個人事業主の損害保険ガイド!補償内容や業種別の選び方を解説

※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。

個人事業主にとって、万が一の事故やトラブルに備える損害保険は、事業の安定と継続に欠かせない備えの一つです。

本記事では、個人事業主が検討すべき主な損害保険の種類と業種別に必要な損害保険を理由と共に解説します。また、補償内容や選び方のポイントもわかりやすく紹介します。自分の仕事で起こりうる事故や、守りたい設備・商品を整理し、事業に合った備えを考えていきましょう。

📝この記事のポイント

  • 個人事業主の損害保険は、他人への賠償、事業用財産の損害、休業による損失を分けて検討する
  • 飲食・美容・建設・ITなど、仕事内容によって必要な補償が異なる
  • 従業員の労災保険と、事業主本人のための特別加入は手続きも対象も異なる
  • 保険料だけでなく、対象業務、支払限度額、免責金額、補償期間を比べて選ぶ
  • Squareの売り上げ・在庫管理を活用すると、日々の事業状況を把握しやすくなる
目次


個人事業主に損害保険は必要?

Blog – public-liability-insurance - 114182d734b99bd46c879.jpg
損害保険は偶然の事故や災害によって生じる損害に備えるものです1。事業では、お客さまへの賠償だけでなく、火災による設備の損傷や、営業できない間の損失にも備える方法があります。

たとえば飲食店の火災では、厨房の修理費に加え、営業を再開するまでの家賃や人件費も必要になります。自宅で仕事をするフリーランスでも、納品したシステムの不具合によって取引先から損害賠償を求められることが考えられます。

個人で事業を運営している場合、仕事中のトラブルで他人に損害を与えてしまったとき、責任をすべて背負うことになります。損害保険は「もしも」に備えて、金銭的・信用的なダメージを最小限に抑えるための仕組みです。自分の資金だけでは負担しきれない損害に備えるために、日常の安全対策や貯蓄と組み合わせて保険を活用できると安心です。

損害保険と生命保険・医療保険の違いとは?

生命保険や医療保険と損害保険の主な違いは、「備える対象」です。保険業法上、生命保険は第一分野、損害保険は第二分野、医療保険や傷害保険などは第三分野に区分されます1。

保険の種類 主に備えること 代表例
損害保険 偶然の事故による財産の損害や法律上の賠償責任など 火災保険、賠償責任保険
生命保険 死亡した場合の家族の生活費など 定期保険、終身保険
民間の医療保険など 病気やケガによる入院・手術など 医療保険、がん保険

生命保険や医療保険と損害保険では、補償する対象が異なります。損害保険は偶然の事故や災害によって生じる損害に備えるものである一方、生命保険・医療保険は自分や家族の命・健康を守るものです。損害保険では、たとえば以下のような事業に関わる損害リスクを補償します。

  • 店舗の床の油で滑ったお客さまが転倒し、治療費を請求された
  • 自宅兼店舗が火災になり、営業停止を余儀なくされた
  • 顧客データの流出で損害賠償が発生した

個人事業主が検討すべき主な損害保険の種類

損害保険は、万が一に備えるだけでなく、信頼性の向上にもつながります。なかには、顧客からの暴力や悪質なクレーム、盗難などに備えが必要となる場合があるかもしれません。事業向けの保険には、複数の補償を1つの契約にまとめた商品もあります。ここでは、個人事業主が特に検討しておきたい保険を紹介します。

賠償責任保険

賠償責任保険とは、仕事中にお客さまや第三者に損害を与えてしまった場合に備える保険です。法律上の損害賠償責任を負った場合の賠償金や、契約で定める弁護士費用などを補償します。賠償責任が求められる事例には、以下のようなものがあります。

  • 強風で店舗の看板が落下して通行人がけがをした
  • 販売した商品で食中毒が起きた
  • 誤って他人の物を壊した
  • 建設現場の資材が倒壊して通行人がけがをした
  • サイバー攻撃で顧客の個人情報が漏えいした

たとえば、店舗の看板が落下して通行人がけがをした場合には施設賠償責任保険2、販売した商品で食中毒が起きた場合には生産物賠償責任保険(PL保険)が検討対象になります3。請負業者賠償責任保険やサイバー保険など、仕事や事故の原因に応じた補償もあります。

火災保険・動産保険

事業者向けの火災保険は、建物、設備・什器、商品・製品などの損害に備える保険です4。動産総合保険には、パソコンや機器などの持ち運び中の事故に対応する商品もあります5。特に高価な機器や在庫を扱う事業では、早期復旧のための備えとして重要です。

台風、水漏れ、盗難なども、選んだ補償に応じて対象になります。賃貸店舗では、自分の設備・商品への補償と、火災などで借りた建物に損害を与えた場合の借家人賠償責任への補償を整理しましょう4。地震による損害への備えには、事業用財産に対応する特約がついた火災保険なども検討できます。住宅向けの地震保険は居住用建物と家財が対象で、店舗専用の建物や営業用の什器・商品は対象外ですので注意しましょう6。

休業による損失への補償

火災や食中毒など、契約で定めた事故により営業できなくなった場合に、利益の減少や家賃・人件費など所定の固定費を補償する保険・特約があります7。

たとえば厨房の復旧に時間がかかる飲食店では、修理費だけでなく、その間に支払い続ける費用も見込んで備えを考えます。補償される事故、支払いの対象期間、利益の算定方法を比較しましょう。

ここで説明した休業補償は、火災で店舗が損傷したり、食中毒で営業停止になったりするなど、契約で定めた事故によって事業の営業が止まった場合の損失に備えるものです。一方、店舗や設備に問題がなくても、事業主本人が病気やケガで働けず、収入を得られなくなることもあります。

このような場合に備えるには、本人の就業不能による所得の喪失に備える「所得補償保険」などが選択肢になります。所得補償保険では、治療のために契約で定める仕事に従事できない状態になった場合に、契約内容に応じて保険金を受け取れます17。

労災保険(公的保険)

労災保険は、労働者の仕事や通勤が原因のケガ・病気などに対して給付を行う公的制度です。従業員やアルバイトを1人でも雇う場合は、一部の例外を除き労災保険の適用対象となり、事業主が加入手続きを行わなければなりません8。

労災保険には上記とは別に、事業主本人を対象とした「特別加入」制度が設けられています。事業主本人は、通常の労災保険では対象になりませんが、中小事業主や一人親方など、要件を満たす場合には任意で特別加入することができます9。

さらに、2024年11月1日からは、企業等から業務委託を受けるフリーランスも、業種・職種を問わず特定フリーランス事業として特別加入できるようになりました10。特に建設業や運送業など、労働リスクの高い現場では重要な保険です。

jp-blog-insurance-for-sole-proprietor-1

【業種別】損害保険の種類と必要な理由

業種によって直面するリスクは異なり、事故や賠償責任が発生しやすい場面に応じて備えるべき損害保険も変わってきます。ここでは、4業種を取りあげて、必要となる主な補償とその理由を紹介します。

飲食業

飲食店では、顧客が食中毒を起こした、熱いスープでやけどを負った、店内で転倒したなど、日常的に賠償リスクと隣り合わせです。

想定する事故 補償 主な対象
食中毒、店内でのお客さまの転倒 PL保険、施設賠償責任保険 お客さまへの法律上の損害賠償
火災・水漏れによる設備や食材の損傷 事業用の火災保険など 契約対象の厨房設備・在庫などの損害
火災・食中毒による休業 休業損失への保険・特約 利益の減少、所定の固定費

店舗での飲食に加えて、弁当の配達やイベント出店を行う場合は、その業務も含めて保険会社に伝えると、実際の営業に合った補償を選びやすくなります。

美容業・サロン業

美容サロンでは、直接人の肌や身体に触れる業務が中心となるため、施術ミスや薬剤トラブルなどのリスクがあります。

想定する事故 補償 主な対象
施術中・施術後のけが、販売商品による健康被害 施術業務に対応する賠償責任補償、PL保険など お客さまへの法律上の損害賠償
預かったバッグやアクセサリーの破損 受託者賠償責任保険など 預かり品の損害への法律上の賠償責任
火災・水漏れによる設備の損傷 事業用の火災保険など 契約対象の設備・什器などの損害

施術中の事故、施術結果による事故、販売商品の事故など、自分が提供するサービスに対応する補償を選びましょう11。施術メニューや出張サービスの有無を伝え、対象となる業務を具体化すると、必要な補償を絞り込めます。

建設業・工事業

現場作業には常に危険が伴い、事故が発生した場合の責任は重大です。高額な賠償につながる可能性もあり、特に対策が重要な業種と言えます。

想定する事故 補償 主な対象
足場や資材の落下で通行人・近隣の車に被害 請負業者賠償責任保険 第三者への対人・対物賠償
工事中の火災・事故で施工部分が損傷 建設工事保険・土木工事保険・組立保険 契約対象の工事目的物などの復旧費
倉庫の火災・盗難で工具や資材に被害 事業用の火災保険など 契約対象の工具・資材などの損害

請負業者賠償責任保険は、工事・作業に起因する第三者のけがや物の損壊への賠償に備えておくと安心です12。工事を行っている物自体の損害は、工事保険などと分けて検討しましょう13。受注する工事の種類、年間の請負金額、元請の保険に含まれる範囲を整理しましょう。仕事の引渡し後に起きる事故への補償や、下請作業を行う場合の扱いも比較材料になります12。

IT・オンライン業

最近はデータ漏えいやフィッシング詐欺などが増えています。デジタル業務に従事する個人事業主は、システム障害や顧客情報の漏えいなどの見えないリスクに備える必要があります。

想定する事故 補償 主な対象
サイバー攻撃や顧客情報の漏えい サイバー保険 法律上の賠償、調査・復旧などの費用14
納品したシステムの不具合で取引先に損害 業務過誤賠償責任保険(E&O保険)など 契約対象の業務ミスによる経済的損害への賠償
事務所の火災でパソコンが損傷 事業用の火災保険など 契約対象の機器などの損害

たとえば納品したプログラムの不具合で取引先の業務が止まった場合に備えるには、IT業務に対応する業務過誤賠償責任保険などが検討できます15。

損害保険の選び方とチェックポイント

損害保険を選ぶ場合は、事業リスクに応じた補償内容を選ぶことが重要です。ここでは万が一のときに本当に役立つ保険を選ぶために必要となるポイントを紹介します。

  • 補償内容と補償金額の妥当性
    補償範囲が広すぎると保険料が高くなり、狭すぎるといざというときに役立ちません。対人・対物・財物など、想定される損害と補償額が自分の事業規模に合っているかを確認しましょう。

  • 特約の有無(例:休業補償・損害賠償特約)
    標準プランに含まれない補償も、特約を追加することでカバーできることがあります。特約には、事故や災害で営業できなくなった場合の「休業補償特約」、法律上の賠償責任を広くカバーする「損害賠償特約」などがあります。

  • 免責金額の設定(自己負担の有無)
    免責金額とは、事故や損害が発生した際に、保険会社ではなく契約者である個人事業主が自分で負担する金額のことです。たとえば免責金額が5万円の場合、補償対象となる損害額から5万円を差し引いた分が、支払限度額などの契約条件に応じて保険金として支払われます。免責金額を設定すると保険料は抑えられますが、万一の場合の自己負担に無理がないかどうかも確認が必要です。

  • 保険料と補償のバランス
    高額な補償内容を求めすぎて月々の保険料が経営を圧迫してしまっては本末転倒です。必要なリスクに絞って補償を選ぶことで、コストと安心のバランスを取ることが可能です。

  • オンライン申込み・更新のしやすさ
    最近はネット完結型の保険サービスも増えており、見積もりから加入、契約更新までウェブ上で手続き可能な商品も登場しています。事務負担を減らしたい場合には、利便性も大切な選定基準です。

損害保険に加入するまでの手順

個人事業主が見積もりを依頼するときは、仕事内容を具体的に伝えられるよう、次の順番で準備するとスムーズです。

  1. 仕事と資産を整理する:業種、業務内容、年間売り上げ、従業員数、設備・在庫の金額などをまとめます。
  2. 加入済みの補償を確認する:既存の保険証券や、元請・業界団体の補償内容を確認します。
  3. 同じ条件で見積もりを比較する:保険会社や代理店に必要な補償を伝え、限度額・免責金額・特約をそろえて比べます。
  4. 契約内容と連絡先を共有する:補償開始日を確認し、事故時の連絡先や必要な記録を、対応するスタッフにも伝えます。

新しい施術メニュー、配達、別の店舗での営業などを始めるときは、契約を見直す機会です。事業の変化に合わせて補償を調整すれば、必要な備えを維持しやすくなります。

日々の売り上げ・在庫管理にはSquare

事業を安定して続けるには、事故への備えとともに、日々の売り上げや在庫の状況を把握することも大切です。Square POSレジなら、会計と売り上げの記録をまとめて管理し、販売傾向を確認できます。

商品を扱う店舗では、Squareの在庫管理機能で在庫数を確認・調整したり、レポートをダウンロードしたりできます。工事や制作を請け負う個人事業主なら、Square 請求書で請求書を作成・送信し、支払い状況を確認する方法もあります。

業態に合った管理ツールを活用して事務作業を減らし、接客や本来の仕事に時間を充てていきましょう。

Squareなら今すぐキャッシュレス決済導入できる

Squareはアパレル店やカフェからサービス業まで、あらゆる業種に対応するキャッシュレス決済サービスです。クレジットカード決済、電子マネー決済、QRコード決済が簡単に始められます。アカウント作成は無料、月額利用料も0円。売上は最短即時入金、スマホを使ったタッチ決済なら端末購入も不要と、キャッシュレス化をはやさでサポートします。

まとめ

特に賠償責任保険や火災保険、業種別の専門保険は、自身の事業内容に応じてしっかり検討したいポイントです。他人への賠償、自分の設備・商品、休業中の損失を分けると、必要な補償を整理しやすくなります。

まずは仕事内容と加入済みの保険を確認し、自分で負担できる金額と保険で備えたい範囲を考えましょう。補償の過不足を見直し、自分のビジネスを長く安定して続けるために、損害保険を上手に活用していきましょう。

よくある質問

個人事業主の損害保険について、よくある質問を紹介します。

個人賠償責任保険で仕事中の事故にも備えられますか?

個人賠償責任保険は、主に日常生活で他人にけがをさせたり、物を壊したりした場合の賠償に備える保険です。業務の遂行に起因する事故は原則として対象外のため、事業で起こる事故には業務に対応する賠償責任保険を検討しましょう16。

個人事業主におすすめの請負業者賠償責任保険の選び方は?

受注する工事・作業が対象に含まれることを優先し、支払限度額、免責金額、元請の保険との関係を比べます。案件ごとの契約と年間包括契約があるため、受注頻度も判断材料です。引渡し後の事故には別の補償が必要になる場合があります12。

従業員がいないフリーランスも労災保険に加入できますか?

一定の要件を満たせば特別加入できます。企業等から業務委託を受ける特定フリーランス事業の対象者は、承認された特別加入団体を通じて手続きを行います10。一人親方など別の区分に該当する場合は、その区分の団体を通じて申し込みます9。


Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。

執筆は2025年5月27日時点の情報を参照しています。2026年10月27日に一部情報を更新しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。