子さんの背中を押したのは、意外にも妹の紀子さんだった。

折しも世の中はコロナ禍。最初の緊急事態宣言が発令された時期で、紀子さんのアルバイト先が休業状態だったことが、姉妹の選択に大きな影響を与えることになった。

「もう、いずれやるものだと思っていたし、私はコロナ禍で働けていないのもあって、今のアルバイトを辞めてお店に入るから、開けるだけ開けてみようよと姉に伝えました」(紀子さん)

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先代から注ぎ足しながら長年使ってきたタレを駄目にしてしまうことも忍びなかった。これまで、6日間以上タレに触らなかったことなどなかったのだ。

「とりあえずやってみて、お客さんが離れてしまうんだったら、その時は店を閉めようって」(紀子さん)

「妹から言われて、どうやって店を続けられるかを考えるようになったんです」(幸子さん)

父親が亡くなってわずか1週間後には、姉妹で店を開けていた。そこには丹念な計画も準備もない。とにかく店を存続させたいという、姉妹の気持ちひとつだけだった。

「真似事」でもいい。ひたすら前へ進む日々

こうして、振り返って「もう2度と経験したくない」という怒涛の日々が始まる。

そもそも、うなぎの焼き方がわからない。店を開けて最初の3日間は、同じくうなぎ店を営む親戚がヘルプに入り、その後1週間だけ派遣のうなぎ職人を雇い、そこで初めて幸子さんはうなぎの焼き方を教わった。そして翌週にはもう、1人で焼き場に立っていた。長年、目で追ってきた父の仕事ぶりを思い描きながら。

「小娘がうなぎ屋の真似事をしている」——中には、聞こえよがしにそんな陰口を叩く客もいた。しかし、前に進み出した姉妹を支えてくれたのは、地元の常連客たちだったという。

面白いエピソードがある。常連客の1人に、同業者がいた。その客は、毎週のように来店し、幸子さんの焼いたうなぎを食べては、食事代とともに「今日は焼きが甘かった」といったアドバイスを置いていってくれたそうだ。最初はうなぎを焦がしすぎることもしばしばだったが、多くの常連客たちが姉妹の店を訪れ、うなぎを注文し続けてくれた。
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うなぎ職人としての技術を身につけるのと同時に、経営者視点でビジネスを整理する必要もあった。父親が長年の付き合いで続けていた仕入れ先を見直して、不要な取引をすべて打ち切ったのだ。

「父は一度決めたものを変えるということがないので、固定費が心配だったんですよ。ざっくりとした伝票しか残っていなかったのですが、『なんだかこのお店赤字な気がする……』という感じで。とにかく固定費を削りまくる、というところから始めました」(紀子さん)

そのおかげもあって、店はなんとか赤字にならず回っていき、「ああ、私たちがお店をやってもいいんだなと思えました」(紀子さん)

無我夢中で前に進みながらも、現役真っ只中だった父親を突然亡くした経験から、姉妹のどちらかに何があってもいいように、ということは常に考えていたという。だから、焼きから経理まで、店に必要なあらゆることを2人揃ってマスターしていった。まさに一心同体だった。

「父の店」から、少しずつ自分たちの店へ

姉妹で店を回し始めてから半年ほどが経ち、少し落ち着き出した頃から、2人は少しずつ店に自分たちの色をつけていく。

常連客たちに「綺麗になった」「明るくなったね」と言われるほど、外観や内装をガラリと変えた。出前する人手がないことを逆手にとって、新規のお客さまにもアピールできるテイクアウトを取り入れた。コロナ禍で売り上げが落ち込んだ際、いち早くUberEatsを始めた。店を継いだのとほぼ同時期にソムリエの資格を根性で取得した紀子さんは、うなぎとペアリングできるワインを店に置くことにした。

「私は、父から『こうでなくてはいけない』というのを長年仕込まれてしまって、そこからはみ出すことに対して怖さを感じるのですが、妹には全くそれがないので、『いや、そんなの古いから』と一蹴して、どんどん変えていくんですよ」(幸子さん)

2年、3年と経つうちに、店は劇的に変化した——父親から受け継いだうなぎの味は守りつつ。

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うなぎ屋だって、キャッシュレスの時代

Squareの導入も、姉妹がかねいちを自分たちの店にしていく過程の一つだ。

うなぎは決して安くない。紀子さんは、来店したお客さまからクレジットカードは使えないのかと聞かれることが増えてきたと感じていた。

「いろんな飲食店で働きましたが、実家ながら、うなぎの単価の高さにちょっとびっくりしたんですよね。だからカードで払いたいお客さまも多いはずだと思いました」(紀子さん)

アルバイト先でもキャッシュレス決済は当たり前に使われていたし、自分たちの店にも導入するべきじゃないかと、幸子さんに相談を持ちかけた。

「私もカード決済はやった方がいいと思っていたんですよ。でも、何せ父は機械音痴だし、現金でいいの一点張りだったので、結局導入できずじまいだったのですが、妹の一声がきっかけで、入れることにしようと」(幸子さん)

その時候補に挙がったのが、紀子さんのアルバイト先の同僚が独立した店で使っていたSquare リーダーだった。

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「他にも3社ぐらい候補があったんですが、簡単に導入できそうなのと、POSが無料で使えることと、あとデザインが決め手でしたね。このシンプルな感じがすごく好きだったので」(紀子さん)

導入後は、クレジットカードが使えることがわかると、喜んでくれるお客さまも増えた。特に若い世代だとキャッシュレス決済に慣れているということもあって、これから新しいお客さまになっていく世代に対応できるのも助かっているそうだ。

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初めてでもすぐに馴染めたPOSレジ

Square導入当初、2人はPOSレジの操作に慣れていないことに不安があったが、Squareのカスタマーサポートに相談することで解決策を見出したという。

「POSレジにメニューの写真を登録するのが1番操作がわかりやすくなると思いますと提案してくれて。その通りに全部写真を撮って登録したら、画像を見てタップするだけで操作できるので、パートさんも含めてすぐにPOSレジに慣れることができて助かりました」(紀子さん)

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これまではノートに手書きで売上管理をしていたという2人にとって、POSレジが売上データを自動的に集計してくれることも、店舗運営の効率を大幅に高めるのに役立った。

「手書きでも地道に集計を取れば何が何個売れたかっていうのは、もちろんわかるんですけど、毎日のことだし、時間はかかるし、うんざりしてたので、一目でわかるようになって本当によかったです」(紀子さん)

Squareなら今すぐキャッシュレス決済導入できる

カード決済、タッチ決済、電子マネー決済、QRコード決済が簡単に始められます

仕入れ先への支払いがスムーズ

かねいちが懇意にしている仕入れ先は、昔ながらの商売をしている酒屋や卸問屋ばかり。したがって、支払いは現金で対応しなくてはならない場合がほとんどだ。

そういう意味で、2人はSquareの入金サイクルが早いことにもメリットを感じているという。

「いま、Go To Eatキャンペーンが実施されていますよね。あれのお食事券で支払われたものは、1か月以上入金されないんですよ。そのせいで仕入れ先への支払いが止まってしまったことがあって。ああ、資金繰りが大事なんだ、というのが身にしみてわかったんです。その点、Squareだと週1回は入金(※)してくれるので、支払いで困ることがありません」(紀子さん)

※Squareアカウントの登録口座が「三井住友銀行」、または「みずほ銀行」の場合は、決済日の翌営業日に振り込まれます。その他の銀行口座の場合は、毎週木曜日0:00~翌週水曜日23:59までの決済額が、翌週金曜日に合算で振り込まれます。振込手数料はかかりません。

かねいちがSquareでお店を回し始めてまもなく3年が経過するが、鈴木姉妹は、まだまだSquareを通じての店舗運営改善に余念がない。今ある課題は、店内、テイクアウト、UberEatsと、バラバラに飛び込んでくる注文管理が煩雑になりがちなことだと聞いて、それらの注文をすべて1か所で管理できるSquare レストランPOSレジをおすすめすると、2人は目を輝かせて導入検討に意欲を見せた。

うなぎの枠を超えて、人が集まるお店に

鈴木姉妹が次に挑みたいのは、通販なのだという。

「うなぎ店って、繁忙期と閑散期のギャップが激しいんですよ。だからそれを均して、常にお店に来てもらえるようにしたいんです」(紀子さん)

店が落ち着いている時に仕込める、うなぎ店ならではの目新しい商品を作ってオンラインで販売すれば、新規のお客さまに向けた広告になる。上野という土地柄、観光客も多いため、店頭で告知しておけば、ちょっとしたお土産としても認知してもらえる、というわけだ。

今は、紀子さんがオリジナルでレシピを考案したという自慢の2品、「うなぎのレバーペースト」と「うなぎポップコーン」を店頭で販売している。どちらも、自慢の甘辛いタレや山椒がピリリと効いた、まさにうなぎ店ならではの、いや、かねいちにしか出せない味に仕上がっている。近い将来、それを本格的に通販するために、紀子さんは先んじてそうざい製造業許可や菓子製造業許可まで取得したという。

朧げながら、ビジネス拡大のイメージも持っている。

「浅草とか上野のアメ横とか、観光地でもあるので、串に打ったうなぎだけを売る小さなスペースでもできるテイクアウト専門店とか、意外と簡単にできるのになあって考えたりするんです。でも、うなぎの数をなかなか確保できないのが悩みですね」(紀子さん)

父親が長年守ってきたうなぎを軸に、次から次へと溢れ出るアイデアを融合させていく鈴木姉妹の言葉には、慎重になりすぎず、とにかく前へ進むことを選択し続けたビジネスオーナーとしての強さが滲み出ていた。

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「ああ、資金繰りが大事なんだ、というのが身にしみてわかったんです。その点、Squareだと週1回は入金してくれるので、支払いで困ることがありません」ー有限会社 かねいち商店 取締役 鈴木紀子さま

Squareが実現したこと

カードを使いたいお客さまへアピールし、集客に貢献

父親時代のかねいち商店は現金しか受け付けていませんでした。うなぎ店の単価は高いため、クレジットカードでの支払いを希望されるお客さまも多く、鈴木姉妹はSquareでのキャッシュレス決済導入を決意します。導入はすばやく簡単だったため、キャッシュレス決済やPOSレジの操作が初めてでも迷うことなくスムーズに決済の受付を始めることができました。Squareを導入したことで、お店が世代交代し、生まれ変わったことを古くからのお客さまに認識してもらうことができました。また、特に若い世代のお客さまはクレジットカードが使えることを喜んでいるようです。

売上管理の効率化により、商品開発の時間を創出

かつては売り上げの管理もすべて手書きで行っており、毎日店を閉めた後に地道に売り上げを集計する作業をしなければいけませんでした。Squareを導入することで、POSレジが売り上げを自動的に集計してくれるため、時間に余裕が生まれ、そこで紀子さんはお土産商品の開発などに時間を割くことができるようになりました。

余裕のある資金繰り

かねいち商店と付き合いがある仕入れ先は、昔ながらのお店が多く、支払いも現金に限られている場合がほとんどです。その日の売上金をそのまま支払いに当てるような感覚でビジネスを回しているため、手元に現金があることが何より重要です。その点、Squareは売り上げの入金がすばやく(※)、現金とほぼ変わらない感覚で仕入れ先への支払いを済ませることができています。

※Squareアカウントの登録口座が「三井住友銀行」、または「みずほ銀行」の場合は、決済日の翌営業日に振り込まれます。その他の銀行口座の場合は、毎週木曜日0:00~翌週水曜日23:59までの決済額が、翌週金曜日に合算で振り込まれます。振込手数料はかかりません。

この事例に登場したSquareのサービスは: