いよいよ独立!健康保険任意継続という選択肢

※本記事の内容は一般的な情報提供のみを目的にして作成されています。法務、税務、会計等に関する専門的な助言が必要な場合には、必ず適切な専門家にご相談ください。

独立しようとするとき、検討すべきことに「健康保険をどうするか」があります。国民皆保険である日本では、必ず何らかの公的医療保険に入らなければなりません。

保険の選択肢の一つとして、会社員時代の保険制度を利用する「任意継続」があります。

今回は「健康保険任意継続」について、わかりやすく解説します。

健康保険任意継続とは?

任意継続とは、「会社の健康保険を、最大で2年間利用できる制度」です。以下の要件を満たしていれば、誰でも利用することができます。

・会社の退職日まで、継続して2カ月以上被保険者であること
・退職した日の翌日から20日以内に申し込むこと

もし退職後に別の会社に再就職するのであれば、転職先の会社の健康保険に入ります。しかし、独立などで会社に所属しない場合は、自分で何らかの健康保険を選んで加入しなくてはなりません。

国民健康保険に入る方法がよく知られていますが、「保険料が大きく変わる」「申請期間が14日と短い」といったデメリットがあります。任意継続では、今まで加入していた会社の健康保険に入り続けることで、生活の激変緩和が期待できます。

もし任意継続をしたいのであれば、できるだけ在職中に、会社の健康保険担当者に相談しておきましょう。退職の前後は、挨拶まわりだけでなく、雇用保険や年金関係の手続きなどやるべきことが多いため、意外と忙しいものです。スムーズに健康保険の手続きを行うために、あらかじめ保険料の金額を確認したり、必要書類をもらったりして準備しましょう。

任意継続以外の選択肢

健康保険については、任意継続以外の選択肢もあります。参考まで、「国民健康保険に入る」「扶養家族になる」という二つの方法を紹介します。

国民健康保険に入る
公的に運営されている保険です。けがや病気の医療費、出産や死亡に関する給付などが受けられます。

加入手続きは、お住まいの市区町村役場にある国民健康保険の窓口で行います。退職した日の翌日から14日以内に、申請書や被保険者資格喪失証明書などの必要書類を提出します。保険料は市区町村によって異なるため、実際にいくらになるかは、役所の担当窓口で確認するのがおすすめです。

扶養家族になる
健康保険に加入している家族の扶養に入る方法です。被扶養者になると、保険料の負担がありません。

ただし、扶養家族になるには、「被保険者によって生計が維持されていること」「3親等以内の親族であること」「扶養に入る者の年間収入が130万円未満であること」などの条件があります。

実際に扶養に入れるかどうかは、家族が勤める会社の健康保険担当者に確認が必要です。

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任意継続のメリットとデメリット

会社員時代の健康保険を続けられる任意継続はとても便利に思えますが、メリットだけでなく、気をつけなければならない点もあります。

任意継続のメリットとデメリットについて解説します。

【メリット】

任意継続のメリットとして、以下が挙げられます。
(1) 在職中の保険制度を利用できる
(2) 国民健康保険に入るより保険料が安くなる可能性がある
(3) 前納制度で割引してもらえる

(1) 在職中の保険制度を利用できる
保険証は変わりますが、会社員時代と同じ保険給付を受けられます。ただし、傷病手当金および出産手当金に関しては、条件が必要となります。

(2) 国民健康保険に入るより保険料が安くなる可能性がある
支払う保険料については、国民健康保険よりも安くなる可能性があります。保険料は、「退職したときの標準報酬月額」もしくは「加入していた健康保険の全被保険者の平均報酬月額」のどちらか低いほうをもとに計算します。標準報酬月額とは、会社に勤めている時期の4、5、6月分の給与平均をもとに決められるものです。

たとえば、協会けんぽの場合、退職時の標準報酬月額が30万円を超えていれば、標準報酬月額は30万円で計算します。そのため、会社員時代の給与が高かった人は、保険料が安くなる場合があります。

参考:保険料について(全国健康保険協会)

実際に保険料がいくらになるかは、人によって変わります。あらかじめ会社に確認し、国民健康保険料と比べるのがおすすめです。

(3) 前納制度で割引してもらえる
保険料を前納することで、割引が受けられます。6カ月か1年かを選ぶことができ、毎月払いよりもお得になります。資金に余裕があれば、ぜひ検討してみましょう。

デメリット

任意継続のデメリットには、以下が挙げられます。
(1) 会社員時代に比べて、支払う保険料が2倍になる
(2) 退職後2年間しか利用できない
(3) 申請期間が短い
(4) 納付期限までに保険料を支払わないと資格を失う

(1) 会社員時代に比べて、支払う保険料が2倍になる
会社員時代は、会社が健康保険料を半分支払ってくれていました。退職すると、会社が折半してくれていた分も払わなければならないため、保険料が2倍になります。

(2) 退職後2年間しか利用できない
任意継続は、最大でも2年間しか利用できません。この期間を過ぎると、別の健康保険に加入し直す必要があります。

(3) 申請期間が短い
申請期間は、国民健康保険に比べれば長いですが、それでも「退職日の翌日から20日以内」という制限があります。この期間を過ぎてしまうと、原則申し込みができなくなってしまうため、早めに動く必要があります。

(4) 納付期限までに保険料を支払わないと資格を失う
保険料の納付期限を1日でも過ぎてしまうと、被保険者資格を失ってしまいます。会社員時代は給与から自動的に天引きされていましたが、独立後は自分で払わなければなりません。口座引き落としや前納を行うことで、支払い忘れを防げます。

任意継続の申請方法と得られる保障の違い

会社員の健康保険は、「協会けんぽ」と「組合健保」の2種類に分かれています。「協会けんぽ」と「組合健保」、それぞれの申請方法および保障内容について解説します。

協会けんぽの場合

協会けんぽは、全国健康保険協会が運営している健康保険です。主に、中小企業で働く従業員やその家族が加入しています。病院などでの窓口負担は、会社員時代と同じ3割となります。

給付金も、会社員のときと同様に受け取ることができます。ただし、傷病手当金および出産手当金については、在職時点で継続給付の要件を満たしている必要があります。

任意継続をしたい場合、全国保険協会の各都道府県支部宛てに申請します。退職日の翌日から20日以内に、以下の書類をそろえて手続きを行いましょう。

・任意継続被保険者資格取得申出書
・退職日が確認できる書類(退職証明書写し、雇用保険被保険者証離職票写し、健康保険被保険者資格喪失届写しなど)

参考:会社を退職するとき(全国健康保険協会)

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組合保険の場合

大企業の場合、従業員が700人以上であれば、国の認可を受けて健康保険組合を設立できます。これが「組合保険」と呼ばれるものです。

法律で決められた給付のほか、独自の付加給付を行うことができるのが特徴です。ただし、出産手当金および傷病手当金を受けるには、要件を満たす必要があります。

任意継続をしたい場合、健康保険組合宛てに申請します。退職日の翌日から20日以内に手続きが必要です。必要な書類を組合に確認したうえで申し込みましょう。

協会けんぽも組合健保のいずれも、申請期限を過ぎてしまうと、原則的に加入は認められません。申し込みは、スケジュールに余裕を持って行いましょう。

健康保険の任意継続制度は、会社員時代の健康保険を2年間継続できる仕組みです。メリットだけでなくデメリットもあるため、自分の収入や保険料の金額、保障内容などをよく検討したうえで、利用することをおすすめします。


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執筆は2020年3月3日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash